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監視カメラ向けHDDの速度の出かたはちょっと特殊?WD Purpleをいろいろテスト

速度/消費電力/重量をチェック、ヘリウム充填10TB HDDで実験 text by 久保勇

 前回、自宅のPC環境をアップグレードするのに、Western Digitalの監視カメラ向けHDD「WD Purple」を導入したとご紹介しましたが、せっかく購入したのでもう少しこのHDDの特性を調べてみたいと思います。

 今回集中してテストするのは速度。購入したのは「WD Purple」の10TB/ヘリウム装填モデルの「WD101PURZ」。比較には、Western DigitalのNAS用HDD「WD Red」の3TBモデル「WD30EFRX」を用意しました。

 「WD Purple」は監視カメラ向けファームウェア「AllFrame AI」、「WD Red」はNAS向けファームウェア「NAS Ware 3.0」を採用し、異なる方向性のチューニングが施されていますが、この辺りも速度に影響したりするのか見ていきたいと思います。

 今回は速度の他に、消費電力と重量もおまけでチェックしているので、ヘリウム装填HDDの消費電力が気になる方はぜひご一読を。なお、前回のレビューはHDDの選び方も兼ねた記事にしているので、そちらと合わせてみてもらえれば幸いです。

ベンチマーク3種類でヘリウム充填のWD Purple 10TBをチェックキャッシュの使い方が監視カメラ向けは少し特殊?

 それでは速度の方を見ていきたいと思います。今回使用するベンチマークソフトは、CrystalDiskMark7_0_0h、AJA System Test 12.5.0.、HD Tune Pro 5.75の3種類。

 比較に使用している通常HDDのWD Red WD30EFRX(3TB)と傾向の違いなどが出るのか、テストしていきたいと思います。なお、ベンチマーク結果に関しては、以下全て左がWD Purple WD101PURZ、右がWD Red WD30EFRXとなります。

WD Purpleの10TBモデル「WD101PURZ」(7,200rpm/256MBキャッシュ)。
WD Redの3TBモデル「WD30EFRX」(5,400rpmクラス/64MBキャッシュ)

監視カメラ向けWD Purpleはキャッシュの使い方が違う?CrystalDiskMarkでテスト

まずは定番のCrystalDiskMarkからですが、標準のテストサイズ1GiBの他に、16MiBと32GiBもテストしてみました。

 テストサイズが16MiBであればHDDのキャッシュに収まるので、キャッシュ性能が見られると良いなといった意図で選んでいます。32GiBの方は、キャッシュの影響を最小限にしたり、大きいサイズのデータを扱った時に性能低下などが無いかを見る意図で選んでいます。

 まずはテストサイズ16MiBの結果から行きます。

CrystalDiskMark テストサイズ16MiB
WD Purple WD101PURZ(10TB/7,200rpm/256MBキャッシュ)。
WD Red WD30EFRX(3TB/5,400rpmクラス/64MBキャッシュ)。

 CrystalDiskMark テストサイズ16MiBの結果は、キャッシュ性能をみるものになりますが、シーケンシャルリードの最高速はWD Purple WD101PURZが上なものの、全体的なリード性能はWD Red WD30EFRXが大きく上、ライトに関してはWD Purple WD101PURZが倍近く速いといった癖が出たものになりました。

 ターゲットとする用途で重視される性能に合わせたものか、設計の世代やヘリウム充填か通常タイプかなどの違いよるのもなのかなど、厳密な要因はメーカーに聞いてみないとわかりませんが、なかなか面白い結果です。

CrystalDiskMark テストサイズ1GiB
WD Purple WD101PURZ(10TB/7,200rpm/256MBキャッシュ)。
WD Red WD30EFRX(3TB/5,400rpmクラス/64MBキャッシュ)。

 続いてCrystalDiskMark テストサイズ1GiBの結果ですが、こちらはCrystalDiskMarkの標準テストであり、前回も結果は紹介していますが、ディスクの回転数や製品の世代の違いなどが大きく出ている結果となっています。

 ディスクの回転数が高い方が性能は良くなりますが、動作音や消費電力の面では高回転モデルは不利になる傾向があるので、低回転モデルを選ぶメリットもあります。このあたりは好みや用途に合わせ選べる楽しさがありますね。

CrystalDiskMark テストサイズ32GiB
WD Purple WD101PURZ(10TB/7,200rpm/256MBキャッシュ)。
WD Red WD30EFRX(3TB/5,400rpmクラス/64MBキャッシュ)。

 最後はCrystalDiskMark テストサイズ32GiBの結果ですが、どちらもランダムアクセス性能が若干落ちるようですが、速度の傾向はテストサイズ1GiBと同じものとなりました。

AJA System Testでシーケンシャル速度を再確認

 AJA System Testはベンチマークテストにかかる時間が短く、Windows/Mac両対応といった特徴のあるベンチマークソフトです。

 テストはシーケンシャルアクセスの速度に限定されますが、比較的素直な数値が出るので、短時間で簡易チェックを行いたい時などには重宝します。

AJA System Test
WD Purple WD101PURZ(10TB/7,200rpm/256MBキャッシュ)。
WD Red WD30EFRX(3TB/5,400rpmクラス/64MBキャッシュ)。

 おおむねCrystalDiskMarkと同じような結果となりました。WD Purple WD101PURZもWD Red WD30EFRXもベンチマークによって速度が大きく変わってしまうといたようなことは無いようです。

HD Tune Proでディスクの内外周の速度さをチェック、波形の乱れ方はPurpleとRedで違う?

 HD Tune Proを使ってディスクの内外周の速度の違いや、速度の出かたなども見ていきたいと思います。HD Tune Proのグラフは、左側が最も速度が出るディスクの外周側、右側が速度が稼ぎにくいディスクの内周側となります。

HD Tune Pro(読み込み性能テスト)
WD Purple WD101PURZ(10TB/7,200rpm/256MBキャッシュ)。
WD Red WD30EFRX(3TB/5,400rpmクラス/64MBキャッシュ)。

 まずは読み込み性のですが、WD Purple WD101PURZはは最高258.4MB/s、最低119.9MB/s、平均188.7MB/sとなりました。最低でも100MB/sオーバー平均で約200MB/sとかなり高速。これだけの差があれば、WD Red WD30EFRX(最高154.7MB/s、最低73.4MB/s、平均121.0MB/s)からの乗り換えの効果を体感できそうです。

HD Tune Pro(書き込み性能テスト)
WD Purple WD101PURZ(10TB/7,200rpm/256MBキャッシュ)。
WD Red WD30EFRX(3TB/5,400rpmクラス/64MBキャッシュ)。

 書き込性能ですが、WD Purple WD101PURZはは最高254.0MB/s、最低112.0MB/s、平均193.4MB/sとなりました。内周でも100MB/sを下回らないのは満足感が高いです。

 で、グラフを見ていて気付いたかと思いますが、WD Purple WD101PURZは波形が若干乱れています、反対にWD Red WD30EFRXはかなり綺麗です。

 監視カメラとNASといった用途が異なるチューニングの結果なのか、ヘリウム充填の特性なのか、設計世代の違いなのか、個体差なのか……要因はいろいろありそうですが、動作の傾向が違います。なんとなく波形が乱れていない方が振動や動作音も小さのでは?と思わなくもないので、気になる点ではあります。

消費電力は低回転モデルが有利?スピンアップ時の差が顕著

 内部の抵抗が少なく、より薄いプラッタを利用できるヘリウム充填HDD。その分プラッタを回転させるモーターなども消費電力が少なくて済むようなイメージが個人的にはあります。

 実際のところはどうなのか、電源投入直後のHDDスピンアップ時、高負荷となるベンチマーク実行時、アイドル時の3パターンで検証してみました。

消費電力の実測値をチェック。
HDDを1台だけ動かす電源環境を用意してみました。HDDのみの消費電力は測れませんが、HDD + ATX電源の合計消費電力は計測できます。

 直接SATA電源の消費電力を計測できる機器をもっていないので、今回はテストに使用しているPCとは別に、HDD×1台のみを動かすための専用の電源を用意し、これの消費電力を計測してみました。HDD単体よりは表示される消費電力が多くなってしまいますが、HDD間の消費電力差などは見ることができます。

 なお、WD Purple WD101PURZ(10TB)の消費電力は、読み書き時6.3W、アイドル時5.2Wとされています。WD Red WD30EFRX(3TB)の消費電力は、読み書き時4.1W、アイドル時2.7W。スペックシート上は、ヘリウム装填のWD Purple WD101PURZの方が2W前後消費電力が高いようです。

 それではスピンアップ時の消費電力から行きます。ちなみに、ATX電源は80PLUS PLATINUMの容量750Wです。

HDDスピンアップ時の消費電力(HDD + ATX電源の消費電力)
WD Purple WD101PURZ(10TB)。
WD Red WD30EFRX(3TB)。

 WD Purple WD101PURZ(10TB) + ATX電源の消費電力は最大24W、WD Red WD30EFRX(3TB) + ATX電源の消費電力は最大18W。6W差とそこそこ大きな差になりました。

 以前に、NAS本体の電源は低容量品が多いため、NAS向けHDDはスピンアップ時を含め低消費電力になるようチューニングされているモデルが多いと聞いたことがあります。電源投入時の消費電力が低いのはNAS向けHDDの特徴かもしれません。

ベンチマーク実行時の消費電力(HDD + ATX電源の消費電力)
WD Purple WD101PURZ(10TB)。
WD Red WD30EFRX(3TB)。

 続いてベンチマーク中の消費電力。これが読み書き時の消費電力に相当します。

 WD Purple WD101PURZ(10TB) + ATX電源の消費電力は最大13W、WD Red WD30EFRX(3TB) + ATX電源の消費電力は最大11W。2W差なので、この辺りはスペックシート通りといったところ。

アイドル時の消費電力(HDD + ATX電源の消費電力)
WD Purple WD101PURZ(10TB/7,200rpm/256MBキャッシュ)。
WD Red WD30EFRX(3TB/5,400rpmクラス/64MBキャッシュ)。

 アイドル時の消費電力ですが、WD Purple WD101PURZ(10TB) + ATX電源の消費電力は11W、WD Red WD30EFRX(3TB) + ATX電源の消費電力は9W。こちらも2Wの差になりました。

 消費電力に関しては、低回転モデルの方が基本的に有利で、スピンアップ時の消費電力はチューニングの影響を大きく受けるのかもしれません。特にスピンアップ時の消費電力の差が大きいので、ヘリウム封入のNAS向けHDDがどんな挙動になるのかテストしてみたいところです。

ヘリウム充填HDDは軽い……わけはなかった

はかりで重量を実測。

 最後に重量を計測して今回の記事は終わりにしたいと思います。

 ちなみに、WD Purple WD101PURZの重量は公称値650g(±10%)、WD Red WD30EFRXは公称値640g(±10%)。ヘリウム充填されていると少し軽くなるようなイメージがありますが、はたして……。

HDD本体の重量実測値
WD Purple WD101PURZ。実測値は645g。
WD Red WD30EFRX。

 結果はどちらもおおむね公称値通りとなりました。

 ヘリウム充填HDDは、搭載されているプラッタやヘッドの数も多く、ヘリウムを外に逃がさないための頑丈な筐体を採用しているので、その分やはり重さはあります。気持ちヘリウムの分軽くならないかな~と思いましたが、そんなことはありませんでした(笑)。

 今回の検証はここまでですが、うまく写真やデータなどがとれれば、近いうちに動作温度と動作音に関してのレビューをお届けする予定です。「オーディオ用にヘリウム充填HDDを使うと良いのか」などもやってみたいのですが……機会があればまた検証の模様をお届けします。

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