パワレポ連動企画
自作PCケースの選び方
[最新版、PC自作の基礎知識](6)
(2014/4/2 14:01)
自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新特集「最新PC自作の基礎知識」をまるごと掲載する当企画の6回目は、PCケースの選び方。
単なる「見た目」だけでなく、実はPC自体のコンセプトにも大きな影響を及ぼすPCケース。重視ポイントが「冷却」なのか「静音」なのかや、拡張性、置き場の制約、メンテナンス性など、様々な確認ポイントを見ていきたい。
この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 5月号は現在発売中。50ページにも及ぶ当特集のほか、様々なパーツの詳細レビューや徹底分析、そして「改造バカ一台」などの爆笑記事も掲載している。
- DOS/V POWER REPORT 2014年5月号 Special Edition -
PCケースの選び方
【何のためのパーツ?】
・パーツを固定し、設置するための箱
・効果的なエアフローを作り冷却力や静音性を高める
・デザインや電飾などで自作PCに個性をプラス
ポイント1フォームファクターの種類と注意点
PCケースの寸法は、マザーボードと同じ仕様(フォームファクター)に準拠しているマザーボードでは主にATX、microATX、Mini-ITXの3種類が使われるので、PCケースもこれらに対応した製品がある。
定番のフォームファクターであるATX対応のケースは、内部のスペースが広いため、ケースのフレームなどとパーツが干渉して装着できないといったトラブルが起きにくいのがメリット。組み立てもしやすく初心者にうってつけだ。もちろん簡易水冷ユニットや大型のビデオカード、多数のHDDを詰め込みたいといったハイエンド志向の人にも適している。ただ、何台のストレージを搭載できるか、本当に大型パーツが問題なく格納できるかは、フォームファクターだけでは分からない。そのため、ATXマザーを使うからATX対応のケースならどれでもよいというわけではない。製品仕様のチェックは必須である。
ATXケースは大きいため結構場所を取る。「部屋が狭くなるのは……」という人は、よりコンパクトなmicroATXやMini-ITXケースを選ぼう。ただし小さくなるほど、搭載可能なパーツの制約が増す。とくにMini-ITXケースの場合、CPUクーラーの大きさに厳しい制限が課せられるため、静音性の高い大型クーラーが装着できない、あるいは装着するとドライブが付かなくなるといった可能性がある。小さいPCケースを使いたい場合、組み込むパーツをよく検討しなければならない。
ATXケース(これが主流)
・パーツの収容能力はもっとも高い
・デザイン・意匠の幅がもっとも広い
・拡張スロットは7本使える
拡張性に優れる定番のATXケース。ハイエンドクラスの巨大CPUクーラーでもない限り、ほとんどのパーツを問題なく搭載可能
microATXケース
・高さ・奥行きが小さく設置が容易
・ATXに比べると製品数は少なめ
・拡張スロットは4本使える
拡張性は少々犠牲になるが、最小パーツ構成プラスα程度ならまったく問題ない。ただしATXに比べ選択肢が圧倒的に少ない
ポイント2静音性重視と冷却重視、どちらのケースを選ぶ?
あなたはCPUやビデオカードにどんなパーツを選ぶのだろうか?
「省電力CPUで内蔵GPUを使い、映画や音楽を鑑賞するためのマシンを作りたい」、「ハイエンドCPUとハイエンドビデオカードを組み合わせてゲームマシンを作りたい」、この場合パーツの特性に合わせて前者には静音性重視のケースを、後者には冷却重視のケースを勧めたい。
なぜかと言うと、搭載するパーツに合ったケースを選ばないと、パーツが持つ能力を発揮できなくなる可能性があるからだ。たとえば、ハイエンドCPUやハイエンドビデオカードを静音性重視のケースに搭載しても、それらのクーラーが発する動作音を殺し切れないばかりか、静音ケース特有の密閉性の高さがアダとなり、CPU/GPU温度が著しく上昇、クロックのブースト機能が働かず、性能が上がらないといったハメになる。
静音性重視、冷却重視それぞれの特徴は以下に示したとおり。自分の意図したPCに向くのはどちらか、よく確認してほしい。
【自作PCならではの最新フィーチャー】
ここ数年でPCケースは大きく進化した。14cm角以上の大型ファンを採用することで冷却能力と静音性を両立し、組み立てやすさやメンテナンス性も格段に向上している。
ここでは、最近のケースが備えている主な機能を紹介している。とはいえ、これらの機能すべてを網羅しているパーフェクトなケースは限られる。自分が必要とする、あったらよいなと思う機能を、現在検討しているケースが搭載しているか、購入の判断材料にするとよいだろう。
これらの中でとくに便利と思われるのは「裏面配線用スペース」だ。これはマザーボードの裏側、つまりケースの右側板の裏側に電源ケーブルやSerial ATAケーブルなどを収めるための空間のことである。よぶんな配線を隠すことで美観がアップするのはもちろん、前面ファンの風をごちゃついたケーブルで妨げずにすむので、エアフロー効率の低下を防止できる。必須の機能というわけではないが、これがあるとないとでは組み立て前後の使用感が大きく変わってくる。
なお、microATXやMini-ITXケースの場合、その大きさの都合上、ここで紹介している機能をほとんど備えていない製品もめずらしくない。逆に言えば、これらの機能を搭載しているのであれば、それだけこだわりを持って作られているという見方もできる。可能な限り、便利な最新機能を多く備えた製品を選びたいものだ。
オススメのPCケース例
冷却重視構成にも変更可能
Fractal Design Define R4(実売価格:10,000円前後)
・ATX
・静音性重視
・裏面配線
分厚い吸音材の内張りやフロントドアを装備する静音性重視ケースの定番モデル。だが天井や側板の目隠し板を外せば、ある程度冷却志向にも変更できるという柔軟性を持つ。電源ボタンや前面USBポートが上面にあるため、扉を閉めても使い勝手は良好だ。
シリーズ登場から7年目でも人気は衰えず
Cooler Master Technology CM690 III(実売価格:14,000円前後)
・ATX
・冷却重視
・裏面配線
メッシュパネルを多用した冷却重視のゲーマー向けミドルタワー。前面パネルの下部には大型の20c m径ファンを備
え、ビデオカードやストレージを強力に冷却する。天井も高く、水冷用の大型ラジエータの装着も容易。冷却のことを一番に考えた設計が光る製品だ。
低価格でも装備が充実
ZALMAN Tech Z3 Plus(実売価格:4,500円前後)
・ATX
・冷却重視
・裏面配線
ZALMANの低価格ATXタワーは値段のわりに冷え、なおかつ使い勝手がよいことで、もはや定番の域に達している。こ
の製品も実売4,500円前後と安いわりには、上で説明した要素をほぼ備えている。また天井ファンは内蔵ファンコンで風量を調整できるなど高機能だ。
大型パーツの収容力に注目
Corsair Components Obsidian 350D Windowed Micro ATX PC Case(実売価格:14,000円前後)
・microATX
・冷却重視
・裏面配線
microATXケースは小さくするために裏面配線や天井配置ラジエータなどへの配慮がない製品が多いが、この製品はATXケースとほぼ同じ要素を詰め込んでいる。前面と天板に12cm角ファンを合計4基設置できるので、発熱量の多いパーツの使用も怖くない。
キューブタイプでも高い冷却力を確保
Corsair Components Obsidian 250D Mini ITX PC Case(実売価格:13,000円前後)
・Mini-ATX
・冷却重視
Mini-ITXケースはファンやベイの配置にセオリーがなく、メーカーごとの性格の違いを楽しめる。この製品は右側面に大型ラジエータの固定用スペースがあり、シャドーベイはケース背面からアクセスするなど、おもしろい設計。限られたサイズのわりにパーツ収容能力は良好。
ストレージの収容能力に定評あり
Fractal Design Node 304(実売価格:11,000円前後)
・Mini-ATX
・冷却重視
シンプルなデザインと内部に3.5インチHDDを最大6基設置できる収容能力で人気を集めた製品。しかもHDDは前面ファンの風が直撃する位置にあるため、狭いMini-ITXケースでも十分な冷却を期待できる。電源ユニットをケース前面に配置する構造のため、ケーブルの取り回し難度がやや高めだ。
- DOS/V POWER REPORT 2014年5月号 Special Edition 目次-
1回目:PC自作はいつだって楽しい! ~改造バカ、かく語りき~
2回目:理想のマシンを自分で作ろう ~自作PC作例集6選~
3回目:CPUの選び方、マザーボードの選び方
4回目:ビデオカードの選び方
5回目:ストレージの選び方、メモリの選び方
6回目:PCケースの選び方
7回目:電源ユニットの選び方、CPUクーラーの選び方
8回目:パーツ選びが終わったら、ここを確認!
9回目:PC組み立て徹底解説、パーツ取り付けからインストールまで ~10万円のパーツで組んでみた~
10回目:小型PCを自作する場合の注意点
11回目:トラブル発生時の原因特定方法
【DOS/V POWER REPORT 5月号発売中】
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