【 2012年4月24日 】
【特別企画】4メーカーに聞く、春のオススメPCケース
SilverStone編:ミドルタワーなのに19ベイ、冷却十分な新「Temjin」
Text by 石川ひさよし

 PCケースは、派手なスペック向上があるわけではなく、ともすると地味に思われがちな製品ジャンルだ。

 しかし、SSDの普及やビデオカードの大型化など、最新スペックに対応、静音化やメンテナンス性も向上するなど、実は着実に進歩している。昔は高機能品の象徴だった裏面配線さえ、今は普及モデルに搭載されるほど。そして、中堅では「+α」のコンセプトを競っている状況だ。

 今回、ケースメーカー4社に各社イチオシの製品とその特徴をアピールしていただいた。29日(日)発売のIvy Bridgeでの自作など、新しいPCを組む際の参考にもして欲しい。

聞き手:石川ひさよし

  
SilverStone編:
ミドルタワーなのに19ベイ、
冷却十分な新「Temjin」
    
 

 
SilverStone編:
ミドルタワーなのに19ベイ、冷却十分な新「Temjin」


同社のイチオシケース「SST-TJ04B-EW」

マスタードシード マーケティング部 高橋氏
 シンプル路線だがユニークさも同居するデザイン、肉厚アルミの質感、デスクトップ型からタワー型まで幅広いPCケースラインアップのSilverStone。最近では電源やベイアクセサリなどでも人気のメーカーだ。

 SilverStoneが今イチオシのケースはミドルタワーの「SST-TJ04B-EW」だという。

 まずは仕様を確認しておこう。SST-TJ04B-EWは、SilverStoneの「Temjin」シリーズの最新モデル。Temjinは、TJ01から続くフロントアルミパネルのケースで、同社のATXケースのなかでも中心に据えられるシリーズ。

 サイズ(W×D×H)は214×489×489mm。質量は9.6kg。カラーリングはブラックのみだが、側面板にクリアパネルがあるのがSST-TJ04B-EWで、フラットパネルの「SST-TJ04B-E」もラインアップされている。

 では、SST-TJ04B-EWの特徴やオススメのポイントなど、話をうかがっていこう。

 お話をうかがったのは、国内代理店、マスタードシードの高橋氏だ。


 
ATXサイズに現在の自作シーンで求められる搭載能力を詰め込んだ

−−SST-TJ04B-EWとはどのようなケースなのでしょう。コンセプトからご紹介下さい


シンプルで飽きの来ない、Temjinらしいデザインを復活させた

前面は上から4基の5インチベイ、8基の3.5インチシャドウベイ、その下に1基の3.5インチシャドウベイ。その後ろに6基の2.5インチシャドウベイを備える

SST-TJ04B-EWのシステム搭載例。マザーボードはSSI-CEBやXL-ATXにも対応するほか、拡張スロットを8基備えることで、4-wayマルチGPUにも対応する。5インチベイはドライバレス構造

[高橋氏]SST-TJ04B-EWは、見た目は至って普通な、と言ってはおかしいですが、どこに置いても違和感の無いクラシックな、しかしアルミ使いの高級感も兼ね備えた「Temjin」らしいケースです。

 設計コンセプトは、通常のATXサイズに、今時求められる搭載能力をSilverStoneならではの切り口で搭載した、というものです。

 具体的にはストレージの搭載能力をミドルタワーの範囲内で引き上げ、各種合わせて合計19基ものドライブベイを用意しました。内訳は、8基の3.5インチシャドウベイと6基の2.5インチシャドウベイ、1基の3.5インチ/2.5インチ共用シャドウベイ、4基の5インチベイになります。

 8個の3.5インチシャドウベイは1つのユニットになっており、レール式でまるごと取り外し可能です。HDDをたくさん搭載する際は、放熱効果を高めるための付属ヒートシンクも利用できます。



最大8基のHDDが搭載できる3.5インチシャドウベイ。HDDの放熱に有効なヒートシンクや、4基ぶんの電源コネクタをまとめた便利なケーブル・アダプタが2組付属する
 HDDをたくさん搭載することが前提ですので、配線が便利なよう、4台1組のSATA用電源コネクタケーブル「CP06」のピッチを狭めた専用ケーブルも2組付属。このほか、シャドウベイの下にも1台ぶんのベイを用意しており、最大で9台の3.5インチHDDが搭載できます。

 なお、HDDの冷却は、右側面からの吸気で行う構造で、吸気された新鮮な空気がヒートシンクに触れます。最近でも主流となっている、前面からの吸気は行なっていません。



3.5インチシャドウベイには付属のヒートシンクを取付可能

右側面には吸気口がある。吸気した空気はシャドウベイのヒートシンクに当たる構造だ

[高橋氏] TJのこのレイアウトは「これまでHDDは冷やし過ぎじゃないか」という疑問から生まれたものです。

 以前、GoogleがHDD温度と故障率のデータを公表したのですが、そのデータでは温度が下がると逆に故障率があがることが示されています。そうしたこともあり、フロントファンからHDDにダイレクトに風が当たってしまうのはやり過ぎではないか、という点からサイドフローを採用しました。

 サイドフローにすると、若干、後部にも空気が逃げますので、マザーボードにも直接新鮮な空気が流れこみます。

 一般的なケースのようにフロント吸気ですと、マザーボードに流れる空気は、HDDベイを通った少し熱くなったものだけですので、ここは大きな違いです。

 これら2点は、HDDをたくさん積む方にとって画期的なコンセプトだと考えています。



3.5インチシャドウベイは、片側の柱を廃したデザイン。長さのあるビデオカードを搭載する際の干渉を防げる。ほか、ヒートシンクを装着すればHDDの全てのネジ穴を使って固定することになる

2.5インチシャドウベイは電源の後部に取り付けるが、長さのある電源を用いる際は、3.5インチシャドウベイの下部に逃すことができる。この場合、3.5インチ3段分を占有する
 また、HDDを多数搭載すると、普通、問題になりがちなのが、ビデオカードの搭載スペースです。

 しかし、この製品ではHDDを8台搭載しても十分なスペースがあり、GeForce GTX 580でも搭載できますし、シャドウベイの片側は柱が無いので、(HDDとはトレードオフですが)さらに長さのあるカードを搭載しても干渉を防ぐことができます。

 2.5インチシャドウベイは、標準では3.5インチシャドウベイと電源スペースの間に設置してあります。長さのある電源を用いる際は、3.5インチシャドウベイの下部に2.5インチシャドウベイを移設することが可能です。



裏面配線のスペースも拡大し、作業の手間を軽減。CPU背面部の開口も大きくとられている
[高橋氏]  裏面配線のスペースも、ハイエンド向けのRVシリーズより大きくとってあります。裏面配線は手間のかかる作業でしたが、SST-TJ04B-EWならその手間を大きく削減できます。

 例えばSilverStone製電源のケーブルは、効率を重視したため、芯が太くやや硬めなのですが、SST-TJ04B-EWのスペースがあれば取り回しに手間取ることもありません。


 
SilverStoneの正圧設計思想を受け継ぐ


天板部は12cm×1基を搭載し、12/14cm×1基を追加搭載可能。フィルター付きで吸気用としての使用が推奨されている

底面にも12cm×1基を吸気として追加搭載可能。その後ろは電源用の吸気口で、こちらにもフィルターを装備

背面には唯一の排気用ファンが1基、そして多数のスリットが用意されている
−−SilverStoneは正圧設計が特徴とされますが、SST-TJ04B-EWのエアフローについてお聞かせ下さい

[高橋氏]SST-TJ04B-EWのエアフローは、吸気が底面、側面、天板の3カ所で、排気は背面の1基のみとなっております。

 各部から吸い込み、後ろから排気するのがこの製品の設計思想です。吸気ファンは全て取り外し可能なフィルターを装備し、埃の混入を防ぐとともに、ケース内の気圧を高い正圧に保つことで、隙間からの埃の混入も防ぎます。

 追加ファンは、右側面に12cm×1基、天板部に12/14cm×1基、底面に12cm×1基を搭載できます。私どもとしましては、正圧を保つため、これら全て吸気を推奨しています。各部エアフィルターを配置していますので、埃の混入は防ぐことができます。

 排気のためには、背面部に数多くのスリットを設けています。

 バックパネルの周辺や拡張スロットの横はもちろん、裏面配線スペースの部分にも排気スリットがあり、マザーボードの表裏、両面のエアフローを考慮しています。正圧を重視したSilverStoneらしいエアフロー設計だと思います。

 また、こうした設計ですので、ビデオカードは後方排気タイプが特に有効だと思いますが、このケースの冷却能力はそもそもけっこう高いので、トップフロータイプのビデオカードでも十分に冷却できます。



左側面にはスリットやファンは搭載しない。クリアパネルかフラットパネルかのラインアップのみだ

天板にはUSB 3.0(ピンヘッダ式)やサウンドのコネクタが用意されている
−−側面ファンを採用しなかったのには理由があるのでしょうか。

[高橋氏]側面に吸排気口を設け、ビデオカードやCPUに直接風を当てる製品もありますが、デスクトップPCは机の右に置くことが多く、ここから音が漏れ、静音性に影響します。そうした理由で、採用しておりません。

 ただし、TEMJIN TJ04-Eも、右側面前方には吸気口がありますので、本製品を設置する際は机の左側ではなく、右側に置くのがベストです。

−−窓ありのSST-TJ04B-EWと窓なしのSST-TJ04B-Eがありますが、窓ありのSST-TJ04B-EWがオススメなのはどのような理由からでしょうか。

[高橋氏]実際にこちらのほうが売れていることもありますが、中身が確認できる点で便利なためです。

 最近ではハイエンドマザーボードを中心に、POSTコード表示パネルやフェーズの使用状態を示すLEDなどが搭載されていますが、ケースを閉じた状態でもこれらが確認でき、万が一のトラブルが発生しても、速やかな対応がとれます。

 
ユーザーに向けてひと言

[高橋氏] 見た目はクラシックだけど、中身は別物に進化したのがSST-TJ04B-EWです。だいぶ洗練されたなと思います。Silver Stoneのケースは、必ず価格以上の拡張性を提供しますので、よろしくお願いします。


 
SilverStoneのその他のケース


煙突ケース「FORTRESS」シリーズのMini-ITX対応版「FT03-MINI」

デスクトップ型の「GRANDIA」シリーズから、「GD07」(右)と「GD08」(右)

microATX対応の「Precision」シリーズから「SST-PS07」のホワイトバージョン。内部も含めホワイト塗装されている

低価格でもしっかりと高い基本性能を備えたケースとして投入予定のREDLINEシリーズ「RL01」

ケースや電源を柱としながらも、最近同社が注力しているというのがアクセサリ。まっすぐ風が流れる徹甲弾ファンをはじめ、USB 3.0カード & フロントUSB 3.0パネル、SDXCカードリーダー付きUSB 3.0フロントパネルなど、PCケースをさらに便利にするアイテムが登場している

□Temjin SST-TJ04B-EW(マスタードシード)
http://www.mustardseed.co.jp/products/silverstone/case/sst-tj04b-ew.html

□Temjin SST-TJ04B-E(マスタードシード)
http://www.mustardseed.co.jp/products/silverstone/case/sst-tj04b-e.html

□SilverStone
http://www.silverstonetek.com/
□マスタードシード
http://www.mustardseed.co.jp/


次ページ→:In-Win編: / コスパ重視、1万円で買えるゲーミングケース / 「IW-BUC101」


SilverStone SST-TJ04B-EW

※特記無き価格データは税込み価格(税率=5%)です。