特集、その他
シンプルかつよく冷えるCORSAIRの新型ケース「4000」シリーズで3タイプのPCを組んでみた
最新トレンドを網羅し、質重視から見た目重視まで対応可能 text by 竹内 亮介
2020年11月16日 00:01
CORSAIRと言えば、簡易水冷型のCPUクーラーやメモリ、電源ユニット、PCケース、各種ゲーミングデバイスなど、さまざまな製品を扱う総合PCパーツメーカーの一つである。とくにPCケースは、自作PC業界のトレンドをいち早く取り入れた魅力的な製品を数多くラインナップしている。
新たに登場した「4000」シリーズは、CORSAIRらしい先進性に加え、組み立てやすさやメンテナンス性を大きく高めるギミックを満載した新型PCケース。冷却性能の違いやLEDファンの有無で3モデルを用意しており、多彩な構成に対応できることも特徴の一つだ。
今回はその機能性や特徴を紹介するとともに、オススメの作例プランも紹介しよう。
エアフロー重視のシャーシを採用した新型ケースイルミネーション対応モデルなど3ラインナップで展開
CORSAIRの4000シリーズでは、用途に合わせ3モデルをラインナップしている。
もっともスタンダードな構成の「4000D Tempered Glass」では、前面と背面に12cm角ファンを備え、メッシュ構造の天板、強化ガラス製の側板を備える。カラーはブラックとホワイトの2色が用意されている。
「4000D Airflow Tempered Glass」は、前面パネルがメッシュ構造になっており、その名のとおりエアフローを強化して冷却性能を高めたバリエーションモデル。こちらもカラーはブラックとホワイトの2色が用意されている。
「iCUE 4000X RGB Tempered Glass」は、前面にアドレサブルLEDを組み込んだ12cm角ファンを3基搭載するほか、フロントパネルに強化ガラスを採用しより、LEDイルミネーションが楽しめるモデル。カラーはブラックとホワイトの2色。
いずれも、通常のATX対応マザーボードに比べて幅が広めの「ExtendedATX」対応マザーボードが組み込める。前面には5インチベイや3.5/2.5インチシャドウベイを搭載せず、そのスペースには大型の水冷用ラジエーターや、多数のケースファンが取り付けられるようになっている。
前面のスペースを自由に使えることもあり、長さ360mmまでのビデオカードに対応。最新のGeForce RTX 3080/3090を搭載するハイエンドカードも余裕を持って組み込めるだろう。CPUクーラーも高さ17cmまでのモデルに対応するなど、大型のパーツを余裕を持って組み込める拡張性の高さにも注目したいところだ。
まずはスタンダードな4000D Tempered Glassで外観をチェックしていこう。前述のとおり5インチベイを搭載しないので、前面パネルはフラットだ。このパネルの周囲にはスリットがあり、吸気はここから行なう。なお4000D Airflow Tempered Glassではメッシュ構造の前面パネルを採用しており、より効率的な空気の流れを作れる。
天板はどのモデルもメッシュ構造になっており、内部にホコリが入り込むのを防ぐ防塵フィルタがかぶせられている。磁石でスチール製の天板にピタッと貼り付くタイプだ。前面近くのフロントポートは、USB 3.2 Gen1(5Gbps)ポートとType-CのUSB 3.2 Gen2(10Gbps)ポートの構成で、最近のマザーボードで搭載例が増えてきたUSB 3.2 Gen2対応ヘッダピンを利用できる。
左側板は強化ガラス製、右側板はスチール製という構成は全モデルで共通。どちらの側板も背面でネジ止めされているが、背面にちょっと張り出したプレートに手を当てて左右に開くと、側板は外れるようになっている。
前から見て左側面に近い位置には拡張カードブラケットを装備しており、これはオプションのライザーケーブルや拡張スロットを利用し、ビデオカードを縦置きで組み込む時に利用するものだ。側面の強化ガラス越しにビデオカードのデザインを楽しみたいときに使う。
底面には比較的高さのある足を装備し、接地面と底面の隙間を広く取っている。底面の吸気口からもたっぷり空気を取り込めるようにするためのギミックだ。また背面から簡単に引き出せる防塵フィルタも装備しており、内部にはホコリが入り込みにくい。
PCが組みやすくシンプルな内部構造、裏面のケーブル整理のしやすさもポイント
ここからは、実際にいくつかのPCパーツを組み込みながらギミックなどを紹介していこう。5インチベイがないので内部がすっきりしているのは、前述のとおり。マザーボードやビデオカードなどのメインパーツの組み込みで、何かに干渉する可能性はほとんどない。
天板には最大で280mmの水冷用ラジエーターや、2基までの14/12cm角ファン、前面には360mmまでの水冷用ラジエーターや2基までの14cm角/3基までの12cm角ファンが組み込める。冷却拡張性については文句の付けようのないスペックだ。
若干注意点があるとすれば、天板側に280mmクラスのラジエーターを搭載した際のクリアランスだ。通常サイズのメモリを使用している場合は問題ないが、大型ヒートシンクを搭載しているメモリや、LED付を備えたモデルなどは干渉する可能性がある。
240mmクラスのラジエーターであれば、超大型ヒートシンクを搭載したメモリでなければ干渉しないので、LEDイルミネーションなどを楽しみたい場合は240mmクラスの水冷CPUクーラーを選ぼう。
マザーボードベースの裏面はケーブル配線用のスペースになっている。マザーボードベースから側板までの厚みは約2.5cm確保されており、太い電源ケーブルを這わせても右側面側にはみ出すようなことはまずない。
ケーブルをまとめるためのガイドや、そこにまとめておくための使いやすい面ファスナーを装備しており、マザーボードベース裏面での配線作業が非常にしやすい。いろいろと細かくケーブルを整理しなくてもビシッと美しくまとまるのは、初心者に限らず上級者でもありがたい。
電源ユニットカバーの下には、電源ユニットの設置スペースと、3.5インチシャドウベイユニットがある。シャドウベイは着脱可能で、なおかつ取り付け位置を2段階に調整できる。これは360mmラジエーターなどを搭載した際の干渉を避けるためと、奥行きの長い電源を搭載した際の取り回しをよくするための配慮だ。
今回は奥行きが16cmの「RM850x」を組み込んでみたが、シャドウベイを背面側に設置した場合、電源ユニットとシャドウベイの隙間は実測値で約6cm。シャドウベイを前面側に設置した場合の隙間は約11cmだった。ケーブル整理でこの隙間を活用したいなら、前面側に移動したほうが余裕がありそうだ。
3.5インチHDDを使う予定がないなら、このシャドウベイ自体を外し、広々とした空間を自由に使えるようにするのもよいだろう。
この状態なら360mmクラスの大型ラジエーターと大型の電源ユニットを両立できるし、イルミネーションパーツを制御するLEDハブなどをここに固定するのもオススメだ。こうした自由度の高さこそが、4000Dシリーズの魅力とも言える。
シンプルで光らない質実剛健なPCを組むなら「4000D Tempered Glass」
ここからは、各モデルごとにオススメの構成例を簡単に考えてみた。
まずはシリーズのベースモデルにあたる4000D Tempered Glassでは、LEDを搭載しない質実剛健なパーツを集め、玄人好みの構成を考えてみた。
CPUクーラーは、漆黒のヒートシンクに2基の12cm角ファンを組み合わせ、冷却性能を高めた「A500 Dual Fan CPU Cooler」だ。CPUは12コア24スレッドに対応する高性能な「Ryzen 9 3900X」だが、問題なく冷却できる。
PCケース内部がかなりゆったりとしていることもあり、容積の大きなA500や大型のCPUクーラーを組み込んでも、PCケースの部品と干渉が発生することはない。またシンプルな構成なので、マザーボードベース裏面でのケーブル整理も楽だった。
内部に組み込んだパーツのブラックを基調とした色合いと、4000D Tempered Glassのホワイトモデルのツートンカラーが落ち着いたイメージを醸し出す1台だ。往年の自作PCユーザーには光らせずに質重視のPCが好まれる傾向があるが、こうした用途にもピッタリのケースといえる。
機材構成 | |
---|---|
CPU | AMD Ryzen 9 3900X (12コア/24スレッド) |
マザーボード | MSI MAG B550 TOMAHAWK (AMD B550チップセット) |
メモリ | CORSAIR VENGEANCE LPX CMK16GX4M2B3200C16 (DDR4-3200 8GB×2) |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 2080 SUPER Founders Edition |
SSD | CORSAIR Force Series MP600 CSSD-F1000GBMP600 (1TB/PCIe 4.0) |
電源 | CORSAIR RM850x (850W/80PLUS Gold) |
CPUクーラー | CORSAIR A500 Dual Fan CPU Cooler |
ハイエンド構成のPCをがっちり冷却するなら「4000D Airflow Tempered Glass」
4000D Airflow Tempered Glassはエアフローに優れるモデルなので、より高い冷却性能を備えるCPUクーラーを組み合わせたい。
そこでこのモデルでは、4000D Tempered Glassの構成からCPUクーラーを変更し、水冷型の「iCUE H115i ELITE CAPELLIX」を天板に組み込んだ。4000D Tempered Glassとはフロントパネルのみが違うケースになるが、フロントパネルがメッシュになっている分の効果があるのかもチェックしてみた。
水冷クーラーを天板に組み込む場合、iCUE H115i ELITE CAPELLIXのラジエーターにケース内部の空気を当てて冷却することになる。新鮮な外気をいかに取り込めるかが冷却の鍵になるわけだが、前面にメッシュ構造を採用する4000D Airflow Tempered Glassなら、外気をたっぷりと取り込んで冷却効果を高めることができる。
前面パネルがメッシュになっている効果があるのか、内部の構成を揃えて4000D Tempered Glassと冷却効果を比較したのが下のグラフだ。
CPUクーラーやファンをAUTOの設定にした場合、閾値に合わせてファン回転数などが制御されるため、エアフローに優れるCORSAIR 4000シリーズは差がほとんど見られない。そこで、ファン回転数を100%にした状態でテストは行ってみた。
アイドル時などはファン回転数が100%の状態でも差が出ないが、高負荷時のCPU温度は4℃も下がった。フロントがメッシュになっている分、吸排気能力が優れていることがわかる。ちなみに、テスト中に前面パネルに手をかざすと、4000D Airflow Tempered Glassでははっきりと風の流れを感じられる。
最新のCPUやGPUは冷却能力に合わせ余力があればより高クロックで動作する仕組みが取り入れられている。ポテンシャルの高いPCパーツの性能を引き出したいなら、4000D Airflow Tempered Glassのような冷却重視のPCケースがお勧めだ。
機材構成 | |
---|---|
CPU | AMD Ryzen 9 3900X (12コア/24スレッド) |
マザーボード | MSI MAG B550 TOMAHAWK (AMD B550チップセット) |
メモリ | CORSAIR VENGEANCE LPX CMK16GX4M2B3200C16 (DDR4-3200 8GB×2) |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 2080 SUPER Founders Edition |
SSD | CORSAIR Force Series MP600 CSSD-F1000GBMP600 (1TB/PCIe 4.0) |
電源 | CORSAIR RM850x (850W/80PLUS Gold) |
CPUクーラー | CORSAIR iCUE H115i ELITE CAPELLIX (280mmラジエーター) |
LEDイルミネーションを存分に楽しむなら「iCUE 4000X RGB Tempered Glass」
iCUE 4000X RGB Tempered Glassは、前面にLEDファンを搭載し、フロント/サイドともに強化ガラスパネルとなっているモデルなので、イルミネーションにこだわった作例を考えてみた。
CPUクーラーは240mmラジエーターの「Hydro Series H100i RGB PLATINUM」に変更し、メモリはRGB LED搭載の「Vengeance RGB PRO」を搭載している。
LEDイルミネーションに関しては見てもらうのが一番だろう。今回CORSAIRのパーツでかためているので、組むだけでもしっかり統一感のあるPCに仕上がる。
今回は白いケースに黒系のPCパーツの構成にしているが、黒いケースに黒系のPCパーツであればLEDの光る部分がより強調されるデザインにもなる。また、CORSAIRは白いPCパーツも多くラインナップしており、白いケースに白いPCパーツでかためれば光がふわっと広がるようなデザインのPCも構築できる。
イルミネーション制御に関しては、ユーティリティソフトのiCUEを利用することで、LEDファンや水冷クーラー、メモリなどを一括で管理できる。統一感のあるイルミネーションを楽しみたいのであれば、メーカーを揃えてしまうのがお勧めだ。CORSAIRのユーティリティはLEDを1個単位で制御することも可能なので、その気になればかなり凝ったイルミネーションパターンの作成も可能だ。
ちなみに、CORSAIRはゲーミングデバイスも数多く手がけている。マウスやキーボード、マウスパッドもLEDを搭載したモデルを組み合わせ、きらびやかなイルミネーションPCにしてみるのも楽しいだろう。もちろんゲーミングデバイスもiCUEから制御可能で、PCと連動させて使うことができる。
機材構成 | |
---|---|
CPU | AMD Ryzen 9 3900X (12コア/24スレッド) |
マザーボード | MSI MAG B550 TOMAHAWK (AMD B550チップセット) |
メモリ | CORSAIR Vengeance RGB PRO CMW16GX4M2C3200C16 (DDR4-3200 8GB×2) |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 2080 SUPER Founders Edition |
SSD | CORSAIR Force Series MP600 CSSD-F1000GBMP600 (1TB/PCIe 4.0) |
電源 | CORSAIR RM850x (850W/80PLUS Gold) |
CPUクーラー | CORSAIR Hydro Series H100i RGB PLATINUM (240mmラジエーター) |
初心者から上級者まで幅広く対応できるCORSAIRの4000シリーズ
このように基本モデルでも冷却性能は十分に高い上、高性能な冷却パーツのポテンシャルを100%活かせるモデルを用意する4000Dシリーズは、高性能で発熱の大きなパーツが増えてきた昨今の自作PC事情をしっかりとキャッチアップしたPCケースと言えるだろう。
余裕のある内部構造、自由度の高いシャドウベイの配置構造、マザーボードベース裏面で配線を行なうときに便利な各種ギミックなど、組み込みやすさやメンテナンス性を高めるための仕組も各所に備えている。PCケースは長く使っていくものだけに、メンテナンス性の高さは強力なメリットとなる。
初めて自作PCにチャレンジする初心者から、強力なパーツを多数組み込んで最高の自作PCを作りたいという上級者まで、幅広くお勧めできる優れたPCケースと言ってよいだろう。
[制作協力:CORSAIR]