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チーム構成で変わる「優先すべきオブジェクト」
~試合の流れを徹底解説!Revolレポート~
LJL 2015 SEASON2 ROUND8 CROOZ Rascal Jester vs DetonatioN FocusMe
(2015/7/3 22:10)
本記事は、LJLの詳報レポートを掲載するRevolレポート(SANKO Webサイト掲載)を特約の元、転載/編集したものです。
この試合は1つの判断ミスから試合が大きく動いた。その判断ミスにはチームの構成とオブジェクトの優先順位が関わっている。今回はこの試合を題材に「チームの構成とオブジェクトの優先順位」を紐解いていこうと思う。
Team Composition~両チームのチャンピオン構成~
CROOZ Rascal Jester(以下RJ)の構成は集団戦とスプリットプッシュが核となっている。
Sejuaniの強力な範囲スタンとNautilusの単体拘束能力を活かして集団戦を開始し、それらの後ろからAzirとSivirが範囲攻撃を繰り広げる形が理想だ。
ShenはテレポートとULTを有効活用するためにTopかBotを1人で押し上げ、マップ全体に圧力をかけていくだろう。RJはいかに集団戦を開始するかということよりも、いかに敵を5人集まらせるかが重要になってくる。タワーやドラゴンといったオブジェクトに圧力をかけ、敵をそこに集めるような動きが必要になるだろう。
DetonatioN FocusMe(以下FM)の構成は少数戦が核となっている。
MaokaiとReksaiは単体拘束能力に優れ、Vayneは少数戦に特化しているともいえるADCだ。
Viktorは範囲攻撃能力もあるが単体攻撃能力も同様に優れている。JannaはULTで集団戦を分断して小規模戦を作り出すことが狙いだろう。一方で範囲攻撃能力をもったChampionがViktorしかいないため、集団戦は苦手としている。いかに少数戦をつくりだし、集団戦を回避するかがFMの重要なポイントになるだろう。
In-Game
序盤はRJがレーンスワップ戦術を実行したため、静かな立ち上がりになった。
Nautilusがミスから倒されてしまうものの、おおむねRJの狙い通りの展開に持ちこめていたと言っていいだろう。一方のFMは1キルとったものの、そこから試合を加速させることができていなかった。
そしてRJがBotのタワーを折ったあとから試合は大きく動き始める。
優先すべきオブジェクト
チームの構成によって優先すべきオブジェクトは変化する。
Team Compositionの項で確認した通り、RJは集団戦が得意な構成であり、一方のFMは少数戦が得意な構成だ。それぞれ構成の特色が違うため、当たり前のようにその強みを発揮するための準備や土台といったものも違う。
RJの構成はいかに集団戦を作り出すかが重要だ。その際、敵5人を一ヶ所に集めるような動きを意識しなければならない。集団戦が起きやすいのはオブジェクトの周辺だ。互いにオブジェクトを奪い合うような状況を作り出せば、おのずと味方も敵もそれぞれ5人が集まるような形になる。
では最も集まりやすいオブジェクトはなんだろうか。それはドラゴンとバロンであると言えよう。
バロンは言わずもがな、試合にとてつもなく大きな影響を与えるオブジェクトだ。敵に確保されてしまうと一気に厳しくなるし、反対に自らが確保できれば勝利へと大きく近づく。
ドラゴンは少し特殊だ。5種類のBuffが手に入り、それぞれの段階で相手への脅威は大きく違う。1つ目や2つ目のBuffではそこまで重要視されない。しかし3つ目以降は重要視され、5つ目となるとバロンと同等かそれ以上に重要視される。
この2つのオブジェクトをめぐる集団戦は、それぞれ「バロンファイト」や「ドラゴンファイト」と指す単語があるほど頻繁におこなわれる。
一例を観てみよう。今シーズンのRound4に行われたImmortals 7th heavenとOzone Rampageの試合で発生した集団戦、いやドラゴンファイトだ。
ひるがえってRJのこの試合における判断を確認してみよう。
RJはすでにドラゴンを1度確保しており、なおかつ次のドラゴンが1分後に現れる状況でBotの1つ目のタワーを破壊した。次のドラゴンに向けて、かなり有利な状況を作り出せたと言えるだろう。
1度リコールして装備を整え、Botのミニオンウェーブを押し上げてからドラゴンに近づけばFMに大きな圧力をかけることになるだろう。FMがドラゴンに寄ってきたら集団戦を始めればよいし、寄ってこなかったらドラゴンを狩ればよい。
そして3つ目のドラゴンに備えて丁寧な試合運びを続ければ状況はどんどん有利になっていく。
しかしRJはドラゴンではなくTopのタワーを優先してしまった。FMはBotの1つ目のタワーとドラゴンを確保する。この判断によりRJは集団戦を起こす機会を失ってしまった。
少数戦とタワーの関係
一方のFMの構成はドラゴンよりもタワーのほうが優先順位が高い。
もちろん、相手のドラゴンの状況が3つ目や4つ目になるとドラゴンを優先しなければならないが、それまではドラゴンを無視してタワーを狙っていくことが多い。ドラゴンの優先順位が低いのは簡単に理解できるだろう。集団戦をしたくないからだ。
彼らの構成は少数戦に特化しており、反対に集団戦を苦手としている。
さきほどから述べているようにドラゴンは集団戦を誘発しやすいオブジェクトだ。少数戦に特化した構成であればドラゴンの優先順位はおのずと低くなってしまう。もちろん、集団戦をせずにドラゴンを確保できるのであれば、しっかりと確保することは重要だ。そうすることで、後々の集団戦が発生する可能性を摘み取ることができる。
ではタワーはどうだろうか。少数戦とタワー、簡単に結びつけることはできないだろう。しかしこの2つは関係し合っている。それはいくつかの要素に分解できる。
タワーとレーニング
タワーの有無によってレーニングのやり方は大きく変わってくる。
タワーのある状況であれば、互いに力関係に差のない、イーブンのレーニングが可能だ。
そこにChampionの相性や装備差、JunglerやTopのテレポートが影響して差が生まれていくが、開始の時点で大きな差はない。しかしタワーがなくなるとそれは大きく変化する。たとえ装備やChampionの相性といったものに差がなかったとしても、タワーがない方は消極的なレーニングにせざるをえなくなる。
タワーはGankを受けた際の逃げ場として使われることが多い。
そしてタワーが破壊されたことによってその逃げ場がどんどん遠くなっていく。そのためGankを恐れて前に出られなくなっている。もしすぐ後ろにタワーがないにも関わらず押し上げてくるChampionがいたらGankをすればよい。まずはここが少数戦の狙いどころのうちの1つだ。
タワーとミニオンウェーブ
そしてこのようなタワーが折れた状況で大きなミニオンウェーブを押しつけると少数戦が起きる可能性は広がっていく。
上のスクリーンショットで、右下のミニマップを確認してほしい。
TopでVayneがミニオンウェーブをコントロールしている様子が確認できるだろう。敵のミニオンを全て処理するのではなく、いくつか残しておくことによって味方のミニオンウェーブを巨大化することができる。Vayneはその作業を行っている。
そしてそのミニオンウェーブに対処するためにSivirがTopに向かった。ミニマップのRJの配置を確認すると、Topに1人、Mid周辺に3人、Botに1人だ。FMからすると得意の少数戦を起こすことが可能になっている。どのChampionを狙うかが問題だが、相手はマップ全体に散らばっており主導権はFMが握っている。
FMはTopのSivirを選択した。Vayneはこういった少数戦や1v1に優れており、その性能を遺憾なく発揮できる状況だった。タワーが残っている状況だったがSivirを倒しきることに成功する。
今回の例ではタワーがある状況だったが、前述の通りタワーがない状況のほうが成功率は高いと言える。今回のようにTopを狙うのでもいいし、SivirがTopへ現れるのと入れ替わるようにVayneがMidに移動し、Midで数的優位の状況での少数戦をしかけるという判断も可能だ。
サイドレーンのミニオンウェーブをコントロールすることによって、相手のChampionの配置をコントロールすることができ、そしてそれが少数戦の可能性を作り出していく。
タワーが折れている状況だと、その効果は大きく高まっていくだろう。それが相手への圧力へと変わり、その圧力を活かしてマップのコントロールや、ドラゴンやバロンのコントロールへとつなげていく。これらが少数戦に長けた構成における勝利への青写真だ。
チーム構成とオブジェクトの優先順位
最後に「集団戦構成」と「少数戦構成」におけるオブジェクトの優先順位をまとめておこう。
「集団戦構成」ではドラゴンの優先順位が高く、敵のタワーは低い。また、味方のタワーを守ることもドラゴンと同様に優先順位が高い。敵に少数戦の可能性を作り出させないためであり、サイドレーンのミニオンウェーブコントロールの主導権を手渡さないためだ。
「少数戦構成」では敵タワーの優先順位が高く、ドラゴンは低い。そして、味方のタワーはドラゴンよりも優先順位が低い。もちろん相手にタダで明け渡すことはよくない。「味方のタワーを相手に差し出し、逆に相手の他のレーンのタワーを折る」というような動きが理想だ。そうすることが少数戦の可能性を生みだし、ミニオンウェーブコントロールの主導権につながっていく。
少しのミスが大きな代償につながる緊迫した試合に
FMはRJの判断ミスを活かしてVayneのSivirとの1v1を作り出した。
そのまま少数戦の圧力を活かし金額差を広げ、不得意な集団戦にも勝てるだけの装備差を生みだした。この試合は構成の理解度が勝敗を分けたと言える。
RJはこの試合を糧に、そしてFMはより洗練させていくことが今後のチームの発展につながっていくだろう。
[写真提供:SANKO]