トピック

自由度と拡張性をコンパクトな筐体に凝縮!作って遊べるCooler Master「QUBE 540」を試す

“作る楽しさ”が満喫できる趣味性の高いPCケース text by 竹内 亮介

 Cooler Masterの「QUBE 540」は、大きめのサイズのパンチング加工が施された外装が特徴となるミドルタワーケースだ。またこの外装の「穴」を利用してヘッドセットなどを引っかけるフックを装着できるほか、3Dプリンタで出力した自作アイテムを装着できるという珍しい機能にも対応する。

 また天板や前面、底面に36cmクラスのラジエーターを装着でき、長さ41.5cmまでの大型ビデオカードも組み込めるという非常に高い拡張性を備えながらも、最近のミドルタワーケースとしては比較的コンパクトで置き場所に困らないことにも注目したい。今回はこのユニークなPCケースについて、さまざまな面から検証していこう。

自分好みの“カスタムパーツ”を追加できる楽しさ

 QUBE 540の外観で特に目立つのは、前面、天板、右側板に開いている無数の穴だ。メッシュ構造と言ってもよいが、一般的なメッシュ構造の通気口と比べると穴のサイズがかなり大きく、内部には防塵フィルターが組み込まれている。

Cooler Master「QUBE 540」。実売価格は12,000円前後。今回試用した製品カラーはホワイト系の“Moonstone”
【主なスペック】
フォームファクタExtendedATX(幅28cmまで)
前面USBType-A×2、Type-C×1
標準搭載ファン12cm角 1基(背面)
搭載可能ファン14cm角 2基または12cm角 3基(前面)、
12cm角 1基(背面)、
14cm角 2基または12cm角 3基(天板)、
14cm角 2基または12cm角 3基(底面)
搭載可能ビデオカードの長さ415mm
搭載可能CPUクーラーの高さ172mm
搭載可能ラジエーターの長さ36cmクラス(前面、天板、底面)
ベイ3.5インチシャドー 1基(2.5インチシャドー 2基と兼用)、
2.5インチシャドー 4基
本体サイズ
(W×D×H、突起部含む)
225×438.5×492.1mm
重量8.1kg
カラーStardust Iron(ブラック系)、Moonstone(ホワイト系)

 こうした多数の穴によりエアフローが強化されるため冷却性能に優れている。そしてQUBE 540の「穴」にはもう1つ、さまざまな“カスタムパーツ”のマウント穴という役割もある。標準ではヘッドホンなどを吊り下げられるフックが付属しており、この大きめの穴を使って自由な位置に取り付けられるようになっている。

 なお、この付属のフックはサンプル的な位置付け。真骨頂は3Dプリンターで出力した“カスタムパーツ”だろう。自作したパーツをこのマウント穴に取り付けることで、ケースに機能を追加したり、外観を好きなようにデザインしたりできる。いわゆる「MOD PC」のベースにしやすいのもQUBE 540の大きな特徴と言える。

ヘッドセットなどを引っかけられるフックが付属する。フックは前面や天板、右側板の穴を使ってマウントする構造なので、好きな場所に設置できる

 Cooler Masterでは、3Dプリンター用の設計データを公開するなど、MOD PCへの取り組みも積極的だ。外観に関してQUBE 540ほどの自由度を提供するPCケースは、今までちょっと見たことがない。

QUBE 540の製品Webページでは、ユーザーが3Dプリンターで出力したさまざまな作例を紹介している
3Dプリンター用のモデルが多数掲載されている「Printables」では、QUBE 540(と姉妹機のQUBE 500)用のカスタムパーツも共有されている

3Dプリンターでカスタムパーツを作ってみた!

 QUBE 540のレビューを実施することになった時期と前後して、インプレス社内に3Dプリンターが設置された。そこで今回は、Cooler Masterがインターネット上で公開しているカスタムパーツのサンプルを、AKIBA PC Hotline!編集部が実際に出力してみた。

弊社に設置されている「Bambu Lab P2S」。今回は単色で出力したが、マルチカラーにも対応

 基本的な作業の流れだが、3Dプリンター用モデルの公開サイト「Printables」にCooler Masterが掲載しているSTLファイルを、3Dプリンターのアプリに読み込ませるだけ。サポート材の配置など、細かい部分の処理はすべて3Dプリンター側が処理してくれるので、ユーザーがやるべき作業自体は非常に簡単だった。

出力中の様子。今回は3つのカスタムパーツを一気に出力し、所要時間は3時間弱。単純に配布データを単体でそのまま出力するだけなら、データを自力でいじる必要はない
出力直後のカスタムパーツ。サポート材などの不要部分は素手でもペリペリはぎ取れる。ケースに差し込んで固定する部分(フックやピンの類)は、バリをきれいに処理したほうが着脱がスムーズ

 ヘッドフォンハンガー(QUBE 540に付属しているものと同じもの)、スマートフォンなどを置けるミニ棚、カップホルダーの3つをまとめて出力したが、なかなか複雑な形状の立体物が徐々に作られていく様子は今更ながらかなり楽しい。

完成したカスタムパーツ
取り付けるとこんなイメージ

 今回はサンプルをそのまま出力するだけだったが、3Dモデルをいじったり作ったりできる知識やスキル、QUBE 540をどんな風に便利あるいは楽しくしたいかなどのアイデアがあれば、QUBE 540のカスタムの世界は無限に広がるはず。チャレンジ精神でぜひ挑戦してみていただきたい。

実用的なものからデザイン面のアップグレードまで、カスタマイズは多種多様

内部構造のカスタマイズ性の高さも魅力

 パンチング加工外装を活かしたデザインと自由度もさることながら、内部構造も興味深い。筐体サイズは、金属製の細長いスタンドを外すと縦置き時の奥行きと高さは42.5cm、幅は22.5cm。簡易水冷型CPUクーラーに対応するため大型化の傾向にある最近のミドルタワーとしてはかなりコンパクトながら、横幅28cmまでのExtended ATX対応マザーボード、最大で41.5cmまでのビデオカードを組み込める。

パーツ組み込み前のケース内部。前面にあるのは着脱可能な電源ユニットのマウンターだ。内部にはほぼ構造物はなく、パーツの組み込みは自由に行える
フロントポートはUSB 3.2 Gen 1(USB 5Gbps)対応Type-Aコネクター×2、USB 3.2 Gen 2(USB 10Gbps)対応Type-Cコネクター×1基、オーディオ入出力(ヘッドフォン+マイク)×1という構成。前面、天板、右側板には大きめの穴が無数に空いており、通気口として機能する
フロントポートは、前面および天板に各4カ所設けられたフロントポート用のマウントスペースに取り付けられる。マザーボードのサイズ、ファンや電源ユニットの位置関係、ケース自体の置き場所や使い勝手を考えて移動できる

 また36cmクラスのラジエーターを前面、天板、底面に組み込める冷却拡張性をサポートするほか、ファンやラジエーターを組み込むためのファンマウンターは着脱可能なプレートになっている。PCケースの外でラジエーターやファンなどをファンマウンターに固定してから内部に戻すという手順なので、組み込み作業やメンテナンスもしやすい。

天板と底面にファンマウンターのプレートを装備している。天板のマウンターは12cm角×3対応で、底面のマウンターは14/12cm角×2対応
ファンマウンターには着脱可能な防塵フィルターが取り付けられている

 コンパクトながらこうした高度な拡張性を実現するための工夫として、ATX対応マザーボードを利用する場合は電源ユニットを前面に組み込む構造になっている。一方、Mini-ITXやmicroATX対応マザーボードを利用する場合には、一般的なミドルタワーケースと同じく底面に設置することもできる。さらに、電源ユニットのサイズ(奥行きやケーブルをさばくためのスペースなど)に応じて取り付け位置の微調整が3段階で可能、組み合わせるファンやラジエーターなどの状況に合わせてフロントポートの取り付け位置を変更可能、といったように、利用するパーツに合わせて内部構造の変更も可能だ。

ATX対応マザーボードを利用する際は、電源ユニットを前面に固定する
電源ユニットは電源ユニットマウンターに入れてケースに取り付ける

 このほか縦置き時は天板のハンドルを持ってラクラク移動できたり、HTPC(Home Theater PC)のように横置きで利用できたりするなど、最近のミドルタワーケースではあまり見られない機能をサポートするのも、QUBE 540の特徴の1つだ。

縦置き時のハンドルを利用することで、PCをラクに移動できる。パーツを組み込んだ状態の重量でこのハンドルをぐっと握って持ち上げても、強度的な不安感はなかった
ミドルタワーケースとしては珍しく、強化ガラスの側板を上にした状態で横置きでも利用できる。縦置き時の底面に取り付けられている4つの足を、右側面パネル(横置き時の底面)に移動することも可能

ケーブルを挿しにくい場所をチェックして先回りの作業を

 ここからは実際にパーツを組み込む際の作業性などをチェックしていく。今回組み込むパーツは、完成時の性能としてはミドル~アッパーミドルのゲーミングPCを想定し、CPUはAMDのRyzen 7 9700X、ビデオカードにはNVIDIA GeForce RTX 5070搭載カードをチョイスした。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 7 9700X(16コア32スレッド)
マザーボードASRock B850 Pro RS WiFi(AMD B850)
メモリDDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2)
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX 5070 SOLID
SSDM.2 NVMe SSD 2TB(PCI Express 5.0 x4)
PCケースCooler Master QUBE 540(ATX)
電源ユニットCooler Master ELITE GOLD 850
(850W、80PLUS GOLD)
CPUクーラーCooler Master MasterLiquid Atmos II 360 LCD
(簡易水冷型、36cmクラス)
ケースファンCooler Master SickleFlow Edge 360 ARGB
(12cm角×3、連結タイプ)
AMD Ryzen 7 9700X
ZOTAC GAMING GeForce RTX 5070 SOLID

 簡易水冷型CPUクーラーは、Cooler Masterの「MasterLiquid Atmos II 360 LCD」、電源ユニットは同じくCooler Masterの「ELITE GOLD 850」、ファンの数が足りないことを想定して、吸気ファンとして底面にCooler Masterの「SickleFlow Edge 360 ARGB」を用意した。

水冷ヘッドに液晶モニターを搭載する「MasterLiquid Atmos II 360 LCD」。ラジエーターサイズは36cm、一体型の3連ファンを搭載する
出力850W、80PLUS Gold認証取得、ATX 3.1/PCIe 5.1対応の「ELITE GOLD 850」。奥行き14cm、フルモジュラータイプの扱いやすい電源ユニット
12cm径ファンを3基搭載する「SickleFlow Edge 360 ARGB」。12cmファンをつなげたものではなく、3連ファンが一体になった製品

 組み込み作業時、まずは天板と底面に固定されているファンマウンターのプレートを外す。さらに前面に固定されている電源ユニットのマウンターを外すことで、ケース内部がスッキリとした状態になり、マザーボードなどを組み込みやすくなる。

 また、基本的に自由度の高い筐体ではあるが、大きめのパーツを組み込む場合は「その場所がベスト」という組み合わせがある。マニュアルにもそうした組み合わせがいくつか掲載されているので、組み込む前に参照しておくとよいだろう。

マニュアルの冒頭に、ラジエーターやファン、電源ユニットのサイズによってどういった構造になるのかという概念図が掲載されている。カスタマイズの自由度が高いケースだけに組み合わせ面の複雑さはあるので、マニュアルは事前に確認しておいたほうがよい

 今回はATX対応マザーボードなので、電源ユニットは前面に組み込む。そのため前面にはケースファンやラジエーターは組み込めない。また36cmクラスの簡易水冷型CPUクーラーを組み込むため(サイズとほかのパーツとの関係から、取り付け可能な位置は天板に限定)、フロントポートは前面左側の位置にしか取り付けられなかった。

標準パーツの配置を活かし、マニュアルのサイズ記載に従って組み込んだところ。基本的にはスッキリ収まっているが、水冷クーラーと電源ユニットの位置関係から、パイプが背面側に来るようにラジエーターを取り付ける必要があったのだが、背面ファンとのクリアランスがほぼゼロに。このあとセッティングを詰めた結果、背面ファンは取り外すことにした

 さて、36cmラジエーターを天板に取り付けたところ、背面ファンとクーラーのパイプのクリアランスが極小になってしまった。エアフロー的には背面ファンはあったほうがよいのだが、この窮屈さは若干の不安感もある。そこで考えたのが、底面へのファンの追加だ。

 ただし、標準では底面のファンを取り付けるためのマウンターは14cm/12cmファン×2用。通常であればファンを2基取り付けるところで、マニュアルなどに記載されている組み込み図でもそのように例示されている。一方で、組み込み手順の図解では、底面にも36cmラジエーターを取り付け可能とする記述も見られた。

実は36cmラジエーターおよび12cmファン×3用のマウンターは底面にも取り付けられる。ただし、スペースの問題から、ラジエーターを付ける場合にはATXマザーの使用は厳しそうだ

 マニュアルと実機を観察しつつ組み合わせを試してみたところ、底面に取り付けられていたマウンターにもMasterLiquid Atmos II 360 LCDがしっかり固定できることが分かったので、天面と底面のマウンターを入れ替えて、天面にラジエーター&3連ファン、底面に36cmサイズの3連ファンであるSickleFlow Edge 360 ARGBをそれぞれ固定、ケースに組み込んだ。

今回のパーツを組み込んだQUBE 540の様子。強化ガラスの左側板だけではなく、大きめのパンチ穴からもLEDのイルミネーションがあふれる美しいデザインだ
天板に36cmクラスの簡易水冷型CPUクーラー、底面にも12cm径×3のファンを搭載する大型ケースファンを組み込むが、窮屈さは感じない

 細かいことだが、MasterLiquid Atmos II 360 LCDを固定したファンマウンターを内部に戻した後だと、電源ユニットのEPS12V電源ケーブルがマザーボードに挿しにくい。フルプラグインの電源ユニットなので、先にEPS12V電源ケーブルを挿してからファンマウンターを戻すとよいだろう。

 またケース背面の電源コネクターと電源ユニットをケース内で結ぶ電源ケーブルや、電源ユニットの主電源ボタンは、電源ユニットマウンターを設置位置に取り付けた後にはほぼアクセスできなくなる。これも先に接続し、主電源ボタンをONにしておこう。

EPS12V補助電源ケーブルと水冷CPUクーラーのファンがかなり近いため、あとからケーブルを挿すのは現実的ではない。また、前述のとおり標準装備のケースファンはクリアランスが少なすぎたので取り外している
後方から前方を見たところ。標準的なATXマザーと奥行き14cmの電源ユニットの組み合わせなら内部スペースには十分な余裕がある。ラジエーター&ファンはケースの奥行きに対してかなりギリギリのサイズ感。電源ユニットは後から組み込んだほうが作業しやすい
裏面配線は、前面からマザーボード裏面に流す電源ケーブルを中央付近でまとめる感じで整理するとよい。ここにはケーブルタイを固定するためのフックがいくつもあって作業がしやすい
順番が前後するが、組み込み前の裏面。全体としてはコンパクトな製品だが、配線スペースは十分に確保されており、作業はしやすい。太めのケーブルはケース前方・底面側で上手にまとめるのがよい

CPUやGPUの温度はかなり低い、底面ファンは構成次第

 今回の構成のPCMark 10と3DMarkの結果をまとめたのが下の表だ。作例としての評価ではないので参考値として考えてもらうとよいが、ミドルレンジのゲーミングPCとしては十分なテストであり、冷却性能が足りずに性能が低下している様子もない。

PCMark 10の計測結果
3DMarkの計測結果

 今回計測したのは、アイドル時(起動後10分間の平均的な温度)、Cinebench時(Cinebench R23を実行中の最大温度)、モンスターハンター時(モンスターハンターベンチマークテストを1時間ループ実行したときの最大温度)。底面に設置したケースファンの影響を確認するため、底面ファンの有無の違いも併せて計測している。室温は約21℃、温度計測に用いたツールは「OCCT 15.0.14」で、CPU温度は「CPU(Tctl/Tdie)」の値、GPU温度は「GPU Temperatures」の値をそれぞれ使用している。

各部の温度

 CPU温度は、Cinebench R23のような高負荷が連続して続く状況でも60℃を超えることはなかった。またモンスターハンター時はGPUの発熱が影響してCinebench時より温度が上昇するが、それでも70℃台なかばにとどまっており、安心して利用できる。底面ファンが有効だと1、2℃温度が低下した。

 GPU温度はミドルレンジのGeForce RTX 5070搭載モデルということもあって、モンスターハンター時でも60℃を超えない。また底面ファンが有効だと1℃低下しているが、このくらいなら誤差の範囲内と言える。

 底面ファンについては、温度的には大きな効果は感じられなかった。しかしファンの電源を切った状態だと、モンスターハンター時などのビデオカードに高い負荷がかかった状態でビデオカード付近の強化ガラスがほんのり暖かくなる。またCinebench時などビデオカードのファンが停止した状態でもGPU温度を低く保てていることを考えると、長く安全に使うなら底面ファンを装備したほうがより安心感は高い。前述のとおり、今回は試行錯誤の末に底面に3連ファンを追加しているが、この構成であればファンは2連でも十分だろう。

使いやすく組み替えたりパーツを追加したり――より自由な“カスタマイズ”が楽しめるPCケース

 QUBE 540は、デザイン、機能性、拡張性、冷却性能と、現在のPCケースに求められる要素を過不足なくまとめ上げたケースだ。大型パーツを組み込むために、コンパクトながらも着脱可能で柔軟に変更できるレイアウトの内部構造である点も高く評価したい。さらに、3Dプリンターで出力したアイテムを組み合わせればさらに便利に使えるなど、遊び心満載のMOD PCだって作れる機能性は、まさに唯一無二だ。

 サイズ感やデザイン性は、コンパクトなゲーミングPCが欲しいユーザーにはもちろん、リビングやホームシアターのようなスペースに設置したいというニーズにも対応できるはずだ。個人的には、今後このQUBE 540をベースとしたユニークなMOD PCが登場することにも期待したい。