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性能も静音もTITAN Xの一段上、MSIのOC版GeForce GTX 1080 Tiをテスト

最新PCゲームでFounders EditionやTITAN Xと真っ向勝負! text by 加藤勝明

GeForce GTX 1080 Tiを狙っているコアゲーマー注目のMSI製OCモデル「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」。市場価格は税別104,800円と、Founders Editionの初値にかなり近い値段設定になっている。

 今年3月に登場した「GeForce GTX 1080 Ti Founders Edition」は、国内価格17万円のフラッグシップ「TITAN X」より速く、さらに実売11万円台という価格設定で話題を呼んだ。

 TAITAN X(GDDR5X 12GB/384bit/10GHz)と比較すると、GeForce GTX 1080 Ti(GDDR5X 11GB/352bit/11GHz)はスペック的にはVRAMが1GB少なかったり、メモリバス幅が32bit狭くなっているのだが、TITAN XよりもGPUクロックが高いうえにメモリクロックも11GHz(相当)とそれを補う設計になっている。

 だが、GeForce GTX 1080 Tiの真のアドバンテージはクロックではない。サードパーティーによる独自設計でOCされたカード、いわゆる“オリジナルクーラーモデル”が存在する、という点だ。

 そして今回、MSI製のGeForce GTX 1080 TiのOC版である「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」を入手することができた。GeForce GTX 1080 TiのFounders Editionや、それまで最速に君臨していたTITAN Xとどの程度違うのか、ベンチマークを交えつつ分析してみたい。

写真でみる「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」

超ハイエンドなビデオカードの割には、カード全長は290mm×高さは140mmと常識的な範囲に収まっている。

 「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」はMSIの“GAMING”シリーズにおける最新モデルだけあって、既存の製品の良いところを集めた集大成的なモデルといえる。

 動作クロックモードは下表の通りOC/ゲーミング/サイレントの3段階が設定されており、同梱の“GAMING APP”を導入することで1クリックで切り替えることができる(導入しない場合はゲーミングモードで固定)。一番大人しいサイレントモードだとFounders Editionと同じ、という点にも注目したいところだ。

 ただOC版なので補助電源は8ピン×2が必須な点は十分に注意しておきたい。

モデルCUDAコアGPUクロックブーストクロックメモリ容量メモリクロック電源コネクタ
MSI GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G3,584基1,569MHz(OC)
1,544MHz(ゲーミング)
1,480MHz(サイレント)
1,683MHz(OC)
1,657MHz(ゲーミング)
1,582MHz(サイレント)
GDDR5X 11GB(352bit)11,124MHz(OC)
11,016MHz(ゲーミング)
11,016MHz(サイレント)
8+8ピン
GeForce GTX 1080 Ti Founders Edition3,584基1,480MHz1,582MHzGDDR5X 11GB(352bit)11,016MHz8+6ピン
TITAN X3,584基1,417MHz1,531MHzGDDR5X 12GB(384bit)10,000MHz8+6ピン

 設計的な注目点としては、GPUクーラー自体が既存製品よりも肉厚の2.5スロット厚になった点だろう。少し前ならこうした肉厚のビデオカードはマルチGPU設置時にマザーを選びすぎるということで敬遠されてきたが、昨今のメインストリームマザーでは1本目と2本目のPCI-Express x16スロットの間に2スロット空いているものが一般化している。この状況を考えれば、むしろ肉厚化は冷却力向上のための英断ともいえる。

 もうひとつ本製品の見所は背面のHDMI出力端子が2系統とGeForce GTX 1080 Ti Founders EditionにはないDVI出力も搭載されている点だ。特に前者はメインディスプレイとVRヘッドセットで1系統しかないHDMI出力の奪い合いになる事態が解消できる。DisplayPort非対応の液晶しかない、もしくは絶対にDisplayPortは使いたくないと考えている人にとっては、HDMIが2系統というのは非常にありがたい設計だ。

背面には強度を高めるためのバックプレートを装着済み。
バックプレートは端を微妙に折り返すことで歪みに対する強度を高めている。
厚みはこれまでの製品よりも若干クーラー部分が厚くなり、約2.5スロット厚となった。GPUのスペックが高い分発熱量も増える訳で、これをOCして運用するなら当然の流れといえる。
同社のGeForce系GAMINGシリーズとしては初めて、HDMI出力を2系統標準装備。VRヘッドセットを使う環境、あるいはNZXT「S340 Elite-VR」のようなHDMIをフロントに引き出せるPCケースと組み合わせる場合に有り難さがわかるはず。
OCモデルゆえに補助電源も8+6ピンから8+8ピンに強化されている。
「GPU-Z」で情報をチェック。クロック表記の下段の数値(デフォルト値)はゲーミングモードのもので、上段の数値はOCモード時のクロック。
クーラーのカバーに入っている赤い斜線部分は通電時に赤色に発光する。昨今のトレンド的にここもフルカラー化して欲しい部分ではある。
SLIブリッジコネクタ付近にあるゲーミングドラゴンロゴも発光するが、ここにはフルカラーLEDが仕込まれており、任意の色で点灯させることができる。

構造が変わった最新設計の“TWIN FROZR”

TWIN FROZRは製品により世代が異なるが、最新モデルでは第6世代となる“TWIN FROZR VI”となる。低温時はGPUファンがストップする準ファンレス仕様になっている。

 NVIDIAのリファレンスクーラーは熱をケースの外に排気できるという点では非常に優秀だが、クーラー全体がコンパクトなせいもあり、冷却力はかなり制限されている。

 これに対し独自クーラー搭載モデルは大型のヒートシンクに大口径ファンを組み合わせ、冷却力と静音性を同時に高めることを主眼に置いている(その分熱気はケース内側に出る)。このクーラー設計は各社様々な工夫を凝らしているが、MSIの看板である“TWIN FROZR”はこの手の高性能GPUクーラーの草分け的存在といってよいだろう。

 今回「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」に搭載されているクーラーはTDP250W(OC版なので実質260~270Wといったところか)の超ハイエンドGPUに対抗するため、ヒートシンクの形状やヒートパイプの走らせ方を大きく変更してきた。これがGeForce GTX 1080 Tiの熱にどこまで対抗できるか、Founders Editionに対しどの程度優位に立つのかは後ほど検証するとしよう。

GeForce GTX 1080 Tiに合わせて新設計されたヒートシンク。電源部のパーツもヒートシンクに一体化されている点に注目。
先に行くほどひねりが加わる独特なファンブレードが特徴となる“トルクスファン2.0”。従来よりも風速が増している。
ヒートパイプの直径は最大8mm、GPUとの接触部は平面になるよう加工されており、GPUに接触する銅製プレートと密着度がより高くなるよう工夫されている。GPUの熱は銅板に吸わせてからヒートパイプにバトンタッチするのが現在のトレンドだ。
11GHz相当で動作するGDDR5Xメモリの熱は基板を覆うヒートスプレッダで吸い上げてからファンの気流で冷やす。このプレートは基板の剛性向上にも一役買っている。
GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11Gに搭載されているTWIN FROZRは完全に新規設計。写真右はGeForce GTX 1080 GAMING X 8Gのものだが、フィンの向きやヒートパイプの走行パターンも全く違う点に注目したい。

実装パーツはこだわりの高耐久品、整然とした基板レイアウト

 ビデオカードの基板はマザーボード同様に耐久性や安定性、そして部材のクオリティーの高さが重視される。

 この点においてもMSIは以前から独自の設計&パーツ選定基準を展開しているが、今回の「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」においてもこれまでと変わらぬしっかりした設計になっている。

 ビデオカードの命ともいえる電源回路部の設計は8フェーズ、かつ1フェーズに付きデュアルFETとFounders Editionと同格のもの。だが部材レベルに目を落とすとキャパシタは“Hi-C CAP”、フェライトチョークは“SFC(Super Ferrite Choke)”など、同社の“Military Class 4”準拠の高品質なものを採用している。基板が大型なのでパーツレイアウトも整然としている。まさに“神は細部に宿る”といったところか。

整然として美しいパーツレイアウト。GPU本体用に8フェーズの電源回路、さらにGDDR5X用に2フェーズの電源回路を備える。裏側はキャパシタがいくつか見える程度で大物パーツがないのも特徴。
“SFC”と書かれたフェライトチョークに対し、2つずつデュアルFETチップが配置されている。これはFounders Editionと同じ構成だが、使われている部材はMSIが選びぬいたものだ。
個体コンデンサにHi-C CAP、SFCといったMSI厳選のパーツたち。

手軽に動作モードや発光色を切り替えられるユーティリティ

 「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」は組み込んだままでも十分高性能だが、さらに性能を引き出したい人のために2種類のユーティリティを同梱している。

 その中でも“GAMING APP”は本製品の動作モードを切り替えたり、LEDの発光機能を切り替えたりと、様々な機能を提供してくれる。本製品の性能をフルに引き出すためには必ず導入すべきものだ。

これがGAMING APPのメイン画面。画面下部の3つのボタンをクリックするだけでOC/ゲーミング/サイレントの3段階に即座に移行することができる。マザーもMSIなら、OCモードにするとCPUも軽くOCされる。例えばCore i7-7700Kの場合常時4.5GHz動作になる。
GAMING APP内の機能のひとつ“Eye Rest”は画面の色温度をゲームや動画鑑賞といったシーンに適したものに変更する。アイレストモードはいわゆる“ナイトモード”あるいは“ブルーライトカット”相当の色温度(つまり色温度下げ)になる。
“LED”は文字通りカード上部にあるドラゴンのマークに仕込まれたフルカラーLEDの発光色と発光パターンを変更するもの。また、ファンカバー側のLEDの発光パターンも設定できる。MSI製のマザーで同様の発光機能を備えているものなら、この機能で一括コントロールができる。

 これに対し“Afterburner”はGAMING APPの枠を超えてGPUをOCしたい時に使う。

 その分リスクも高いが、「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」の限界を極めたい時に使うとよいだろう。GAMING APPでOCモードに切り替えるのは保証の範囲内だが、AfterburnerでOCするのは自己責任という違いは心得ておこう。

GPUのOCではもはや定番的存在の“Afterburner”。デフォルトのOCモードでは性能が足りない! という時に使おう。もちろん自己責任だ。

高負荷時にTAITAN Xの一歩上の性能を引き出せるGeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G最新PCゲーム別に見るパフォーマンス

比較に使用するのはGeForce GTX 1080 Ti Founders EditionとTITAN X。
この原稿を書いている最中、フルスペックのGP102コアを使った「TITAN Xp」が発売されてしまった。GeForce GTX 1080 Tiより10%速いというが、国内での取り扱いは未定(米国ではNVIDIA直販サイトの専売)。なので本邦における現時点での最速はOCされたオリジナルデザインのGeForce GTX 1080 Tiと言うべきだろう。

 「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」がFounders Editionに対しどの程度アドバンテージがあるか、最新ゲームで検証する。今回は少し前まで“最速ビデオカード”だったTITAN Xも評価に加える。

 検証環境は以下の通り。

【検証環境】
CPU:Intel Core i7-7700K(4.2GHz、最大4.5GHz)
マザーボード:MSI Z270 GAMING M7(Intel Z270)
メモリ:Corsair CMU16GX4M2A2666C16R(DDR4-2666 8GB×2)
ストレージ:Crucial CT525MX300SSD1(SATA SSD、525GB)
電源ユニット:オウルテック AURUM PRO 850(850W、80PLUS Gold)
OS:Windows 10 Pro 64bit版(Anniversary Uptade)

 トップバッターは「3DMark」のスコア比較といこう。使用したテストは“Fire Strike”“Fire Strike Ultra”“Time Spy”の3つ。4K環境を想定したFire Strike Ultraでどこまで差がつくかに注目だ。

「3DMark」のスコア

 負荷が一番軽いFire StikeではFounders Editionが僅差でトップに立っているが、60ポイント程度は誤差の範囲。

 だが、より負荷の高いFire Strike UltraやTime Spyでは「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」が安定した強さをみせている。OC版である「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」がトップ、続いてGeForce GTX 1080 Ti Founders Edition、そしてTITAN Xという順位を頭に入れつつ、以降のベンチマークを眺めて頂きたい。

「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」

 ゲーム系ベンチは軽めのものから重めのものへ順番に攻めていくとしよう。まずは軽めの代表として、「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」の公式ベンチマークを使用する。

 テストはDirectX11モードの“最高品質”設定で実施した。これ以降のゲームベンチでは、3段階の解像度(フルHD/WQHD/4K)ごとにパフォーマンスを比較する。差がつく・つかないのはどういう条件だろうか?

「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」公式ベンチマークのスコア
「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド」公式ベンチマーク実施中の平均fps(レポートボタンで表示される数値)

 このベンチでも3DMarkと同様にフルHDでは3者はほぼ団子状態で、解像度が上がると「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」が頭一つ抜け出す。4Kでも平均約74fpsまで出せるというのは大きな魅力だが、戦闘時にエフェクトがガンガン飛び交うシーンになると、60fpsを大きく下回ることもある。

「Overwatch」

 続いては「Overwatch」でのパフォーマンスを検証しよう。

 描画が軽いため推奨GPUもGeForce GTX 660以上とユルく設定されているが、展開の速いゲームだけに高リフレッシュレートのゲーミング液晶と高フレームレートの出せるビデオカードを使えば、それなりに有利に働く。

 今回のテストはマップ“King's Row”におけるBotマッチを遊んだ際のフレームレートを「Fraps」で計測する。画質はプリセットの“エピック”、レンダー・スケールは100%に固定している。

「Overwatch」1,920×1,080ドット時のフレームレート
「Overwatch」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「Overwatch」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 ゲーム展開は毎回異なるため最低・最高fpsに若干のバラつきが見られるものの、平均fpsを中心に見ればこれまでのベンチマークと傾向は変わらない。

 「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」ならWQHD&エピック設定でも144Hzの高リフレッシュレート液晶の性能をキッチリと使うことができるのは非常に嬉しいところ。そして4KでもFounders Editionよりも安定したフレームレートが期待できるなど、さすがOC版といったパフォーマンスを見せている。

「BIOHAZARD 7 resident evil」

 続いては「BIOHAZARD 7 resident evil」だ。

 ゲーム序盤に入る廃屋内の一定のコースを移動する際のフレームレートを「Fraps」で測定した。このゲームの画質設定は個々の設定をマニュアルで調整するスタイルなのでそれぞれの設定が一番重く、あるいは“有効”になるように調整した。アンチエイリアスは“FXAA+TAA”を選択している。

「BIOHAZARD7 resident evil」1,920×1,080ドット時のフレームレート
「BIOHAZARD7 resident evil」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「BIOHAZARD7 resident evil」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 傾向については同じなので特に言うことはないが、注目したいのは4K設定時に唯一常時60fps以上をキープできたのは「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」だけという点だ。

 戦闘が入るともう少しフレームレートは下がる可能性はあるが、あのグロいグラフィックを最高の画質で堪能したいならGeForce GTX 1080 TiのOC版を選ぶべきだろう。

「For Honor」

 続いては「For Honor」で検証する。

 画質はプリセットの“超高”設定を使用し、ゲームに組み込まれているベンチマーク機能を使って計測した。このゲームにはアンチエイリアスのクオリティーを高める“スーパーサンプリング”のチェックボックスが存在するが、有効にすると描画が極端に重くなるため使用していない。

「For Honor」1,920×1,080ドット時のフレームレート
For Honor」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「For Honor」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 このクラスになると4Kでは相当に重い。ただし一番重いのは画面いっぱいに爆発が広がるシーンで、兵士の集団が激突するシーンはさほど重くない。

 どのカードも素晴らしいパフォーマンスを見せているが、一番安定して速いのは「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」なことは変わらないようだ。

「Watch Dogs 2」

 超重量級ゲームの代表として「Watch Dogs 2」でもテストしてみたい。

 画質はプリセットの“最大”に設定し、一定のコースを移動した時のフレームレートを「Fraps」で測定した。CPUの負荷も半端なく高いゲームだが、ハイパワーGPUでどこまで性能が変化するか見ていこう。

「Watch Dogs 2」1,920×1,080ドット時のフレームレート
「Watch Dogs 2」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「Watch Dogs 2」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」のパワーをもってしても60fps以上のキープはフルHDまで、WQHDだとわずかに1fps足りないという状況だが、WQHD以上の解像度設定ではOCされたカードが強いことがよく分かる。

「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」

 最後に直近に発売された超重量級ゲームとして「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」でも検証してみた。

 NVIDIAが推すGameWorksの最新機能である“Turf Effects”を駆使したリアルな草原の表現は、ぜひとも一番高い“ウルトラ”設定で堪能したいところ。そこで画質設定は“ウルトラ”に設定し、ゲーム内のベンチマーク機能を利用して計測した。

「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」1,920×1,080ドット時のフレームレート
「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」2,560×1,440ドット時のフレームレート
「Tom Clancy's Ghost Recon: Wildlands」3,840×2,160ドット時のフレームレート

 順位はこれまでのテストと同じ……ではあるが、負荷が極めて高いテストなのでフルHDでも「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」が優位に立っていることに注目だ。さらにWQHDでは平均60fpsを超えたのは本製品だけ。最高画質でプレイしたいなら、Founders Editionよりも「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」の方が適しているのだ。

思ったよりも低容量電源でいける?GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11Gの消費電力

 ゲームのベンチマークを終えたところで消費電力もチェックしておこう。消費電力計はラトックシステム「REX-BTWATTCH1」を使用し、システム全体の消費電力を測定した。

 “アイドル時”とはシステム起動10分後の安定値(ただしOCモードなので誤差は大きい)、“高負荷時”とは3DMarkのTipme Spyデモ実行中のピーク値のことである。

システム全体の消費電力

 ハイパワーなGPUをOCして使っているため、ピーク時の消費電力は高め。だが、Core i7-7700Kと組み合わせた定番のシステム構成での消費電力は400W以下となっており、ハイエンドビデオカードとしては非常に扱いやすい。なお、メーカー推奨の電源容量は600W以上だ。

ガッツリ冷えるTWIN FROZR、高負荷時でも高クロック維持で性能は落ちない

 「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」のパフォーマンスはさすがOC版といったところだが、一番気になるのは“熱”だ。

 GeForceは発熱が一定のラインを超えるとGPU Boostが効かなくなり、クロックが下がってしまう。NVIDIA製のリファレンスクーラーは外排気ができるという点では優秀だが、絶対的冷却力ではGeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11Gに搭載されているTWIN FROZR VIのような大型クーラーに劣る。

 今回は「Watch Dogs 2」を約30分プレイし、その後10分間アイドル状態で放置した際のGPU温度・GPUクロックおよびファン回転数を「HWiNFO64」で追跡してみた。パーツはバラック組み、室温は約25℃で検証している。

GPU温度の推移

 「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」とNVIDIA製リファレンスクーラーを搭載したGeForce GTX 1080 TiのFounders EditionおよびTITAN Xの冷却力にはかなりの差がついた。

 リファレンスクーラーは開始早々に83~84℃のラインに張り付いてしまうのに対し、TWIN FROZRを搭載した「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」の温度は今回の検証で最大71℃が上限だった。

 PCケースの中に入れれば差はもう少し縮まる可能性が高いが、TWIN FROZR VIの冷却力の高さはわかったはずだ。アイドル時の温度はリファレンスクーラーが低くなっているのは、「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」は低温時にファンが停止する“ZERO FROZR”が有効になっているためで、性能が低いわけでは無い(これは無効化することも可能)。

 ちなみにTITAN XとGeForce GTX 1080 TiのFounders Editionの温度の上がり方を比較すると、GeForce GTX 1080 Ti Founders Editionの方が緩やかになっているが、これはDVI端子を排除した結果、排気効率が上がったためである。

サーモグラフィーカメラ「FLIR ONE」でカード裏面を撮影した(下が出力端子側、左がスロット側)。システム起動10分後(左)ではほとんど熱を持たないが、Watch Dogs 2プレイ30分後(右)ではバックプレート表面で約65℃、基板露出部で70℃台に到達した。Founders EditionやTITAN Xはさらに高温となるので、TWIN FROZRでうまくGPUの熱を処理できているといえる。
GPUクロックの推移

 GPU温度の差よりも強烈なのがGPUクロックの推移だ。

 TITAN XおよびGeForce GTX 1080 Ti Founders EditionのGPUクロックは温度上限(今回は83℃~84℃)に張り付き始めたあたりから小刻みに上下を繰り返しながら徐々に下がってしまう。

 GPUクロックの実測最大値とゲーム終盤10分の平均値の差、つまりゲームを続けた時の“熱ダレの程度”を比べてみると、TITAN Xが約233MHz、GeForce GTX 1080 Ti Founders Editionは約153MHz落ちたのに対し、「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」はわずか25MHzしか下がらない。TWIN FROZR VIは長時間ゲームを遊んでも安定した性能が期待できるのだ。

ファン回転数の推移

 最後にファンの回転数だが、ファンが常時回転するリファレンスクーラーと、ZERO FROZRでファンが停止する「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」の特性がよくわかる結果となった。

 発熱量の多いGTX 1080 Tiを搭載しているため「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」のファン回転数は終盤それなりに高くなるが、それでも1,560回転あたりで頭打ち(もっと長時間続ければもう少し上がる可能性もあるが)になるが、リファレンスクーラーの回転数はそれよりはるかに高く、2,400回転前後で安定している。

GeForce GTX 1080 Tiを買うなら断然MSIのオリジナルクーラーモデル!

 様々な側面から「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」を検証してきたが、今回Founders Editionと比較して感じたのは高負荷時の性能の伸びもさることながら、冷却能力の高さ、そしてGPUクロックがほとんどダレないことだった。

 ゲームのフレームレートだけで比較すると、GeForce GTX 1080 TiのFounders Editionと本製品はせいぜい数fpsしか違わないことが多かった。

 この事実だけを見ればより安価なFounders Editionの方がコスパが高そうに見えるが、それは正しくない(完全水冷化するのであればそれも正しいだろうが)。超高負荷を長時間かけた時でもGPU温度が圧倒的に低いとか、GPUのクロックが熱ダレしないため、安定した性能を期待できるメリットがある。

 特に前者は長時間ゲームをする上では非常に大きなアドバンテージだ。重量級ゲームも最高画質で快適に楽しみたいと考えているなら、ぜひこの「GeForce GTX 1080 Ti GAMING X 11G」を狙ってみてはどうだろうか。

[制作協力:MSI]