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8コアCPUにQuadroが良い?快適なクリエイター用PCを選ぶ4つのポイント

FRONTIERのPCでクリエイター用アプリが快適になる構成を再確認 text by 坂本はじめ

FRONTIERのクリエイター向けPCを例に、購入前にチェックしておきたいスペックを確認してみよう。

 SNSや動画投稿サイトなどで活躍するクリエイターから刺激を受け、PCを使ったクリエイター活動に興味を持ったものの、どのようなPCを用意すれば良いのかイメージできないというユーザーも多いのではないだろうか。

 そこで、BTOブランド「FRONTIER(フロンティア)」が手掛けたクリエイター向けBTO PC「FRGKH370/CR」を例に使い、クリエイティブ用途向けにPCを購入する際に注目しておきたいポイントを確認してみよう。

 PCの選び方がわからない初級ユーザーや、動画編集用に初めてPCを購入するといったユーザーの参考になれば幸いだ。

コンパクトな筐体にQuadro RTX 4000を搭載した本格派モデルFRONTIERのクリエイター向けBTO PC「FRGKH370/CR」

FRONTIERのクリエイター向けPC「FRGKH370/CR」。

 まず、今回クリエイターPCの参考例として紹介するFRONTIERのBTO PC「FRGKH370/CR」について紹介しよう。

 FRGKH370/CRは、FRONTIERのゲーミングPC「GKシリーズ」をベースにしたクリエイター向けモデルだ。microATX対応のミニタワーケースを採用することで、コンパクトでありながらも拡張性に優れたBTO PCであり、クリエイター向けのFRGKH370/CRでは、CPUにCore i9-9900KF、ビデオカードにQuadro RTX 4000を搭載したハイスペックな構成を実現している。

 FRGKH370/CRの標準価格は税抜き249,800円で、Quadro RTX 4000を搭載したPCとしては手頃な価格で購入できる点も特徴。FRGKH370/CRはメモリやストレージなどがカスタムできるが、今回使用しているモデルは標準構成からデータ用のストレージを2TB HDDに変更したものを使用している。主な仕様は以下の通りだ。

FRGKH370/CR。microATX対応のミニタワーケースを採用しており、本体左側面にはブラックスモーク仕様の強化ガラスパネルを採用。筐体サイズは209×381×391mm(幅×高さ×奥行)。
フロントパネルインターフェイス。USB 3.2 Gen1 ×2基、音声入出力、電源/リセットスイッチ。
バックパネルインターフェイス。マザーボード側の使用できない画面出力端子は「接続禁止」と記されたテープで封印されている。

 FRGKH370/CRが採用するミニタワーケースは、左側面にブラックスモークタイプのガラスパネルを採用しており、内部のパーツが視認できる。今回の構成ではLEDイルミネーションを搭載したパーツは仕様していないが、内部状況を確認しやすいガラスパネルと、ワンプッシュで開閉可能なサイドパネルの採用により、メンテナンス性に優れている点は魅力的だ。

 内部については、裏配線を積極的に活用することで整然と仕上げられている。労せずして高品質に組み立てられたPCを手に出来るのは、確かな組み立て技術を持ったBTOブランドのPCを選択するメリットだ。

左側面の強化ガラスパネルは、天板側からOneプッシュで着脱可能。
強化ガラスパネルは透過率の低いブラックスモーク仕様。内装を強調し過ぎない落ち着いたルックスを実現している。
ケース左側面内部。各パーツへの配線は、裏配線を駆使することで整然と仕上げられている。
ケース右側面内部。使用しないケーブルなどは、裏配線側であるこちら側でまとめられている。

クリエイター向けPCでチェックすべき4つPCパーツ作業が快適になる性能のポイント

クリエイター向けPCで特に重要となるのは、CPU、GPU、メモリ、ストレージの4点。

 今回は、クリエイター向けのPCで特に注目すべき4つのパーツについて紹介する。

 具体的には、「CPU」、「GPU」、「メモリ」、「ストレージ」の4種類で、実際のクリエイターPCがどのようなパーツを搭載しているのかを交えつつ、その役割と選び方を確認しよう。

ポイント1 動画の編集/エンコードなら8コア以上のCPUを選ぼう

FRGKH370/CRが搭載するCPU「Core i9-9900KF」。8コア/16スレッドモデルで、動作クロックは最大5GHz。

 CPUはクリエイター向けPCの性能を左右する特に重要なパーツだ。FRGKH370/CRでは、8コア16スレッドCPUのCore i9-9900KFを搭載している。

 動画や画像の編集に用いるアプリケーションの多くは、複数のCPUコアを処理に用いるマルチスレッドへの最適化が進んでおり、コア数の多いCPUを用いることで処理時間を短縮できることが多い。

テストに使用したTMPGEnc Video Mastering Works 7。動画編集アプリは特にCPUのコア数の影響をうけやすい。
動画アプリはエンコードだけでなく編集中もCPUパワーが活かされやすい。

 細かい作業を繰り返す写真編集やイラスト制作などでは、CPUコア数を増やすよりも1コアあたりの性能を追求した方が快適になる場合もあるが、多くのクリエイター向けアプリケーションがマルチスレッド対応になっていることもあり、現代のクリエイティブシーンで利用するPCには、最低でも4コア以上のCPUを選びたい。特に、3DCGや動画のレンダリング作業ではCPUコア数が威力を発揮するので、こだわりたいところだ。

FRGKH370/CR搭載のCore i9-9900KFで、テスト用に用意した4K動画をフルHD動画にエンコードした際の処理時間は1分39秒だった。動画エンコード速さにはCPUコア数の多さが大きく影響する。
ちなみに、Core i9-9900KFの使用コア数を半分の4コア/8スレッドに制限し、同じ動画ファイルをエンコードした際の処理時間は2分40秒。8コア/16スレッド使用時の1.6倍の時間が掛かっている。

 FRGKH370/CRが搭載したCore i9-9900KFは、8コア16スレッドによる優れたマルチスレッド性能を備えながら、最大で5GHzに達する高クロック動作によって、コア当たりの性能にも優れたCPUだ。

 Core i9-9900KFをはじめ、現行の8コアCPUはクリエイティブで求められるCPU性能を高いレベルで兼ね備えている。本気で創作活動に取り組むなら、8コアCPUを基準にCPUを検討することを勧めたい。

ポイント2 ビデオカードはなるべくVRAMが多いモデルを選ぶ、映像の正確性重視ならQuadro

FRGKH370/CRが搭載する「Quadro RTX 4000」。

 クリエイター向けアプリケーションは、以前からGPUを積極的に活用してきた。現在では、編集中のプレビューから最終的なアウトプットまで、幅広いシーンでGPUが活用されている。

 3DCGのモデリングといったような、GPUで処理を実行するアプリケーションではコア数が多く演算性能の高いGPUほど有利。動画エンコードや配信といったような、GPU内蔵ビデオエンジンを利用可能なアプリケーションではビデオエンジンの世代が新しいGPUが有利だ。

 また、GPUを積極的に使用するアプリケーションほどVRAMの使用量も大きい。現代のクリエイターPCでGPU性能をあてにするなら、最低でもVRAMは4GB、なるべく8GB以上のGPUを選びたい。

Photoshopなどは2D処理メインになるが、GPUを積極的に利用するアプリだ。
Photoshopで100枚のRAWファイルを開いた際のVRAM使用量。クリエイター向けアプリはGPUによる処理高速化のため、大量のVRAMを使用するものが多い。

 また、GPUには、単純な性能の高低だけでなく「一般ユーザー向け」と「プロフェッショナル向け」という区分が存在する。

 参考例であるFRGKH370/CRが搭載する「Quadro RTX 4000」は、NVIDIAのプロフェッショナル向けGPU。NVIDIAのプロフェッショナル向けGPUブランドである「Quadro」では、プロの現場での使用に耐えられるよう、ハードとドライバソフトウェアの両面で、信頼性や互換性を重視した設計が採用されている。

 ゲームであれば高いフレームレートが出ることが重視されるので、GPUは描画速度に重点がおかれたチューニングが施されるが、業務用のCADや映像関連の用途であれば表示の正確性が重視されるので、おのずとチューニングも信頼性重視の方向になる。

3DCG作成ソフトウェアのBlender。
業務用のCG作品や3DCADなど、エラーがあってはならない用途に「Quadro」は使われる。(「渋谷駅周辺750m四方 3Dデータ」©PASCO CORPORATIONクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(表示4.0 国際))

 最近では、一般ユーザー向けの「GeForce」にもクリエイター向けドライバ「Studio Driver」が登場。OpenGLでの30bitカラー(10bpc)表示や、クリエイター向けアプリへの最適化など、Quadroでのみサポートされていた機能への対応や、ゲーム以外への最適化が進められているが、3DCADなどで特に信頼性が求められる用途では、アプリ側が推奨するQuadroの利用を検討したい。

 プロやプロを目指すユーザーであれば「Quadro」を選んでもらいたいところではあるが、ちょっと3DCGを楽しんでみたいとか、CADを触ってみたいといったユーザーにはオーバースペックではある。そうしたユーザーは、まずは「GeForce」の「Studio Driver」で試してみて、本格的に創作活動を行うようになったら「Quadro」とステップアップするのが良いはずだ。

QuadroのNVIDIAコントロールパネルには、各アプリ向けの設定を記録した「グローバル プリセット」が用意されている。CADや3DCGで有名なautodeskのアプリにも最適化が施されている。
Quadroは画面出力とOpenGLで30bitカラー(10bpc)をサポートしているのも特徴。
30bitカラー(10bpc)の画像を表示させたディスプレイ。対応アプリであれば、RGB各チャネル1,024階調の約10億7374万色の表示が可能で、グラデーション表示などもより滑らかになるほか、写真加工/編集でも正確な表示といった面で役立つ。
こちらは一般的な24bitカラーで同じ画像を表示させたディスプレイ。波紋のようにうっすらとグラデーションの間に段差が見える。RGB各チャネル256階調の約1677万色までの表示に制限されるため、表示に制約がある。

ポイント3 クリエイティブ用途ならメモリは最低16GB、複数アプリ同時使用なら64GBに

FRGKH370/CRはDDR4-2666動作の16GBメモリを2枚搭載。

 メインメモリには速度や規格など複数のスペックが存在するが、クリエイター向けで注目すべきは容量だ。

 メモリ容量の不足は高性能なCPUの処理速度を著しく低下させてしまうため、PCには作業に不足しないだけのメモリを搭載する必要がある。

 近年、映像や画像コンテンツの高解像度化が進んでおり、クリエイター向けアプリが制作作業で必要とするメモリ容量も増加している。クリエイターPCであるなら、少なくとも16GB、できる限り32GB以上のメモリ容量を搭載しておきたい。

作品を作る際、Photoshopなどを使って多くのファイルに一括して処理を施したい場合もあるだろう。
これはPhotoshopで100枚のRAWファイルを開いた際のVRAM使用量。写真などは、1枚1枚はそれほどファイルサイズは大きくないが、同時に開いた場合はメモリ容量が16GBでも不足する状態になる。写真に限らず、複数のイラストやCGに一括処理をかけたい場合などにもメモリはあるに越したことは無い。

 メモリ使用量を気にすることなく、自由なワークフローで制作活動に取り組める潤沢なメモリ容量は、クリエイターPCが備えるべき要素だ。メモリは足りている間は何も感じないが、足りなくなると急激にPCのパフォーマンスが落ちるので、使い切らない容量を搭載したり、一度に開くファイルの数を調整したいところだ。

 FRGKH370/CRは標準で32GBのメモリを搭載しているが、追加2万円(税抜き)で倍の64GBにアップグレードできる。複数のアプリケーションを同時に使用したりする場合は64GB程度あった方が快適なので、予算が許すのであればカスタマイズをお勧めする。

PhotoshopとIllustratorを同時起動して併用したり、3DCGモデリングアプリとテクスチャ作成アプリを同時に利用したりと、クリエイティブ用途ではアプリを複数同時に使用するシーンも多い。
メモリ容量に余裕があれば、複数のアプリを同時に使用しても快適だ。大容量メモリを搭載しておけば、その分多くのファイルを開いて並行して作業を行える。

ポイント4 作業を行うのはSSD上、元素材や完成データを補完するのはHDDと使い分けよう

FRGKH370/CRに搭載されているシステム用の1TBのNVMe SSDと、データ用の2TB HDD。

 クリエイターPCのストレージデバイスは、SSDとHDDから選ぶことになる。現代のPCの基本として、OSやアプリへのデータアクセスが頻繁に発生するシステムディスクには、HDDを大きく超える転送速度を実現するSSDを利用すべきだ。

 基本的に、ストレージの転送速度は速いにこしたことは無く、編集作業に用いるファイルをSSD上に保存することで、読み出しや上書き保存時の時間を短縮できる。加工する素材もSSD上に展開してしまった方が快適なので、予算が許すならなるべく大容量のSSDを選びたい。

FRGKH370/CR搭載SSDのベンチマーク結果。NVMe SSDを搭載しており、リード・ライト性能ともに1.8GB/s前後の速度を実現している。
Adobeのアプリなどは起動に若干時間がかかるが、SSDにインストールすれば起動も作業も快適。クリエイター向けのアプリは必ずSSD側ににインストールして使用しよう。また、加工するファイルもSSD上に置いてしまった方が快適に作業を行える。

 PCのストレージを全てSSDにしてしまったほうが快適だが、高速なSSDの容量単価は高いので限界はある。動画や画像の容量は増大傾向で、SSDのみで多くのファイルを保存し続けるのは高コストで困難だ。

 このため、元々の素材や、加工済みのファイルなど、編集や加工が済んだファイルなどは容量単価の安いHDDを活用したい。HDDであれば、TB単位の容量でも安価に導入できる。

 クリエイターPCでは、編集作業などで使用するファイルを一時的に保管するストレージと、制作が完了したデータやバックアップの保管庫として使用するストレージを分けて考え、前者にSSD、後者にHDDを利用することで、快適性と記憶容量の両立を実現できる。

FRGKH370/CR搭載HDDのベンチマーク結果。SSDに比べピーク速度は一桁遅いが、約200MB/sという速度は多くのNASやクラウドストレージより高速だ。
リニアにアクセス必要のない加工前の素材や、完成済みのファイルなどはHDD側に保存しよう。

 FRGKH370/CRは、システムディスク用に1TBのNVMe SSDと、データ保管用の2TB HDDを搭載している。システム用に1TBの大容量SSDを用いることで、編集用のファイルを保存するのに十分な容量を確保しつつ、2TBのHDDを保管庫として利用できる構成だ。

 予算が許すのであれば、システムやアプリケーションをインストールするSSDとは別に作業スペースやデータ保管庫として利用するSSDを増設したり、扱うファイルの大きさや数量に応じて、より大容量のHDDを選んだり台数を増やすことも検討したい。

4つのパーツをチェックして快適に使えるクリエイター向けPCを選ぼう

 今回はクリエイター向けPCで注目すべき4つのパーツについて紹介した。購入に際しては、これらのパーツが自分の用途に適したものであるのかをチェックし、より快適に作業が行えるPCを選択して欲しい。

 自分の作りたい作品や用途がはっきりとしているのであれば、その部分に影響するパーツをより強化したり、逆に影響が少ない部分のパーツのグレードを落とし、コストパフォーマンスを高めるといったこともBTO PCならできる。

 参考例としたFRONTIERの「FRGKH370/CR」の構成パーツから考えると、編集から書き出しまで良好な性能が期待できるCore i9-9900KFと、クリエイター向けアプリでの信頼性に優れる「Quadro RTX 4000」の組み合わせは、3DCGや映像作品の制作に本格的に取り組みたいクリエイターに適したPCであると言えよう。

 3DCADで「Quadro」を必要とするユーザーにとっても、税抜きで約25万円で買えるQuadro RTX 4000搭載PCはコストパフォーマンスが高いモデルになるだろう。BTO PCらしくパーツ構成のカスタマイズにも対応しているので、なるべく省スペースで高性能なクリエイターPCを求めているなら、FRONTIERの「FRGKH370/CR」を検討してみてはいかがだろうか。

[制作協力:FRONTIER]