パワレポ連動企画

自作PCケースの選び方

[最新版、PC自作の基礎知識](6)

DOS/V POWER REPORT 5月号

 自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新特集「最新PC自作の基礎知識」をまるごと掲載する当企画の6回目は、PCケースの選び方。

 単なる「見た目」だけでなく、実はPC自体のコンセプトにも大きな影響を及ぼすPCケース。重視ポイントが「冷却」なのか「静音」なのかや、拡張性、置き場の制約、メンテナンス性など、様々な確認ポイントを見ていきたい。

 この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 5月号は現在発売中。50ページにも及ぶ当特集のほか、様々なパーツの詳細レビューや徹底分析、そして「改造バカ一台」などの爆笑記事も掲載している。


- DOS/V POWER REPORT 2014年5月号 Special Edition -


PCケースの選び方

【何のためのパーツ?】

・パーツを固定し、設置するための箱
・効果的なエアフローを作り冷却力や静音性を高める
・デザインや電飾などで自作PCに個性をプラス

ポイント1フォームファクターの種類と注意点

 PCケースの寸法は、マザーボードと同じ仕様(フォームファクター)に準拠しているマザーボードでは主にATX、microATX、Mini-ITXの3種類が使われるので、PCケースもこれらに対応した製品がある。

 定番のフォームファクターであるATX対応のケースは、内部のスペースが広いため、ケースのフレームなどとパーツが干渉して装着できないといったトラブルが起きにくいのがメリット。組み立てもしやすく初心者にうってつけだ。もちろん簡易水冷ユニットや大型のビデオカード、多数のHDDを詰め込みたいといったハイエンド志向の人にも適している。ただ、何台のストレージを搭載できるか、本当に大型パーツが問題なく格納できるかは、フォームファクターだけでは分からない。そのため、ATXマザーを使うからATX対応のケースならどれでもよいというわけではない。製品仕様のチェックは必須である。

 ATXケースは大きいため結構場所を取る。「部屋が狭くなるのは……」という人は、よりコンパクトなmicroATXやMini-ITXケースを選ぼう。ただし小さくなるほど、搭載可能なパーツの制約が増す。とくにMini-ITXケースの場合、CPUクーラーの大きさに厳しい制限が課せられるため、静音性の高い大型クーラーが装着できない、あるいは装着するとドライブが付かなくなるといった可能性がある。小さいPCケースを使いたい場合、組み込むパーツをよく検討しなければならない。

ATXケース(これが主流)

・パーツの収容能力はもっとも高い
・デザイン・意匠の幅がもっとも広い
・拡張スロットは7本使える

 拡張性に優れる定番のATXケース。ハイエンドクラスの巨大CPUクーラーでもない限り、ほとんどのパーツを問題なく搭載可能

microATXケース

・高さ・奥行きが小さく設置が容易
・ATXに比べると製品数は少なめ
・拡張スロットは4本使える

拡張性は少々犠牲になるが、最小パーツ構成プラスα程度ならまったく問題ない。ただしATXに比べ選択肢が圧倒的に少ない

Mini-ITXケース(人気急上昇)

・拡張性は最小限だがコンパクト
・組み込みの難度は比較的高め
・拡張スロットは1本だけ使える

人気上昇に伴い収容力の高い製品も出てきたが、それでも拡張性は最低限。組み込むパーツの寸法を確認しておくと失敗がない

ポイント2静音性重視と冷却重視、どちらのケースを選ぶ?

【静音性/冷却重視両対応のバランス型】
ここで紹介しているDefine R4や右のCorsair製Obsidian 550Dは基本は静音性重視の設計だが、天板と側板のファンマウントをふさぐフタを取り払い、ここにファンを装着すれば冷却重視ケースとしても使える。こういった「バランス型ケース」は最近の流行でもある。後からでも方向性を変えられる柔軟性を秘めているのだ。

 あなたはCPUやビデオカードにどんなパーツを選ぶのだろうか?

 「省電力CPUで内蔵GPUを使い、映画や音楽を鑑賞するためのマシンを作りたい」、「ハイエンドCPUとハイエンドビデオカードを組み合わせてゲームマシンを作りたい」、この場合パーツの特性に合わせて前者には静音性重視のケースを、後者には冷却重視のケースを勧めたい。

 なぜかと言うと、搭載するパーツに合ったケースを選ばないと、パーツが持つ能力を発揮できなくなる可能性があるからだ。たとえば、ハイエンドCPUやハイエンドビデオカードを静音性重視のケースに搭載しても、それらのクーラーが発する動作音を殺し切れないばかりか、静音ケース特有の密閉性の高さがアダとなり、CPU/GPU温度が著しく上昇、クロックのブースト機能が働かず、性能が上がらないといったハメになる。

 静音性重視、冷却重視それぞれの特徴は以下に示したとおり。自分の意図したPCに向くのはどちらか、よく確認してほしい。

【静音性重視ケースによくある特徴】

【前面ドアで音漏れ防止】

前面からのノイズはドア1枚挟むことで緩和できる。ドア裏に吸音材を貼ってあるものも
【カバーに吸音/制振シート】

スポンジやゴムシートが貼ってあれば基本的に静音志向の製品。耳障りな音を軽減する効果がある

【静音性重視ケースのメリット】
・各種ファンなどから発せられる動作音を軽減する
・密閉性が高いため、内部にホコリがたまりにくい

【冷却重視ケースによくある特徴】

【風通しのよいメッシュを多用】

前面や側面がメッシュ構造なら吸気/排気の効果が高まる。ただし、内部にホコリがたまりやすい
【ファンの設置箇所が多い】

各所に14cm角などの大口径ファンを固定できるので、冷却の強化が容易だ

【冷却重視ケースのメリット】
・熱がこもりにくいのでパーツの温度管理が楽
・大型のものが多くハイエンドパーツで組みやすい

【自作PCならではの最新フィーチャー】

 ここ数年でPCケースは大きく進化した。14cm角以上の大型ファンを採用することで冷却能力と静音性を両立し、組み立てやすさやメンテナンス性も格段に向上している。

 ここでは、最近のケースが備えている主な機能を紹介している。とはいえ、これらの機能すべてを網羅しているパーフェクトなケースは限られる。自分が必要とする、あったらよいなと思う機能を、現在検討しているケースが搭載しているか、購入の判断材料にするとよいだろう。

 これらの中でとくに便利と思われるのは「裏面配線用スペース」だ。これはマザーボードの裏側、つまりケースの右側板の裏側に電源ケーブルやSerial ATAケーブルなどを収めるための空間のことである。よぶんな配線を隠すことで美観がアップするのはもちろん、前面ファンの風をごちゃついたケーブルで妨げずにすむので、エアフロー効率の低下を防止できる。必須の機能というわけではないが、これがあるとないとでは組み立て前後の使用感が大きく変わってくる。

 なお、microATXやMini-ITXケースの場合、その大きさの都合上、ここで紹介している機能をほとんど備えていない製品もめずらしくない。逆に言えば、これらの機能を搭載しているのであれば、それだけこだわりを持って作られているという見方もできる。可能な限り、便利な最新機能を多く備えた製品を選びたいものだ。

【裏面配線用のスペース】
【ケーブルを通す穴の大きさと数に注目】

電源ケーブルなどをマザー裏側に通す穴。あらゆる位置から配線を行なえるように、穴が大きく、数も多いほうがよい
【マザーボードベースと側板の距離が大切】

マザーボードベースと側板の間に十分なスペースがないとケーブルが収まらず側板が閉まらなくなる。幅1.5cmは欲しいところ
【天板部のスペース】
【水冷ユニットは装着可能か?】

人気の簡易水冷用ラジエータは、マザー上端と天板の間に5cm以上の余裕があれば、ほぼ搭載可能
【マザーと天板の間に空間が欲しい】

水冷を使わなくても、マザーと天板の間にある程度隙間が設けてあると、CPU付近の配線が楽だ
【取り外し可能な移動式ベイ】
【長い拡張カードを搭載可能】

最近よく見かける機能。長めのビデオカードを搭載できるよう、干渉しやすいベイを外してしまえる
【エアフローの強化】

ベイを外すことで、前面ファンからの風通しをよくし、冷却を強化するという狙いもある
【14cmファンと追加搭載スペース】
【12cmより14cm角ファン】

より少ない回転数で冷却効果を高めるために、14cm角以上の大型ファンの採用例が増えている
【ファンの拡張性も重要】

冷却不足の際にはファンを追加するだけで解決することが多い。空きファンマウンタ数は要チェック
【ホコリ防止フィルタ】
【前面からのホコリを防ぐ】

前面からのホコリの侵入を抑えるフィルタ。マグネット式で簡単に取り外せると掃除が楽
【ホコリっぽい部屋には必須】

電源は底面配置がスタンダードになっており、ホコリを吸い込みやすい構造。フィルタはぜひ欲しい
【ネジ不要ベイ、2.5インチ専用ベイ】
【スクリューレスで組み込み】

ネジ止めタイプのドライブマウンタはもう時代遅れ。最近ははめ込むだけで固定できるものが主流
【2.5インチ専用ベイ】

SSDの搭載に便利な2.5インチ専用ベイを備える製品も多い。3.5インチベイをつぶさずにすむ
【メンテナンスホール】
【マザーを付けたままクーラーを交換】

マザーボードをPCケースから外さなくても、CPUクーラーを着脱可能にする
【横方向に広いものを】

開口部が広くないとマザーによってはバックプレートが全部露出しない。横方向に広いほうがよい

オススメのPCケース例

冷却重視構成にも変更可能
Fractal Design Define R4(実売価格:10,000円前後)

Specification
カラー:ブラックパール、アークティックホワイト、チタニウムグレイ●付属電源:なし●ベイ:5インチ×2(5インチ×1→2.5インチシャドー×2変換アダプタ×1)、3.5/2.5インチシャドー×8●標準搭載ファン:14cm角×1(前面)、14cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×1(前面)、14/12cm角×2(天板)、14/12cm角×1(底面)、14/12cm角×1(側面) ●本体サイズ(W×D×H):232×523×464mm ●重量:12.3kg

・ATX
・静音性重視
・裏面配線

分厚い吸音材の内張りやフロントドアを装備する静音性重視ケースの定番モデル。だが天井や側板の目隠し板を外せば、ある程度冷却志向にも変更できるという柔軟性を持つ。電源ボタンや前面USBポートが上面にあるため、扉を閉めても使い勝手は良好だ。

シリーズ登場から7年目でも人気は衰えず
Cooler Master Technology CM690 III(実売価格:14,000円前後)

Specification
カラー:ミッドナイトブラック●付属電源:なし●ベイ:5インチ×3、3.5/2.5インチシャドー×7、2.5インチシャドー×3●標準搭載ファン:20cm径×1(前面)、12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:18cm角×1 / 14/12cm角×2(前面、20cm径×1と排他)、20cm径×1 / 14/12cm角×2(天板)、12cm角×1(底面)、20cm径/18cm角×1 /12cm角×2(側面)、12cm角×1(3.5インチシャドー) ●本体サイズ(W×D×H):230×502×507mm ●重量:約8.7kg

・ATX
・冷却重視
・裏面配線

メッシュパネルを多用した冷却重視のゲーマー向けミドルタワー。前面パネルの下部には大型の20c m径ファンを備
え、ビデオカードやストレージを強力に冷却する。天井も高く、水冷用の大型ラジエータの装着も容易。冷却のことを一番に考えた設計が光る製品だ。

低価格でも装備が充実
ZALMAN Tech Z3 Plus(実売価格:4,500円前後)

Specification
カラー:ブラック、ホワイト●付属電源:なし●ベイ:5インチ×2、3.5インチ×1、3.5インチシャドー×4、2.5インチシャドー×1●標準搭載ファン:12cm角×1(前面)、12cm角×1(背面)、12cm角×2(天板)●追加搭載可能ファン:12cm角×1(前面) ●本体サイズ(W×D×H):192×430×465mm ●重量:6kg

・ATX
・冷却重視
・裏面配線

ZALMANの低価格ATXタワーは値段のわりに冷え、なおかつ使い勝手がよいことで、もはや定番の域に達している。こ
の製品も実売4,500円前後と安いわりには、上で説明した要素をほぼ備えている。また天井ファンは内蔵ファンコンで風量を調整できるなど高機能だ。

大型パーツの収容力に注目
Corsair Components Obsidian 350D Windowed Micro ATX PC Case(実売価格:14,000円前後)

Specification
カラー:ブラック+ウィンドウ●付属電源:なし●ベイ:5インチ×2、3.5/2.5インチシャドー×2、2.5インチシャドー×3●標準搭載ファン:14cm角×1(前面)、12cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:14/12cm角×1(前面)、12cm角×1(前面、14cm角×1と排他)、14/12cm角×2(天板) ●本体サイズ(W×D×H):210×460×440mm ●重量:約6kg

・microATX
・冷却重視
・裏面配線

microATXケースは小さくするために裏面配線や天井配置ラジエータなどへの配慮がない製品が多いが、この製品はATXケースとほぼ同じ要素を詰め込んでいる。前面と天板に12cm角ファンを合計4基設置できるので、発熱量の多いパーツの使用も怖くない。

キューブタイプでも高い冷却力を確保
Corsair Components Obsidian 250D Mini ITX PC Case(実売価格:13,000円前後)

Specification
カラー:ブラック●付属電源:なし●ベイ:5インチ×1、3.5/2.5インチシャドー×2、2.5インチシャドー×2●標準搭載ファン:14cm径×1(前面)、12cm径×1(側面)●追加搭載可能ファン:20cm径/12cm角×1(前面、14cm径と排他)、8cm角×2(背面)、12cm角×1(側面) ●本体サイズ(W×D×H):277×351×290mm ●重量:約4.3kg

・Mini-ATX
・冷却重視

Mini-ITXケースはファンやベイの配置にセオリーがなく、メーカーごとの性格の違いを楽しめる。この製品は右側面に大型ラジエータの固定用スペースがあり、シャドーベイはケース背面からアクセスするなど、おもしろい設計。限られたサイズのわりにパーツ収容能力は良好。

ストレージの収容能力に定評あり
Fractal Design Node 304(実売価格:11,000円前後)

Specification
カラー:ブラック、ホワイト●付属電源:なし●ベイ:3.5/2.5インチシャドー×6●標準搭載ファン:9cm角×2(前面)、14cm角×1(背面)●追加搭載可能ファン:8cm角×2(前面、9cm角×2と排他)、12cm角×1(背面、14cm角×1と排他) ●本体サイズ(W×D×H):250×210×374mm ●重量:4.9kg

・Mini-ATX
・冷却重視

シンプルなデザインと内部に3.5インチHDDを最大6基設置できる収容能力で人気を集めた製品。しかもHDDは前面ファンの風が直撃する位置にあるため、狭いMini-ITXケースでも十分な冷却を期待できる。電源ユニットをケース前面に配置する構造のため、ケーブルの取り回し難度がやや高めだ。


- DOS/V POWER REPORT 2014年5月号 Special Edition 目次-

1回目:PC自作はいつだって楽しい! ~改造バカ、かく語りき~
2回目:理想のマシンを自分で作ろう ~自作PC作例集6選~
3回目:CPUの選び方、マザーボードの選び方
4回目:ビデオカードの選び方
5回目:ストレージの選び方、メモリの選び方
6回目:PCケースの選び方
7回目:電源ユニットの選び方、CPUクーラーの選び方
8回目:パーツ選びが終わったら、ここを確認!
9回目:PC組み立て徹底解説、パーツ取り付けからインストールまで ~10万円のパーツで組んでみた~
10回目:小型PCを自作する場合の注意点
11回目:トラブル発生時の原因特定方法


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(AKIBA PC Hotline!編集部)