COMPUTEX AKIBA出張所

「新生SilverStone」は楽しさも目指す! 新たなスタートを切るSilverStoneが目指すものとは?

自ら「低迷期」と言う時期を越えて示した大きな変化 text by 鈴木雅暢

Product Marketing Manager
Tony Ou氏

「近年は新しいヒット作がなく低迷していましたが、当社は変わります。これからの新生SilverStoneを見てください」

 長年製品企画を担当するTony Ou氏は、いきなりこう切り出した。質実剛健で理論派、小型化や静音性重視の製品が得意な同社だが、言われてみれば、近年は大きな話題となったり、ド定番になったりする製品はなかった。確かに地味な印象だったが、それが個性でもあった。「変わりたい」と言うTony氏の真意をうかがうとともに、新生SilverStoneを象徴する次世代製品を紹介する。

技術主導だけではなく、ユーザーが楽しめるものへ

イメージカラーが反映されているSilverStoneの新旧名刺。新しいカラーは高級感を意識したと言う。ロゴに入れていた「Design Inspiration」の文字も省いた
デザインを一新したSilverStoneのWebサイト。ちなみに、当日Tony氏が着ていたポロシャツは旧デザインがベースだったが、これらのアイテムも順次刷新するとのこと

――:今回の展示のテーマを教えてください

[Tony氏]:「変化」もしくは「新生」とでも言いましょうか。とにかく、当社に対するイメージを一新したい。そして、自らが「変わりたい」という思いを前面に打ち出しました。

――:もう少し詳しく教えてください

[Tony氏]:従来の当社の製品は機能性を強く求めてきました。天面排気で煙突構造のPCケース「RAVEN」や静圧重視設計のファンもそうですが、エンジニア主導で自分たちがこういう技術でこういう機能性のものを出したい、というものを出してきました。これらの製品は当社の理念を反映したものであり、誇りを持っています。しかし、これからはそれだけでは不十分だと気付きました。

 最近のPC、自作PCを取り巻く状況は変化しています。たとえばですが、PCケースですと、RGB LEDや強化ガラスといった仕様が流行しています。これらは冷却性能や静音性、使い勝手にまったく関係がなく、当社は重視してきませんでした。しかし、性能や機能も重要ですが、それだけでは不十分で、ユーザーがもっと自作自体を楽しめる要素も重要であると気付いたのです。

――:なるほど

[Tony氏]:もっと柔軟にならなければいけないと考えています。ユーザーや販売店などの意見を積極的に取り入れ、ユーザーの欲しいもの、楽しめるものを考案していく必要があります。そのためには、当社自身が変わっていく必要があると決意しました。イメージカラーやロゴデザインを変え、Webサイトも一新しました。

――:変化、新生に対して、かなり強い決意、意気込みを感じます。具体的にどのような内容なのでしょうか

[Tony氏]:PCケースでは次世代RAVENのプロトタイプを参考展示しています。シリーズの特徴である煙突効果を最大限活用するための90°回転配置を維持しつつ、現代的な要素を取り入れています。

――:現代的、とはどの辺りでしょう?

[Tony氏]:アドレサブルRGB LEDのパーツやビデオカードを見せたいというユーザーが多いので、左右と前面を半透明ガラスとした3面ガラス仕様とします。エアフローにもこだわり、ブロアーファンでブラケット側に排気するリファレンス仕様のビデオカードだけでなく、メーカーのオリジナルカードも効果的に冷却できるように設計を詰めているところです。底部のファンも新設計です。

 もう一つは水冷対応。従来のRAVENは空冷が前提でしたが、本格水冷も想定して内部のスペース、エアフローを作り込んでいます。

SilverStoneブースに展示されていた次世代「RAVEN」のプロトタイプ。フロントも半透明ガラスとする3面ガラス構造
現行のRAVEN 5同様、マザーボードは、IOパネル側が天板にくる90°回転配置。本格水冷が搭載できるスペースを確保し、エアフローも調整する。底部のファンも新設計したと言う
反対側から見た様子。配線が見える面は半透明といってもかなり濃い色を付けている

新生を象徴するコンセプトモデル

――:これまでのイメージにはないコンセプトモデルも展示されていますね

[Tony氏]:次世代のコンセプトモデルとして「ALTA(アルタ=至高)」、「SETA(シータ=道標)」、「FARA(ファラ=自由)」という3ブランドの開発中製品を参考展示しています。いずれも、最近の流行であるアドレサブルRGBや強化ガラス仕様などを取り入れつつ、当社の理念を反映させたものです。

――:これはインパクトがあります

[Tony氏]:最上位のALTAには、立体的なデザインのフロント/サイドパネル、マグネットで固定するスイングドア式の開閉など、新しい要素を盛り込みました。RAVEN同様の90°回転配置を採用しています。

新生SilverStoneを象徴する次世代コンセプトモデル「ALTA S1」。立体的なデザイン、3面ガラス構造のインパクトが抜群
サイドパネルの開閉はスイングドア式。シャーシにはマグネットで固定されている
反対側の様子。この造形も実に個性的

――:SETAやFARAも斬新ですね

[Tony氏]:SETAは、アドレサブルRGB LEDをあえて隠してじんわりと光る効果を狙ったデザインを採用しています。現状フロントに端子は付いていない状態で、トップにするかサイドにするか、あるいはなしにするかも含めて検討中です。

 FARAはリーズナブルなバリュークラスのモデルです。比較的オーソドックスなデザインですが、こちらもアドレサブルRGB LEDの見せ方を工夫しています。

「SETA(シータ=道標)」。こちらもインパクトのあるデザインだ
シンプルで丸味を帯びたフォルム、アドレサブルRGB LEDの光が反射でじんわり光る様子は未来的なイメージがある
開発段階のため、現状電源ボタンも前面端子もない。そのため、今回はリモート電源スイッチを付けて展示。こうしたちょっと便利なアクセサリもSilverStoneの得意分野
エントリークラスの「FARA」は、フロントマスクのデザインの異なる2モデルが展示されていた。こちらは「FARA B1」
サイドパネルは強化ガラス仕様となっている
こちらは「FARA V1」

――:従来の質実剛健的なモデルも継続されるのでしょうか

[Tony氏]:はい。これまでの当社の製品の理念、強みを支持していただいているユーザーには、デザイン的にもシンプルなものを好まれる方もいますので、これまでの強みはそのまま、幅を広げて行きたいと思います。

電源は分かりやすさ重視で4ブランド体制に再編

――:PCケース以外では?

[Tony氏]:電源もラインナップを整理します。従来のStrider(ストライダー)、Essential(エッセンシャル)に加えて、新たにZeus(ゼウス)、Decathlon(デカスロン)を加えた4ラインナップで展開していきます。

新たに高付加価値ブランドとして展開する「Decathlon」の850Wモデル
Decathlonの1,550Wモデルのケーブルプラグイン部。CPU用とPCI Express用を共通化して自由度を高めている
EssentialのRGB LEDを使った80PLUS Bronzeモデル
大容量小型電源もSilverStoneの特徴の一つ。SFXで1,000Wの大容量を実現
PCケースと電源以外で今後力を入れていきたい分野としては、水冷クーラーが挙げられていた
新しく発表されたPF(Permafrost)シリーズ。アドレサブルRGB LED内蔵の120mmファンを採用している。写真は240mmラジエータの「PF240-ARGB」
3連ファンの大型ラジエータを搭載する「PF360-ARGB」。ポンプは冷水と温水を混ぜない内部構造をしており、強力な冷却が可能だという
内蔵モーターを4極から6極に変更したことで、静音動作とパフォーマンスの向上を目指している

――:今後の目標、目指すところは?

「これからの新しいSilverStoneに期待してほしい」と力強く語ったTony氏

[Tony氏]:世界一のPCケースメーカー、世界一の電源メーカーになりたいですね(笑)。また、日本市場に力を入れていきます。日本支社を作り、ツイッターアカウント(https://twitter.com/SilverStoneJP)も開設しました。もちろん、ご意見、ご要望、大歓迎です。どんどん絡んでください。フォロワーを1万人を目指して頑張ります。みなさん、一緒にDIYを楽しみましょう!

[製作協力:SilverStone]