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薄型/軽量/静音化したMSIの「GeForce RTX 4070 Ti GAMING X SLIM WHITE 12G」、性能をほぼ落とさず改良
スリムになって500gも軽量に、今の技術で扱いやすく再設計 text by 坂本はじめ
- 提供:
- MSI
2023年11月16日 00:00
MSIの「GeForce RTX 4070 Ti GAMING X SLIM WHITE 12G」は、GPUの特性に合わせてカードの設計を最適化することで、従来モデルからの小型軽量化を達成した新型の高性能ビデオカードだ。
クーラーを小型/軽量化すれば冷却性能は当然落ちるので、デメリットもある。そこで、今回は従来モデルから何が変わったのか、性能にどの程度の差が出るのか、新旧モデルで比較してみた。新モデルが改良版と言える仕上がりなのかチェックしてみよう。
スリムになったMSIのGeForce RTX 4070 Ti搭載ビデオカード3スロット未満で扱いやすいカードに
MSI GeForce RTX 4070 Ti GAMING X SLIM WHITE 12Gは、NVIDIAのハイエンドGPU「GeForce RTX 4070 Ti」を搭載するビデオカード。VRAMには容量12GBのGDDR6Xメモリを搭載している。
白を基調としたカラーリングを採用しており、3基の冷却ファンを備える大型GPUクーラー「TRI FROZR 3」を搭載したカード本体のサイズは307×125×51mmで、約2.5スロットを占有する。
映像出力端子はHDMI 2.1aとDisplayPort 1.4a(3基)で、バスインターフェイスはPCIe 4.0 x16。カードの消費電力は285Wで、補助電源コネクタにはPCIe 16ピン(12+4ピン)を採用する。
付属品として、PCIe 8ピン×2系統からPCIe 16ピンに変換するアダプタと、カード重量を支えるサポートブラケットが同梱。これらの付属品も本体と同じように白くカラーリングされており、特に電源変換アダプタはコネクタ部まで白で統一された珍しいものだ。
MSI GeForce RTX 4070 Ti GAMING X SLIM WHITE 12Gが搭載するGeForce RTX 4070 Tiは、GPUのブーストクロックが標準の2,610MHzから2,730MHzにオーバークロックして搭載されている。
このブーストクロックは、MSI純正ユーティリティの「MSI Center」にて動作モードを「エクストリーム」に切り替えると2,745MHzまで上昇する。
前モデルと並べるとよくわかる新モデルの「スリム化」設計の効果一回り小さくなって500gも軽量化
ここからは、従来モデルにあたる「GeForce RTX 4070 Ti GAMING X TRIO WHITE 12G」との比較を通して、GeForce RTX 4070 Ti GAMING X SLIM WHITE 12Gが達成したスリム化がどの程度のものなのか確認してみよう。
誤解が無いように説明しておくと、GeForce RTX 4070 Ti GAMING X SLIM WHITE 12Gはコンパクトさを追求したビデオカードではない。搭載GPUであるGeForce RTX 4070 Tiに対して、新たにクーラーや基板などの設計を最適化したモデルだ。
カード長については、従来モデルの337mmから307mmへと30mm短くなった。また、カードの幅についても、従来モデルの140mmから125mmへと15mm短くなっている。
これらは数字として見ると大した差に見えないかもしれないが、カード長が330mmを超えるとタワー型ケースでも組み込めない場合や、他のパーツの搭載に制限が生じる場合も増えるので、このカード長短縮には大きな効果がある。
また、カードの幅についても、ケースと干渉しにくくなったり、内部ケーブルの取り回しがしやすくなったりと、短縮されることでのメリットがある。
カードの厚さについては、従来モデルの62mmから51mmへと11mm薄くなった。これにより、占有スロット数も従来モデルの4スロット(カード厚3.2スロット)から3スロット(カード厚2.5スロット)に減少している。
このスリム化により、ビデオカードが被ることで利用できなくなるスロット数が4から3に減少しているので、ビデオカード以外の拡張カードを使用したいユーザーにとっては大きな改善だ。また、2.5スロットという3スロットをフルに埋めない厚さは、隣接する拡張カードとの間に通気用の空間を確保することもできる。
カードサイズを縮小した効果は重量にも反映されている。従来モデルが実測1,598gであったのに対し、スリム化した新モデルは実測1,087gと、約500gもの軽量化を実現していた。
重量級のビデオカードは、それを支えるPCI Expressスロットに大きな負荷を与える。この負荷に対処すべく、スロットを金属補強したマザーボードや、カードの重量をケースのシャーシで支えるためのサポートブラケットが登場している訳だが、カード自体が軽くなるならそれに越したことはない。
ビデオカード全体から見れば大型ではあるのだが、GeForce RTX 4070 Ti GAMING X SLIM WHITE 12Gは従来モデルからかなり小型軽量化されていることが分かる。
スリム化によってより多くのケースに組み込みやすくなり、重量負荷とその対策の必要性も減少した分、従来モデルより扱いやすいビデオカードになったと言えるだろう。
スリム化しても基板設計や冷却システムは高級仕様分解してビデオカードの中身をチェック
ここからは、カードを分解しながら基板や冷却システムがどうなっているのかをチェックしていく。スリム化されたモデルがしっかり作り込まれたものなのかを見て行こう。
実際にカードを分解してみると、カード全体の長さに対してGPUやVRAMを実装する基板はかなり短いことが分かる。
GeForce RTX 4070 Ti GAMING X SLIM WHITE 12Gでは、カード後部のバックプレートに大きな通気口を設けることで、冷却ファンの風がスムーズにカード裏面側に抜けるようデザインされている。
基板はMSI独自のカスタム品を採用しており、onsemiの45A DrMOS「NC302150」を使用した電源回路(VRM)が実装されている。
GPUクーラーの「TRI FROZR 3」は、GPUとの接触面に銅製プレートを採用しており、このプレートはサーマルパッドを介してVRAMとも接触している。また、ヒートシンク各部に貼り付けられたサーマルパッドで、DrMOSをはじめとするVRMの部品とも接続。冷却ファンによる風だけでなく、ヒートシンクでも基板上の部品を冷却している。
これは、TRI FROZR 3が一定温度以下でファンを停止するセミファンレス機能「ZERO FROZR」をサポートしているため、ファン停止時にも各部品が冷却されるよう考慮したものだと思われる。
GeForce RTX 4070 Ti GAMING X SLIM WHITE 12Gに採用されている基板や冷却システムは、スリム化しつつも高品質な部品と設計で構成されている。上位GPU搭載カードかつMSIの“GAMING”型番を冠するモデルらしいクオリティと言えるだろう。
ヒートシンクが小さくなってもゲームで性能差は3%未満スリム化によるデメリットを最小に抑え込んだ新モデル
ここからは、スリム化された新モデルが従来モデルに対してどれだけパフォーマンスを発揮できるのか、小型化しつつも性能面への影響をどれだけ小さくできているのかを確認してみよう。
GeForce RTX 4070 Ti GAMING X SLIM WHITE 12Gと従来モデルの比較には、Core i7-14700Kを搭載したIntel Z790環境を用意した。
新旧ビデオカードは、どちらも温度リミット=84℃、電力リミット=285Wに設定されているのだが、GPUブーストクロックについては従来モデルの方が15MHz高い2,745MHzに設定されている。この点については特に変更せず、標準動作仕様のまま比較を行う。
また、従来モデルの「GeForce RTX 4070 Ti GAMING X TRIO WHITE 12G」はDual BIOSを搭載しており、動作モードを「GAMING」と「SILENT」で切り替え可能なのだが、今回は標準の「GAMING」でテストを行った。その他のテスト環境は以下の通り。
ゲームパフォーマンスの差は0.2~2.3%で影響はかなり小さい
ゲーム系のテストとして「サイバーパンク2077」、「エーペックスレジェンズ」、「3DMark:Speed Way」で新旧のパフォーマンス比較を行った。
結果は、サイバーパンク2077で1.7~2.3%、エーペックスレジェンズで0.2~2.2%、3DMark:Speed Wayで約1.0%、それぞれ従来モデルが新モデルを上回るパフォーマンスを発揮している。
GPUブーストクロック自体が高く設定されており、なおかつより大型のGPUクーラーを搭載していることを考えれば、従来モデルが新モデルを上回るのは想像に難くない。ただ、見た目の大きさなどからするとむしろ新旧の性能差は小さいように感じられる。
クリエイター向けアプリの性能差は0.8~3.9%、こちらもデメリットはかなり小さいものに
クリエイター向けアプリのテストとして「Cinebench 2024」、「Blender Benchmark」、「Adobe Photoshop Camera Raw:AIノイズ除去」でパフォーマンス比較を行った。
結果は、Cinebench 2024のGPUテストで約3.1%、Blender Benchmarkで1.1~3.9%、Adobe Photoshop Camera RawのAIノイズ除去で約0.8%、それぞれ従来モデルが新モデルを上回った。
一部のテストでゲームテストより大きい3~4%程度の差がついたものの、やはり物理的なサイズ差の割に性能差は小さいというのが率直な感想だ。
高負荷をかけてビデオカードの温度/動作クロック推移をチェックスリム化した新モデルの意外な静粛性にも注目
最後にサイバーパンク2077を30分連続でプレイした際の動作をHWiNFO64 Proで計測し、GPU温度や動作クロックを比較してみた。テスト時のグラフィックプリセットは「レイトレーシング:ウルトラ」(DLSS3有効)で、画面解像度は4K/2160p(3,840×2,160)、室温は約25℃。
新モデルの動作温度はGPU温度が平均67.4℃(最大69.4℃)で、メモリ温度が平均73.6℃(最大76.0℃)となっており、それぞれ平均65.2℃(最大67.8℃)と平均62.3℃(最大64.0℃)の従来モデルより高くなっている。
GPUクロックについては新モデルが平均2,775MHz(最大2,790MHz)、従来モデルが平均2,865MHz(最大2,880MHz)となっており、いずれもスペック上のブーストクロックを超えるブースト動作を維持しており、最大値と平均値のズレが少ないことからそれぞれの最大限に近い動作であったことが伺える。なお、メモリクロックはどちらも2,626MHz(=約21Gbps)で変化していない。
スペック上では僅か15MHz(約0.5%)の違いに過ぎない新旧モデルのGPUクロックは、実際の平均GPUクロックでは90MHz(約3.2%)の差がついていた。この差が性能テストでの差に繋がっていたのだろう。
スペック値よりも最大クロックの差が大きかったことを除けば、新モデルより大きいGPUクーラーを備える従来モデルの方がGPUとメモリをより冷却できている順当な結果に思えるかもしれないが、ここで注目したのがファンスピードだ。
100mmファン×3基の従来モデルのファンスピードが平均1,737rpmなのに対し、90mmファン×3基の新モデルは平均1,282rpmと、かなり低いファンスピードで動作していた。当然、動作音に関しては従来モデルの方が明らかに大きく、小口径で低回転数の新モデルはかなり静粛性の高い動作を実現していた。
これはGPUクーラー自体の冷却性能というより、標準のファン制御設定による影響が大きい。Dual BIOSで動作モードを切り替えられる従来モデルはSILENTモードを選択すれば静粛性重視の動作に変更できるが、Dual BIOSを省略した新モデルは静粛性と冷却性のバランスをより重視する方向性で最適化されている。この点は新モデルの方がよりスマートで快適だ。
スリムでスマートになったMSIの白い新型GeForce RTX 4070 Ti最適化設計でメリットも増えた1枚
従来モデルの発売から約半年の時を経て発売されたMSI GeForce RTX 4070 Ti GAMING X SLIM WHITE 12Gは、搭載GPUであるGeForce RTX 4070 Tiの特性に最適化することで、従来モデルに迫る性能と高い静粛性を実現しながら、大幅なスリム化を実現したハイエンドモデルだ。
組み込み可能なケースの幅が明らかに広がるスリム化が多くのユーザーにとってメリットとなることはもちろんだが、想像を超えて優秀な静粛性を実現していた点が特に印象的だった。従来モデルより明らかに洗練された設計のビデオカードであると言える。
白いPCパーツとしてのクオリティも高いGeForce RTX 4070 Ti GAMING X SLIM WHITE 12Gは、白いパーツで高性能なゲーミングPCの構築を狙うユーザーにとっても魅力的なビデオカードだ。見た目にこだわりたいユーザーほど、従来モデルよりケースを選ばなくなったスリム化の恩恵を得られるだろう。