忍者増田のレトロゲーム忍法帖

『パックランド』を元ログイン編集長&編集者が熱く語る!
高橋ピョン太氏がゲストに登場

~『パックランド』対談編 前編~

忍者増田氏と『パックランド』が収録されたPlayStation版『ナムコミュージアム Vol.4』。
(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

 今回と次回、2回に渡って『パックランド』についての対談を掲載する。ゲストは元ログイン編集長の高橋ピョン太氏。

 忍者増田氏もログインの元編集者で、2人はかつての上司と部下という関係。とてもフランクな雰囲気で対談は進んでいくのだった。



本編以外にも遊びがあるナムコゲームの魅力を継承した『パックランド』

高橋ピョン太氏(写真左)と忍者増田氏(写真右)の2ショット。

高橋ピョン太氏。1980年頃からフリーのプログラマーとして活動、数々のPCゲームを世に送り出す。80~90年代にPCゲーム誌ログインの編集に携わる。6代目ログイン編集長。トレードマークは長髪とアディダスのジャージ。自称、永遠の18歳。

[忍者増田](以下、忍増):ピョン太さんが最初に『パックランド』に触れたときのことを聞かせてください。

[高橋ピョン太](以下、高ピ):最初にプレイしたのはアーケード版。今はなき秋葉原のゲーム喫茶音キチ倶楽部」で、ロケテやってたんだよね。そのころ『ドルアーガの塔』をプレイしに行ってたんだけど、店のおじさんが「今度ナムコの新しいやつ出るよ」ってススメてくれたの。

[忍増]:いきなりとんでもなくマニアックなワードが出ましたね(笑)。「音キチ倶楽部」、拙者もよく行ってました。

[高ピ]:あのころのナムコって、次にどんなゲームが出るかが本当に楽しみでさ。『ドルアーガの塔』の不思議感というか、アーケードゲームからちょっと外れているところに、普通のゲームとはまた違う魅力を感じていたんだけど、そんなときに『パックランド』と出会ったんだよね。

[忍増]:当時のナムコゲームはいろんな部分で突出していましたよね。『パックランド』をプレイして率直に、どう感じましたか?

『パックランド』のゲーム画面(写真はアーケード版をベースとしたPlayStation版)。
隠しフィーチャーの一例。透明になると敵モンスターに触れてもミスにならなくなる。

[高ピ]:ゲームとして普通に進んでいってもおもしろいのに、例えば途中で戻って何かを押すと何かが出てくるとか、いわゆる隠し要素が豊富なことに衝撃を受けたね。『ゼビウス』にもソルとかスペシャルフラッグという隠れキャラがあったけど、そういう、本編とは違うところにも遊びを入れてくるのがナムコゲームの魅力で、『パックランド』にはそのノリがさらに大きく膨らんで継承されている点に感動した。

[忍増]:隠しフィーチャーを知らなくてもクリアーはできるんだけど、知っているとさらにゲームが楽しくなってスコアも上がるというね。いろいろ試してみたくなるプレイ感がまったく新しかったですよね。

[高ピ]:そう。しかも、パックマンという世界的に有名なキャラを使って、そういう冒険的なことを仕掛けているところがいいなあって。さらに、『パックマン』の世界観とルールを壊していないしね。

[忍増]:『パックマン』のルールを崩さずハメ込みつつ、『パックランド』の新しい世界観を作り出しているところが素晴らしいですね。

ハードの進化とともに家庭用ゲームとアーケードの差が縮まっていく過程が見ていて面白かった

ファミコン版をプレイする二人。
ファミコン版のゲーム画面。アーケード版と比べるとグラフィック面で大きな違いがあるが、操作感やモノを探す楽しさは健在。

[忍増]:当時、ファミコン版『パックランド』に対してはどう思っていましたか?

[高ピ]:ファミコンのスペックが分かっていたから、できばえに不満はまったくなかったね。アーケードの面白いゲームを、ファミコンでも遊べるというのがありがたいわけで、高橋の中では完全にファンアイテム。完璧な移植なんて当然ムリだと思っていたし、そもそも望んでいないというか。よくファミコンでここまでがんばったと思う。

[忍増]:ピョン太さんのように、プログラマーをしていた方から見ても、ファミコン版『パックランド』の移植仕事は粗くはないということですね。

[高ピ]:うん、もう感覚的にちゃんと『パックランド』してるからね。グラフィックはどうであれ、あの操作感とモノを探す楽しさは味わえる。いい移植だと思います。


PCエンジン版のゲーム画面。アーケード版にそっくりな造り。
PCエンジン版には「うら面」などのオリジナル要素が満載。

[忍増]:PCエンジン版はどうでしょう?

[高ピ]:PCエンジン版は、ログイン編集部かファミ通編集部でプレイしたかな。あのアーケード版そっくり感は驚いた。やっぱPCエンジンってすごいんだなって実感したよ。

[忍増]:拙者は今回、初めてプレイしたんですが、PCエンジン版しかない隠しフィーチャーやコーヒーブレイク、さらには「うら面」と、オリジナル要素が満載だったんだなとびっくりしました。『ナムコミュージアム Vol.4』収録版や、X68000版はやりましたか?

[高ピ]:『ナムコミュージアム Vol.4』はやってないけど、X68000版はやった。専用パッド付きというのはすごいよね。そこが『パックランド』の肝だしね。ファミコン版→PCエンジン版→X68000版というように、ハードの進化とともに、家庭用ゲームとアーケードの差が縮まっていく過程は、見ていて面白かったね。


 ナムコゲームの魅力が満載な『パックランド』。当時のことを振り返りながら、熱く語りあう高橋ピョン太氏と忍者増田氏。そんな二人が次回、『パックランド』と双璧をなす“超有名な横スクロールゲーム”の話も交えて語り尽くします。お楽しみに。

 ※次回掲載は1月24日(火)を予定しています。

『パックランド』をプレイした動画番組も公開中


この連載やレトロゲームの情報をお届け!!
Facebookページ公開中


『パックランド』は今このプラットフォームで遊べる

『パックランド』を今遊ぶには(参考価格/価格は税込表記)
ファミコンカセット(中古品/付属品無し)450円前後~
PCエンジン HuCARD(中古品)2,800円前後
PlayStation版ナムコミュージアム Vol.4(中古品)1,400円前後~
PlayStation Store ゲームアーカイブス版 ナムコミュージアム VOL.4823円
アーケード基板(中古品)4万円前後
Wii U バーチャルコンソール(ファミコン版)514円
※2016年12月調べ
※Wii U 本体:32,400円

注釈

  1. ゲーム喫茶
    ここでいうゲーム喫茶とは、純粋にゲーム機(テーブル筐体)が置いてある喫茶店のこと。そういえば、近年は喫茶店よりもスターバックスとかエクセルシオールとかそういうお店の方が多いですよね。ゲーセン同様、喫茶店も減っていってしまうんでしょうか。
  2. 音キチ倶楽部
    かつて秋葉原にあったゲーム喫茶。当時アキバに通うパソコン少年やゲーマーたちの憩いの場であった。増田氏いわく「マスターがアキバの生き字引みたいな方で、ログイン編集部在籍時に、記事のネタを探しによく話を聞きに行っていた」とのこと。ちなみに今回増田氏は、マスターがお店を引退したとき(ゆうに20年以上前)にもらっていた電話番号に、ダメモトで電話してみたらしい。「おかけになった電話番号は現在使われておりません」のメッセージが流れたそうです……。
  3. ロケテ
    ロケーションテストの略。アーケードゲームを正式に世に出す前に、ゲームセンターなどで行なわれるテスト。ゲームバランスの調整、プレイヤーの意見の導入、デバッグ、市場調査などの意味合いを持つ。
  4. ドルアーガの塔
    1984年に登場したナムコのアーケードゲーム。主人公ギルが、とらわれた恋人カイを救うため、60階建てのドルアーガの塔に挑む。フロアに隠された宝箱の出現方法が本作の肝で、口コミを頼りに出し方が解明されていった。
  5. ゼビウス
    1983年に登場したナムコのアーケードゲーム。縦スクロールシューティングとしてのデキはもちろんのこと、しっかりと作りこまれた世界観や、隠しキャラクターなどでも話題を呼んだ。さまざまなパソコン、家庭用ゲーム機に移植された名作で、左手の親指が痛くなるまでファミコン版をプレイした人も多いはず。
  6. ソル
    ゼビウス軍の秘密研究施設。『ゼビウス』のゲーム中ではボーナス的な隠れキャラで、地中に埋まっている。地上攻撃(ブラスター)を当てるとタケノコのように出現し、もう一度当てると破壊することができる。
  7. スペシャルフラッグ
    ソルと同様、隠れキャラのひとつ。『ゼビウス』では基本的には1UPアイテムだが、スコアに10,000点が加算されるだけの設定もある。水辺に出てくるイメージがあり、ソルとは違って場所固定ではないので、その付近をブラスターで攻撃しまくる必要がある。
  8. 隠れキャラ
    普通にゲームを進めているだけでは出てこない隠れキャラクターのこと。特定の条件(点数や場所を調べる・攻撃するなど)によって出現する。これを自力で見つけられると非常に嬉しい。アーケードゲームではボーナス点が入ることが多いですね。
  9. ファンアイテム
    そのジャンルやタイトルが好きな人にとって、揃えておくべき・揃えておきたいアイテムのこと。『パックランド』好きにとってはファミコン版は外せないと高橋ピョン太氏。愛を感じますね。

(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

増田厚(ペンネーム:忍者増田)

 茨城県生まれ。漫画『ゲームセンターあらし』や『マイコン電児ラン』の影響を受け、中学2年生のときにパソコンをいじり始める。東京の大学入学と同時に、パソコンゲーム誌『ログイン』にバイトとして採用され、6年間在籍。忍者装束を着て誌面に出る編集者として認知度が高まる。その後、家庭用ゲーム雑誌『週刊ファミ通』に3年在籍したあと、フリーライターとなる。現在はおもに、雑誌やWeb、攻略本などでゲームのレビュー記事や攻略記事を執筆しつつ、ゲーム以外のライティングも。得意なゲームは、『ポケモン』、『ウィザードリィ』、『サカつく』など。