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GeForce RTX 2070搭載の小型ゲーミングPC「MEK MINI」をテスト

~容量約9Lサイズの小型筐体ながら高いパフォーマンス~ text by 清水貴裕

GeForce RTX 2070を搭載するというスペックの高さを備えながらも、容積9リットル強というサイズの小ささを実現しているゲーミングPC「MEK MINI」。ZOTAC公式ダイレクトショップで販売中。ダイレクトショップでの販売価格は248,000円(税別)、

 容量9.18Lという小型筐体にGeForce RTX 2070とCore i7-8700を搭載するZOTACの小型ゲーミングPC「MEK MINI」。なかなか小さい製品だが、いちはやくテストする機会があったので、レビューをお届けしたいと思う。

 ゲーミングPCというと高性能なパーツを採用するため、冷却重視のためミドルタワー以上の大き目なケースを使っているイメージが強いが、「MEK MINI」はその逆で小型ケースに高性能パーツを搭載している点が非常に印象的だ。

 定番ベンチマークを中心にゲームまでを実行しつつ、そのパフォーマンスをチェックしていきたいと思う。

置き場所を選ばない“容量9.18Lの筐体” RGB LEDのカラーカスタマイズも可能

 MEK MINIの筐体サイズは高性能パーツの採用からは想像出来ない、136×260.8×258.8mm (W×D×H)というコンパクトなサイズ。IntelのNUCが流行りだした2014年頃から小型PCのZBOXシリーズを手掛けてきたZOTACだけあり、徹底した筐体のシェイプアップを行ってきた印象だ。

 筐体のカラーは黒を基調としてシックに纏められているが、フロントパネル部分にRGB LEDが搭載されているので、独自ユーティリティの“SPECTRA 2.0”を使って好みのカラーリングを楽しむことが可能だ。

 インターフェース類だが、USBポートの数はフロントとリア合計で6基となっている。フロント部分には唯一のType-CタイプのUSB 3.0ポートが備えられている。SDカードリーダーが標準搭載されているので、動画や写真などを扱うクリエイティブ用途との相性もマシンパワーと相まって良さそうだ。

 小型ケースに高性能パーツを詰め込む事で立ちはだかるのが排熱の問題だが、筐体の側面や天板部分にダクトを設ける事で解決している。側面部分は左右ともに吸気用のダクトが設けられており、天板部分はメッシュ加工が施されている。ケースのエアフローとしては側面や底面から吸気したフレッシュエアを天板や後方から排気する構造となっているようだ。

筐体の正面
筐体の背面。4基のUSB 3.1 Gen1ポート、2基の有線LANポート、ディスプレイ出力を備える
筐体の側面。フィン形状のダクトを備える
フロントのインターフェース部分。ヘッドホンとイヤホン用のコネクタのほかに、SDカードリーダーも搭載されている
電源を入れるとZOTAC GAMINGのロゴと左右のストライプが光る
独自ユーティリティの“SPECTRA 2.0”を使ってカラーリング変更可能

 付属品は、製品マニュアル類、無線LAN用のアンテナ、ドライバUSBメモリ、ACアダプタが同梱されていた。ACアダプタの容量は230Wで、パワフルなマシンを駆動させるには1個で足りなかったからか2個付属していた。個人的に便利だと思うのがドライバUSBメモリで、一々公式サイトからダウンロードする必要がないのはありがたい。

製品マニュアル類、無線LAN用のアンテナ、ドライバUSBメモリ
ACアダプタ

GeForce RTX 2070とCore i7-8700を搭載 フルサイズの性能を小型筐体で実現

 小型ゲームPCの場合、スペースや発熱の問題からモバイル版のGPUを基板上に実装する場合も多い。動作クロックが低いモバイル版のGPUを搭載すれば、性能こそデスクトップ版よりも低くなるが発熱や消費電力の面で有利になるのが理由だ。

 しかし“MEK MINI”はグラフィックスカードベンダーの意地からか、デスクトップ版のGeForce RTX 2070搭載カードがそのまま搭載されている。今回は大がかりな分解が出来なかったため確認出来なかったが、製品ページ等から推測するに“ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 MINI”を搭載していると思われる。

 CPUには6コア12スレッド動作のCore i7-8700が搭載されている。最大動作クロックが4.6GHzと高いため、シングルスレッド性能が重視されるゲームでは高いパフォーマンスを発揮してくれそうだ。コア数の多さも、動画編集などのクリエイティブ用途や、ゲームプレイをしながらの配信といったマルチタスキングで活きてきそうだ。

GPU-Zの実行画面
CPU-Zの実行画面

 メインメモリは標準状態では8GBのDDR4 SO-DIMMが2枚搭載されており、最大で32GBまで増設可能となっている。モジュールを確認してみたが、IC部分に“ZOTAC”と刻印されており、チップのメーカーまでは確認出来なかった。

メモリモジュール
ZOTACとICに刻印されている

 M.2 SSDをチェックしてみた所、公称スペックでは240GBという表記だったが、SSDに貼り付けられたラベルには256GBと記されていた。CrystalDiskMark 6.0.2を実行してみた所、238GBという表記だったので実際の使用可能な容量に近い表記なのかもしれない。

 速度はシーケンシャルリードが1,770.2MB/s、シーケンシャルリードが1,054.8MB/sを記録した。ハイエンドのM.2 SSDと比べると特段速い訳ではないが、SATA SSDと比べると十分高速と言える結果だ。

M.2 SSD
SSDでのCrystalDiskMark 6.0.2実行結果
HDDはSEAGATE製
HDDでのCrystalDiskMark 6.0.2実行結果

定番ベンチマークとゲームで挙動をチェック

 まずは、CPUの挙動をCINEBENCH R15でチェックしてみた。マルチスレッドが1,427cb、シングルスレッドが196cbと正常なスコアが得られた。発熱や消費電力を低減させるために意図的に動作クロックを下げるようなチューニングは行われていないようだ。

CINEBENCH R15のCPUテストの実行結果

 PCMark 10のスコアは6,343を記録。ゲーミングPCの性能計測に適したベンチマークとは言えないが、5回連続で実行してもスコアが6,300台で安定していたのは好印象だ。

PCMark 10 v1.1.1739の実行結果

 排熱不足によるサーマルスロットリングが起きないかパフォーマンス計測は入念に行ってみた。テスト可能な期間が短かったためベンチマーク中心だが、3DMarkを6種類、PC Mark 10、ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク(以下、FF14ベンチ)、FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク(以下、FF15ベンチ)、Apex Legendsをテストしてみた。

 小型機という事で最も気になるのがCPUとGPUの温度だが、室温24℃の環境ではGPUこそ余裕なものの、CPU温度は最大で93℃まで上昇した。3DMark Port Royalが86℃、FF14ベンチが84℃となったが、それ以外では90℃を超えてしまっている。筐体サイズがコンパクトなためCPUクーラーのサイズが足りていないようだ。

 一方GPU温度は、FF14ベンチとFF15ベンチ、Apex Legends実行中に81℃に達した以外は60~78℃とかなり低い値を記録しているのでまだまだ余裕がある。これは、クーラーの冷却力が高いデスクトップ版のカードをそのまま搭載しているからだと思われる。

CPU&GPU温度

 Electronic Educational DevicesのWhatts Up? PROを用いてシステム全体の消費電力を計測してみたところ、最も高い消費電力値を記録したのがFF15ベンチで342Wに達しており、それに3DMark Fire Strikeの320Wが続いている。230WのACアダプタが2基必要なのも納得出来る結果だ。

システム全体の消費電力

 GPUの動作クロックと温度のログをFF14ベンチ実行中に取得してみた。200秒と300秒の間で動作クロックが落ちている部分があるが、これは何回計測しても同じ結果だったので、ベンチマークの仕様と思われる。温度が80℃を超えると1,700MHz前後まで動作クロックが落ちているが、それ以外は1,800MHz前後をキープ出来ている。

 全体的な検証を通じてGPU温度は最大で81℃までしか上がらなかったので、長時間使用時であってもサーマルスロットリングが発生する可能性は低いと思われる。

FF14ベンチ実行中のGPUクロックと温度の推移

 ベンチマークの結果だが、3DMark系はPort RoyalやTime Spy Extreme、Fire Strike Ultraなどの高解像度かつ高負荷なテストでは21~27FPSと苦戦していたが、1,920×1,080ドットで比較的負荷の軽いFire Strikeでは100FPSを超えていたので、全テストのスコアを見た限りでは実ゲームでも1,920×1,080ドットで高FPSを狙えそうな手応えを感じた。

3DMark v2.8.6546のスコア

 FF14ベンチのスコアは、1,920×1,080ドットだと最高品質で17,076を記録し評価は非常に快適となった。3,840×2,140ドットにおいては、標準品質デスクトップPCで14,467を記録し非常に快適という評価、最高品質で6,331を記録しとても快適という評価を得られた。4Kモニタ環境でも快適にゲームを楽しめそうだ。

FF14ベンチのスコア

 FF15ベンチのスコアは、1,920×1,080ドットだと高品質で8,545を記録し評価は快適となった。3,840×2,140ドットにおいては、標準品質で4,162、高品質で3,555を記録しともに普通という評価が得られた。4Kモニタ環境では少し厳しいかもしれないがフルHDモニタとの組み合わせなら問題なさそうだ。

FF15ベンチのスコア

 実ゲームでの挙動は人気沸騰中のバトルロワイヤルゲームのApex Legendsでチェック。垂直同期を無効にした1,920×1,080ドットの解像度で、全てを最低設定にした低、標準状態の中・全てを最高にした高の3パターンで行った。マップはトレーニングマップを採用した。

 標準設定では平均が168FPSを記録。ただ、最小値が123FPSまで落ちているので、144Hzモニタを使う場合は落ち込みが気になるかもしれない。低設定では最小値が148FPSとなったので144Hzモニタでも快適にプレイ出来そうだ。なお、高設定では平均135FPS、最小値が102FPSという結果になっている。

Apex Legendsのフレームレート

コンパクトかつ高性能なPCを求める人向け

 今回テストしたZOTACの「MEK MINI」は、筐体サイズからは考えられないパフォーマンスを持った小型ゲーミングPCだった。

 高負荷時の動作音が少し大きめではあるが、このサイズで高いパフォーマンスを実現しているPCは貴重な存在と言える。

 1,920×1,080ドットの高リフレッシュレートモニタを活かしきれるだけでなく、3,840×2,140ドットでも画質設定を上げ過ぎなければ通用するマシンパワーを持っているので、様々なゲームやシチュエーションに対応可能なので、コンパクトで速いゲーミングPCを検討中の人は要注目な製品だ。