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ランダムアクセスも速い、Rocket Lakeで7GB/s級PCIe 4.0 SSDを使ってみた

Core i7-11700KでSamsung SSD 980 PROの性能を引き出す text by 坂本はじめ

Rocket Lake-Sの登場でIntel環境でもPCI Express 4.0対応SSDの性能が問題なく発揮されるのか、今回テストしてみた。

 Intel第11世代Coreプロセッサのデスクトップ向けCPU「Rocket Lake-S」は、CPU側のPCI ExpressがGen 4に対応し、さらにNVMe SSD接続用のPCI Express 4.0×4レーンもCPUに追加された。

 これにより、Intelのデスクトップ環境でも、PCI Express 4.0(PCIe 4.0)対応SSDがフルスペックで利用できるようになったわけだが、7GB/s級の転送速度を実現する最新の性能を引き出すことはできるのだろうか。Samsung 980 PROの2TBモデルを使って検証してみた。

CPUがPCIe 4.0対応となったIntel最新の「Rocket Lake-S」

 Rocket Lake-Sの名で知られる、Intelのデスクトップ向け第11世代Coreプロセッサでは、CPUとGPUのアーキテクチャが刷新されており、これに伴う形でCPUに統合されているPCI Expressも更新され、ビデオカード接続用の16レーンとNVMe SSD用の4レーン、あわせて20レーンのPCI Express 4.0を備えることとなった。

Rocket Lake-Sの上位モデルCore i7-11700K。CPUには合計20レーンのPCIe 4.0を備えている。
Intel Z590チップセット搭載マザーボード「ASUS TUF GAMING Z590-PLUS WIFI」。PCIe 4.0に対応した拡張スロットとM.2スロットを備えている。

 この新設計に合わせて、Rocket Lake-S向けとなるIntel 500シリーズチップセットを搭載するマザーボードでは、CPUが備えるPCI Express 4.0を利用するための拡張スロットやM.2スロットを用意。Intelのデスクトップ環境でもPCIe 4.0 SSDを利用する環境が整った。

 今回のテストでは、8コア16スレッドCPU「Core i7-11700K」と、Intel Z590チップセット搭載マザーボード「ASUS TUF GAMING Z590-PLUS WIFI」を用いた環境の検証結果を紹介する。

7GB/s級のPCIe 4.0 SSD「Samsung 980 PRO」で最新Intel環境の速度を計測

Samsung SSD 980 PROの2TBモデル「MZ-V8P2T0B/IT」。

 Rocket Lake-S環境でテストするPCIe 4.0 SSDには、7GB/s級の速度を実現するNVMe SSD「Samsung 980 PRO」から、2TBモデルである「MZ-V8P2T0B/IT」を用意した。

 8nmプロセスで製造されたSSDコントローラ「Elpis」と、3bit MLC(TLC)方式の第6世代V-NANDを採用するSamsung 980 PRO。その最大容量モデルであるMZ-V8P2T0B/ITは、リード最大7,000MB/s、ライト最大5,100MB/sと、同シリーズ内では最高速度を実現しているモデルだ。

 なお、今回の速度計測に使用しているテスト機材は以下の通り。OSインストールディスクは別に用意し、純粋に最高速が計測できる環境を用意した。

7GB/s級の性能をしっかり引出せる!Rocket Lake-S環境でのPCIe 4.0×4接続時のSSD性能

 それでは、Rocket Lake-SがCPUに内蔵するNVMe SSD向けのPCIe 4.0 x4レーンを使って、Samsung 980 PROと接続した際のパフォーマンスからチェックしていこう。

 ASUS TUF GAMING Z590-PLUS WIFIであれば、CPUに近い側のM.2スロットがPCIe 4.0 x4対応となっており、こちらのスロットに接続することでPCIe 4.0 SSD本来の性能で使用することができる。PCIe 4.0接続になっているかなどの状態は、CrystalDiskInfoなどで確認できる。

CPU側のPCIe 4.0レーンへ接続時した際のステータス。対応転送モードはPCIe 4.0 x4になっている。
ASUS TUF GAMING Z590-PLUS WIFIの場合、CPU側に近いM.2スロットがPCIe 4.0 x4対応となっており、ヒートシンクにも記載がある。

 今回実行したベンチマークテストは「CrystalDiskMark 8.0.1」と、Samsung純正ユーティリティ「Samsung Magician」の2種類。結果は以下の通りだ。

CrystalDiskMarkによるベンチマーク結果(PCIe 4.0接続)
Samsung Magicianによるベンチマーク結果(PCIe 4.0接続)

 CrystalDiskMarkのシーケンシャル速度(SEQ128K Q32T1)では、リード最大7,100MB/s、ライト最大5,230MB/sという、スペック通りの転送速度を実現。アクセス時のレイテンシが影響するランダムリード(RND4K Q1T1)の速度も、約90MB/sという優れた数値を記録している。

 Samsung Magicianでも、リード7,073MB/s、ライト5,148MB/sを記録。Rocket Lake-S環境は、現在最速クラスのPCIe 4.0 SSDから、スペック通りのパフォーマンスを引き出せると言える結果が得られた。

チップセット側にPCIe 4.0 SSDを接続すると3.5GB/s前後が最高速にZ590チップセット側のレーンに接続した場合のパフォーマンス

 Rocket Lake-SではCPU側のPCI ExpressがGen 4に対応した一方で、チップセットであるIntel 500シリーズチップセットが備えるPCI Expressは引き続きGen 3となっている。このため、チップセット側に接続されるM.2スロットでは、PCIe 4.0 SSDを搭載してもPCIe 3.0までの速度に制限される。

 実際に、今回用意した環境でチップセット接続のM.2スロットにPCIe 4.0 SSDを搭載した場合、CrystalDiskInfoでは「対応転送モード」の項目が「PCIe 3.0 x4」になっていることが確認できる。PCIe 4.0 x4の帯域幅が約8GB/sであるのに対し、PCIe 3.0 x4は約4GB/sなので、PCIe 4.0 SSDをPCIe 3.0対応のスロットに搭載した際は速度に制約がある点は知っておこう。

チップセット接続時のステータス。Z590チップセットはPCIe 3.0までの対応となるので、対応転送モードはPCIe 3.0 x4になっている。
ASUS TUF GAMING Z590-PLUS WIFIの場合、下段側のM.2スロットはPCIe 3.0×4レーン対応となる。

 チップセット側にSSDを接続した際のCrystalDiskMarkの実行結果をみてみると、シーケンシャルリードは最大3,564MB/s、ライト最大3,456MB/sとなった。Samsung Magicianでも速度としては同様の傾向となっており、PCIe 3.0 x4の帯域幅に制限されるかたちになっている。

CrystalDiskMarkによるベンチマーク結果(PCIe 3.0接続/チップセット側に接続)
Samsung Magicianによるベンチマーク結果(PCIe 3.0接続/チップセット側に接続)

 チップセット経由での速度は、PCIe 3.0 x4接続のNVMe SSDとしては最高クラスのものではあるが、PCIe 4.0 SSDが持つ本来の性能を引き出すのであれば、CPU側のPCIe 4.0 x4に接続できるM.2スロットに搭載する必要がある。

 とはいえ、PCIe 3.0 SSD最速クラスのパフォーマンスが出ることも事実なので、将来プラットフォームをアップグレードした時のことや、最速級PCIe 3.0 SSDとの価格差を考慮した上で、チップセット側に接続するSSDにPCIe 4.0 SSDを選択してみるのも良いだろう。

ランダムアクセスも高速なIntelのPCIe 4.0 SSD環境Rocket Lake-Sなら7GB/sクラスのSSDを使用しよう

 今回のテストによって、PCI Express 4.0に対応したRocket Lake-Sは、現在最速クラスのPCIe 4.0 SSDであるSamsung SSD 980 PROの性能をしっかり引き出せることが確認できた。ただし、PCI Express 4.0に対応しているのはCPUに直接接続されるPCI Expressレーンのみなので、PCIe 4.0 SSDを搭載する際は、M.2スロットの対応インターフェイスに注意したい。

 IntelのRocket Lake-SがPCI Express 4.0に対応したことで、IntelとAMD両メーカーのメインストリーム向けプラットフォームで、PCIe 4.0 SSDが利用できる環境が出揃ったことになる。PCI Express 4.0対応プラットフォームの導入を検討しているのであれば、あわせてPCIe 4.0 SSDの導入も検討してみてもらいたい。

[制作協力:Samsung]