【 2000年11月18日号 】

PowerVR3をベースにしたKYRO搭載ビデオカードが登場
64MBメモリを搭載して約16,000円と低価格

パッケージ(表)パッケージ(裏)
【パッケージ(表)】【パッケージ(裏)】
EVIL KYROKYROマーキング
【EVIL KYRO】【KYROマーキング】
販売風景(1)販売風景(2)
【販売風景(1)】【販売風景(2)】

 独自の3D描画技術PowerVRアーキテクチャをベースとした最新ビデオチップ、KYROを搭載したビデオカードがようやくアキバに流れ始めた。第1弾はPowerColorブランドの「EVIL KYRO」で、64MB SDRAMを搭載して価格は14,480円~16,800円(詳細は「今週見つけた新製品」参照のこと)。

 ただし、出遅れ感があるせいか、在庫しているショップはそれほど多くない。

PowerVR3がベースのKYRO

 PowerVRは、NECとVideoLogic(現Imagination Technologies)が共同開発した独自の3D描画テクノロジーで、内部の計算などを効率よく処理できるのが特徴。

 3D描画処理の基本は、多角形などのオブジェクトを3次元空間で組み合わせる計算処理で行われるが、通常の方法では一つ一つ順番にオブジェクトの処理を行っていくため、最終的にオブジェクトが重なり合って見えない部分、つまりスクリーンには表示しない部分まで含めた計算が必要になり、最終的にはかなりの計算処理が捨てられるという非効率的な方法になっている。しかしPowerVRでは、描画シーンをタイルと呼ばれる小さな構成要素に分割し、タイルごとに表示される部分のみを計算処理するため、効率的かつ素早く3D描画ができる。この方法だと計算作業とデータ読み出しのための外部メモリへのアクセスが少なくなり、ハードウェア的に必要になる計算処理能力やメモリ帯域幅は小さくて済む。

 このアーキテクチャは、初代のPowerVRから2代目のPowerVR2へと引き継がれ、そして今は3代目のPowerVR3が最新。ビデオチップのKYROは、このPowerVR3をベースにして開発されたST Microelectronicsの最新作で、フルシーン・アンチエリアシング、8レイヤ・マルチテクスチャリング、バンプ・マッピングなどといった3D描画を高品位にするための機能も備え、DVD再生支援機能なども内蔵している。

コストパフォーマンスの高さがウリ

 このKYROを搭載した第1弾の製品が、PowerColorブランドで知られるC.P. Technologyの「EVIL KYRO」。64MBもの大容量メモリ搭載しつつ、価格が約16,000円と安いのが特徴だ。

 基本的にカード自体はオーソドックスな構造だが、ジャンパピンが2つ用意されているというところが、最近のビデオカードとしては珍しい点。マニュアルによると、これはAGP 2XとAGP 4Xのモードを切り替えるためのもので、ほかにラインナップされている32MBモデルやTV出力機能付きモデルにも、このジャンパがついているという。使われることはほとんどないだろうが、マザーボードとの相性調査や特定環境で必要になった場合には重宝するに違いない。なお、工場出荷時の設定はAGP 4Xになっている。

 「EVIL KYRO」はリテールパッケージ品だが、その中身は簡素で、英語の簡易マニュアルとビデオカード本体、CD-ROMが2枚無造作に入れられているのみとなっている。CD-ROMにはデバイスドライバのほか、ソフトウェアDVDプレイヤーのWinDVD 2000やゲームソフトのTEST DRIVE 5が収録されている。

意外と速い?

 アーキテクチャ的に優れているとはいえ、過去のPowerVRに関連した製品というと、いずれも一部のゲームソフトが動かなかったり、一定の環境条件をクリアしないと正常な描画が行えないなど互換性問題を指摘されることが多く、製品のクオリティとしてはあまり良くないイメージがあるのも確か。

 今回の製品で、はたしてどこまでスピードとクオリティを高められているのかが気になるところだが、一部ショップのテストによると、他社製の最新現行ビデオカードと比べてもスピードは速く、メジャーなベンチマークソフトも問題なく最後まで実行できたという。非常に限られた範囲でのテストとはいえ、これは期待が持てそうだ。PowerVRアーキテクチャがもともと好きだという人はもちろんのこと、新しいモノ好きや、ちょっと毛色の違う製品を使ってみたいという人にも、ちょっとした魅力を感じさせる製品には違いない。

 なお、ST Microelectronicsの日本法人であるSTマイクロエレクトロニクスがWeb上で公開している資料によると、「KYRO」は“カイロ”と読むのが正しいとのこと。

□KYRO(ST Microelectronics/STマイクロエレクトロニクス)
http://www.kyro.st.com/
http://www.st-japan.co.jp/99_06_magazine/challenge/23/23_col4.html
□EVIL KYRO(C.P. Technology)
http://www.powercolor.com.tw/products/gamecard/vga_Kyro.htm

 (POWERCOLOR EVIL KYRO)

[撮影協力:コムサテライト1号店コムサテライト3号店PCiN秋葉原]


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