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「前回の王者」はなぜ惨敗したか?
~試合の流れを徹底解説!Revolレポート~

LJL 2015 SEASON2 ROUND6 Ozone Rampage vs DetonatioN FocusMe

本記事は、LJLの詳報レポートを掲載するRevolレポート(SANKO Webサイト掲載)を特約の元、転載/編集したものです。

 Round5という折り返し地点において同率1位のチームが戦うという頂上決戦が起きた。

 結果はOzone Rampageの勝利に終わったが、試合内容は拮抗したものではなくOzone Rampageの圧倒的なパフォーマンスに終始した。なぜそうなったのか。序盤の、それも10分の段階で試合の趨勢は決まっていた。今回はその10分までの試合の流れを丁寧に追っていきたい。

Ban & Pick~両チームのチャンピオン選択~

Team Composition~両チームのチャンピオン構成~

 Ozone Rampage(以下RPG)の構成は集団戦が得意な構成だ。

 HecarimとRek'Sai、そしてAnnieと強力な範囲拘束能力を持ったタンクやサポートがおり、範囲攻撃に長けたViktorとSivirがいる。さらにSivirはULTの移動速度上昇によってチーム全体をサポートする。敵の後方に飛び込む能力に長けた構成であり、強力な拘束能力も揃えていることから、FMのAhriやVayneを積極的に狙っていく形が多くなるだろう。また序盤から中盤におけるRek'SaiとAnnieによる各個撃破能力も重要だろう。この2人が積極的に敵を捕まえていくことによって人数差を作り出したり、マップをコントロールしていくことも可能だ。

 DetonatioN FocusMe(以下FM)の構成は少数戦が得意な構成だ。

 それぞれのChampionが単体拘束能力、もしくは単体への強力な瞬間火力をもっており、それらを活かして少数戦を何度も繰り返して有利を作り出していくのが狙いだろう。問題は有利な状況でなければ5対5の集団戦で勝利することが非常に難しいということだ。範囲拘束能力も範囲攻撃も欠けているからだ。少数戦を何度も作り出せるかどうかが勝敗を分けるだろう。

In-Game

開始直後の動き、FMの狙い

開始直後、RPGは全員でTopに走る

 試合開始直後、RPGは5人全員でTopに走っている。

 狙いは相手のTop Jungleに入っていくことでWardを置きつつ、なおかつレーンスワップを早めに察知しようというものだろう。RPGとしてはBotの2v2のマッチアップにおいて有利が取れているし、なおかつTopのHecarimがSummoner Spellの選択をSmiteではなくIgniteにしており、それによってスワップされた際にHecarimが苦しい立場に立たされてしまう。

 つまりスワップされて1v2のレーンを作られるよりも、スワップされずに1v1と2v2のスタンダードなマッチアップを作りたいのだろう。

VayneをTopレーンに送り込むFM
5人で行動するRPG

 それに対しFMはあらかじめVayneをTop レーンに送り込むことでRPGの狙いを上回った。

 さらにRPGが5人でTop Jungleに入ってきたことを察知しており、その動きへのカウンターとしてBot Jungleに侵入しWardを置いている。これによりLv1のRPGの動きを把握できる状況になっている。

NidaleeはBot Jungleからスタート
VayneはTop レーンを進む

 RPGはKrugから、FMは青Buffからジャングリングを始めている。HecarimはLv2スタートを狙ってRaptor、Fizzはスワップを行うのでNidaleeの近くでSmiteを活かしてJunglingをしている。

 ミニマップをみてもらえればわかる通り、RPGはFMのTop Jungleの視界をほぼ確保している。そのためNidaleeはBot Jungleからスタートしただろうという予想が立てられる。一方のFMもRek'Saiの動きをWardで確認できているのでKrugからJunglingを始めることを察知できている。

 また、RPGはFMのVayneがTop レーンに現れたことからスワップされたことがわかる。SivirとAnnieとしてはいくつかの選択肢がある。相手のスワップにあわせて2人がTopにいくか、もしくはSivirとAnnieがBotへ行きミニオンをコントロールするか、SivirだけがBotへ行きAnnnieは敵のJungleへと確認に行くか。

 FMはこの段階で3Buff管理を狙っていると思われる。NidaleeとFizzが分かれてJunglingをしているため、両者とも狩り終えたらLv2になる。

 そのまま敵の青Buffへと侵入すると、もしAnnieがそれを察知してカバーにきたとしても、RPG側は4人でFM側は5人が戦闘に参加可能だ。SivirはBotにいかざるをえないのでRPG側は1人少なくなってしまう。もしSivirがTopへきたとしてもレベル差が生まれているはずであり有利な状況で戦闘が始められる。FMとしてはこの段階で有利を作り出せる状況は整っていた。

リスクとリターン

発見されるNidaleeとFizz
そして1st Blood

 RPGはAnnieがBot Jungleの確認に行き、HPが半分以下のNidaleeとFizzを発見する。

 すぐさま仕掛けていき、1st Bloodを手に入れた。Annieの素早い判断を褒めたたえる以外ないだろう。ここでNidaleeを潰したことでFMの序盤の戦略を躓かせ、なおかつ試合の流れを大きくRPGに寄せることになった。NidaleeはJunglerとしてPickされた場合、強力な1v1能力を活かして序盤から積極的に圧力をかけることが狙いとなる。しかしこういった形で潰されてしまうとその狙いを完遂することは難しい。またAnnieが1st Bloodを得たことで、その資金を活かして最序盤からマップコントロールが可能になったことも見逃せない。

 FMは分散してJunglingをするという選択が裏目にでたかたちだ。

 もしFizzとNidaleeが一緒にJunglingをしていたならばHPはここまで削られていなかっただろう。しかし、この次のアクションを見据えた時に、レベルのアドバンテージを確保しておきたかったという考えは悪くない。ただしそのリスクをカバーするための動きが1つ足りなかっただけだ。それはThreshもJunglingに参加することであったり、もしくはBot Jungleの入り口にWardを置くことでもよかった。どちらかの動きをしていればFMは狙い通りに事を進められたか、もしくはここまで大きな痛手を負うことはなかっただろう。

FMが自陣の赤Buffを狩る動き(1)
FMが自陣の赤Buffを狩る動き(2)

 FMは自陣の赤Buffを狩る際にThreshを呼び寄せている。

 これはRPGのCounter Jungleを警戒したからだろう。Topから最短距離で赤Buffへ向かうのではなく、Rek'Saiの侵入ルートを予想して遠回りしてカバーに入っている。こういった地道な動きがJunglerが試合に戻ってくるために必要だ。もしTopにThreshがいたままだったとしたら、RPGはここぞとばかりに赤Buffへ侵入してきたかもしれない。

RPGのスノーボール

Topレーンの動き
MidでGankする動き…

 RPGはTopにHecarimだけでなく、Rek'SaiとAnnieを送った。

 Vayneがミニオンを自陣のタワーに押させるようなコントロールをしたこと、NidaleeよりもRek'Saiのレベルのほうが高いことが理由だろう。それを活かしてTop Jungleに侵入し、Top側に圧力を作り出している。これによりVayneはファームができず、MidのAhriはTop側からのGankの圧力にさらされることとなった。

 RPGは1度MidへGankをするそぶりを見せたが、結局は取りやめた。

 ミニオンウェーブを押す状況になっており、Gankの成功率が低くなっているとみなしたのだろう。タワーダイブになる可能性もあるし、Bot側の視界がとれていないのでNidaleeのカウンターガンクもある。もしカウンターガンクされてしまったらせっかくの有利を手放すことになるため、リスクは非常に大きい。

Topレーンを押すRPG
倒されるFMのVayne

 Vayneはレーンを押し上げることができない。それは、Top側にRek'SaiとAnnieが来ていることがわかっていることと、味方のNidaleeとThreshがBot側へと移動していることが影響している。ミニオンウェーブを引く形にしたことが裏目に出てしまっている。

 こういったコントロールをした場合、敵のTop レーンrに対してJunglerとSupportが圧力をかけることでミニオンに触らせずCSを取らせないことが目的となる。しかし今回のように味方のJunglerが潰されてしまうと敵のJunglerとSupportと戦うことができなくなり、このような配置にせざるをえない。TopにいるVayneが押し込まれGankを受けてしまうことは、Nidaleeが青Buffで倒された流れの延長線上にあると言える。

MidでもFMのNidaleeが倒される

 FMはTopにGankされたことへのカウンターとしてMidへのGankを決行する。しかし焦りからか逆にNidaleeが倒されてしまう。最低限どころか最悪の結果になってしまった。

 失敗の要因は他にもある。RPGはJunglerとSupportが連携してGankしたのに対し、FMはJunglerだけがGankしている。

 ミニマップを見ればSupportはBotでSivirを追い出す動きをしていることが確認できるだろう。こうすることでSivirのCSを落とすこととFizzにファームさせることが可能だ。しかし、もしここでThreshがMidのGankに参加していれば最低限の結果、つまり1KillをとるもしくはFlashを落とすことは確実に成功させていただろう。

 不利な状況を覆すために二兎を追った結果、一兎は得られたが、傷は広がってしまった。

止まらないRPG、止められないFM

 FMは再度TopにVayneを送った。

 1Killをとったとはいえ未だSivirとAnnieを相手にすることは難しいからだろう。もし2v2の状況になったとしたらミニオンウェーブを押しつけられその間にAnnieとSivirにJungleへ侵入され、Nidaleeの不利がより広がっていくことが予想される。

 それに対しRPGはSivirをTopに送り込むことを選択した。VayneとThreshをSivirとAnnieで押さえつけ、敵のJungleやMidへの圧力につなげていくのが狙いだろう。

MidでのGank
結果は痛み分け
そしてRPGがDragon確保

 FMは再度MidへとGankした。ViktorのFlashがないこと、AhriがLv6になってULTを手に入れたことが理由だろう。

 しかし、RPGの反応も素早く、Viktorを倒すことはできたもののHecarimにAhriが倒されてしまい痛み分けに終わる。このRPGの反応の良さをみると、あらかじめMidへのGankを予想していたように思われる。

 RPGはSivirがMidへと流れてきており、そのままDragonの確保につなげた。RPGは有利をObjectにつなげることに成功し、序盤の流れをしっかりと掴んだと言えるだろう。

 FMとしては、まだ試合の流れを取り戻す方法はある。

 TopのFizzがHecarimを抑え込み、Topから圧力を作り出していくことでRPGに選択を強いる方法だ。Hecarimをカバーするのか、Topは放置してMidやBotのスノーボールに力を注ぐのか。いずれにせよ、FMはそこで巻き返すチャンスはあった。

Topレーンでの争い
そしてTopの優位はRPGのものへ…

 しかしFizzはHecarimとの1v1のHPトレードに負け、そのままミニオンを押しこまれてGankされてしまう。このとき、Fizzへの手助けはなかった。Topの優位は完全にHecarim、そしてRPGのものになった。

 FMからすると有利を作れるレーンがこの段階で消失したと言える。集団戦で勝てる構成ではなく、かといって少数戦をしかけるための前段階の行動(レーンを押し上げて敵のJungleに入っていく、もしくはマップコントロールを確保して敵の侵入を咎める等)すらできない状況になった。RPGが大きなミスをしない限り、FMはここから逆転できる要素はない。

リスクとることと、その結果……

 FMは試合開始の時点では有利を作れる状況を整えたが、しかしリスクを負った動きが咎められてしまった。

 リスクを抑えた動き、もしくはそのリスクをカバーする動きをしていれば試合は大きく変わっていただろう。ハイレベルな試合においては序盤のミスが勝敗に直結する。そのことが痛いほどわかる試合だった。

[写真提供:SANKO]

(Revol)