プロダクトレビュー・ショーケース

スリムサイズのままパワフルになった電動ドライバー「ARROWMAX M1 PRO PLUS」

最大トルク大幅アップでPC組み立てもこれ1本

 PC自作やちょっとした機械いじりにはドライバーが欠かせないが、ほどほどパワーと取り回しのよいサイズの小型電動ドライバーは非常に便利で、作業効率がぐっと上がる。

 今回は、Amazon.co.jpで実際に購入したARROWMAXの小型電動ドライバー「M1 PRO」をご紹介する。

 入手したのは、アングルアダプターやツールバッグが付属する最上位パッケージ「M1 PRO PLUS」だ。Amazon.co.jpでの販売価格は15,890円で、セール時価格は13,506円だった。

M1 PRO本体

 M1シリーズは、ペン型デザインのコンパクトな電動精密ドライバー。以前紹介した同社「SES」のアップグレード版にあたる製品だ。

 M1シリーズでは、「M1」および「M1 PRO」の2モデルが用意されているが、本体形状はいずれも共通で、握りやすい長円形デザインとなっている。

 後部キャップを外せば専用バッテリーにアクセスでき、交換も可能な構造だ(別途用意が必要)。ビット取付部周辺には、USB-C充電ポートとLEDライトが配置されている。

握りやすい楕円形の本体
ビット取付部にはLEDライトと充電用USB-Cポートを備える

 上位モデルのM1 PROでは、12kgf・cm(約1.2N・m)の最大トルクを謳っており、コンパクトなペン型の電動ドライバーとしてはかなりパワフル。以前紹介したSESでは最大0.2N・mとなっていたので、公称値で6倍のトルク向上だ。

 本体内部にモーションセンサーを備えており、電源ボタンを押したまま、本体をひねった方向に従って回転するというユニークな仕組みも特徴。

電源ボタンを複数回タップするとトルクを切り替えられる
ボタンを押したまま本体をひねると回転する
専用アプリ

 トルク調整はオートと1~4の5段階で、オートモードではひねりの角度に応じてトルクが可変する。

 また、スマートフォンの専用アプリでトルクを調整することも可能で、Bluetooth接続することで、モード1~4のトルクを2~12kgf・cm(1kgf・cm単位)の範囲で指定できる。

 なお下位モデルにあたる「M1」はBluetooth接続非対応で、2/4/6/8/10kgf・cm(約0.2~1N・m)の5段階トルク調整に対応。モーションセンサーに代わり回転方向を選択できるボタンを搭載している。

 内蔵バッテリーはシリーズ共通で、容量は600mAh、ネジ止め最大900回(900本)相当となっている。

下位モデルのM1はBluetooth/モーションセンサー非搭載

 本体は金属製で、専用ケースも金属製。底面を押し込むとロックが解除され、ビット収納兼用の内部ケースが引き出せる。

ケース
プッシュロック構造

 付属ビットは、基本ビットがプラスビット7本(PH000/PH00/PH0/PH1とPH00ロング/PH0ロング/PH1ロング)、マイナスビット8本(SL1.0/SL1.5/SL2.0/SL2.5/SL3.0/SL3.5/SL4.0とSL2.0ロング)、六角ビット13本(H0.7/H0.9/H1.3/H1.5/H2.0/H2.5/H3.0/H3.5/H4.0とH1.5ロング/H2.0ロング/H2.5ロング/3.0ロング)、トルクスビット14本(T2/T3/T4/T5H/T6H/T7H/T8H/T9H/T10H/T15H/T20HとT8Hロング/10Hロング/15Hロング)。

 上記に加えて、特殊形状のスクエアビット3本(S0/S1/S2)、ペンタローブ(星型)ビット3本(0.8/1.2/1.5)、Y字ビット4本(Y0.6/Y1.0/Y2.0/Y2.5)、三角ビット3本(TA2.0/TA2.3/TA3.0)、スパナ(U字)ビット2本(U2.6/U3.0)、スタンドオフビット1本(2.5)、SIMピン(0.8)も揃っている。

 延長ビットと合わせて合計60本と、ほとんどの用途で困ることはないだろう。いずれもS2鋼製で硬度HRC60とされており、ビット精度に不安も感じられなかったので、品質は十分だろう。

 PH2のビットもあれば便利なのだが、旧モデルのSESと同様に付属せず。とはいえ、ビットの太さはメジャーな六角4mm径なので、別途用意するのもさほど難しくはない点も、SESと同様だ。

ビット一覧

 最上位パッケージの「M1 PRO Plus」では、ドライバー本体とビットのほかに、アングルアダプターとツールバッグが付属している。

 本体とビット入りケースだけでも持ち運べるようにデザインされているが、ツールバッグではアングルアダプターと充電ケーブルもまとめて収納できる。

アングルアダプター
ツールバッグ

自作PC組み立てもこれ1本でOK

 今回は「PCの組み立てに使えるか」という視点で実際の動作を確認してみたい。

 一昔前であれば「やたらと固いPCケースのパネル固定ネジ」というのも“自作PCあるある”だったように思うが、メーカーの工作精度の向上、ツールレス構造や手回しネジといったUX改善策の結果、極端なネジの固さのPCケースと格闘することは減ってきた。

 一方で、ケースファンの固定ネジは、トルクが必要なタッピングネジが今でも主流。ネジ穴のないファンフレームを削りながらねじ込むことになるため、なかなかの固さだ。

 ということで今回は、“PCの自作で最もトルクが必要なネジ”として、ケースファンのタッピングネジが締められるかを試してみた。

 本体のトルクは8kgf・cmに設定。ファンの取り付けでは、ケース内やケース背面など、ドライバーをネジに立てるスペースが狭いことも多いので、アングルアダプターを装着した。

 そのままタッピングネジを回してみると、手回しで締めたネジが簡単に緩み、締め直しもキッチリ最後まで締めきることができた。

 自作PCの組み立てにおいて規定トルクが定められているネジはあまりないのだが、筆者が調べた限りでは、山洋電気の技術資料ページ(使用上の注意点およびセルフタッピングネジによるファン取付条件)では、「約0.8N・m以下」がファン固定ネジの取り付け推奨トルクとして案内されている。

 またIntelのサポートページでは、2.5インチSSDのM3ネジについて、最大0.67N・mまで、平頭ネジの場合は0.45 N・mまでという記載があった。

 CPUクーラーのリテンションでは、オーバートルクでマザーボードが反った、CPUヒートスプレッダ―にダメージが入ったなどの事例もある。トルク不足で密着度が足りずに冷却性能を十分に発揮できない問題もあるため、適度なトルクで固定するのが重要だ。

 旧モデルのSESは最大トルクでも0.2N・mであったため、トルクが不足する事はあれど、過剰トルクの心配はほぼなかったのだが、逆にM1 PROでは、高トルク設定やオートモードなどで、トルクが強すぎてネジ頭をなめてしまったり、ネジ頭ごと折ってしまうといった可能性もある点には注意したい。

PC組み立てに“丁度いいトルク”の電動ドライバー

 M1 PROは、旧モデルからトルクが向上し、より広い用途で使える電動ドライバーとなっていた。

 電動ドライバーを探すと、さらに高トルクのものも簡単に見つかるのだが、木工などのDIY用途ではなくPC組み立てという用途においては、意外と“丁度よいトルク”の製品は多くない。M.2 SSDからケースファンまで、PC自作に必要なほぼすべてのネジの着脱に対応できるのもありがたい。ビットの種類も豊富なのでモバイル端末やノートPCのメンテにも有効だろう。

 M1シリーズはPC組み立てに使いやすいトルクで、アングルアダプター付きのM1 PRO PLUSなら、ケース内の狭い空間でもビットが届くなんてシーンもあるだろう。

 M1シリーズなら、PC自作erの手間を減らすお供として活躍してくれるはずだ。