週刊3Dプリンタニュース

3Dキャラを手軽に作成、なぞるだけの「Make 3D vol.2」体験記

~3Dプリンタを活用した「さわれる検索」が登場~

 今週の週刊3Dプリンタニュースは、画面をなぞるだけで3DキャラをモデリングできるiPad用アプリ「123D Craeture」を使ったワークショップの体験記と、3Dプリンタを活用した次世代インターネットサービスについてのニュースをお届けしよう。

画面をなぞって、3DキャラをモデリングiPadの無料アプリで

講師を務めた土屋徳子氏。画像編集ソフトや画像加工のテクニックになどに関する執筆が多数あり、イラストレーターとしても活躍中だ
123D Creatureを使って、クマのぬいぐるみのモデリングをしている娘。初めて触るソフトだが、直感的にモデリングが可能なので、すぐに慣れていた
土屋氏が操作するiPadの出力が大型ディスプレイに映し出されており、参加者はその画面を見ながらiPadを操作していた
形が完成したら、次は色をつける作業に移る
身体に色をつけてから髭や目を描く
内蔵カメラで写真を撮影し、その写真の上に作成した3Dモデルを合成できる
今回のワークショップで、娘が作成したぬいぐるみの3Dモデル

 9月7日と14日、オリジナルキャラクターのモデリングを行うワークショップ「Make 3D vol.2 ~iPadでオリジナルキャラクターをつくろう~」が、東京・渋谷の「FabCafe」で開催された。

 このワークショップは、Autodeskの無料iPadアプリ「123D Creature」を使って簡単にオリジナルキャラクターの3Dデータを作る方法が学べるというものだ。7月にも開催され、好評だったので、また開催されることになったという。特に子供向けのワークショップというわけではないが、iPadの画面を指でなぞるだけで、直感的にモデリングが行えるので、子供でも大丈夫だ。そこで筆者の小3の娘も参加させてもらったので、その様子を紹介する。

 講師を務めたのは、イラストレーター/ライターの土屋徳子氏である。ワークショップの定員は10名で、毎回ほぼ満員だったという。このワークショップでは、Autodeskの無料iPadアプリ「123D Creature」を利用してキャラクターの3Dモデリングを行うものだが、参加者は各自のiPad(貸し出し用も用意されていた)を使って、まずは猫のぬいぐるみのモデリングに挑戦した。123D Creatureは、その名の通り、クリーチャーに特化した3Dモデリングツールであり、誰でも簡単に人間や動物などのモデリングができるように配慮されている。

 123D Creatureで、キャラクターを作る手順は次のようになる。

 まず最初に、人型のベースが表示されるので、関節の長さを調節したり、太さを調節したりして、基本となる骨組み(スケルトン)を作る。次に、スカルプトと呼ばれる機能で、肉付けや削りを行う。例えば、鼻の部分を引き出したり、鼻の穴を空けたりといった感じだ。形状ができたら、ペイント機能で色を塗ったり、シールを貼って、見た目を整え、最後に背景と合成してレンダリングすれば完成だ。

 なお、背景は用意されているものだけでなく、iPadのカメラで撮影したものも利用できるので、現実世界の中に自分で作ったキャラクターがいるような画像を合成できる。FDM方式のパーソナル3Dプリンタでは、基本的に単色での出力となるので、3Dプリンタで出力するだけなら、色や背景はあまり関係ないが、せっかくキャラクターを作るのだから、やはり色も綺麗に塗りたいところだ。

 このワークショップでは、前半の1時間くらいで、くまのぬいぐるみを元に基本操作を習得し、後半の30分は、自由に好きなキャラクターを作る時間にあてられた。ワークショップの中では、時間の都合もあり、実際に作成したキャラクターを3Dプリンタで出力する作業は行われなかったが、最後に、ロフトワークの川井敏昌氏が、123D Creatureで作成した3Dデータをクラウドに保存して、STLデータとしてダウンロードする方法と、ダウンロードしたSTLデータを、FabCafeに設置されている3Dプリンタ「Cube」を使って出力する方法について解説した。参加者には、特典として、1カ月間有効のFabCafe3Dプリンタ半額利用券が配布されたので、実際に3Dプリンタで出力したいのなら、後日自分で出力することができる。

 娘は今回初めて123D Creatureに触れたが、土屋氏の解説もわかりやすかったようで、すぐに操作方法をマスターし、モデリングを楽しんでいた。iPad専用ソフトだが、無料でダウンロードできるので、人間や動物などのキャラクターを3Dで作ってみたいという人は、是非試してみてはいかがだろうか。

最後に、ロフトワークの川井敏昌氏が、3Dデータをクラウド上に保存してSTLデータに変換する方法について解説した
3Dプリンタ「Cube」がテーブルに置かれ、出力例も展示されていた
実際に出力したところ。今回のワークショップでは、時間の都合もあり、実際に3Dプリンタで出力するまではやらなかったが、FabCafeの3Dプリンタを半額で利用できる券がもらえた
川井氏は、Cube用のデータ変換ソフトである「Cube Software」の使い方も解説してくれた
骨組みから完成まで
人型ベースを調節中。膨らましたり伸ばしたり
骨組みを追加して耳を作成
鼻を追加
色を塗っているところ
だいたい完成してきた。ここまでで40分ほど
iPadのカメラで撮った背景と合成

検索したものに「さわれる」体験、音声認識+3Dプリンタで盲学校でも試験導入

さわれる検索プロジェクトサイト。一般からも3Dデータを広く募集している
試作されたさわれる検索マシン。中に3Dプリンタが入っている
さわれる検索マシンを、盲学校の生徒たちが利用しているところ。赤いボタンを押しながら、検索したいものを言うと、検索が行われる
3Dプリンタで車を出力しているところ。盲学校の生徒が、出力中の様子を見ることはできないが、3Dプリンタの動作音は感じられるだろう
幼稚部の子供が、出力物を手で触っているところ
こちらは低学年グループ(小1~3年生)での風景

 9月17日、Yahoo!JAPANを運営するヤフー株式会社は、次世代インターネットサービスに関する新コンセプトモデル「さわれる検索」、およびそのコンセプトを具現化した「さわれる検索」プロジェクトを発表した。

 さわれる検索のコンセプトは、文字通り、情報を「さわる」ことにある。具体的には、3Dデータベースと3Dプリンタを融合させ、音声入力によって認識されたキーワードから、その物体の3Dデータを検索、さらにその3Dデータを元に3Dプリンタで実際の立体物を造形し、出力するという仕組みだ。

 この「さわれる検索」は、あくまで次世代サービスのコンセプトモデルであり、すぐに事業化する予定はないが、コンセプトを具現化した試行プロジェクトとして「さわれる検索」プロジェクトが9月4日にスタートしている。プロジェクトでは、3Dプリンタを内蔵した「さわれる検索」マシンを試作、実際に筑波大学付属視覚特別支援学校(盲学校)の生徒たちへ向けて、9月13日まで同校内に試験的に設置した。また、9月20日から10月18日までの約1ヶ月、同校内に「本格導入」として設置、生徒に自由に体験してもらうという。

 さわれる検索プロジェクトサイトでは、実際にその様子を見ることができるほか、出力するための3Dデータの募集も行っている。3Dモデリングが得意な人なら個人でも応募できるほか、このプロジェクトで収集された3Dデータの一部は、期間限定で無料提供されるので、3Dモデリングのスキルがなくても、3Dデータをダウンロードして自分で出力してみることができる。いわば、インターネットの未来に触れることができるのだ。

 もちろん、現状のパーソナル3Dプリンタでは、出力できる物体のサイズがそれほど大きくないとか、出力に時間がかかる(メイキングビデオを見ると、手のひらサイズの物体で20~30分程度)といった不満もあるが、「3Dデータがあれば、その場でどんな形状でも出力できる」という3Dプリンタならではの活用事例といえる。

(石井 英男)