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モバイルだけどパワフル。ビジネスPCはパワフルであってほしいという人に向けたMSI「Modern 14 H D13M」を試す

Core i7+32GBメモリ搭載で軽量かつ軽快な性能 text by 石川 ひさよし

 高性能の自作PCに慣れていると、ビジネスシーンでモバイルノートPCに触れた時、その性能に物足りなさを感じてはいないだろうか。遅筆の筆者が言っても説得力に欠けるが、「ビジネスはスピード」だ。もしもモバイルノートPCに高性能CPUを搭載したなら……ゲーミングではない、統合GPUを用いたビジネスモバイルノートPCの範疇で高性能を目指したのが「Modern 14 H D13M」である。

 ハードなPCファン、自作PCユーザーも多い本誌読者の皆さんの中には、ビジネスユーザーでもあるという方も多いと思われる中、PCパーツ分野でもよく知られるMSIの“パフォーマンス志向のビジネスノート”にはグッと心惹かれるかもしれない。

ビジネスにバリバリ使えるノートとは何か示してくれる性能志向のモバイルノートPC

 まず「Modern 14 H D13M」の外観から見てみよう。キービジュアルデザインははフランス人の女性アーティスト「ロレイン・ソレ」氏とのコラボレーション。ただ、パリ風のカフェでお仕事したい人向け、のようなふんわり柔らかなイメージと言うよりも、かなり硬派で現代ビジネスの課題にバリバリ挑めるPC、といった印象だ。

Modern 14 H D13M

そしてクラシックブラックのボディにシャープなラインとエッジでムダがない。個性を主張するのではなく、出来る大人のビジネスマンを印象付けるタイプのデザインだ。

天板はツルツルなフラットで中央にビジネス製品向けのMSIロゴ

 また、本機のテーマの一つが“サステナブル”で、ボディ外装には再生プラスチックを用いている。プラスチック外装と言うと安っぽいものをイメージされがちだが、「Modern 14 H D13M」では側面やキーボード面に格子状のパターンを設けて見た目や触感に違いを生み出し、安っぽさを打ち消している。わずかな凹凸によってさわり心地はかなりよい。また、触れた時の表面積が違うためだろうか、真冬のこの季節でも金属外装のようなヒヤッと感がやわらぐ。手汗によるベタッと感も解消されるのかサラサラとした感触だ。

格子状のパターンが見た目(表面の反射)や触感(凹凸を感じる)に違いを生み出している
パームレストにはPOST CONSUMER RECYCLEDを略したPCRロゴ。環境負荷のことも配慮した製品だ

 それでは、ハードウェアのスペックを細かくチェックしていこう。今回試す「Modern-14-H-D13MG-5029JP」はCPUにCore i7-13620Hを採用している。ハイパフォーマンス向けを意味する「H」付きというところがポイントだ。

 Core i7-13620HはPコア6基、Eコア4基、トータル10コア16スレッドのCPUで、動作クロックはターボ・ブースト利用時の最大周波数が4.9GHz、キャッシュも24MB搭載している。これらのスペックをモバイルノートPCの定番「U」付きの第13世代Core i7と比較すると、トータルコア数では同じでも高性能Pコアの比率が多く、キャッシュは2倍といったスペックだ。

 また、パフォーマンスを最終的に決定付ける動作クロックについては、最大クロックは同程度かそれ以上、スペック表には出にくい平均動作クロックは消費電力がやや高い分U付きモデルより高くなる。バッテリー駆動時間とはトレードオフになるが「強力なスペックで与えられた仕事を素早く処理できるCPU」というわけだ。グラフィックス機能(GPU)としては、Intel UHD Graphics for 13th Gen Intel Processorsを内蔵する。

今回試用したModern-14-H-D13MG-5029JPはCore i7-13620Hを搭載
Core i7-13620Hの統合GPUはIntel UHD Graphics

 なお、「Modern 14 H D13M」のラインナップにはCore i9-13900H搭載モデルもあり、そちらはIntel Iris Xe Graphicになる。GPUの実行ユニットもCore i7-13620Hが64基に対してCore i9-13900Hは96基となるので強力。CPU部分についてもCore i9-13900HではEコアが4基増えて14コア20スレッド、最大クロックも5.4GHzに引き上げられる。さらなるパフォーマンスを求める方はCore i9モデルも検討したい。

 試用したモデルの搭載メモリはDDR4-3200で容量は32GB。一般的なビジネスノートPCでは16GBの製品が多いが、ちょっと重めの文書作成や画像加工などの作業を行ったり、何か作業をしながらWebブラウザーのタブを大量に開いたりすると、とたんにメモリ不足でPCが重く感じるようになることも。パフォーマンスと心の余裕が十分あるとPC使用時のストレスからだいぶ解放されるので、標準で32GBものメモリを搭載している本機の仕様は歓迎すべきものだ。ストレージはNVMe SSDで512GB。

標準でデュアルチャネルのDDR4-3200メモリを32GB搭載
CrystalDiskMarkのスコア。シーケンシャルリードについては5GB/sクラス。同ライトは2.8GB/sクラス

 本体サイズは313.7×236×18.6mm。幅と奥行きについては14型クラスのモバイルノートPCとしては一般的なもの。以前の13.3型と比べてやや奥行き方向が拡大しているのは、ビジネスノートPCを中心にディスプレイのアスペクト比のトレンドが16:10比になってきているため。一方で幅については13.3型クラスとほぼ変わらない。

 厚みについては、モバイルノートPCとしてはわずかに厚め。発熱量が大きいH型番のCPUを冷やすため、冷却機構も一般的なモバイルノートPCよりも大きいからだと考えられる。とはいえ、それでも20mm以下なので、パワフルなノートPCとしては十分に薄いと言える。

接地面積はよくある14型ノートPCと同じくらいだが、厚みはややある印象

 重量は約1.6kg。モバイルノートPCの主流は1.5kgを切るあたりだが、パワフルなH付きCPUを冷やす冷却機構をこのサイズに収めるのはかなり苦心したのではないだろうか。パフォーマンスとサイズ感のバランスは優秀なものと言える。

 14型ディスプレイは先のとおり16:10アスペクト比で、解像度は1,920×1,200ドット。フルHDよりも1画面で表示できる情報量が縦方向に増えているため、Webブラウザーやオフィスアプリなどの生産性向上に寄与してくれるだろう。

 リフレッシュレートはスタンダードな60Hz。また、ノングレアで室内照明の反射が抑えられている。長時間使用時の目へ優しさを意識したチョイスだ。

ディスプレイは1,920×1,200ドット。ノングレアで長時間業務時の目の疲れを軽減

 上部ベゼルにはWebカメラも搭載。92万画素なのでそこまで高画素ではなくあくまでビジネスメインだ。プライバシーシャッターは物理的なつまみを左右に操作して行うタイプ。マイクも内蔵している。

物理プライバシーシャッター付きのWebカメラも搭載
ディスプレイパネルが180度開けることもビジネスノートPCでの要チェックポイント

 キーボードは10キーレスの日本語配列。この配列のものは最近よく見るが、Prt ScとDeleteの間に電源ボタンがあり、一部のキー、たとえばスペースの左右にある無変換・変換など部分的にキーとキーの間のスペースが詰まったものがあるタイプだ。とはいえそこまでクセが強いわけではないので、慣れれば大丈夫だろう。

 LEDバックライトも搭載していて暗い室内での操作もしやすい。また、タッチパッドも比較的大きく、実測で120×75mmほどあった。

最近のモバイルノートPCとしてはよくある配列。スペースキー左右の無変換・変換や右AltとCtrlなどが密接しているタイプ。主要なキーピッチは約19mm
Prt ScとDeleteの間に電源ボタン
タッチパッドは120×75mmと大きめ

 底面は半分ほどの範囲に通風孔がある。パワフルなH付きのCPUを冷却するため、この内側に一般的なモバイルノートPCよりも高性能な冷却機構が搭載されている。なお、背面側からPC内部にアクセスでき、MSI公認サポート店でメモリ増設を行うことも可能だ。

底面は本体内部の熱を排気するために広範囲に通風孔が設けられている。ユーザーの手でメモリやストレージの交換や増設はできないが、MSI公認サポート店でメモリの交換・増設サービスを受けることが可能

有線LANもある充実のインターフェースメモリも多めでストレスフリー

 最近のモバイルノートPCと言えばインターフェースをミニマムまで削減する傾向にあるが、「Modern 14 H D13M」はむしろここを充実させており、USB Type-Aも豊富だし、有線LAN端子(RJ45)も備えている。ここは一般的なモバイルノートにはなかなかないポイントだろう。

左側面にはDCジャック、Thunderbolt 4(Type-C、USB PD対応)、USB 5Gbps(Type-A)、オーディオ入出力
右側面にはセキュリティロックスロットと通風孔があるのみ
背面にはHDMI、USB 5Gbps(Type-A)×2、有線LAN(1GbE)を備える

 このように充実したインターフェース、とくに有線LANがあるのはワイヤレス通信事情が悪い地域の出張などでは重宝しそうだ。また、Thunderbolt 4はUSB PDに対応し、90W以上(Type-C出力)という条件を満たすUSB PD充電器であればUSB PD給電も可能とのことだ。

 ここで付属の充電器に注目したい。この充電器はDCジャックに挿して利用するものだ。75×75×29mmほどのサイズで、定格90.1Wとしてはコンパクト。ACアダプタ本体223.6g(実測)、付属ケーブルを含めると285.5g(同)といった重量だ。手持ちの100WタイプUSB PD充電器(Type-C×2、Type-A×2)と比べたが、重量差は50g程度USB PD充電器のほうが軽かった一方、サイズ感はほぼ同じだった。

 荷物を少しでも減らしたいなら汎用性の高いUSB PD充電器が便利だが、付属の充電器もサイズはかなり頑張っている。1つしかないType-Cを塞がずにすむというのもメリットなので、こちらを携帯するというのも十分以上にアリだろう。

90W出力と考えれば75×75×29mmほどのサイズ、223.6gの重量はかなりコンパクトで、持ち運び用としても実用的

 このほか、無線ネットワーク機能としてはWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3がある。搭載するCPU/チップセットの世代的に最新Wi-Fi 7でこそないが、現在広く普及しているWi-Fi 6/6E世代に対応していれば、仕様としてはまったく不足ない。

 搭載するバッテリーの容量は53.8Whr。おおよそモバイルノートPCとしては妥当なところ。パワフルなH型番のCPUを採用する本製品だが、バッテリー駆動時間の公称値は6時間(JEITA 3.0 動画再生時)。ビジネスタイム中の半日程度の外出であれば、充電器を持ち歩かなくても大丈夫そうだ。

 さらに、MSI独自の統合管理アプリ「MSI Center」で、バッテリー駆動時の動作設定を、USER Scenario「スマートオート」、電源設定「バランス」に、ディスプレイ輝度50%付近にそれぞれ設定し、PCMark 10 Battery Test、Modern Officeシナリオを計測すると8時間1分を記録した。このテストは、ワープロや表計算を用いたバッテリーベンチマークで、かなり“現実的なPC利用時の負荷”に近いテスト。これで8時間を記録できているなら、「定時」の勤務であればバッテリーだけで乗り切れそうですらある。

 もちろん製品の性格上、ACアダプタを携行してフルパワーで仕事をするのが王道ではあるが、もしもバッテリー駆動しなければならないとしても悲嘆するほどではなさそうだ。

PCMark 10 Battery TestのModern Officeでは8時間1分駆動を記録した

 また、電源設定で触れたが、本製品には統合管理「MSI Center」が導入されている。パフォーマンス設定についてはおよそ「スマートオート」にしておけばよいが、より性能を稼ぎたいなら「エクストリーム」、バッテリーを節約したいなら「Super Battery」を手動で選べばよい。ほか、搭載するスピーカー&マイクのノイズキャンセリング、リカバリーメディアの作成などもここから行える。

統合ユーティリティのMSI Centerが導入済み。ハードウェア設定やリカバリーメディア作成などがここで行える

CPU特化が素直に現れたベンチマークビジネスPC的にはここが◎要素

 最後にベンチマークでパフォーマンスの計測結果を見ておこう。

 PCMark 10 Extendedスコアは5,944ポイント。基本性能やホーム用途想定のテストであるEssentialsが10,577ポイント、ビジネス用途想定のProductivityが8,116ポイント、クリエイティブ用途の性能を示すDigital Content Creationが6,641ポイント。

PCMark 10の計測結果

 Digital Content Creationの項目のうちGPU性能の影響が大きく出やすいものについては、高性能なGPUを別途搭載するゲーマー/クリエイター向けPCに一歩譲るが、これは製品としての“性格付け”や“専門性”の違い。高いCPU性能を活かした全般的な性能のよさ、汎用性の高さは、モバイルも重視したビジネスノートPCのカテゴリーに入る製品としては、このテスト結果は優秀な部類に入ると見てよいだろう。

 CPU性能を見るCINEBENCHでは、R23のMulti Coreが13078pts、Sigle Coreが1843pts、2024のMulti Coreが724pts、Single Coreが109ptsだ。トータルスレッド数が多いCore i7-13620Hを搭載することで、R23のMulti Coreは10000ptsを軽く超え、U付きCPUよりも高クロックなのでSingle Coreも2000ptsに近づく。ここまでの2つのベンチマークは、本製品のコンセプトである「CPU性能の高さで仕事をこなす」がよく現れた格好だ。

CINEBENCH R23
CINEBENCH 2024

 一方で、統合GPUであるため3Dグラフィックについては標準的だ。グラフィックス重視の3Dゲームの性能を計る3DMarkのTime Spyは1,499ポイント、Fire Strikeは4,239ポイントにとどまるが、軽量なWild Lifeで11,110ポイントに。仕事の合間に軽めのゲームを少々楽しむなら、という性能を理解しておこう。

Time Spy
Fire Strike
Wild Life

「レスポンス」や「クオリティ」を求めるビジネスに最適

 「Modern 14 H D13M」の硬派なところはすべてお伝えできたと思う。モバイルに軽い、薄いではなく、性能を求める方向けのビジネスノートPCだ。日々業務に追われ、PCに処理をさせた時の待ち時間にイラ立ちを感じるほどスピード感を重視される方に適している。将来的には、GPUやNPUの性能も重要になってくると思われるが、今の今、現状でのPC利用においてはまずはCPUの基本性能が重要だ。クロックの高い第13世代Coreベース、それもH型番のCoreプロセッサーでモバイルを実現した本製品は、十分にその条件をクリアしていると言える。

 今回試用した「Modern-14-H-D13MG-5029JP」は、上記のようなスペックに加え、Microsoft Office Home & Business 2024がプリインストール。さらに、4月10日までの“新生活応援キャンペーン”期間中は144,800円(税込)とさらにお買い得な価格になっており、コスパ視点の優秀さはなかなかの1台ではないだろうか。