パワレポ連動企画

Windows 10世代のパーツ選び
ビデオカード編

【即効! Windows 10×PC自作(11)】

DOS/V POWER REPORT 2015年9月号

 こだわりの自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の特集をほぼまるごと紹介するこのコーナーでは、「2015年9月号」の第一特集「新OSがあなたのマシンを変える 即効!Windows 10 × PC自作」を掲載する。

 第十一回目の今回は、Windows 10世代の自作PCに最適なビデオカードを紹介する。また、Windows 10で新たに登場したDirect X12についても解説していく。

 この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 2015年9月号は全国書店、ネット通販にて7月29日(水)に発売。ついに発売されるWindows 10を解説した第一特集のほか、頻繁に買い換えるものではない電源ユニット、カタログや口コミだけでは分からない部分を徹底解析する第二特集「出力だけじゃない! 効率だけじゃない! 2年後に後悔しない電源」、二次元世界の嫁の写真(イラスト)もきれいに拡大!「“最新ハードによる”waifu2x活用講座」、容量も重要だけど、やっぱり品質にも気を遣いたい「安くなった高性能、高品質メモリを狙え! DDR4/DDR3メモリコレクション2015」、MVNOのお供に選べるスマホ「選べる自由とハイコスパをその手に! すぐ買えるSIMフリースマホ」など、特別企画も満載。人気の連載記事、髙橋敏也氏による「髙橋敏也の改造バカ一台」や本Web連載中のAKIBA限定!わがままDIY+の本編「わがままDIY」も掲載だ。

 今号の特別付録は高音質、ハイレゾ対応、デザイン性、コストパフォーマンス、多彩なニーズに応えます!「サウンドデバイス大全2015」だ。


-Windows 10世代のパーツ選び ビデオカード編-


Windows 10世代のパーツ選び
ビデオカード

 Windows 10ではビデオカードまわりが大きく変わる。屋上屋を重ねるように肥大化してきたDirectXが一新され、より効率よくハードウェアリソースを使うことを目的とした「DirectX 12」が標準搭載されるからだ。

Windows 10の隠れた目玉「DirectX 12」に注目

 一部のWebブラウザゲームや2D描画オンリーのゲームを除けば、Windows上でのゲーム画面描画は基本的にOS標準搭載の「DirectX」を利用して行なわれる。DirectXのバージョンが上がるごとに、より複雑で高度な描画命令が実行可能になり、それを受けてGPUも機能を強化してきた経緯があるが、歴史が長い分効率的でなくなってきている。具体的には、処理の多くがCPUのコア1基に集中するようになってしまうことやドライバの処理待ちが長いこと、などが挙げられる。

 そこで家庭用ゲーム機の軽快で効率的な描画API並みにすべく根本から再構築したものが、Windows 10に採用されたDirectX 12だ。ハードウェア資産をより効率よく動かせるよう、従来のDirectXよりもハードウェアに近いレベルで動作し、同時にスケーラビリティに乏しかったマルチコアCPU対応を強化したものだ。ゲーム側にもDirectX 12対応は必要だが、性能向上だけでなく消費電力の抑制なども見込める。

DirectX 12の特徴

 DirectX 12とAMDの「Mantle1.0」の間には設計思想やアプローチの面で非常に多くの類似点があり、実際、立ち位置としては、DirectX 12はMantleを吸収したものと言ってよい。だがMantleと違うのはRadeon以外のGPUでも働くよう一般化し、発展させたものであるということだ。

マルチスレッド処理強化とAPIのオーバーヘッド減少で何が変わる?

 現時点ではDirectX 12の効果を実感できるゲームは存在しないが、「3DMark」最新版に含まれる「API Overhead Test」を使うことで、DirectX 11と12の違いをプレビューできる。このテストでは1秒あたりにCPUがGPUに描画内容を渡す「ドローコール」がいくつ発行できるかを比較する。理論上、DirectX 11よりDirectX 12のほうがドローコール数が10倍近くに増えるが、これはハードウェアの利用効率が上がり、描画処理全体の並列性が向上した結果だ。

 これを利用すれば無数のキャラや弾丸が飛び交う大規模戦闘シーンなどの軽量化が期待できる。対応ゲーム登場はまだ先だが、OS部分だけ先取りするのも悪くない。

ドローコール数が約6倍に増加
大軍団の激突シーンもなめらかに
DirectX 11でマルチスレッドを意識した処理にしても、ドローコール数はDirectX 12の流儀で描画したときの6分の1にも満たない。さらにCPUパワー向上がドローコール数に強く影響しているのも分かる
数千対数千の軍勢が激突するようなシーンも、DirectX 12で作成すればフレームレート向上が期待できる。図はMantle向けのベンチ「Star Swarm Stress Test」
c2015 Valve Corporation.All rights reserved

【「マルチスレッド処理強化とAPIのオーバーヘッド減少で何が変わる?」検証環境】

CPU:Intel Core i7-4790K(4GHz)
マザーボード:ASUSTeK MAXIMUS Ⅶ IMPACT(Intel Z97)
メモリ:G.SKill F3-2400C10D-16GTX(PC3-19200 DDR3 SDRAM 8GB×2)
ビデオカード:MSI GTX980 GAMING 4G(NVIDIA GeForce GTX980)
SSD:Intel 730 SSDSC2BP480G4(Serial ATA 3.0、MLC、480GB)
OS:Windows 10 Insider Preview 64bit版

DirectX 12環境ではどのGPUがベストなのか

ASUSTeK Computer
STRIX-GTX960-DC2OC-2GD5
実売価格:28,000円前後
第2世代MaxwellならDirectX 12の全機能を利用できる。とくにGTX 960はワットパフォーマンスがよいため、DirectX 12抜きでも買い換えるに値する

 NVIDIAのGeForceならGTX 400シリーズ(Fermi)以降、AMDのRadeonならHD 7000(GCN)以降、Intelの内蔵GPUならHD 4000シリーズ以降であればDirectX 12の基本機能を利用することができる。

 しかしDirectX 12は基本機能に加え「Feature Level 12_0」、「Feature Level 12_1」という“機能レベル”がある。これはDirectX11.3の機能でもあるが、これをすべてサポートするGPUは現時点でGeForce GTX 900シリーズのみだ。

 ただFeature Level 12_0も_1も現時点では“GeForceの方言”と言ってよいプラスα的な要素であり、処理効率の向上やオーバーヘッドの解消といったDirectX 12最大のメリットは基本機能で享受できる。つまり、今DirectX 12完全対応を意識し過ぎて焦って買い換える必要はない。自分の遊びたいゲームと性能のバランスでビデオカードを選ぶようにしたい。

【DirectX 12の機能レベルとその内容】
Feature Level 12_1ピクセル判定手段の1手法・半透明表現の効率を上げる技術など・Conservative Raster
・Raster Ordered View(ROV)
Feature Level 12_0VRAMの節約・UAV(Unordered Access View)によるデータアクセスの簡略化など・Volume Tiled Resource
・Typed UAV Load、etc.
Direct3D 12大半のGPUは基本機能のみサポートする・オーバーヘッドの低減
・マルチスレッド処理
・非同期処理、etc.

Windows 10世代の最新トレンド

1. ハイエンドに新たな動きが

NVIDIA
GeForce GTX 980 Ti
6GBのVRAMを搭載することで、4K環境でのゲームプレイでもパフォーマンスの低下を抑制。オリジナルファンモデルも多数登場

 今もっとも熱いのが4KゲーミングもターゲットにしたハイエンドGPUの更新だ。NVIDIAの「GeForce GTX 980 Ti」はTITAN Xのスケールダウン版ながらVRAMを6GB搭載し、重量級ゲームの超高画質設定にも対応可能な性能を獲得。

Advanced Micro Devices
Radeon R9 Fury X
4,096基ものSPを装備するRadeonのフラグシップ。水冷化されているが、HBMの採用でカード自体は非常に小さい

 一方、AMDは1チップあたり1,024bitもの広帯域を誇る積層メモリ「HBM」(High Bandwidth Memory)を四つ搭載した「Radeon R9 Fury X」をリリース。性能ではGTX 980 Tiにおよばないものの、GeForceとRadeonのハイエンドクラスの差を縮めた意義は大きい。HBMを搭載したFuryシリーズはカードを小型化しやすく、今後小型&高性能なアッパーミドルモデルが登場する。新OS登場を境にビデオカードの更新も始まったのだ。

【「1. ハイエンドに新たな動きが」検証環境】

CPU:Intel Core i7-4670K(3.4GHz)
マザーボード:ASRock Z97 Extreme6(Intel Z97)
メモリ:Corsair Vengeance Pro CMY16GX3M2A2133C11(PC3-17000 DDR3 SDRAM 8GB×2)
ビデオカード:NVIDIA GeForce GTX 980 Tiリファレンスカード、AMD Radeon R9 Fury Xリファレンスカード
SSD:Micron Crucial M550 CT512M550SSD1(Serial ATA 3.0、MLC、512GB)
OS:Windows 8.1 Pro Update 64bit 版
Civilization: Beyond Earth:画質“ウルトラ”、アンチエイリアス“4X MSAA”に設定し、内蔵ベンチマーク機能を用いて計測。解像度は1,920×1,080ドットおよび3,840×2,160ドットで測定。Fury XのみMantleでも計測

2. 準ファンレス仕様が主力に

ASUSTeK Computer
STRIX-R9380-DC2OC-2GD5-GAMING
実売価格:36,000円前後
自社開発の高性能クーラーを組み合わせたASUSTeKのRadeon R9 380搭載準ファンレスビデオカード

 GTX 980登場以降急激に増え出したのが、低温時にファンが停止する「準ファンレス仕様」カード。GeForce系はGTX 960以上のGPUを搭載するもので事実上の標準仕様になっている。Radeonは発熱量が多いため、ASUSTeKやMSIなど一部のメーカー製品の強力冷却モデルに限り準ファンレスモデルが存在する。

3. ショートサイズのカードが熱い

GIGA-BYTE TECHNOLOGY
GV-N960IXOC-2GD
実売価格:27,000円前後
カード長は181mm。Mini-ITXマザー(170×170mm)と近い長さであるため、奥行きの短いPCケースとの相性がよい

 今後盛り上がりそうなのがショート基板タイプのカードだ。従来はGTX 960クラスのミドルレンジGPUが主力だったが、基板を小型化しやすいHBM採用GPUのおかげで超小型&高性能ビデオカードが作りやすくなった。今夏登場予定の「Radeon R9 Fury Nano」に注目しよう。

4. 上位モデルはVRAMの大容量化が進む

4K環境で高画質設定にするとVRAM 4GBでは不足する
「グランド・セフト・オート V」ではVRAM使用量の目安が表示される。実際にはこの目安量+500MB程度は見ておこう
c2014 Rockstar Games, Inc.

 GTX 980 TiやR9 390などではVRAM搭載量が6~8GBに達する。4K環境で高画質設定にするとVRAM 4GB程度では足りなくなるためだ。現状のマルチGPUではVRAMは合算されないため、VRAM不足がマルチGPUの足を引っ張る場合もあるのだ。

【GTAVの画質、解像度とVRAM使用量の変化】
720p1080p4K
ノーマル1,183MB1,296MB1,767MB
2,136MB2,341MB3,311MB
ウルトラ3,313MB3,724MB5,752MB

【「GTAVの画質、解像度とVRAM使用量の変化」検証環境】

グランド・セフト・オート V:表はGTAV設定画面でのVRAM使用量の目安を比較したもの。画質は「ノーマル」が「ノーマルまたは切」設定+アンチエイリアスなし+シャドー(ソフト)など、「高」が「高」設定+アンチエイリアス2X+シャドー(強)など、「ウルトラ」が「ウルトラ(または最大値)」+アンチエイリアス4X+シャドー(最大)+高度なグラフィックスすべて最高設定とした

そのほかの注目ビデオカード

玄人志向 GF-GTX750Ti-LE2GHD

省スペースPCの強化に最適
GDDR5 2GB / 定格

 Low Profile&補助電源なしで動作するGPUでもっとも強力なのがGTX 750 Ti。薄型で通常サイズのビデオカードが装着できないPCでもゲームを楽しみたい人なら迷わずコレだ。クーラーが小さいため動作クロックはリファレンス準拠仕様だ。

【Specification】
●コアクロック(ブーストクロック):1.02GHz(1.085GHz)●ビデオメモリ(バス幅):GDDR5 2GB(128bit)●メモリクロック:5.4GHz●インターフェース:HDMI×1、DVI-D×1、Dsub 15ピン×1●対応スロット:PCI Express 3.0x16 ●実売価格:16,000円前後

ZOTAC International ZT-90101-10P

フルHD 環境ならGTX 970
GDDR5 4GB / OC

 GTX 970はVRAMが実質3.5GBという制約はあるが、フルHD環境なら費用対効果的にもっとも優れたGPU。重量級ゲームにも十分対応できる性能を持っている。この製品はデュアルファン仕様のGTX 970搭載カードの中でも最安クラスの1枚だ。

【Specification】
●コアクロック(ブーストクロック):1.076GHz(1.216GHz)●ビデオメモリ(バス幅):GDDR5 4GB(256bit)●メモリクロック:7.01GHz●インターフェース:DisplayPort×1、HDMI ×1、DVI-D×1、DVI-I×1●対応スロット:PCI Express 3.0 x16●実売価格:41,000円前後

Micro-Star International R9 390 GAMING 8G

Mod好きゲーマーなら注目
GDDR5 8GB / OC

 Radeonの最新ハイミドルGPU「R9 390」を搭載した製品。GPU自体はR9 290のマイナーチェンジ版だが、VRAMが8GBという超大容量仕様になっている。高画質化Modを大量に入れて遊びたいとか、GPGPUで多量のデータを扱いたいといった人にオススメだ。

【Specification】
●コアクロック(ブーストクロック):1.04GHz(1.06GHz)●ビデオメモリ(バス幅):GDDR5 8GB(512bit)●メモリクロック:6GHz●インターフェース:DisplayPort×3、HDMI ×1、DVI-I×1●対応スロット:PCI Express 3.0 x16●実売価格:52,000円前後

【問い合わせ先】

ASUSTeK Computer:info@tekwind.co.jp(テックウインド)/ http://www.asus.com/jp/
GIGA-BYTE TECHNOLOGY:050-3786-9585(CFD販売)/ http://www.gigabyte.jp/
玄人志向:-/ http://kuroutoshikou.com/
ZOTAC International:03-5215-5650(アスク)/ http://www.zotac.com/
Micro-Star International:web-jp@msi.com(エムエスアイコンピュータージャパン)/ http://jp.msi.com/


[Text by 加藤勝明]


DOS/V POWER REPORT 2015年9月号は2015年7月29日(水)発売】

★第1特集「新OSがあなたのマシンを変える 即効!Windows 10 × PC自作」
★第2特集「出力だけじゃない! 効率だけじゃない! 曖昧な口コミでは分からないデータが一杯! 2年後に後悔しない電源」
★特別企画「二次元画像の美麗アプコンで超話題 “最新ハードによる”waifu2x活用講座」「安くなった高性能、高品質メモリを狙え! DDR4/DDR3メモリコレクション 2015」「選べる自由とハイコスパをその手に! すぐ買えるSIMフリースマホ」
★連載「最新自作計画」「自作初心者のための[よくある質問と回答]」「New PCパーツ コンプリートガイド」「激安パーツ万歳!」「髙橋敏也の改造バカ一台」「PCパーツ スペック&プライス」「全国Shopガイド」「DOS/V DataFile」

★ 紙版を買うと電子版(PDF)を無料ダウンロード可能
★ 特別付録小冊子「サウンドデバイス大全2015」(紙版のみ別途付録、電子版では本誌末尾に収録)
★ 毎月700円(税込)で最新号が読める 直販電子版 月額プランも受付中
http://book.impress.co.jp/teiki/dvpr/2015-07-22-0000.php

【電子販売ショップ】

【関連書籍】
★DOS/V POWER REPORT編集部によるムック「絶対に失敗しない Windows 10 無料アップグレード」が発売中
Amazon.co.jp
http://www.amazon.co.jp/dp/4844338811/impresswatch-14-22/

(AKIBA PC Hotline!編集部)