特集、その他

過去最大“14TB HDD”は段違いの性能、一般的なHDDと何が違うのか比較してみた

SeagateのNAS向け「IronWolf」の14TB HDDをチェック text by 坂本はじめ

遂に登場した14TBのHDD「Seagate ST14000VN0008」

 SeagateよりHDDの最大容量となる14TBを実現したHDDが発売された。

 NAS向けやデスクトップPC向け、監視カメラシステム向けなど、Seagate製14TB HDDは5モデルの投入が発表されているが、今回は、その中からNAS向けHDDのIronWolfシリーズに属する「ST14000VN0008」のレビューをお届けしよう。

 今回は、最新技術が投入されたNAS用HDDはどのようなものなのか、一般的なデスクトップPC向けのモデルとは何が違うのか、速度はどれだけ高速なのかといったあたりを中心に検証してみた。

 NAS用としてだけでは無く、ハイエンドHDDとしても使用できる高いパフォーマンスを発揮しているので、是非結果を確認してもらいたい。

HDD最大容量となる14TBを実現したヘリウム封入HDD筐体の設計も改良、Friction Stir Welding方式に

 Seagate ST14000VN0008は、SeagateのNAS用HDDブランド「IronWolf」の最大容量モデルとなる3.5インチHDDだ。ヘリウムガス封入技術によって内蔵するプラッタの枚数も増やし、14TBもの記憶容量を実現している。

 基本的なスペックは、ディスク回転数7,200rpm、キャッシュ容量256MB、インターフェイスには6Gbps SATAを採用。24時間365日の常時稼働に対応し、年間180TBワークロードに耐える耐久性と、MTBF 100万時間という信頼性の高さを備えている。

Seagate ST14000VN0008。ヘリウムガス封入技術によって14TBを実現した。
筐体底面。インターフェイスは6Gbps SATA。
CrystalDiskInfoの実行結果。
NTFSでフォーマットした状態。Windowsは記憶容量を2進接頭辞で計算するため、14TB HDDの利用可能な容量は12.7TBとなる。

 最新のヘリウム封入HDDであるST14000VN0008では新設計の筐体を採用。筐体の接合方法をレーザー溶接から摩擦熱融着接合方式(Friction Stir Welding)に変更することで、接合部分の高強度化と製造時間の短縮を実現した。

 メーカーによると、こうした新設計の筐体にすることで、従来のヘリウム封入HDDよりも短期間かつ安定したペースでの供給が可能となったという。

筐体の厚さは最大26.11mm。側面には摩擦攪拌接合による接合部が確認できる。
摩擦熱融着接合の接合部。高強度かつ気密性の高い接合を実現する摩擦攪拌接合は、ヘリウム封入HDDに適した接合技術だ。
従来のSeagate製ヘリウム封入HDD「ST12000VN0007」(写真右側)と並べたところ。従来のモデルは面と面が接地する角の部分をレーザーで溶接していたが、今回のモデルは側面から見てHDDの中央あたりで接合されており、筐体設計が大きく変更されたことがわかる。

 また、従来のSeagate製ヘリウム封入HDDでは、側面と底面のねじ穴が標準的なHDDとは異なる配置となっていたが、ST14000VN0008では側面のねじ穴の位置が標準的なHDDと共通化された。

 底面のねじ穴については、標準的なHDDとは異なる従来のヘリウム封入HDDと同様の配置のままだが、PCケースなどでHDDの固定に用いられることの多い側面のねじ穴が標準的な配置となったことで、取り付け時にねじ穴配置が問題になるケースは少なくなるだろう。

従来品とのねじ穴位置の比較
本体側面。手前からST14000VN0008、従来のヘリウム封入HDD(ST12000VN0007)、標準的なHDD(ST4000DM004)。
本体底面。左からST14000VN0008、従来のヘリウム封入HDD、標準的なHDD。

データ書き込みはかなり高速、最新14TB HDDのパフォーマンスをチェック

一般的なHDDとして、Seagate BaraCudaシリーズの4TBモデル「ST4000DM004」(右)を使い、ST14000VN0008(14TB)との比較を行った。

 ディスクベンチマークなどでのテストを通して、最新鋭のHDDであるST14000VN0008のパフォーマンスをチェックしてみよう。

 今回のテストでは、スタンダードHDDの代表モデルとしてSeagate BaraCudaシリーズの「ST4000DM004(4TB/5,400rpm)」を用意し、いくつかのベンチマークテストで比較を行っている。スタンダードなHDDとハイエンドHDDの性能の違いにも注目してもらいたい。

 各テストはCore i7-8700Kを搭載したIntel Z370環境で実行した。その他の機材については以下の通り。

CrystalDiskMark 6.0.1で速度を計測、シーケンシャルリードは260MB/sオーバー

 まずは定番ディスクベンチマーク「CrystalDiskMark 6.0.1」の結果から見ていこう。

 標準設定であるテストファイルサイズ1GiB設定では、ST14000VN0008(14TB)のシーケンシャルリードとライトはともに260MB/sを超えており、どちらも170MB/s前後だったST4000DM004(4TB)を90MB/s近く上回った。

テストファイルサイズ 1GiB
ST14000VN0008(14TB)のスコア
ST4000DM004(4TB)のスコア

 テストファイルサイズを32GiBに設定した場合でも、ST14000VN0008(14TB)のシーケンシャルアクセス性能は260MB/sを超えている。

 スペック上の最大連続データ転送速度は210MB/sとされているST14000VN0008(14TB)だが、クリーンな状態ではスペック値を上回る実力を備えているようだ。

テストファイルサイズ 32GiB
ST14000VN0008(14TB)のスコア
ST4000DM004(4TB)のスコア

HD Tune Pro 5.70でプラッタの外周・内周の速度をチェック

 ディスクベンチマーク「HD Tune Pro 5.70」を使い、ST14000VN0008のディスク外周から内周までのシーケンシャルアクセス性能を確認してみた。テストではブロックサイズを8MBに設定している。

 転送速度はリード・ライトともに250MB/sを超える辺りからスタートし、最内周でも110MB/s程度の速度を保っていた。最内周で100MB/sを超える速度も優秀だが、中間地点である7TB付近でも200MB/sを超えている点も注目だ。

 ST14000VN0008は、高速な外周部が使えるクリーンな状態のみならず、かなりデータを入れた状態でも高速な読み書きが期待できるHDDであると言えるだろう。

リード性能ベンチマーク。
ライト性能ベンチマーク。

ゲームは一般的なHDDよりも10~20%高速に

 ST14000VN0008(14TB)とST4000DM004(4TB)で、ゲームのロード時間にどの程度の違いが出るのかチェックしてみた。

 使用したタイトルは「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」、「モンスターハンター:ワールド」の3本。

「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」
「モンスターハンター:ワールド」

 ロード時間の差はシチュエーションとタイトルによって多少の差はあるが、ディスクアクセスの多い場面ではおおむね2割ほどST14000VN0008の方が高速な結果となっている。

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONのセーブデータのロードでは10秒以上の差がついており、最新のHDD同士でもスタンダードなHDDとハイエンドHDDでは、ゲームでのパフォーマンスにおいても少なくない差が生じるようだ。

ファイルコピー性能を比較、データ書き込みは圧倒的に14TBが高速

 今回のテスト環境にデータ用SSDとして搭載したNVMe SSDから、各HDDへファイルのコピーを実行し、転送開始から完了までにかかった時間を比較してみた。

 ファイルコピーに用意したのは、先のテストで利用したゲームなどを収めた「ゲームフォルダ」と、ゲームのプレイ画面を録画したファイルを収めた「録画データ」だ。ゲームフォルダは70,466ファイルで約168GB、録画データは39ファイルで約100GBという構成となっている。

ゲームフォルダ。70,466個のファイルが収められており、合計容量は約168GB。
録画データ。ファイルの数は39個で、合計容量は約100GB。

 ファイル容量が大小様々なゲームフォルダのコピーは、シーケンシャルアクセスだけでなく、ランダムアクセス性能も問われる。そのゲームフォルダのコピーにST4000DM004(4TB)が30分22秒を要したのに対し、ST14000VN0008(14TB)は約9分早い21分25秒でコピーを完了した。

 ST14000VN0008(14TB)の平均データ転送レートは140.5MB/sで、99.1MB/sであったST4000DM004(4TB)よりも約42%高速だった。

 ファイル1個あたりの容量が大きい録画データのコピーは、HDDのシーケンシャルライト性能と、その一貫性を反映したものとなる。

 ST14000VN0008(14TB)は7分10秒で約100GBのファイルコピーを完了し、12分20秒を要したST4000DM004(4TB)を大きく上回った。ST14000VN0008(14TB)の平均データ転送レートは249.7MB/sで、ST4000DM004(4TB)を100MB/s以上高速だった。

NAS運用の信頼性をより高めるカスタムファームウェア「AgileArray」

 ここまでのテストでは、ハイエンドらしく高性能なHDDと言った印象のST14000VN0008だが、Seagate IronWolfシリーズはNAS向けに最適化されたHDDである。

NAS向けにチューニングされたファームウェア「AgileArray」を採用。大きく分けて5つの機能を備えている。

 ST14000VN0008は、IronWolfシリーズ独自のファームウェア「AgileArray」を備えており、データ処理の高速化と電源瞬断時のデータ保護を行う「Media Cache」、起動をゆっくり行うことでピーク消費電力を抑制する「Start UP Current Limit」、ストリーミングコマンドのサポート、RAIDの可用性を高める「RTL」、SMARTよりも詳しいステータス情報をNASに提供する「IronWolf Health Management」などを備えている。これらの機能は通常のHDDにはない特別なものだ。

SMARTよりも詳細な情報をNASに提供するIronWolf Health Management。これにより、NASはストレージの管理/運用を信頼性の高い状態で行うことができるようになる。
Snology製のNASでIronWolf Health Managementを利用した場合の例。SMARTとは別に専用の項目が用意されていることがわかる。

 また、振動を検出するためのRVセンサーを搭載しており、センサーから得た情報をもとにヘッドの位置決め制御に補正を掛け、パフォーマンスを維持する機能も備えている。複数台のHDDを搭載してRAIDを構築する場合などに有効だ。

HDDからは振動が発生し、複数台搭載した際などは互いに干渉してしまう。RVセンサーはそうした外部からの振動などによる影響を最小限にするもので、性能低下などを防ぐことができる。
NASの主要メーカーはこうしたIronWolf独自機能への対応をうたっており、現行モデルであれば数多くの製品がサポートしてる。

 AgileArrayによって提供される機能の恩恵を得るには、同機能に対応したNASで運用する必要があるが、24時間365日の常時稼働や年間180TBのワークロードに対応可能な耐久性と、MTBF 100万時間という信頼性の高さは、NASで運用するユーザーに限らず、多くのユーザーにとってメリットのあるものだろう。

 なお、ST14000VN0008は登場して間もないこともあり、IronWolf Health Managementの機能を利用するにはNASメーカーの対応待ちという状態になっているが、順次サポートされていく予定だ。

NASや多数のHDDを運用する自作PCで使いたい14TB HDD、24時間365日稼働もOK

 現行最大容量の14TB HDDのひとつであるST14000VN0008は、標準的なHDDを上回るパフォーマンスと、NASでの運用に適したファームウェアや機能を備えたHDDだ。特にデータを書き込む用途には通常のHDDよりもかなり高い性能を発揮してくれる。

 最適な運用方法はNASへの組み込みだが、単純に大容量かつ高性能なHDDでもあるので、大容量の写真や動画を扱うクリエイティブな用途や、バックアップ用HDDとしての運用など、用途を問わずに使うことができる。

 24時間365日稼働を前提とした設計のモデルなので、常時PCを付けっぱなしにしているヘビーユーザーの倉庫用HDDとしてもおすすめだ。