【 2012年4月24日 】
【特別企画】4メーカーに聞く、春のオススメPCケース
In-Win編:コスパ重視、1万円で買えるゲーミングケース「IW-BUC101」
Text by 石川ひさよし

 PCケースは、派手なスペック向上があるわけではなく、ともすると地味に思われがちな製品ジャンルだ。

 しかし、SSDの普及やビデオカードの大型化など、最新スペックに対応、静音化やメンテナンス性も向上するなど、実は着実に進歩している。昔は高機能品の象徴だった裏面配線さえ、今は普及モデルに搭載されるほど。そして、中堅では「+α」のコンセプトを競っている状況だ。

 今回、ケースメーカー4社に各社イチオシの製品とその特徴をアピールしていただいた。29日(日)発売のIvy Bridgeでの自作など、新しいPCを組む際の参考にもして欲しい。

聞き手:石川ひさよし

  
 
In-Win編:
コスパ重視、1万円で
買えるゲーミングケース
「IW-BUC101」
   
 

 
In-Win編:
コストパフォーマンス重視、1万円で買えるゲーミングケース「IW-BUC101」


IW-BUC101

William Lu氏

 In-Winは、今年で26周年の老舗ケースメーカーだが、ラインナップの中心はこれまでOEMが中心で、コンシューマ向けはOEMに比べると少数だ。しかしその一方、クリスタルを用いたMini-ITXケースや、多数のファンを搭載するmicroATXケースなど、ユニークな製品をリリースする印象的なメーカーでもある。

 そのIn-Winが、現在自社ブランドの製品として注力しているのがゲーミングケース。アメリカでは有名ゲーマーとのタイアップキャンペーンも展開。アメリカ、ロシア、ドイツの市場で高い知名度と支持を得ているという。

 今回In-Winがオススメするゲーミングケースはミドルタワーの「IW-BUC101」。

 同社が日本で展開するゲーミングケースは4製品あるが、その中でのフラッグシップモデルであり、しかも実売1万円以下という安値も特徴。ゲーマー好みのミリタリーチックなデザインもウリとしている。

 サイズ(W×D×H)は200×508×496mm。質量は8.7kg。カラーリングはブラックだ。

 では、IW-BUC101の特徴やオススメポイントなど、話をうかがっていこう。

 お話をうかがったのは、In-Win Sales ManagerのWilliam Lu氏(以下、Lu氏)。


 
現在求められる機能を高いコストパフォーマンスで実現


トップに用意されたEZ Swap Bay。SATAコネクタ部にはカバーが取り付けられている。HDD搭載部にはラバーマットも敷かれている

−−IW-BUC101は、In-WInのケースラインアップのなかでどのようなポジションの製品なのでしょうか

[Lu氏]ゲーマー向けのケースとして、今必要であろうと考えられる機能を全て詰め込みつつ、1万円を切る価格を実現した、コストパフォーマンスの高いモデルになります。

 特徴的なのが、天板の上に直接HDDが搭載できるベイ「EZ-Swap Bay」です。これは3.5インチHDDを、ケースを開けること無く直接繋ぐことができます。PCパーツの交換頻度の高いゲーマーなどにとって、データのバックアップを手軽に行えるツールとして活用できます。また、EZ Swap Bayの後ろにはUSB 3.0ポートも用意しています。



トップのEZ Swap Bayの後ろにはUSB 3.0を2ポート装備

前面にはUSB 2.0を2ポート装備


[Lu氏] 内部も、トレンドをしっかり押さえた作りになっています。

 5インチベイや拡張スロットではツールフリーを標準で実現しています。In-Winでは10年前よりツールフリー構造を取り入れ、今ではハイエンドモデルだけでなくスタンダードなケースでも採用しております。



シャドゥベイは3.5インチ/2.5インチ双方が使える両用タイプ

拡張スロットはレバーを倒しこむ形でツールフリー固定

5インチベイはプッシュ・プル式でツールフリー固定
 

[Lu氏] エアフローの面では、前面、天板、背面にそれぞれ12cmファンを搭載しています。

 ファンの固定には防振ラバーを用い、静音性も考慮しています。側面にはオプションとして12cmファンを2基追加搭載できます。この側面部分にはマグネット式のフィルターを採用しており着脱も簡単なほか、水洗いもでき、メンテナンス性に優れています。その他の空気を取り入れる箇所、例えば5インチベイカバーなどにも全てフィルターを装着しておりまして、それら全てが着脱可能になっております。



左サイドパネルには後部に通風部がある

左サイドパネルのフィルターはマグネットで固定するタイプ。しなやかで手入れが簡単とのこと

各部に着脱可能、水洗い可能なフィルターを搭載


マザーボードベースの一体成型されたスペーサーと、表から配線できるユニークなケーブル管理機構

組み込み例

実際に組み込んでみると、盛り上がった部分のケーブル管理機構にほとんどのケーブルを通せ、細めのEPS 12Vは裏面配線することでスマートに配線できる

背面
[Lu氏] 一般的なケースではマザーボードの取り付けにスペーサを用いますが、IW-BUC101ではマザーボードベース自体に一体成型しており、そのままマザーボードを組み込むことができます。鉄板を用い、中央に穴のある突起を作るのは容易ではなく、実はテクニックを要する加工なのです。

 レイアウトは、今となっては一般的ですが、電源を下部に配置し、マザーボードをその上に配置しています。ゲーミングケースとしての機能では、水冷チューブホールを完備しているほか、エアフローを向上させるため、ケーブル管理機構を設けています。このケーブル管理機構は、少し盛り上げたスペースにケーブルを通してまとめることで、エアフローの妨げとなることを防ぎます。裏面配線とは違いますが、ほぼ同じことができます。

 また、このケーブル管理機構では、盛り上がった部分にケーブルを通すため、まとめやすく綺麗におさまるほか、細めのケーブルであれば、右側面パネルを外さなくても通すことができるなど、組立の手間を減らすことができます。ほか、裏面配線用のケーブルホールも用意しています。

 市場で直接の競合相手がおらず、位置づけには苦労していますが、これだけ上位機種のスペックを集めた上で、価格は9,980円としました。コストパフォーマンスは非常に優れていると自負しています。市場で1万4,000〜5,000円前後の製品の機能をこの価格で全部持ってきた、とイメージしていただければと思います。

−−この低価格が実現できたそのポイントはどのあたりにあるのでしょうか

[Lu氏] In-Winは日本市場でもホワイトボックスでの採用実績が豊富で、ケースに対する経験値が豊富です。そしてスケールメリットも出せます。そうしたところで培った技術やノウハウというものをリテール向け製品に活かしていけます。

 また、製品は自社で開発し、自社で製造しています。PCケースのブランドの中には、製造を外部に発注しているところもあり、自社で製造している点は、品質だけでなく、価格面でも大きなメリットになっています。



今回のIW-BUC101も独特なデザイン。天面のデザインに個性が強く出ている
−−In-WinのケースはSF風、ミリタリー風なイメージですが、このデザインとなった背景についてお聞かせ下さい

[Lu氏] In-Winはこれまでもリテール市場向け製品を投入してはいましたが、リテール市場に本格的に注力するにあたり、競合他社と同じデザインでは、差別化ができないと考えました。

 「特別なデザイン、インパクトあるデザインでまず話題を作り市場にアピールする」という考えから、このようなSF風、ミリタリー風なデザインが誕生しました。


 
In-Winの最高級検証台「X Frame」

−−しかし、そちらに置かれている製品はまったく異なるデザインですね


質実剛健な検証台のなかでデザインと機能にこだわったX Frame

マザーボードベースを取り外し、マザーボードを装着してから搭載可能

[Lu氏] これはIn-Winの技術力を端的に示す特別モデル「X Frame」です。いわゆる検証台になりますが、デザイン面でも今年のドイツのred dot awardを受賞した製品です。芸術品としても見ていただけると幸いです。

 我々は市場No.1を狙っています。だから他社が作れないものを作ろうというコンセプトで開発しました。

 この製品に関してはデザインやギミックなど、考えに考えて作り出しました。結果、ほとんど職人のハンドメイドと言えるような製品となってしまいました。量産できるものではないため、台数限定となります。世界で50台、日本では5台前後を販売予定です。

 特徴的なのは、マザーボードベースを取り外せる点です。

 これまでの検証台には無かった機能で、通常の検証台よりもさらに取り付けが簡単です。また、縦に置くこともできます。フレームと言いますか、取っ手といいますか、青い「X」部分のパーツを取り外して使うことも可能です。



縦置きにも対応できる

表側

パネルにはロゴとシリアナンバーが刻印されている

 


組み立てに用いるネジ類は本体に収納できるプレートで管理。ドライブ固定用ネジは手回し式
[Lu氏] この製品もツールレスデザインを採用しており、手回しネジ紛失防止のためにプレートも用意。ケース本体に収納できます。ケーブルマネジメント用ホールもついています。

 フロントにはUSB 3.0ポートも備えており、これまでの検証台にはなかった使い勝手を実現しました。

[Lu氏] 素材はスチールとアルミを用い、軽量に仕上げています。アルミの肉厚は2〜4mmです。肉厚な金属板はNCT・レーザーカッティングで加工していきます。このあたりの金属加工技術は、In-Winのサーバケースチームの技術力を生かされています。サーバーケースはほとんど鉄板で作り出しますので、高い金属加工技術が要求されるのです。

−−日本で5台となると、販売はどのような形式となるのでしょうか

[Lu氏] こうした製品ですので、残念ながら店頭に置くというわけにもいきません。

 抽選販売など皆さんに購入のチャンスがある方法を考えています。詳細は代理店のCFD販売で検討中で、決定次第ご案内する予定です。販売は5月以降で、価格は約3万円前後を予定しています。


 
メーカーからユーザーに向けてひと言

[Lu氏] In-WinはこれまでOEMなどが中心で、一般の自作ユーザーにはあまり知られていなかったかと思いますが、これからは、リテール市場にも注力していきます。

 In-Winのケースは、信頼性、技術力に自信を持っております。また、自社製造できることによる品質管理や、ニーズの変化への対応も速やかに行えるのも特徴です。こうしたメリットを生かし、よりよい製品をリリースしていきます。今後、日本市場に特化したデザインのケースも投入する予定もありますので、よろしくお願いいたします。

□In Win IW-BUC101(CFD販売)
http://www.cfd.co.jp/pc_case/in_win/iw-buc101.html
□In-Win
http://www.in-win.com.tw/index.php?g_area=tw
□CFD販売
http://www.cfd.co.jp/


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In-Win IW-BUC101

※特記無き価格データは税込み価格(税率=5%)です。