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PCIe 4.0対応でSSDは限界突破! ピーク5GB/sに迫るCFD販売「PG3VNF」の実力に迫る

“こんなに速いのにヒートシンク非搭載”の理由も明らかに text by 石川ひさよし

 AMDの第3世代RyzenおよびAMD X570チップセットの登場によって、PCI Express 4.0が利用できる時代がやってきた。とくにここ数年、速度向上の著しいSSDは、従来のPCI Express 3.0インターフェースが早くもボトルネックになりつつあるため、PCI Express 4.0に対応したことの意義は大きい。快適なPCを求めるユーザーにとって、今一番の注目ポイントと言ってもよいのではないだろうか。今回はCFD販売からリリースされた「PG3VNF」シリーズを検証していこう。

PCI Express 4.0 x4対応SSDの中でも異色のヒートシンクレス

PCI Express 4.0 x4 SSD製品化の鍵、Phison E16コントローラ

 PCI Express 4.0は、これまで利用されてきたPCI Express 3.0の帯域を倍に引き上げたものだ。PCI Express x1レーンという単位で見ると、これまでの3.0では8Gbpsだったが4.0では16Gbpsになる。ビデオカード用のx16レーンの場合は8×16=128Gbpsが16×16=256Gbpsに、そしてNVMe SSDで一般的に用いられるx4レーンの場合は8×4=32Gbpsから16×4=64Gbpsになる。現時点で第3世代RyzenおよびAMD X570チップセットが唯一の製品であり、AMDプラットフォームが先んじた大きなアドバンテージだ。

 とはいえ、インターフェースが速くなったからと言って即性能が上がるわけでなく、たとえば、PCI Express 3.0世代のSSDやビデオカードを4.0対応スロットに挿してもパフォーマンスが上がることはなく、逆も同様。つまり、PCI Express 4.0に対応した製品とプラットフォーム双方が必須である。

 SSDの場合、PCI Express 4.0への対応の鍵となるのはコントローラICだ。PCI Express 4.0対応のコントローラを第3世代Ryzenの立ち上がりと合わせてリリースしてきたのが台湾Phison。同じタイミングでPCI Express 4.0 x4対応SSDが各社から登場しているが、それらはすべてPhison「E16」(PS5016-E16)というコントローラICを採用している。新たなプラットフォームにとって、新機能がリリース時に利用できるかどうかは非常に重要で、せっかくの新機能も対応製品がないとなれば魅力が半減。初手をしくじりうまく普及させることができず消えていったものも少なくない。その意味でも、PCI Express 4.0 x4 SSDが同時に出揃ったことは、AMDにとっても非常に重要な成功と言えるだろう。

CFD販売のPG3VNFシリーズの1TBモデル(左)と2TBモデル(右)のパッケージ。“CFD Gaming”とあるようにゲーマーがターゲットだ

 CFD販売の「PG3VNF」シリーズは、そのPhisonのE16を搭載するM.2 SSDだ。容量ラインナップは500GB、1TB、2TBの3モデル。SSDは、同じモデルでも容量によって性能が変わることが知られているが、PG3VNFシリーズでは、1TBと2TBモデルが同等、500GBモデルがシーケンシャルライトやランダムリード/ライト性能に少し低めの公称値となっている。SSDは大容量であるほど書き換え寿命も長く設定されているので、予算が許すのなら、1TB/2TBモデルを積極的に狙ってみるのもよいだろう。

【PG3VNFシリーズのスペック】
CSSD-M2B5GPG3VNFCSSD-M2B1TPG3VNFCSSD-M2B2TPG3VNF
容量500GB1TB2TB
DRAMキャッシュDDR4 512MBDDR4 1GBDDR4 2GB
シーケンシャルリード5,000MB/s5,000MB/s5,000MB/s
シーケンシャルライト2,500MB/s4,400MB/s4,400MB/s
ランダムリード400K IOPS600K IOPS600K IOPS
ランダムライト550K IOPS500K IOPS500K IOPS
TBW8501,8003,600

 それでは製品の特徴を写真から見ていこう。

第3世代Ryzen、AMD X570マザーボードのリリースに合わせていち早く販売開始されたCFD販売のPG3VNFシリーズ。今回は1TBモデルと2TBモデルを入手、テストを実施した
従来M.2 SSDはヒートシンク付きのものが多かった。とくにPCI Express接続のモデルは発熱に注目が集まりヒートシンク必須ということはユーザーにも周知されているところ。写真はCFD販売の1世代前モデル「PG2VN」シリーズ

 PG3VNFシリーズは、ヒートシンク非搭載であることが特徴に挙げられる。市場を見渡せば、2GB/s超クラスの高速をうたうNVMe対応SSDでは多くの製品がヒートシンクを搭載(または付属)している。つまりヒートシンクが必要となるレベルで発熱するわけだ。ここを間違ってはいけないが、PG3VNFシリーズがヒートシンクを同梱していないのは、「発熱が小さいから」ではない。理由は市場の動向にある。

 現在、高速なNVMe SSDを求めるユーザーが利用するであろう、上位クラスのマザーボードには、標準でM.2ヒートシンクが搭載されていることがかなり多い。さらに、マザーボードにとってM.2スロット部分はデザイン上でも重要。性能面とデザイン面を両立するために、チップセットヒートシンクと一体となった大型のものを搭載する例も多い。こういったマザーボード付属ヒートシンクは、安価な市販ヒートシンクよりもずっと効果的だ。さらに、AMD X570搭載マザーボードではチップセットファンを搭載するモデルがほとんどだ。もちろんチップセットを冷やすことが第一だが、M.2 SSDの冷却も考慮された構造になっている製品もある。

PG3VNFはヒートシンクレスだが、注意書きにもあるとおり、「不要」なのではなく「必須」だ。M.2ヒートシンクを標準搭載するマザーボードが増えたことを反映した製品選択と言える

 マザーボード側がこのような状況なので、ヒートシンク付きのM.2 SSDを購入しても、実装時に外す必要が時として生じる。それなら、ヒートシンクなしでもよいだろうという判断と考えられる。また、ヒートシンクも少なからずコストがかかるため、これを省けば価格を抑えることもできる。実際、実売価格で見ると、「PG3VNF」シリーズはPCI Express 4.0 x4 SSDの中でも最安クラス。ユーザーにとってこの価格メリットも大きな魅力と言えるだろう。

東芝メモリの最新NANDを両面に合計4チップ実装

PG3VNFの1TBモデルの表面と裏面。なお、裏面の製品ラベルは撮影のためにはがしてある

 では基板のレイアウトを詳しく見てみよう。表面(ラベルが貼られていない面)には、M.2端子側から順に、DRAMキャッシュ、コントローラIC、NAND型フラッシュメモリ2枚が実装されている。一方の裏面(ラベルが貼られてる面)はDRAMキャッシュ、NANDが2枚並んでいる。レイアウト自体は従来のM.2 SSDと変わるところはない。なお、500GBから2TBまで全モデルともに、NANDは4チップ構成の両面実装だ。

 Phison E16コントローラICは、シルバーのヒートスプレッダが装着されており、正方形でやや大きめといったところが特徴だろう。これがPCI Express 4.0 x4対応の鍵となるチップだ。

 SSDの速度という点では、NAND型フラッシュメモリの性能も大きい。「PG3VNF」シリーズで採用されているのは東芝メモリ製「BiCS4」。Phisonによれば、PCI Express 4.0 x4 SSDではこのクラスの高性能なNAND型フラッシュメモリが欠かせないとのことで、信頼性・耐久性でも高評価していると言う。なおBiCS4は、東芝メモリの3D NANDでは第4世代製品で、記録方式としては1セルで3bitを扱うことができる、いわゆる「3D TLC NAND」である。

 SSDではDRAMキャッシュメモリも重要だ。搭載されていたのはいずれもSK Hynix製のDDR4-2400メモリ(CL17)。表裏で2チップ搭載されており、容量は1TBモデルが1GB、2TBモデルが2GBとなる。

シーケンシャルリード5GB/s級はホンモノ。ランダム4Kも3.0モデルから向上

 それではベンチマークによってPCI Express 4.0 x4 SSD「PG3VNF」のパフォーマンスを見ていきたい。比較対象としてPCI Express 3.0世代の「PG2VN」(Phison E12+BiCS3の世代のNVMe SSD)も用意した。容量は1TBモデルで統一している。先に指摘しているとおり、転送速度面では、PG3VNFシリーズの場合は、1TB以上のモデルのカタログスペックは同一で、500GBモデルよりも高い。

【検証環境】

CPU: AMD Ryzen 7 3700X(3.6GHz)
マザーボード: ASUSTeK ROG Crosshair VIII Hero(AMD X570)
メモリ: CFD販売 CFD Selection W4U3200CM-8G(PC4-25600 DDR4 SDRAM、8GB×2)
OS: Windows 10 Pro 64bit版

今回のテストにはPCI Express 4.0に対応した環境が必要となるので、AMDのRyzen 7 3700XとASUSTeKのROG Crosshair VIII Hero (WI-FI)を用意した

 まずは速度を見てみよう。テストに用いたのは、CrystalDiskMark v6.0.2 x64版、AS SSD Benchmark 2.0.6821.41776、ATTO Disk Benchmark 4.00.0f2の三つのベンチマークだ。

CrystalDiskMark v6.0.2 x64版の結果。4GB/sを超えるシーケンシャルリード/ライトを実現し、リード側はほぼ5GB/s。ランダム4KのQ8T8も従来モデルを大きく上回る

 CrystalDiskMarkは、PG3VNFが全般的に比較対象のPG2VNの転送速度を上回っている。とくに、ピーク性能であるシーケンシャルリード/ライトは、いずれもPCI Express 3.0 x4の帯域の上限であるおよそ4GB/sを上回っており、「リード5GB/s、ライト4.4GB/s」という公称値に近い。この数値自体は、5回計測の平均なのでシーケンシャルリードが5GB/sを、同ライトも4.4GB/sをわずかに下回っているが、1回の計測値としては上回った結果も出ており、おおむねスペックどおりの性能を発揮すると見てよいだろう。

 また、ランダムリードのQ8T8が比較対象と比べて大きな250MB/s近い向上を見せている。ほかは大きな伸びこそないものの、どれも比較対象よりも速い。ランダムリード4K Q1T1は60MB/sを超え、ランダムライト4K Q1T1も250MB/sを超えた。PCI Express 4.0 x4による帯域拡大だけではなく、コントローラ自体の性能にも向上があるとみてよいだろう。

AS SSD Benchmarkの結果。シーケンシャルリード/ライトも高速だが、T64時のリード/ライトでも従来モデルから大きく向上している

 AS SSD Benchmarkは、CrystalDiskMarkほど高速な結果とはならなかったが、シーケンシャルリードで4.2GB/s、同ライトで3.8GB/sと、大きな向上を見せている。ランダムリード/ライトの4K T1も向上しており、続く4K 64TもこちらはCrystalDiskMarkのQ8T8時よりも向上幅が大きく、とくにランダムライト4K 64Tでもはっきりと向上しているところがポイントになるだろう。

ATTO Disk Benchmarkの結果。左が最新のPG3VNFのもの、右は比較対象のPG2VNのもの。速度のスケールが異なる点に注意

 ATTO Disk Benchmarkでのシーケンシャルリードが4.4GB/s、同ライトは3.97GB/sが最高。このテストでもカタログスペックに近い性能が確認できている。

 このように、転送速度で見るとPCI Express 4.0 x4世代のPG3VNFは、PCI Express 3.0 x4世代のPG2VNに対してシーケンシャルでは1GB/s以上の高速化を実現し、ランダム時でもより速くなっていることが確認できた。

TxBENCHのシーケンシャルリード実行時の温度推移

 続いて、PCI Express 4.0世代で気になる温度を検証してみたい。これはTxBENCHをカスタム実行した際の温度変化を表わしたグラフだ。今回のテストはバラック状態で水冷CPUクーラーを使用してテストしていたが、ここでは、追加ファンなし(マザーボード標準のチップセットファンのみ)、フロントケースファンを想定した位置に12cm角ファン1基セットした状態、SSDに正面から直接風を当てサイドファンを想定した位置に12cm角ファン1基セットした状態の3パターンを試してみた。

 チップセットファンのみの状態では、アイドル時から44℃とやや高めで、ベンチマーク実行から温度が上昇し、ベンチマーク終了時で69℃に達した。マザーボードのヒートシンクを利用してこの値なので、ヒートシンクレスでの運用は避けるべきだろう。今回のテストでは69℃に収まっており、サーマルスロットリングが頻発するような状況ではないが、これはあくまで約5分間ベンチマークを実行した場合のもの。さらに長時間負荷をかけ続けたり、ケース内のエアフローが悪い状態で使用したりといった場合のマージンは十分とは言えない。万全の対策にはケースファンによるエアフローの整備が必要、と考えるべきだろう。

 フロントファン想定のテストでは、直接風を吹きつけるのではなくSSDをかすめるように風を通した配置にしたのだが、それでもアイドル時で5℃低下して39℃に、最高温度は11℃低下し58℃に収まっている。マザーボードのヒートシンク+フロントファン付きケースでの利用であれば、十分安心して使えるだろう。

 3番目の例はSSDの冷却に特化したもので、直接エアフローを当てるためによく冷える。アイドル時は標準状態と比べて11℃も低い33℃、最高温度も20℃低い49℃までしか上がらなかった。側板にファンを追加搭載できるPCケースは、昨今のサイドパネルのクリア化によって数は少なくなったが、SSDの冷却にこだわるならチャレンジしてみる価値はある。また、側面ファンではなく、CPUクーラーをトップフロー型にしてみるのも効果を期待できる。サイドフロー型と比べるとハイエンド製品が少ないが、TDP 100W級CPUに対応する製品もあるので合わせて検討してみたい。

現在最速のM.2 SSDを導入するならPG3VNFシリーズ

 今回、PG3VNFシリーズの1TBモデルの性能検証を行なったが、その速さは期待どおりだ。PCI Express 3.0 x4世代のSSDは、そのインターフェース仕様によって“4GB/sの壁”を超えることはできない。これを超えられるのが新世代のPCI Express 4.0 x4のSSDだ。

 現時点では、他社製品を含めてPhison E16コントローラであるところは共通なので、ファームウェアの違いで多少の性能差が生じる可能性があるとしても、ほぼ同等の性能になるだろう。ただ、PG3VNFシリーズはヒートシンクをマザーボード付属のもの、あるいは市販のものに任せることで、価格面でより安価に収めることに成功している。狙っている、あるいはお使いのAMD X570マザーボードがM.2ヒートシンクを搭載している場合、PG3VNFシリーズが理想的な組み合わせと言えるのではないだろうか。

[制作協力:CFD販売]