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PC選びに悩んでいたゲーム好きの女性看護師に、いろいろ提案してみた

~ フォートナイトが快適にプレイ出来る環境を手に入れるまで ~

 コンシューマ機からPCへのゲーム環境移行を検討中のゲーマー女子に密着取材する本企画。今回の記事に出演して下さったのは、幼少期からコンシューマ機でゲーム漬けの生活を送ってきた東京都在住の23歳看護師のSさん。

 ゲーミングPCを購入した友人の影響でPC環境への移行を決意したSさんだったが、愛用のノートPCでフォートナイトを起動するもスペック不足で動作せずに意気消沈。友人と秋葉原にPCを見に行ったものの、自作パーツやBTO PCの豊富さに圧倒されてしまう。

 前編記事では、Sさん宅に伺って環境を調査しつつ悩みや要望のヒアリングを行った。

 今回の記事では、そんなSさんの「ゲーミングPCデビュー」の様子をお届けしたいと思う。

目標のおさらい:目指すは「フォートナイトの快適環境」「生活に溶け込む自然な感じ」

PCを設置予定のリビング

 まずは、前編のおさらいとして「目標」と「用意する範囲」を再掲しよう。

 今回はネット回線からPC本体、周辺機器まで全てを揃える、という状況だ。

 まず、PC本体の性能は「フォートナイトが快適にプレイできること」が必須条件。そして、自作経験のないご本人のスキルを考えると完成品やBTO、ベアボーンなども有力候補。ディスプレイやデスク、ゲーミングチェアやデバイスに関しては「生活に溶け込むような自然な感じ」というリクエストがあった。

 また、趣味の写真(一眼レフおよびiPhoneを利用)のバックアップ先も必要。RAIDなどの安全性や手軽さを考えると、これはNASがよさそうだ。また、ネット回線はWiMAXから光回線への移行となる。せっかくなので、「ゲーム」を視野に入れたルーターを導入したいところ。

 状況としては、かなりの予算が必要になりそうだ。

目標
▼フォートナイトが快適にプレイ出来るPCを手に入れる
▼写真の保存とバックアップを行う
▼生活に溶け込むような自然な見た目にする

(1) PC本体
コンパクトでフォートナイトがプレイ可能な性能。光りすぎず派手すぎないデザイン。
我々の感覚ではMini-ITX機が最適な気もするが、完成品含めてサイズ感をSさんと一緒に確認する必要がある。

(2) ディスプレイ
ある程度の大画面で湾曲型。PCの性能が高い場合はゲーム向けの高リフレッシュレートディスプレイも大いにアリ。

(3) デバイス類
ゲーム向け。見た目の好みがあるはずなので要相談。

(4) ゲーミングチェア
黒を基調としたデザインが吉?部屋にどう馴染ませるかがキー。

(5) PCデスク
家具量販店で調達になる可能性。予算が許せばゲーム向けもアリ。

(6) ルーター
ゲーム向けが最適かもしれない。コンシューマ機との相性も考えたい。

(7) NASもしくはRAID環境
設定の簡単さも製品選びの重要な要素。RAIDを組むのは少し敷居が高いのでNASが安泰か?

小型ゲーミングPCをベースに環境構築、試用してみた

 というわけで、今回の記事では「その結果」をご紹介したい………ところだが、色々計算していくと、かなりコストがかかりそうでもあり、今回は「Sさんと相談して選定したものを、メーカーから長めにお貸しいただき、Sさんが感じたことを聞いてみる」というかたちでまとめてみることにした。

 それではその内容を紹介していこう。

 普通のレビューではPC本体やデバイスから紹介するのがセオリーだが、本企画では「部屋に設置する」といった観点での全体像から紹介していく。まずはPCデスクなどの環境からだ。

「ゲーミング家具」で置き場を整備
PC環境の全体像

 さて、そのPC設置場所などの環境構築に使ったのが、バウヒュッテの「ゲーミング家具」。

 ゲーミングチェアならともかく、「ゲーミング家具」ってナニ?っていう人も多いと思うが、要するにゲーミング環境を整えるためのデスクやラック、デバイス設置用のスライダーなどを総称したもの。

 バウヒュッテの説明によると「ゲーマー目線で、ゲーマーが使う事を想定して作られた家具」というコンセプトなのだという。

 今回は、昇降式PCデスク(BHD-1200M-WD)をベースに、後づけキーボードスライダー(BHP-K70-WD)とデスクラック(BHS-1200H-WD)を追加して、左サイドに昇降式L字デスク(BHD-670H-WD)を設置。PC本体からNAS、ノートPC、書類までが収まるようにしてみた。ちなみに今回は、各モデルとも、発売されたばかりの木目モデルでそろえてみた。

 引っ越したばかりのSさんだが、今後物が増えても対応できるキャパを確保したので収納面でも安心なはず。

後づけキーボードスライダー(BHP-K70-WD)。名前の通り、本来はキーボードを収納するものだが、ノートPCを収納するためにつけてみた。耐荷重は8kgなので、全く問題はない。
ベースの机として使用した昇降式PCデスク(BHD-1200M-WD)。簡単なレバー操作で、天面を59cm~80cm昇降できる。
デスク上に設置したデスクラック(BHS-1200H-WD)。ディスプレイ上の「殺風景さ」をフォローできるのが嬉しいところ。
昇降式L字デスク(BHD-670H-WD)。大型のゲーミングPCを設置できるように準備してみたが、結局小さなPCになったので、飲み物置き場として活用することになった模様。キャスターがあるので移動が楽。
木目調のチェアマット(BCM-160F)(右側)。床面へのキズを防止してくれる。この写真は見分けがつきやすいように撮影してみたが、他の写真を見ればわかるように、意外と差が気にならない(性格にもよると思うが)
椅子はやっぱり「ゲーミングチェア」

 長時間ゲームをプレイするなら、やはり欲しくなるのがゲーミングチェア。

 これには、AKRacing Overtureシリーズ(レッド)をチョイスした。

 クッションがしっかりとしているので、長時間ゲームプレイする事が多いSさんの疲労を軽減してくれるはずだ。また、床に傷が付くのを防ぐため、バウヒュッテのチェアマット(BCM-160)を敷いている。木の床は傷が入りやすいので、保護のためにこうしたマットは有効なアイテムだ。

AKRacing Overture ゲーミング・オフィスチェア(レッド)。長時間ゲームをするなら、やはりゲーミングチェアは用意したい。Overtureは、AK Racingのモデルでは値ごろ感のある製品だ。
ゲーミングPCはZOTAC「MEK MINI」、小型でもGeForce RTX 2070を搭載

 PC本体はZOTACの小型ゲーミングPC「MEK MINI」を選んでみた。

 黒を基調としたコンパクトな筐体がSさんのリクエストにマッチしただけでなく、スペックの面でも向こう数年は戦える高性能さも採用を後押しした。コンシューマ機がサイズ基準となったため、小型で高性能なPCを探すのには苦労した。

ZOTACの小型ゲーミングPC「MEK MINI」。容量9リットル強(PS4 Pro×2台分より小容積)という小型筐体にもかかわらず、GeForce RTX 2070やCore i7-8700などといったハイスペックなパーツを搭載している。今回は発売前の製品を長期貸し出しいただいており、発売は「4月中を予定している」(同社)とのこと。

 主なスペックは、CPUが6コア12スレッド動作のCore i7-8700、メインメモリは8GB×2枚の16GB、グラフィックスはGeForce RTX 2070という仕様なので多くのゲームが快適にプレイできるはずだ。ストレージには、高速な240GBのM.2 SSDのほかに、2TBのHDDも搭載されているのでデータの保存も安心だ。

 今後の保守やトラブルの事も考えると、メーカーサポートが受けられる完成品PCは初心者でも安心して導入できるアイテムだと思う。

ディスプレイは湾曲+144HzのMSI「OPTIX G24C」

 一方のディスプレイだが、「PC版ならではの滑らかな描画を楽しみたい」というSさんの希望を満足させるためには、高リフレッシュレートに対応したゲーミングディスプレイが必要だ。「湾曲ディスプレイを使ってみたい」というリクエストもあったので、Sさんと我々がチョイスしたのは、MSI「OPTIX G24C」という23.6インチのゲーミングディスプレイだ。

 解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)で、リフレッシュレートは144Hz、応答速度は1msというゲーミングディスプレイの要点を抑えたスペックながら、実売価格は21,000円前後と最安クラス。湾曲パネルという癖こそあるものの、ゲーミングディスプレイ入門に適している製品といえる。

MSIの湾曲ゲーミングディスプレイ「OPTIX G24C」。144Hz表示に対応するほか、応答時間も1msと短い。ゲーム向けの画質調整機能なども搭載している。
キーボード・マウス・ヘッドセットもMSIでワンセット

 ゲーミングデバイスは、マウス、キーボード、ヘッドセットをMSIからご提供いただいたので、まずはこれを試してもらうことにした。

 ゲーミングマウスやゲーミングキーボード、ヘッドセットは本当に多種多様な製品が発売されており、こだわりがないと「選ぶのさえ大変」になりがちだ。今回のMSI製品は、居並ぶ各社の製品と比べても充分な機能・特徴を持っており、「ひとつの基準」として十分な内容をもっていると思う。ちなみに、Sさんとしてはヘッドセットが特にお気に入りなのだとか。

MSIのゲーミングマウス「CLUTCH GM50」と、ゲーミングキーボード「VIGOR GK60」、ゲーミングヘッドセット「IMMERSE GH70」。マウスは87gという軽さが特徴で、キーボードはCherry MXの赤軸を採用、ヘッドセットはハイレゾ認定の高音質がウリとされている。[関連レビュー]
NASとルーターは「高機能の定番」Synologyで

 NASについては、Synologyおススメの「DiskStation DS918+」を使ってもらうことになった。

 SynologyのNASは、HDD別売タイプの高機能NASでは定番ともいえる。写真の整理に独自ユーティリティ「Synology Moments」を利用することで、バックアップした写真が自動で仕分けされるという機能もあり、管理が楽ちんだ。なお、今回の「DS918+」はその中でもやや高級なモデルに属する4ベイタイプ。ベイの数(≒拡張性や容量)、性能ともに将来の余裕度を十分確保したモデルといえる。

 また、ルーターも同社「RT2600ac」を試用してもらうことにした。今回重要なのは、プロバイダからレンタルされるルーターよりも高性能で、なおかつ「電波が強い」こと。Sさんのお宅は広くはないが、どこに置いても(場合によっては戸棚の中に置いたとしても)充分な通信状況が得られる、というのは重要だ。ちなみにこの製品は、ネット動画を見ながらゲームをしている際、ゲームのパケットに悪影響を及ぼさないようにするという「QoS」の機能も搭載している。なお、現代ではPlayStation 4(の最新世代機)やNintendo Switchも5GHz帯の電波を使うIEEE 802.11acに対応している。2.4GHz帯の電波のみしか使えないルーターでは、電波の混雑が激しく、電子レンジなどによる妨害も受けやすいので、IEEE 802.11acに対応した製品を選ぶのがいいだろう。

SynologyのNAS「DiskStation DS918+」。「普通の人向け」としてはハイエンドな製品だが「設定してしまえば後は同じ」なので、良いものが導入できるのであれば、そのほうが良いだろう。今回は4台のHDDを搭載し、RAID5をベースとしたSynology独自のRAID機能「SHR」を利用している。[関連レビュー]
Synologyのルーター「RT2600ac」。設置状況はご覧の通りだが、もちろん電波状況は問題なかった。[関連レビュー]
iPhoneの写真をバックアップ中のSさん

使い心地はいかに?

 というわけで、PCゲームを満喫できる環境一式を自宅にそろえられたSさんだが、我々が気になるのはその使い心地やコンシューマ機との違いだ。

 これは、実際にフォートナイトをプレイしてもらいながらインタビューしてみた。

フォートナイトをプレイ中のSさん。
マウスとキーボードの操作はコンシューマ機にはない要素。

使ってみてどうでしょう?結構リビングに馴染んでますね。

木目調のデスクはやっぱりいいですね。PCも黒色で余り光らないのにしたので、自然な感じになりますね。

デスクとかゲーミングチェアの使い心地はどうですか?

すごくいいです。デスクもゲーミングチェアも自分好みの高さに合わせているので、長時間ゲームをしてもほとんど疲れないです。長時間ゲームをしてもお尻や背中が痛くならないのはびっくりです。ゲーミングチェアのクッションが快適なのでゲームをしない時もついつい座ってしまいます(笑)

ゲームをプレイした感じはどうですか?

ゲームの画面が滑らかでびっくりしています。画質も奇麗になりましたね。

あれ?144Hzにしては少しもっさりしているような… 設定は何か弄りましたか?

設定?何もしてないですよ。

もしかすると更に滑らかになるかもしれません。NVIDIAのコントロールパネルを開いてみましょう。

~確認する取材班~

予想通りで60Hz設定のままですね(笑)144Hzに設定したのでこれでゲームをプレイしてみて下さい。

(再度フォートナイトをプレイして)あれ?さっきよりも更に滑らかになってません?え?やばい(笑)

実はディスプレイを繋げただけではダメで、設定しないと性能を発揮出来ないんです。

知らなかったです… 繋げるだけでいいと思ってました(笑)

ゲーム側の画質設定もあるので、PCは弄らないといけない所がコンシューマよりも多いんです。

頭がパンクしそうです(笑)でも、Nintendo Switchよりも滑らかだし画質も奇麗なので満足です。ただ、マウスとキーボードを使った操作にはまだ慣れませんね。敵の動きが見やすくなったのはいいんですけど、操作が不慣れなので倒せないのがもどかしいですね。もっと練習します(笑)

ハードな練習が始まりそうですね(笑)キーボードのキーやマウスのボタンを好みの割り当てにしたり、マウスの動き具合(センシ)を調整したりも出来るので、慣れてきたら色々と試してみるといいかもしれません。

色々と設定出来るんですね。慣れてきたら試してみたいと思います。

写真のバックアップは試されましたか?

大活躍しています。iPhoneの写真をアプリを使ってiCloudみたいな感覚でバックアップ出来るのが便利ですね。最初の設定がわからなくて編集部の方に教えてもらいながらやりましたが、設定さえ出来れば後は簡単ですね。自動で写真を仕分けてくれる機能が便利で、猫の写真だけがまとめられていた時は驚きました(笑)

ゲームも写真も悩みが解決した感じですね。今後は何かプレイしてみたいゲームはありますか?

今はとにかくフォートナイトが上手になりたいです。操作に慣れてきたら他のゲームを買おうと思っています。ゲームを少し調べてみたらNintendo Switchにないタイトルがたくさんあったので、目移りして決められなさそうです(笑)

確かにコンシューマ機にはないタイトルがたくさんありますよね。SteamとかOriginみたいな、PCゲームをたくさん取り扱っているアプリをインストールして探してみるといいかもしれません。

その辺の知識もほとんどないので、PCゲームの先輩である友達に聞いてみようと思います。

ゲームのやりすぎにだけは気を付けて下さいね(笑)

実は今日も朝からずっと友達とフォートナイトをやっていて、この後も深夜までやろうかなと思っていました(笑)友達と一緒にやっていると時間を忘れてしまってつい…(苦笑) それはともかく、今回はとてもいい参考になりました。また少し使ってみて、自分にあった環境をどう実現していくか、予算と相談して考えていきたいです。

まとめ

 なかなか多岐に及んだヒアリングと選定作業だったが、今回、ご用意できた環境は、Sさんとしても満足できる快適なものになったようだ。

 話を聞いていて思ったのは「PC本体の性能も重要だが、デスクやチェアなどの周辺機器にもこだわることも重要」といった点だ。

 普段、我々が製品を見ていると、どうしても「性能!」「コストパフォーマンス!」というところを中心に見がちだが、今回は、それとはちょっと違う「物理的な環境」や「安心感」も含めて検討できたのが新鮮だった。

 ゲーミングPCを検討する際、PC本体の性能が重要なのは言うまでもないが、今回のように「性能以外」も重視してみるのも人によってはいいのではないだろうか。

 また、ゲーミングPC=高性能というイメージがあるゆえに、本体サイズも「ミドルからフルタワー辺りが標準的」と捉えている人も多いと思うが、コンシューマ機からPCに移行してきたゲーマーにとっては、筐体サイズの基準は「それまで使っていたゲーム機」なわけで、そうした点では、今回のような「小型ゲーミングPC」の存在価値があるといえるのだろう。