プロダクトレビュー・ショーケース
ASRockから待望のCPUクーラーが登場!液晶搭載ヘッド採用のメインストリームモデル「Challenger 360 Digital」
仕上がりは現代的で性能は上々、随所に“らしさ”が光る text by 石川 ひさよし
2026年3月5日 09:00
こだわりのマザーボードを軸に、AMD RadeonとIntel Arcを擁するビデオカードや新参入の電源ユニットと、取り扱い製品ラインナップを着々と拡大しているASRock。2026年のニューカマーは簡易水冷CPUクーラーだ。
ASRock製品と言えば、上位グレードから順に「Taichi」、「Phantom Gaming」、「Steel Legend」、「Challenger」、「PRO」といったシリーズを展開しているが、これは簡易水冷CPUクーラーでも同様。製品リリースは順次とのことだが、ハイエンドからエントリーまで、全方位で展開すると明らかにしている。
そんなASRockの簡易水冷CPUクーラーの中から、今回はこの春登場予定の「Challenger 360 Digital」を試していこう。Challengerはメインストリームゲーマー向けという位置付けのグレード。本機も、基本をしっかり押さえつつ高い性能を発揮し、良コスパも期待できる仕上がりとなっている。
Challenger 360 Digitalの各部を写真でチェック
「Challenger」を冠する簡易水冷CPUクーラーのラインナップには、今回の「Digital」のほか「Pure」もある。製品名から想像できるとおり、Digitalは液晶パネル付きARGB LED搭載モデルで、本体色がブラックとホワイトの2色展開、ラジエーターサイズはそれぞれ240mm/360mmがある。一方のPureはそれらを非搭載のブラックモデルで、ラジエーターサイズは360mmのみ。今回試用したChallenger 360 Digitalはブラックの360mmモデルだ。
簡易水冷CPUクーラーなので、構造はラジエーター+ファン+チューブ+ポンプヘッドと一般的なものと同じだ。ただし、ファンはラジエーターに装着済みで出荷されている。360mmモデルはファンが3基。その装着だけで12本のネジを締める必要があるため、これを省けるのはありがたい。
ファンの電源およびARGB LEDケーブルももちろん配線済みで、目立たないように最短で配線されている。ラジエーター厚は一般的な27mmだ。なお、上位モデルではこれより厚いものもあるとのことだ。
本機の12cm角ファンは、ブレード外周がリング状になった「リングフレーム・ブレードデザイン」を採用。回転数は0~2,100rpmで、低負荷時はファンの回転を停止する「0dB サイレントクーリングテクノロジー」を備えている。このほかの主な公称スペックは、風量最大62.6cfm、静圧最大1.77mmH2O、騒音値最大31dB。
内蔵するARGB LEDの光は乳白色のブレード全体に拡散するデザイン。3ピンのARGBヘッダーを搭載し、ASRockマザーボードなら同社製の「Polychrome SYNC」ユーティリティ、他社製品であれば各マザーボードなどのユーティリティで制御できる。また、各ARGB LEDデバイスをメーカーの垣根をまたいでコントロールする「SignalRGB」の互換性テストもパスしているとのことだ。
チューブは水冷システムにおいてクーラントの蒸発などの発生源になる。ASRockの簡易水冷CPUクーラーでは「高耐久プレミアムチューブ」を採用し、蒸発や変形に強いとしている。
水冷ヘッドはトップ部分に3インチの液晶パネルと周囲にARGB LEDを搭載している。液晶パネルに表示可能な情報はCPU温度、CPUクロック、ポンプ回転数の3つだ。また、これを情報を表示するには、USB(内部ヘッダーピン)によるマザーボードとの接続と、Challengerドライバの導入が必要だ。
水冷ヘッド内部のポンプ部には3相・6スロット・4極の高耐久かつ強力なモーターを搭載。CPUと接触するベースプレートからの熱を受け取る「超高密度マイクロフィンアレイ」に流れるクーラントが左右両側から均一に全体に行き渡る「デュアルサイドインレット冷却流路」により、温度ムラを抑えて効率よくCPUの熱を循環させる構造になっている。
また、発表時にアピールされていたベースプレート「精密スカイブ加工銅製コールドプレート」も特徴的だ。精密加工により面精度を高めてCPUとの密着を高めるとともに、表面積を増大させ、優れた熱伝導で長時間にわたり安定した冷却性能を発揮する設計とのことだ。
付属品と組み立てについて見ていこう。まず付属品は、Intel LGA1851/1700用、AMD Socket AM5/AM4用のブラケット、Intel LGA1851/1700用の樹脂製バックプレート、周囲パーツとの干渉を防ぎ見た目をキレイにするチューブクリップ、グリス「ASRock Therm-X1」、グリス用ヘラ、Intel用スクリュー、AMD用スクリュー、ラジエーター固定用スクリューだ。各CPU用ブラケットは水冷ヘッド部の溝に沿ってはめるだけ。工具不要で簡単に装着できる。
簡易水冷CPUクーラー参入第1弾の製品とあって紹介箇所も多いが、既製品をリブランドしたのではなく、性能や耐久性にフォーカスして独自要素を盛り込んできたところにASRockの本気を感じる。今回試すChallenger 360 Digital以外にも発表されている簡易水冷CPUクーラーは多く、上位モデルしか備えていない機能もあるので、そこはまた楽しみにしていただきたい。
実際に組んで試して分かったChallenger 360 Digitalのポイント
それでは、Challenger 360 Digitalを実際に試用・検証した結果を見てみよう。
まず組み立てやすさ。すでに紹介したとおり、半組み立て状態でブラケットも挿し込むだけとなっており、作業はしやすい。ブラケットの挿し込みだが、最後に力を入れて押し込むことでカチッとロックがかかる。ロックはそれなりに硬めなので、片側ブラケットずつロックしようとするよりは、両方のブラケットを挿し込んでから挟む形でロックするほうがラクだった。
初回起動時は流れるクーラント(冷却液)がやや気になる音をたてていたが、これは輸送時の振動で生じたエアかみが原因で、5分、10分すれば収まる。一旦落ち着いた後はかなり静かになった。
これと似たような現象として、ファンなども初回に異音を感じても、そのまましばらく運用すると徐々に静かになることがある。“すり合わせ”や“慣らし運転”などと同じようなものと言える。CPUに塗る熱伝導グリスも同様で、数分間負荷をかけることでヒートスプレッダー全体になじみ、クーラーが本来の冷却性能を発揮できるようになる。
液晶パネルについては軽く触れたとおり、Challengerドライバを導入するまではブラックアウトしたままだ。ARGB LEDについてはソフトウェア制御になり、Polychrome SYNCでは光り方や色などが選べる。
それでは、ベンチマーク中のCPU温度推移を見てみたのでグラフをご覧いただこう。検証環境は以下のとおり。
| CPU | AMD Ryzen 9 9950X |
| マザーボード | ASRock B850 Pro RS WiFi(AMD B850) |
| メモリ | DDR5-5600 16GB×2枚 |
| ビデオカード | ASRock AMD Radeon RX 9070 XT Steel Legend Dark 16GB |
| ストレージ | 2TB M.2 SSD(PCI Express 5.0 x4) |
| 電源 | ASRock Steel Legend SL-850G(80PLUS Gold) |
| OS | Windows 11 |
計測時の室温は21±1℃、暗騒音値は30.5dB。電源設定は最適なパフォーマンス。CPUの電力設定はRyzen Masterから「AMD Spec」(PPTが230W)に設定した。ファン回転数制御はマザーボードのデフォルト設定としている。
以降のCPU温度値はCPU(Tctl/Tdie)の値で、これをホットスポット温度としている。ログ取得は1,000ms間隔の設定だが、負荷状況によって正確に1秒間隔とはならないので、ログを取得した回数のカウントとしてグラフ化している。またグラフでは、CPU(Tctl/Tdie)に加え、主にPCMark 10におけるシーンの判別用のGPU温度、そして動作音変化の判断材料となるCPUファン回転数を添えている。各テストでは、ベンチマーク終了後数分間のクールダウン中の推移もグラフ化している。
まずは「PCMark 10 Extended」だが、これはホーム用途、ビジネス用途、クリエイティブ用途、ゲーミングの4シナリオ(ワークロード)でテストが進行する。

ベンチマーク開始直後にある1つの大きな山は、データの読み出しやハードウェア情報の収集などの処理によるものだ。このタイミングのCPU温度は75.6℃まで上昇するが、その後の1つ目のテストである“Essentials”(ホーム用途)でのCPU温度は40℃台前半~60.6℃で、そこまで上がらなかった。
2つ目の“Productivity”(ビジネス用途)は、周期的なCPU温度変化が現われた。先のEssentialsよりも平均すれば若干上だが、いずれにせよ60℃は超えていない。3つ目の“Digital Content Creation”(クリエイティブ用途)は山が3つ(初回のものは小さな降下がありピークが2つにも見える)。一番高かった最後の山で67.9℃だ。
4つ目のGaming(ゲーム)の序盤に一番大きな山があるが、これもベンチマーク本編ではなくロード処理部分だ。ここで計測の最高温度77.8℃を記録した。続く小さな山はグラフィックステストのGT1とGT2で最高61.8℃。大きめの山はCPU処理がメインのPhysicsで最高66.8℃。ラストにCPU・GPU両方に高負荷をかけるCombinedで最高63.8℃だった。
PCMark 10 Extended実行中のCPU温度の平均は50℃程度で、全体の95%ほどは60℃未満に収まっており、Challenger 360 Digitalの冷却性能は十分優秀と言える。ロード部分が高い傾向になるが、この推移自体はどのCPUクーラーでも同様。CPUクーラーの性能評価ではベンチマーク本編中の温度推移に着目すべきだ。
PCMark 10 Extended実行中のファン回転数は、多くの範囲で1,000rpm±200rpmで推移し、CPU温度で大きな山が出た部分で1,600~1,900rpmが記録されている。実際に聞いていた感触として、1,200rpmまではほとんど無音と言える静かさ。大きな山(ロード処理)のタイミングで一瞬だが大きめの動作音になったが、1,500rpmくらいまで上がる部分では、音量の変化こそ感じ取れたもののまだ十分に静かと言える。1,500rpmまで上昇するのは、クリエイティブ用途、ゲーミングのシナリオ中ということを考えると、PCを使う時間の大半はさらに静かな1,200rpmかそれ以下、と考えられる。
続いて、ゲーム中の性能テストとして、ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークの計測結果を見ていこう。
まずはフルHD、標準品質(デスクトップPC)という軽めの設定だ。今回用いたビデオカードが「AMD Radeon RX 9070 XT Steel Legend Dark 16GB」なので非常に高いフレームレート(平均259.71fps)が出ていた。もちろんファイナルファンタジーXIVを楽しむ方の参考になると思うが、eスポーツ系タイトルをプレイするイメージとして見ていただいてもよいだろう。

フレームレートが高いということはそれだけCPU側の処理も増える。ただ、グラフのとおり60℃を超えたのは1回だけだ。緩やかな上昇、下降をしていてそこまで大きな温度変化はない。このくらいの温度であれば全然問題ないし、ファン回転数も1,200rpmに達するシーンがほとんどないから静かだ。動作音を左右するのはCPUクーラーよりもGPU側になる。
もう1パターン、4K/高品質も計測してみた。ベンチマークなので垂直同期OFFだが、多くの方が実際にプレイする際の設定に近いと思われる60fpsでのプレイ(=標準的なリフレッシュレート60Hzモニター環境)をイメージしたものだ。今回の環境での平均フレームレートは86.77fpsだった。

大きめのピークが出現するタイミングはおおむね同じ。ただし、ピークの先端がとがっているというよりも、谷が深くなっているグラフになった。GPU負荷側はさほど変わらないが、フレームレートがそこまで上がらずCPU負荷がフルHD時よりも高くなりきらなかったためだと思われる。CPU温度の最大値も60℃を超えなかった。こうした点から、騒音計での計測値もフルHD時より若干低かった。
次に、Cinebench 2024でCPUに特化して集中的に高い負荷をかけてみよう。

さすがにCPU温度は最大80.5℃に達したが、サーマルスロットリングが発生する温度には達していない。注目は序盤で、およそ120カウントあたり(約2分経過時)までは上昇カーブを描いている。一瞬で最大温度付近に達するCPUクーラーもあるが、ここの緩やかな推移は冷却性能の高さとして見て取れる。ベンチマーク終了後の温度の下降は急速だ。
Cinebench 2024実行中のファン回転数は、1回目のループの半ばから終盤にかけて1段上がり、2回目のループもほぼ同水準、3回目のループで1段上がって4回目のループも同水準、という動きだった。テストが動き出してすぐに最大回転になるというわけではなく、段階を経て最大回転に達するというのは、“テスト序盤はまだ冷却性能に余裕がある”とも言い換えられる。とはいえ、2,000rpmを超えるシーンが全体の半分以上あり、動作音がうるさく感じる最大48.51dBを記録した。ただ、回転数の急激な変化が少なかったせいか、音量はそれなりでも耳障りな印象は薄かった。
通常使用ではなかなかない高負荷CPU駆動のCinebench 2024では回転数、動作音ともに高くなるが、普段のPC運用やゲームのレベルでは、十分に冷えてしかも静かであることが分かるテスト結果だった。
最後にアイドル時についても触れておこう。値としては、ベンチマーク終了後10分間の最小値を採用している。テストに使用したマザーボードのファン回転数制御の傾向にもよるところが大だが、アイドル時にしては若干高めのCPU温度で42.6℃、ファン回転数はおおむね930rpm近辺で推移して動作音は32.7dB。実際に聞いた印象では、ほぼ無音と言えるものだった。
アイドル時のCPU温度が気になるようなら、ファンのチューニングを行えばよい。実際に調整してみたところ、1,200rpmまではほぼ無音、1,500rpmでもまだ静音PCのレベルに収まる程度だった。アイドル時の回転数を200~500rpmほど上げてやれば、CPU温度は30℃台まで十分に下がる。
また、低負荷、低温度時に回転を止める「0dB サイレントクーリングテクノロジー」にも対応しているので、究極の静かさを目指すこともできる。設定としては、ASRockマザーボード用ユーティリティ「A-Tuning」のファン設定機能「FAN-Tastic Tuning」で、低負荷時の回転数を「0」にすればよい。
ASRockの「本気」を感じ取れ! 性能・静音は初戦で1発合格!!
電源ユニットの初リリース時もそうだったが、ASRockは新ジャンル参入に際し「おっ!」と思わせてくれるスペックの製品を作り込んでくる印象が強い。全部入りのハイエンドモデルではないChallenger 360 Digitalであっても同様の傾向で、やはりしっかりと“ASRockらしさ”が感じられた。
たとえばデザイン。華美ではないがそれでも十分なインパクトはあり、それでいて質実剛健さも感じられるあたりは、ASRockのミドルレンジマザーボードに通じるところがある。冷却性能については、今回のテストの範囲では高負荷時にまだまだ余裕が感じられた。静音性もよい。ホーム&ビジネス、ゲーミング用途で静かさを実感できるだろう。製品自体の完成度は高く、「初の製品だから……」という心配は不要だ。
熱心なファンも多いASRockの新ジャンル製品だけに、「ここはやはりASRockのアイテムで固めたPCが!」と思うところではある。しかし、そもそもChallenger 360 Digitalの完成度がいきなりかなり高いので、Challengerというシリーズの格付けを考えると、コスパのよさも期待できる。そうなると、性能・コスパさえ良好なら使用するパーツブランドはちゃんぽん状態でもOKという筆者のようなタイプの人にも、「ASRockから期待のCPUクーラーが出るぞ!」と言える。ファンのみならず広く自作ユーザーにオススメできる新製品として、ぜひ注目していただきたい。




