ボクたちが愛した、想い出のパソコン・マイコンたち

ナショナルが世に送り出したハンドヘルドコンピュータ「JR-800」

 想い出のレトロパソコンやゲームを写真とともに振り返る本コーナー。今回取り上げるのは、ナショナルが1983年に発売したハンドヘルドコンピュータ「JR-800」です

 1982年、日本初のハンドヘルドコンピュータとなるHC-20が発売され、ハンドヘルドコンピュータという文化が花開きましたが、その翌年に登場したのがナショナル(松下通信工業株式会社・電卓事業部)の“持って歩ける高性能”とうたわれた「JR-800」です。

広告では機動性を前面に押し出していました。“高度な科学技術計算も正確にこなす単精度10桁”と書かれているので、そちらの方面での活躍を狙ったのでしょう。

 奥行きが143mm、幅260mm、高さが34mmという“ほぼ”B5サイズで重量が約710g(乾電池含む)と、当時としてはかなりコンパクトに完成されています。搭載されているRAM容量は16KBで、32KBまでは拡張可能でした。もちろん、ACアダプタだけでなく乾電池で稼働させることもできるので、コンセントの無い場所での作業もOKです。カタログスペックによると、乾電池を使用したときは70時間使えると書かれていますが、丸三日間使えたのであれば電池の持ちはかなり良かったといえるでしょう。

 また、同時期に発売された音声認識パナボイス「JH-600」と接続することで、音声によるプログラムの入力やコントロールが可能と広告で謳われていました。

別の広告ページでは“持って歩ける高性能”を謳っていました。別売りのオプションが必要でしたが、この時代に音声でのコントロールが可能というのは、実用性は別としても時代の先を進んでいたと思います。
本体はケースの中に納められています。この状態で持ち歩けば、多少の汚れからは守ることが出来ます。
カバーを開けると、上部には簡易マニュアルが貼り付けられています。BASICは、JR-HuBASICと書かれていますが、名前から推察すると当時のハドソンが何らかの形で関わっていると思われます。

 解像度は、テキストは32文字×8行、グラフィックは192×64ドットとなっていて、5オクターブ単音で音を鳴らすことも出来ます。まずまずのスペックですが、定価が128,000円だったことを考えると、ゲームなどが目的であれば選択肢に入らないパソコンだったのは間違いないでしょう。サイプレスというソフトハウスがJR-200向けに十数本ほどソフトをリリースしていましたが、JR-800向けのタイトルは宣伝されておらず、今のところJR-800向けのゲームタイトル情報は不明な部分も多いです。

キーはゴムなのでフニャフニャしていますが、慣れてしまえばサクサクと入力できます。

 実際に使用してみると、キーがJR-200などと同じゴムのためにタッチ感覚は良くないですが、思った以上に問題無く使えます。CTRLキーを押しながら入力すればBASICの各命令を一発で打ち込めるなど、使い慣れれば打鍵感以外に不満はなくなりそうです。電源のオンオフボタンが危なっかしい所に配置されていますが、間違えてオフを押しても今のPCでいうところのスリープモードに一瞬で入るだけです。オンのボタンを押せばレジュームされ、即座に作業が続けられるのは便利でした。

背面には左から電源接続端子、データレコーダへ接続するためのモニタ・リモコン・マイク端子、外部バスコネクタ、シリアル端子、液晶の視角調整ダイアルが用意されています。