最新自作計画
スタイリッシュな小型ケースNZXT「H2 Flow」中心に作る“密度高めで高性能”なゲーミングPC
【新装第13回/通算第91回】机上に置いて愛でたくなるサイズ感&存在感 text by 竹内 亮介
2026年5月14日 10:00
イルミネーションを駆使した美しいPCは、机の上に置いて眺めて愛でたい。そんな野望を持つ自作派にオススメしたいMini-ITXプラットフォームを利用した小型のPCケースだ。小型なので机の上に置いても場所を取らず、美しく仕上げられたPCを眺めながら快適にゲームや各種作業を行える、というものだ。
今回はメッシュ構造と強化ガラスをうまく組み合わせ、イルミネーションやディスプレイ付きパーツを楽しめるNZXTのMini-ITX対応PCケース「H2 Flow」をベースに、AMDの「Ryzen 7 7800X3D」と「Radeon RX 9070 XT」搭載ビデオカードを組み合わせた高性能なゲーミングPCを作ってみた。簡易水冷型CPUクーラーが水冷ヘッド部分に搭載する大型ディスプレイに、さまざまな情報や画像を表示して楽しもう。
強化ガラスで「見せたい部分だけ見せる」スタイル
NZXTのH2 Flowは、側面や天板にメッシュ構造を採用し、エアフローを高めたPCケースだ。全面メッシュではなく、左側面上部のマザーボードを組み込むエリアにのみ強化ガラスを採用しており、外部から中の様子を楽しめるようにしている。
H2 Flowは、コンパクトなMini-ITX対応PCケースながら、拡張性の高い構造なのも魅力の1つだ。長さ33.1cmの大型ビデオカードや、28cmクラスの大型ラジエーターを装備する簡易水冷型CPUクーラーに対応しており、強力なゲーミングPCを作りやすい。 各パネルは簡単に着脱できるツールレス構造で、組み込み時や清掃、メンテナンス時などに内部にアクセスしやすい。
そしてこのタイプのPCケースは、水冷ヘッドに大型のモニターが組み込まれた水冷CPUクーラーが非常によく映える。今回は同じくNZXTの簡易水冷型CPUクーラー「Kraken Elite 280 RGB」を組み合わせることで、大型モニターの状況が強化ガラス越しに見える構成にした。また、36cmラジエーターが収納できないケースを使う際には、このサイズのクーラーが冷却性能的にもベストだ。
CPUは、世代は1つ古いがゲーミング用途ではいまだトップクラスの性能を誇るAMDの「Ryzen 7 7800X3D」。最新世代の「Ryzen 7 9850X3D/9800X3D」も素晴らしい性能を誇るが、コスト重視ならこうした選択肢も十分あり得るし、そういった製品を現行製品として普通に購入できるのもうれしい。
マザーボードはASRockの「Phantom Gaming」シリーズに属する製品である「B850I Lightning WiFi」を選んだ。AMD B850をチップセットに採用する最新マザーボードだが、1世代古いRyzen 7 7800X3Dも問題なく利用できる。Mini-ITX対応の小型マザーながら12フェーズ対応の電源回路や最新のDrMOS設計を採用しており、高性能なCPUも安心して利用できる。
ビデオカードは、AMDのRadeon RX 9070 XTを搭載するASRock「AMD Radeon RX 9070 XT Challenger 16GB」を選択した。“10万円前後で購入できる”かつ“アッパーミドルクラス”のビデオカードという条件で絞り込むと、性能と価格のバランスに優れた1台だ。4基のヒートパイプを装備する大型のヒートシンクと、3基の冷却ファンを組み合わせた大型のGPUクーラーを搭載し、GPUをしっかり冷却できる。
電源ユニットはNZXTのSFX対応モデル「C850 SFX Gold」。H2 Flowと同時に発表された最新の電源ユニットで、80PLUS Gold認証を取得し、最大出力は850Wだ。フルプラグインで必要なケーブルのみを接続すればよいタイプなので、今回のように小さなPCケースと相性がよい。低負荷時にはファンの回転数を停止する「Zero RPMファンモード」に対応する。
メモリはMicronの「Crucial CT2K16G56C46U5」で合計32GB。SSDも同じくMicronの「Crucial P510 2TB CT2000P510SSD8-01」で、容量は2TBだ。ゲーミングPCとして考えるなら、正直このくらいのスペックは欲しいところではあるが、どちらも高騰が著しいパーツであり、悩ましい部分ではある。
なお、Crucialブランドは撤退が発表されているが、2026年5月初旬現在はまだメモリ、SSDともに入手可能な状況が続いている。いずれは……というところではあるが、当面は本連載でも“スタンダードな仕様の製品の一例”としてテスト機に利用する予定だ。
今回の構成と価格は下表にまとめた。1~2年前ならおそらく6~8万円は安く組めそうな構成ではあるが、今は各種パーツ、特にメモリとストレージの高騰やメジャーメーカーの撤退などがあり、PC自作ファンには厳しいタイミングとなっている。下記の構成例では“2026年5月上旬時点の価格ですべて新規に購入”という想定で実売価格をまとめた。価格は標準的な例であり、セールを狙うなり探すなりすればもっと安く入手することも可能ではある。また、流用しやすいパーツは、今まで使ってきたものや購入済みのものを使い回すというのも1つの手だろう。
| カテゴリー | 製品名 | 実売価格 |
| CPU | AMD Ryzen 7 7800X3D (8コア16スレッド) | 50,000円前後 |
| マザーボード | ASRock B850I Lightning WiFi(AMD B850) | 35,000円前後 |
| メモリ | Micron Crucial CT2K16G56C46U5 (PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2) | 62,000円前後 |
| ビデオカード | ASRock AMD Radeon RX 9070 XT Challenger 16GB | 95,000円前後 |
| SSD | Micron Crucial P510 CT2000P510SSD8-JP (NVMe/PCI-E 5.0 x4、2TB) | 60,000円前後※ |
| PCケース | NZXT H2 Flow(Mini-ITX) | 21,000円前後 |
| 電源ユニット | NZXT C850 SFX Gold(850W、80PLUS Gold) | 30,000円前後 |
| CPUクーラー | NZXT Kraken Elite 280 RGB(簡易水冷型、28cmクラス) | 31,000円前後 |
| 合計 | 383,000円前後 | |
| 実売価格は2026年5月上旬時点のもの ※在庫僅少品のため価格は参考 | ||
組み込み難度は高め、着脱可能な部品は最初に外しておく
H2 Flowでは、側板や天板をツールレスで簡単に外せる構造になっている。まずはそれらを外してフレームだけの状態にしよう。マザーボードと電源ユニットは左側面、ビデオカードは右側面に組み込むサンドイッチ型の構造となっており、前面には簡易水冷型CPUクーラーのラジエーターとファンを組み込む。
左右から内部の様子を見てもらえば分かるとおり、正直かなりキツキツの状態で、組み込み難易度はそれなりに高い。サンドイッチ構造なので、「何かのパーツに隠れてしまうために作業できなくなる」というパーツはない。しかしケーブルの引き回しや抜き挿しで少々困る場面はあった。特に今回の電源ユニットはケーブルの長さが最適解に近く、余って邪魔になることはないのだが、引き回しにはあまり余裕がない。
Kraken Elite 280 RGBは、前面のマウンター部分をファンとラジエーターで挟み込むような形で固定する。ファンが独立し、それぞれをラジエーターに固定しなければならない一般的な簡易水冷型CPUクーラーではかなりの難所となるが、Kraken Elite 280 RGBは2基分の14cm径ファンを連結したタイプなのでネジ止めは4カ所で済む。また前面のマウンター部分が着脱可能であり、PCケース外で組み付けられるのが便利だった。
Kraken Elite 280 RGBの水冷ヘッドに搭載されている液晶モニターは、2.36型と大きめで光量も強い。H2 Flowの左側面の強化ガラスはスモークが強いタイプだが、強化ガラス越しでも液晶モニターの表示内容ははっきりと視認できた。モニターの表示内容やファンの回転数、イルミネーションの設定などは、NZXTの統合型ユーティリティ「NZXT CAM」から変更できるので、好みの設定で楽しみたい。
ゲームはもちろんAIでも活躍!? 冷却性能も高い
基本的な性能をPCMark 10と3DMarkで計測したのが下のグラフだが、ミドルレンジのゲーミングPCとして遜色のないスコアと考えてよい。
実際のPCゲームのパフォーマンスを計測できる「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」を、解像度やグラフィックス設定を変更して実行したスコアを比較したのが下のグラフだ。
解像度が4K(3,840×2,160ドット)でグラフィックス設定が最高の[最高品質]でも評価は「とても快適」で、平均フレームレートも約85FPSと高い。
もう1つ、描画負荷の重いサイバーパンク2077のベンチマークテストモードも試してみよう。ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマークと同様、解像度とグラフィックス設定を変更してベンチマークモードを実行した。またこのゲームではフレーム生成機能に対応するので、その有無による性能差も確認した。今回は平均FPSを四捨五入したものをグラフ化している。
さすがにこのクラスのパーツ構成なら、解像度が4Kでグラフィックス設定が[レイトレーシング:ウルトラ]でも、平均FPSは約70に達する。フレーム生成機能を有効にすれば約128FPSと、さらに快適になる。解像度をWQHD(2,560×1,440ドット)に落とせば、ハイリフレッシュレート対応液晶モニターの性能もしっかり引き出せるところまで持っていける。
AIによる推論テストも行ってみよう。高性能なビデオカードを組み込んだゲーミングPCは、AIにも強いからだ。今回はLLM(Large Language Model)をローカルPC上で簡単に扱える「LM Studio 0.4.12」をインストールし、Googleの最新モデル「gemma-4-e4b」を使って同じ内容のプロンプトを入力したときの推論速度(トークン数/秒、大きいほど高速)を比較してみた。比較対象はACEMAGICのミニPC「F5A」。CPUはAMDのRyzen AI 9 HX 370で、推論には内蔵GPUのAMD Radeon 890Mを使用した。このほか、メモリは32GB、ストレージは1TBという構成だ。
gemma-4-e4bは比較的負荷の低いモデルなので、ノートPCやF5AのようなミニPCなど、CPU内蔵GPUを利用するシステムでも利用しやすい。ただ今回のようなゲーミングPCだとF5Aとの比較で約6倍の推論速度を実現しており、さすがに土俵が違うという印象だ。快適にLLMを利用したいなら高性能なビデオカードはやはり必須装備と言える。
最後に温度の状況を調べてみた。「アイドル時」は起動後10分間の平均的な温度、「OCCT時」は「MAXON Cinebench 2026」を実行中の最大温度で、主にCPUに高い負荷がかかり続けた状況を想定している。「MH時」は「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」を1時間ループ実行したときの最大温度で、PCゲームを連続してプレイした状況を想定した。
H2 Flowでは天板に装備する12cm角ファンが排気方向で取り付けられており、メッシュ構造の側板や前面パネルから外気を取り込みやすい。そのため前面に固定したラジエーターや、右側面のビデオカードなどの熱源を新鮮な外気でしっかり冷却できる。グラフを見ても、各パーツをしっかり冷却できていることが分かる。
またアイドル時や軽作業時のファンの回転数は、いずれも500~600rpmと低めで、ビデオカードや電源ユニットのファンも低負荷時は停止するタイプだ。そのため負荷が低い状況だと動作音はほぼなく、ベンチマークテスト時など負荷が高い状況でも軽い風切り音が響くだけでほとんど気にならない。
サイズ感と静音性がうまくまとまった1台さらなる改良点はイルミネーション類か
動作音が大きいと机の上などユーザーに近い場所に置いて使うのは厳しいが、今回のようなPCならまったく問題ない。ゲーミング性能、冷却性能、動作音などを高いレベルで融合した作例に仕上がったと言ってよいのではないだろうか。イルミネーション重視派なら天板のファンをLED搭載モデルに変更し、さらにこだわってみるのもよいだろう。




























