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最新HDDはどれだけ進化したのか、2011年の大人気モデルといろいろ比べてみた

現在のSMR採用ディスクは大きく進化、OS用にも使用可能に text by 坂本はじめ


システムディスクとしても利用可能になったSMR採用HDD、一般的なHDDと遜色無し

 市場に初めて登場したSMR採用HDDの「Archive HDD」シリーズは、システムディスクとしての利用が非推奨とされていた。OSの処理はランダムアクセスの塊とも言えるようなものだが、常に細かいファイルの書き込み作業などが入るため、初期のSMR採用HDDとはかなり相性が悪かったのだ。

 しかし、ST4000DM004をはじめとする最新のBarraCudaシリーズでは、用途についての制限は無くなっている。そこで、実際にWindows 10をインストールし、本当にシステムディスクに使用しても問題ないのか試してみた。

 実際に使用してみた感覚では、OSのインストールも正常に行うことが可能で、体感的にはST2000DL003と変わりないといった印象だ。

ST4000DM004にインストールしたWindows 10で実行したタスクマネージャー。一般的なHDDと同じ感覚で使用できた。

 OSのキャッシュなどが影響しないように、再起動の時間を計測してみたが、ST4000DM004はST2000DL003を上回る結果となった。最新世代のSMR技術採用モデルであれば、システムディスクで使用しても問題の無いといえるだろう。

 ただし、体感的にはSSDを使った場合に比べて待たされる時間は長い。ST4000DM004はシステムディスクに問題なく使用できるが、積極的に利用したいほど快適といったものではないので、SMR採用HDDが用途を選ばず使用できるようになりつつある一例として見て欲しい。


アプリケーションの起動も高速に、Photoshopでの差は大きめ

 最新のSMR採用HDDをシステムディスクとして使用しても問題ないことはわかったが、日常的な用途での性能ということで、アプリケーションの起動時間も新旧HDDで比較してみた。

アプリケーションの起動時間

 Photoshop CCとGIMPの二つのアプリケーションを試してみたが、Photshopの起動時間は明確な差が出た。アプリケーションによってはST4000DM004のシーケンシャルアクセスの性能がそのまま速度に反映される。

 逆にGIMPはほぼ差が無い結果となった。ST4000DM004の方がわずかに高速ではあるが、アプリケーションによっては差が出にくいケースもあるようだ。


発熱の少ない最新HDD、負荷を掛けても温度上昇は意外な低さに

 HDDはディスクを回転させるメカニカルなパーツであるため、動作させれば当然熱が発生する。ST4000DM004が動作中にどの程度の熱を発するのか、サーモグラフィで確認してみた。

 左が新型のST4000DM004、右が旧型のST2000DL003だ。

HDDにアクセスしていない場合の温度。左がST4000DM004、右がST2000DL003。
30分間ファイルコピーを実行し続けた際の温度。意外なほど温度は上昇しなかった。

 サーモグラフィによる測定では、アイドル時の表面温度は31.4℃であったのに対し、30分にわたってファイルコピーを実行し続けた際の温度は36.2℃だった。同時に測定したST2000DL003も最大39.4℃と低い温度で動作しているが、ST4000DM004はさらに低発熱であることが分かる。


低回転HDDはやはり低騒音、静音HDDを狙うなら低回転でプラッタ枚数が少ないモデルを

 ディスクを高速回転させてデータの読み書きを行うHDDはどうしても動作ノイズが発生するが、ST4000DM004は回転数を5,400rpmに抑えることで静粛な動作を実現している。

 実際にST4000DM004の動作音はどのくらい静かなのか、騒音計を使って比較してみた。

HDDの騒音

 HDDの電源を切った状態、HDDにアクセスが無いアイドル状態、CrystalDiskMarkでシーケンシャルアクセスまたはランダムアクセスを実行している状態の4パターンの動作音を測定したが、HDDが動作している状態ではいずれもST4000DM004の方が静かに動作しているという結果が得られた。

 実際に聞こえてくるノイズも、ディスクの回転音は非常に静かで、シーク音もくぐもったような低音であるため目立たず、体感的にもST4000DM004の動作はかなり静粛なものであると感じられた。地味な部分ではあるが、低回転である点や、プラッタ枚数が少ないといった部分の影響はこういったかたちで出てくる。


1プラッタ少ないだけでかなり軽量に、運ぶ際に地味に効いてくる重さの差

 ST4000DM004が採用する2TBプラッタは、比較用のST2000DL003の2倍の記憶容量を実現しながらも部品点数の削減に寄与しており、HDDを大きく軽量化している。

 実測してみたところ、ST2000DL003の626gに対して、ST4000DM004は432gと、実に200g近く軽くなっていた。

ST4000DM004の重量。
ST2000DL003の重量。

 デスクトップPCではノートPCほど重量は重要では無いが、組みあがったPCの移動や、外付けHDDケースに入れての運用などの際などには軽さがメリットになることもあるだろう。


SMRのHDDは外付けケースに入れても安全に使える?速度を温度をチェック

玄人志向のUSB3.1対応HDDケース「GW3.5FST-SU3.1」。

 USB 3.0などの高速なインターフェイスが普及した現在、コンパクトなデスクトップPCやノートPCを使うユーザーであれば、ストレージ容量を安く増やす手段として、デスクトップPC向けHDDを外付けHDDケースに搭載して使うこともあるだろう。

 こうした外付けHDDケースを使った場合どの程度の性能が得られるのか、玄人志向のUSB 3.1対応HDDケース「GW3.5FST-SU3.1」を使ってテストしてみた。

ST4000DM004のCrystalDiskMark実行結果。左(青)が外付け時で、右(緑)がSATA接続時。
ケースに入れた状態のアイドル時と負荷時の温度

 HDD外付けユニットに接続して実行したCrystalDiskMarkでは、SATA接続時と遜色ない結果が得られた。速度の面では外付けケースに入れて運用しても性能を発揮してくれるだろう。

 動作時の温度に関しても、ケースに入れた状態で負荷を掛けても40℃未満となったので、外付け用のドライブとして安心して使えるモデルと言えそうだ。

最新HDDは安くて低発熱かつ静か、価格も手頃でリプレースにもお勧め

 SSDの影に隠れがちなHDDではあるが、今回のテスト結果のように着実に進化しつつある。速度を犠牲にすること無く、低発熱かつ低騒音な方向に進化しているのはどんなユーザーにも喜ばしいことだろう。

 今回テストをしたST4000DM004の実売価格は8,000円前後で、GB単価は約2円となっている。どんな用途でもそれなりのパフォーマンスを発揮する汎用性の高さを考えれば、この価格は非常に手ごろなものであると言える。

 古くなったHDDの更新を考えているユーザーはもちろんのこと、外付けHDD用としても扱いやすいので、ノートPCユーザーやゲームキャプチャ用のHDDを手軽に追加したいユーザーにも扱いやすいHDDだ。手頃な価格ということもあり、バックアップ用にも向いているので、古いHDDを長期間使用しているユーザーは、この機会に最新世代のHDDにリプレースしてみてはいかがだろうか。

[制作協力:Seagate]

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【記事目次】

~ スペック/ベンチマーク比較 ~(1ページ)
・SMR技術でプラッタ容量は2TBに、8TBモデルも身近になった最新世代のHDD
・進化ポイントは“速度向上 + 低消費電力化”、新旧型HDDをスペックから比較
・CrystalDiskMarkで新旧HDDを比較、2割前後新型HDDが高速に
・プラッタの外周と内周の速度を「HD Tune」で計測、リードは全域にわたって新型が高速
~ 実転送速度/ゲームで比較 ~(2ページ)
・動画の転送も速い新型HDD、旧型と比較して約30%高速
・趣味に使うデータ置き場を高速化するなら新型HDD、ゲームデータの転送も有利
・新型HDDはゲームのロード時間も短縮、10~20%前後の性能アップ
・SMRのHDDは動画録画に使っても大丈夫?ゲームをキャプチャしてみた
~ 動作温度や動作音を比較 ~(3ページ)
・システムディスクとしても利用可能になったSMR採用HDD、一般的なHDDと遜色無し
・アプリケーションの起動も高速に、Photoshopでの差は大きめ
・発熱の少ない最新HDD、負荷を掛けても温度上昇は意外な低さに
・低回転HDDはやはり低騒音、静音HDDを狙うなら低回転でプラッタ枚数が少ないモデルを
・1プラッタ少ないだけでかなり軽量に、運ぶ際に地味に効いてくる重さの差
・SMRのHDDは外付けケースに入れても安全に使える?速度を温度をチェック