ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち
ナショナル最後のMSX(1)「FS-1300」
2025年5月1日 10:05
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げたのは、ナショナルブランドのMSX(1)としては最後発となった機種、FS-1300となります。
1985年にMSX2規格が登場すると、最初は各社ともにFDD搭載のセパレート型のMSX2を市場へと投入し始めました。MSX2があればMSX(1)(以下MSX)の代わりにもなるわけですから、そうなると徐々にMSXの新機種は少なくなっていくものの、尖った特徴を持ったMSXは立ち位置が明確でユーザーに訴求しやすいため、いくつかのメーカーはそういう部分をポイントにして新しい機種をリリースしていきます。
そのうちの1社に、1985年半ばにワープロ・パソコンのMSXワーコン・FS-4000をナショナルブランドでリリースした松下電器産業がありました。そして同年末、ナショナルブランドのMSXとしては最終機種となる、シンプルなハードのFS-1300を発売することになります。
基本的なスペックはMSX規格準拠ですが、2つのスロットと64kbytesのメモリを搭載していたのが特徴となります。外見は、以前に同社が世に送り出していたCF-1200やCF-2700と同じで、価格はこの時期のMSX機種としてはお手頃価格と言える39,800円でした。
既存機種で使用した外観デザインを流用することで販売価格を抑えることに成功したほか、背面部分はFS-4000から印刷関連スイッチとRGB21ピン接続を取り払いシンプルにすることで、コスト削減につなげていたのではないかと考えられます。カラーリングに関しては、CF-2700のブラックに対してシルバーメタリックを採用したことで、よりメカニックなイメージを打ち出していました。
それでも、プログラムのデバッグ時にあると便利なプリンタを繋ぐためのプリンタポートは備えられていることから、ゲームだけでなくプログラミングにも活用してもらおうというのが、メーカー側の考えだったかもしれません。
本体パッケージには、付属品としてジョイスティックのCF-2211が同梱されていました。これはいわゆるジョイパッドと呼ばれるものではなく、スティックがニョキッと突き出た、その昔によくあったアメリカン(?)なタイプのもので、それほど使い勝手に優れているというわけではないという印象があります。それでも、キーボードでの操作よりはやりやすいという人も多かったようなので、こういったジョイスティックのあるなしで、どの本体を購入するかが決まった、という人もいたのではないでしょうか。
本体の装備としては、ジョイスティック端子が2つとRF・コンポジットの出力を備えている標準的な仕様でしたが、重量が約3.6kgと思ったよりもズッシリときます。置きっ放しなら良いのですが、親の目を盗んでは引っ張り出して遊び、気配を感じたら隠すという時などは、その重さにちょっと手間取ったかもしれません(笑)。
1986年のMSXというと、カシオがMX-10を19,800円という価格で発売した事で、相対的に他社機種が高く見えてしまうという時期でした。それでも基本的な構成であれば、YAMAHAを除くとほぼ5万円以内でメモリ32Kbytes以上、2スロット完備というMSXを買うことが出来たのですが、この年の10月2日から開催された「エレクトロニクスショウ'86」にて、29,800円という衝撃的な価格のMSX2「FS-A1」がパナソニックから、そして32,800円のMSX2「HB-F1」がソニーから相継いで発表され、MSXは市場的にもその役目を終えたということで、MSX2へと道を譲ることになっていきます。
ちなみに、同タイミングで発表されたMSXには、日立のMB-H50とカシオのMX-101がありました。前者は、キーボードと本体がセパレートになっていつつも24,800円。後者はテレビと直接繋がなくても、付属のアンテナからUHFで電波を飛ばしてテレビで受信させることで映像を映し出すことが出来るという特徴を持ちながらも、MX-10と同スペック同一価格を実現していました。
両機種とも、もう少しの金額を足せばMSX2が購入できてしまうのですが、現在のフリマアプリやオークションマーケットを見てみるとそれなりの数が出回っているので、数千円の差でも安い方を買った人が大勢いたということだと思われます。つまり、それだけ需要があったということの裏返しとも言えるかもしれません。
さらに、MSX向けの名作ソフトとして名高い『グラディウス2』が1987年に発売されていることなどを考えれば、新機種が登場しなくてもMSXはまだまだ現役で頑張れたハードだといえるでしょう。