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拡張性/ラジエータの対応/基本的な冷却性能を比較。オススメの買い得ケースはこれだ!!【買い得ケース品評会④】

DOS/V POWER REPORT 2023年夏号の記事を丸ごと掲載!

大型パーツやストレージの対応状況は?

 まずは空冷CPUクーラーの対応を比較してみよう。サイドフローの空冷CPUクーラーは、ハイエンドであっても高さが16~16.5cmというモデルが主流だ。その観点から言うと、今回のモデルなら安心して利用できそうだ。

 ただしハイエンドビデオカードは厳しい。と言うのも買い得ケースは奥行きが短いモデルが多いため、35cmを超える大型のビデオカードは、物理的に収納できないことも多いのだ。

Lian Liの「LANCOOL Ⅲ RGB」は、実売価格が25,000円前後の高機能スタンダードケース
左がS200 TG ARGB Snow Edition、右がLANCOOL Ⅲ RGBだ。奥行きや高さがかなり違うことが分かる

 今回取り上げた中では、CC560とZ1 PLUSはやや筐体が大きめで、ビデオカードの拡張性は高い。

 ドライブベイはどのモデルも少なめで、あまり大きな違いはない。5インチベイを使うかどうかで決めるのも一つの考え方だろう。

 ちなみに比較対象として取り上げたLANCOOL Ⅲ RGBの対応状況は、圧巻の一言。買い得ケースとはサイズがかなり違うため、大型パーツにも対応しやすいのだ。

買い得ケースの拡張性を比較

簡易水冷型CPUクーラーへの対応は?

 ケースファンの搭載数は、PCケースの冷却性能を左右する重要な要素である。また最新世代の上位CPUを使いたいなら、簡易水冷型CPUクーラーはほぼ必須だ。そこでこれらの対応状況を右の表で整理した。標準ファンの数が多いのは、12cm角ファンを4基搭載するVALOR AIR JP2とCC560。そのほかのモデルでも3基搭載し、この価格帯としてはかなり充実している。

ラジエータの取り付け場所やサイズを比較

 簡易水冷型CPUクーラーはどのモデルでも対応するが、組み込めるサイズには違いがある。前面に36cmクラスのラジエータを付けられるのは、VALOR AIR JP2とCC560、S200 TG ARGBの3モデル。天板に28cmクラスラジエータを付けられるのはZ1 PLUSのみだ。

 LANCOOL Ⅲ RGBは14cm角ファンを4基搭載するほか、最大で42cmクラスのラジエータに対応するなど、拡張性では大きなアドバンテージがある。

前面ファン裏側の切り欠き部分は、ラジエータを組み込むためのスペースだ
マザーボード上辺と天板に余裕があると、ラジエータやファンがマザーボードのヒートシンクに干渉しにくい

実際にパーツを組み込んだときの冷却性能は?

 CPU温度がもっとも低かったのは、VALOR AIR JP2だった。前面に3基の12cm角ファンを備えるだけではなく、吸気を妨げにくいデザインの前面パネルを採用しており、新鮮な外気をCPUクーラーのまわりにたっぷり供給できるからだろう。

 二番手グループはS200 TG ARGBとZ1 PLUSで、逆に振るわなかったのはP7 NEOとCC560の2モデル。P7 NEOの前面パネルはフラットパネル、CC560では一部のみメッシュ構造というデザインを採用する。ファンの構成自体はほかのモデルと大きな違いがないことを考えれば、前面からの吸気が足りないことが推測される。

 GPU温度についても、CPU温度と同じ傾向になった。微差だがVALOR AIR JP2がトップで、吸気量の多さもさることながら、前面ファンとビデオカードの位置が非常に近く、新鮮な外気がGPUクーラーの周囲に行き渡りやすいことがこの結果につながったのだろう。

 さらにS200 TG ARGBとZ1 PLUS が続き、P7 NEOとCC560はやや振るわない。前面パネルのデザインが、冷却性能に大きな影響を与えることがよく分かる結果となった。ただ、CPU温度やGPU温度が高い2モデルにしても不安を感じるレベルではない。ゲームPC向けの構成でも問題はないだろう。

 2023年冬号のパーツ100選でゴールドレコメンドを獲得したLANCOOL Ⅲ RGBは、CPU温度とGPU温度の両方で70℃を切るという圧巻の成績を収めた。とはいえ実売価格は2倍以上であり、今回取り上げた買い得ケースを選ぶ価値は十分にある。

オススメの買い得ケースはこれだ!!
ADATA Technology「VALOR AIR JP2」。CPUとGPUの冷却性能が光る1台。ただし大型ビデオカードは使いにくいので、パーツの吟味は必要だ
ZALMAN Tech「Z1 PLUS」。冷却性能は二番手グループで、大きめなビデオカードを利用しやすい。天板に28cmクラスのラジエータを付けられるのもうれしい
【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド)
マザーボードASUSTeK ROG STRIX B550-F GAMING(AMD B550)
メモリCFD販売 W4U3200CM-8G(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカードGIGA-BYTE GeForce RTX 3070 EAGLE OC 8G(NVIDIA GeFor ce RTX 3070)
SSDWestern Digital WD Black SN750 NVMe WDS500G3X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)500GB]
電源ユニットCorsair RM750x(750W、80PLUS Gold)
CPUクーラーサイズ MUGEN5 Rev.B(サイドフロー、12cm角)
室温24.2℃
アイドル時OS起動10分後の値
高負荷時OCCT 11.0.21のPOWER SUPPLYテストを10分間実行したときの最大値
Fan Xpert 4の設定Auto
温度使用したソフトはHW Monitor 1.50で、CPUはTemperaturesのPackage、GPUはTemperaturesのGPUの値

[TEXT:竹内亮介]

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