プロダクトレビュー・ショーケース
Intelの新型CPUは空冷で冷えてしかも高コスパ、「Core Ultra 200S Plus」をテストしてみた
新技術「Binary Optimization Tool」の効果も確認 text by 坂本はじめ
2026年3月23日 22:00
Intelが発表した新しいデスクトップ向けCPU「Core Ultra 200S Plus」。299ドルの24コアCPU「Core Ultra 270K Plus」と、199ドルの18コアCPU「Core Ultra 5 250K Plus」の発売が3月26日(木)に予定されている。現在の為替レートをそのまま反映させた価格で店頭販売されるのであれば、かなりのコストパフォーマンスが期待できるモデルだ。
今回はレビュアーズキットをテストする機会を得たので、コストパフォーマンスを活かした運用が可能なのか、あえて安価な空冷CPUクーラーを使って検証してみることにした。ゲーム性能を向上させるという新技術「Intel Binary Optimization Tool」もテストしているので、コスパの良いPC構築を目指すユーザーに是非チェックしてもらいたい。
Arrow Lake-Sを強化した新CPU「Core Ultra 200S Plus」
IntelのCore Ultra 200S Plus(開発コード名:Arrow Lake-S Refresh)は、2024年10月に発売されたCore Ultra 200S(開発コード名:Arrow Lake-S)の改良版で、アーキテクチャや製造プロセスを踏襲しつつ、従来モデルよりCPUコアを増強し、D2DやNGUなど内部バスを高速化したことで、Intel史上最速のゲーミング性能を実現したとされる新CPUだ。
3月26日の発売が予定されているのは、24コア(8Pコア+16Eコア)のCore Ultra 270K Plusと、18コア(6Pコア+12Eコア)のCore Ultra 250K Plusで、希望小売価格はそれぞれ299ドルと199ドル。この価格設定は従来のCore Ultra 200Sシリーズ発売時よりかなり安く、特に最上位のCore Ultra 9 285Kと同じ数のCPUコアを備えるCore Ultra 270K Plusには、高いコストパフォーマンスが期待されている。

Core Ultra 200S Plusのレビュアーズキットに同梱されていたのはCore Ultra 7 270K PlusおよびCore Ultra 5 250K Plus。比較のために用意したCore Ultra 7 265Kと合わせてベンチマークテストを実行し、新モデルのパフォーマンスを確かめる。
Core Ultra 200S PlusシリーズのCPUは、従来のCore Ultra 200Sシリーズと同じCPUソケット「LGA1851」を採用しており、対応BIOSを導入することで既存のLGA1851対応マザーボードが利用できる。
そこで、対応BIOSが提供されているASUSのIntel Z890チップセット搭載マザーボード「ROG MAXIMUS Z890 HERO」を用意。メモリは新旧どちらのCPUでも定格仕様内で使えるCrucialのDDR5-6400(JEDEC)対応64GB CUDIMM×2枚組「CT2K64G64C52CU5」を搭載し、テスト環境を構築することにした。
CPUの冷却にはCPSの空冷CPUクーラー「RT620 PRO BK」を用意した。サーマルグリスにはコストパフォーマンスに定評のあるArcticの「MX-4」を使用する。
2026年3月に発売されたばかりのRT620 PRO BKは、120mmファンを2基搭載するツインタワータイプのサイドフロー型CPUクーラーで、4,980円前後で販売されている。Core Ultra 200S Plusが、高価な水冷クーラーを用いなくても冷やせるCPUなのかを確かめるのにちょうど良い製品だ。
テスト環境を構築するその他のパーツや検証条件は以下の通り。
ケースには長尾製作所の「3wayオープンフレーム スタック式」を垂直方向で設置。CPUクーラーのファンスピードは全開(約2,200rpm)に設定し、テスト時の室温は約25℃に調整した。CPUクーラーにとっては比較的好条件だが、一般的なPCケースでも十分なエアフローを確保すれば同等以上の環境を整えることも難しくはないだろう。

Core Ultra 200S Plusは空冷CPUクーラーで冷やせる?発熱をCPUベンチマークとゲームで確認
早速Core Ultra 200S Plusのパフォーマンスを計測したいところではあるが、まずは空冷CPUクーラーで十分にCPUを冷やすことができるのか、冷却テストを実行して確かめてみよう。
冷却テストとして実行したのは、Cinebench 2026のマルチスレッドテスト(Multiple Threads)を最低実行時間30分で実行する高CPU負荷テストと、サイバーパンク2077をグラフィックプリセット「ウルトラ」かつフルHD解像度(1,920×1,080ドット)で30分連続実行するゲームテスト。各テスト実行中のCPU温度とCPU消費電力をまとめたものが以下のグラフ。


CPUコアがフル稼働するCinebench 2026実行中のCPU温度は、Core Ultra 7 270K Plusが平均91.0℃(最大99℃)、Core Ultra 5 250K Plusは平均70.0℃(最大74℃)、Core Ultra 7 265Kは平均72.9℃(最大79℃)だった。各CPUの温度リミット(TjMax)は105℃なので、いずれもサーマルスロットリングが発生しない温度を維持していた。
平均CPU温度が90℃を超えるCore Ultra 7 270K PlusのCPU消費電力は平均241.2W(最大290.0W)を記録しており、電力リミットの250Wをほぼ使い切るほど大きなものとなっているが、それでも冷却不足が生じていないので、空冷CPUクーラーであるCPS RT620 PRO BKで十分な冷却ができているといえる結果だ。実際、モニタリングデータの推移グラフでも安定した動作が確認できた。
なお、高温かつ全コアフル稼働中のCore Ultra 7 270K Plusの発熱は大きなものだが、サイバーパンク2077実行中の平均CPU消費電力は平均127.9W(最大150.0W)ほどでしかなく、CPU温度も平均68.2℃(最大81℃)に抑えられている。
このように、ゲームをはじめとする一般的なCPU負荷であれば、空冷CPUクーラーでも相当な余裕をもってCore Ultra 7 270K Plusを冷却できる点は覚えておきたい。
コア数が増強された分は順当に性能アップCPUベンチマークテストでチェック
空冷CPUクーラーでもCore Ultra 200S Plusを十分に冷却できることを確認できたところで、まずはCPU性能を計測する「Cinebench 2026」と「3DMark:CPU Profile」を用いて、CPUコアが増強されたCore Ultra 200S Plusのパフォーマンスをチェックしてみよう。
まずは、CPUの3DCGレンダリング性能を計測するCinebench 2026で、マルチスレッドテスト(Multiple Threads)と、シングルスレッドテスト(Single Thread)を実行した結果が以下のグラフ。なお、最低実行時間は標準の10分で実行した。

マルチスレッドテストでは、Core Ultra 7 270K Plusが「9,873pts」を記録し、従来モデルのCore Ultra 7 265K(7,925pts)を約24.6%も上回った。また、Core Ultra 5 250K PlusもCore Ultra 7 265K比で9割以上のマルチスレッド性能を発揮しており、Core Ultra 200S Plusが従来モデルより高いマルチスレッド性能を獲得していることが分かる。
一方、シングルスレッドテストでも「580pts」を記録したCore Ultra 7 270K Plusが最高スコアを獲得しており、次点はCore Ultra 5 250K Plusの「563pts」だった。それぞれ従来モデルのCore Ultra 7 265Kを約5.8%と約2.7%上回るパフォーマンスだ。

CPU性能をスレッド数ごとに計測する3DMarkのCPUテスト「CPU Profile」では、Core Ultra 7 270K Plusがすべての条件でCore Ultra 7 265Kと同等以上のスコアを記録。すべてのCPUコアで処理を行う最大スレッドではCore Ultra 7 265Kを約14%上回った。
一方、Core Ultra 5 250K Plusは最大スレッドでCore Ultra 7 265Kを14%ほど下回っているものの、16スレッド以下ではCore Ultra 7 265K比で9割以上のスコアを記録している。
なお、CPU Profileにおける1スレッドのスコアが、Core Ultra 7 270K PlusでCore Ultra 7 265Kと同等、Core Ultra 5 250K PlusはCore Ultra 7 265Kを約4.1%下回る結果となっており、Cinebench 2026の結果とは異なる傾向が見られるのだが、これはおそらくD2D(Die-to-Die)クロックの違いによるものだ。
Arrow Lake-S系のCPUにおいて、D2D(Die-to-Die)クロックはCPUコアとメモリコントローラ間の通信速度に影響するものであり、メモリアクセス性能がスコアに反映されやすいCinebench 2026では、従来モデルより900MHz高速化されたD2Dクロックの恩恵が有効である一方、メモリの影響が薄いCPU Profileでは純粋に最大CPUクロックの差がスコアに反映されたものと考えられる。
「Intel Binary Optimization Tool」の効果とは?対応ゲームで効果を発揮する新機能
ここからは、Intelが同社史上最速であるというCore Ultra 200S Plusのゲーミング性能を確認していくのだが、まずはCore Ultra 200S Plusで導入された新技術「Intel Binary Optimization Tool」について確認しておこう。
Binary Optimization Toolはバイナリ変換レイヤーを用いた最適化技術で、いまのところCore Ultra 200S PlusおよびCore Ultra 200HX Plusが対応製品とされている。対応ゲームなどは現時点では限られるが、IntelによればCPUの命令実行効率(IPC)を改善してゲーミング性能が向上するとのこと。
利用するにはAPO(Application Optimization)ツールで有効化する必要があり、自動的に動作するものではないようだ。また、Core Ultra 7 265Kではツール上に機能自体が表示されなかった。
今回のテストではBinary Optimization Toolの効果を確認すべく、同機能が対応している「サイバーパンク2077」、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」、「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」にて、CPUごとにバイナリ最適化有効時と無効時のゲーミング性能を計測する。
サイバーパンク2077
サイバーパンク2077では、フルHD解像度でグラフィックプリセットを「ウルトラ」、超解像を「DLSS(クオリティ)」、フレーム生成を無効に設定し、ベンチマークモードを実行した。

バイナリ最適化有効時のCore Ultra 7 270K Plusは200.7fps、Core Ultra 5 250K Plusは194.2fpsを記録しており、バイナリ最適化無効時より2%弱ほど平均フレームレートが向上した。
サイバーパンク2077におけるバイナリ最適化の効果はかなり薄いが、これはサイバーパンク2077自体がそれなりに新しいゲームであることに加え、Core Ultra 200S発売直後に同CPUでのパフォーマンスを最適化する調整をゲーム側で行っていることが影響しているものと思われる。
なお、Core Ultra 200S Plusシリーズの2製品は、バイナリ最適化の有無に関わらずCore Ultra 7 265Kが記録した184.6fpsを上回っており、従来モデルを超えるゲーミング性能を獲得していることがうかがえる。
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク
ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークでは、フルHD解像度でグラフィックプリセットを「最高品質」、超解像を「無効」に設定し、ベンチマークテストを実行した。


バイナリ最適化有効時のスコアを確認してみると、Core Ultra 7 270K Plusは33,332を記録して無効時を約5%上回り、Core Ultra 5 250K Plusも30,079を記録して無効時を約6%上回った。サイバーパンク2077に比べるとバイナリ最適化の効果が大きい様子が見て取れる。
また、Core Ultra 200S Plusはバイナリ最適化の有無にかかわらずCore Ultra 7 265Kが記録した26,675を上回っているが、バイナリ最適化を有効にすることでCore Ultra 7 270K Plusは約25%、Core Ultra 5 250K Plusも約13%という明確な差をつけてCore Ultra 7 265Kを上回った。
シャドウ オブ ザ トゥームレイダー
シャドウ オブ ザ トゥームレイダーでは、フルHD解像度でグラフィックプリセットを「最高」、超解像を「DLSS(バランス)」に設定し、ベンチマークモードを実行した。

バイナリ最適化有効時の平均フレームレートを確認してみると、Core Ultra 7 270K Plusが320fps、Core Ultra 5 250K Plusは288fpsを記録しており、いずれもバイナリ最適化無効時を約18%も上回っている。
これにより、Core Ultra 7 270K PlusはCore Ultra 7 265Kが記録した平均フレームレート(244fps)を約31%、Core Ultra 5 250K Plusも約18%上回った。
2018年発売のシャドウ オブ ザ トゥームレイダーは、Intelがバイナリ最適化の効果が大きいタイトルとして挙げているゲームのひとつで、実際にかなり大きなパフォーマンス改善を確認できた。2018年と言えばIntel製CPUがSkylake系アーキテクチャを採用していた時期であり、異なるアーキテクチャに最適化されたゲームだからこそバイナリ最適化の効果も大きいのだろう。
空冷で冷やせてコストパフォーマンス面にも優れるCore Ultra 200S Plus
Intel史上最速のゲーミング性能を実現するというCore Ultra 200S Plusは、確かにCore Ultra 7 265Kをしのぐゲーミング性能を実現していた。全体的には劇的とまではいかないものの、Binary Optimization Toolが効果的な一部のタイトルでは大幅な性能向上も確認することができた。
一方で、マルチスレッド性能は増強されたCPUコアが増えた分しっかりと向上している。クリエイティブ系アプリなどでCPUの処理性能を必要とするユーザーにとって、299ドルのCore Ultra 7 270K Plusと、199ドルのCore Ultra 5 250K Plusは、コストパフォーマンス面で魅力のある選択肢になるのではないだろうか。
コア数の増強に伴い発熱も増加しているが、安価な空冷CPUクーラーでも冷却することが可能。もちろん、高性能なCPUクーラーで静かに冷やしても良いが、CPUのコストパフォーマンスを活かしたPC構成も可能な点は大きなメリットだ。
PCの新調や買い替えを狙うユーザーにとって、Core Ultra 200S Plusはこの春に注目すべきCPUとなりそうだ。




















