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ゴールデンウイークはPC自作!!フルHD~WQHDで最新ゲームが楽しめるPCを作ってみよう!!

最新CPUと欲張り仕様のミドルレンジマザーで作るゲーミングPC text by 石川 ひさよし

 連休はPC自作に持って来いのタイミング。そこで今回は、興味はあったけど今までなかなかチャレンジできないままでいた方に向けて、最新ゲームがバッチリ動き、各部を強化しながら長期間使っていける自作PCプランをお届けする。

 また、本稿の後半では、今回の作例のPCを1台組み上げるための手順を詳しく解説。前半の作例の紹介でスタンダードなゲーミングPCのパーツ選びの基本を学び、実際にPCを組み立てるときは後半の手順解説を見ながら進めてみていただきたい。


アンダー20万円で人気ゲームが楽しめるPCを作る!

 ゲーミングPCは上を狙えばどんどん予算が膨らんでしまうので、ディスプレイの価格的にもお手頃なフルHD(1,920×1,080ドット)~WQHD(2,560×1,440ドット)の解像度で高画質を狙えることを目標とした。この目標だと、揃えるべきパーツは、高価なハイエンド製品ではなく、価格を抑えつつも性能のバランスもほどよい、いわゆるコストパフォーマンスに優れたミドルレンジのパーツで固められる。この場合のトータルの予算は、OS込みで20万円あたりを目指せる。

今回作成した自作PCの完成カット。合計額は18万円弱で、Windows 11を別途新規購入しても20万円以内で一式揃えられる。安いお店を探したりセールを狙ったりすればもうちょっと安くなりそう!

性能に大きく影響するCPUはコストを抑えつつも性能の高いものを

 PCの性能に大きく影響する“頭脳”にあたるCPUは、“長く使う”、“コスパがよいものを選ぶ”という2点から、最新モデルのミドルレンジ製品からIntelの「Core i5-12600K」を選んだ。

 最新世代のCore i5には、Core i5-12600(Kが付かないもの)や、“コスパモンスター”の呼び声高いCore i5-12400といった人気製品もある。型番に“K”の文字が付くCPUは、オーバークロックという特殊なチューニングができることを意味しているのだが、今回のCore i5-12600Kをチョイスした理由はこれではない。もっと多くの人に恩恵がある、コア数やクロックといった基本スペックの高さだ。

現在のメインストリームクラスを狙うため、「i5」グレードのCPU、その上で第12世代で新たに追加された“最新の設計”の醍醐味が味わえる「K」付きモデル、Core i5-12600Kを選んでみた。実売価格は39,000円前後
Core i5-12600KはPコア6基にEコア4基。計10コア16スレッド。重量級のゲームでは、コア数の多いCPUを推奨してくるタイトルも出てきているが、この仕様であれば十分に対応できる

 最近の大型ゲームには、推奨構成に6コアCPUを要求するものが出てきている。6コアという点ではここで挙げたCore i5はどれも満たしているのだが、Core i5-12600Kは、高性能コア(Pコア)と呼ばれる一般的なコア6基に加え、最新のCoreシリーズの上位モデルにのみ搭載されている高効率コア(Eコア)4基を搭載している。Core i5の中で、Eコアを持つのはCore i5-12600Kだけ。もちろん性能面でもCore i5-12600との間に明確な差がある。

 価格の面では下位のCore i5から少々アップとなるが、今回使ったPCを長く使っていくという視点で見れば、最新設計が盛り込まれたモデルを選んでおいて損はない。とはいえ、もしコストを抑えたいということであれば、Core i5-12600や同12400は優秀な選択肢だ。

マザーボードは拡張性の高さとコストパフォーマンスのバランスで

 CPUが決まったら、次はマザーボードを検討する。マザーボードは、CPUをはじめとするPCの各種パーツを取り付ける“土台”とも言える大きな基板。これにチップセットのグレードや対応する機能の違いによる差がたくさんあり、価格もさまざまだ。高価な製品ほど“機能全部盛り、耐久性もダントツ”となるが、必要な機能を把握して絞り込んで選べばコストも抑えられる。

ゴテゴテ感なし。スッキリデザインながらもゲーミングらしさを表現したMSI「MAG H670 TOMAHAWK WIFI DDR4」。コスパのヒミツはこちらの記事も参考にしてほしい。実売価格は28,000円前後

 マザーボード選びの最初の一歩はチップセットの選択だ。「K」付きCPUなら、オーバークロックに対応した最上位チップセットであるZ690搭載製品から選ぶことが多い。しかし今回はオーバークロックの利用は考えておらず、予算の目標を決めているので、あえてZ690製品から選ばず、製品価格が抑えられるIntel H670かB660に絞り込み、最終的にはMSIのミドルレンジマザー「MAG H670 TOMAHAWK WIFI DDR4」をチョイスした。

最新のマザーボードでは、上位モデルになるほど電源回路が強力になる。TOMAHAWKシリーズのマザーボードは、ミドルレンジという位置付けながらより上位のモデルにも迫る電源回路とその冷却機構を備えている。CPUソケットを囲むように配置されているチップ類とそれを覆うヒートシンクがこれにあたる

 MSIのTOMAHAWK系にはB660搭載製品もあるのだが、今回H670を選んだのは、B660よりも拡張性が高く(=利用できるPCI Expressレーン数が多い)、将来的にSSDなどを増設する余地が多いことを重視したため。MAG H670 TOMAHAWK WIFI DDR4の実売価格は、ワンランク下のB660搭載製品と比べて価格差はそれほど大きくないので、PCと長く付き合っていく上で欠かせない“将来の拡張性”という面で有利になる。また、オーバークロック対応以外の仕様のZ690とH670との差は少ないので、“ほぼ全部盛り”であるという点も理由の一つだ。

 もし、将来の拡張性よりも今のコストダウンを少しでも重視したいということであればMAG B660 TOMAHAWK WIFI DDR4、オーバークロックも含めた全部盛りマザーボードにしておきたいならMAG Z690 TOMAHAWK WIFI DDR4にそれぞれ変更するのもオススメ。

DDR4メモリ対応マザーボードを選んだので、メモリの予算は最新規格のDDR5を使う場合よりも有利。新規格への過渡期ならではの選択肢だ。今回使用したメモリは、Crucialブランドの代表的なDDR4-3200メモリ製品の一つで、8GB×2枚セットで実売価格7,500円前後

 PCを使う上ではプログラムの実行や処理するデータの置き場としてメモリが必須。実はマザーボードを選んだ時点で、使用するメモリの種類はおおむね決まってくる。

 最新の自作PCではDDR5 SDRAMという最新型が登場しているが、初物だけにまだちょっと高価だ。今回選んだマザーボードのMAG H670 TOMAHAWK WIFI DDR4は、広く普及しているDDR4 SDRAMが利用できるので、入手性もよく価格もDDR5よりお手頃だ。性能の高さはDDR5のほうが上だが、体感できるレベルの差が出るシーンはそれほど多くない。であれば、コスト重視でDDR4を選んでおくのが現世代では吉だろう。MAG H670 TOMAHAWK WIFI DDR4をチョイスしたのはこういった理由もあるのだ。

もし予算に余裕があるなら、LED付きのゲーミングメモリでマシン内部を飾ってみるというのも一興。発光演出のトータルコーディネイトはなかなか楽しい。高速仕様のメモリ(オーバークロックメモリと呼ばれる)で性能の底上げを狙ってみるという手もあるが、費用対効果はそこまで高くならないことも

ゲーミングPCならビデオカードにはちょっと予算をかけたい!

 PCの映像データの処理を担当し、ディスプレイに映像を出力する“GPU”を搭載したビデオカード。高度な3D映像が駆使される現代のゲーミングPCではビデオカードが必須だ。2021年以降長期間にわたって高値が続いているが、フルHD~WQHDで高画質プレイという目標を考えると、NVIDIAのGeForceならRTX 3060以上、AMDのRadeonであればRX 6600 XT以上から選びたい。

ミドルレンジGPU、GeForce RTX 3060を搭載したMSI「GeForce RTX 3060 VENTUS 2X 12G OC」。極端なOCモデルではないので、MSIの優れたクーラー設計ならデュアルファンで冷却は十分。静音性も良好だ。実売価格は67,000円前後

 予算を含めて検討した結果、今回はGeForce RTX 3060を搭載する「GeForce RTX 3060 VENTUS 2X 12G OC」をピックアップした。ただ、最後の最後まで上位のGeForce RTX 3060 Tiとどちらにするかを悩んだ。RTX 3060 Ti搭載カードとの価格差は1万5,000円前後。フルHDで最高~高画質狙い、WQHDは中~高画質狙いとするならばGeForce RTX 3060、WQHDでも最高~高画質を狙っていきたいならGeForce RTX 3060 Ti、という力関係。最終的に今回は価格の安いRTX 3060カードとした。

 GeForce RTX 3060 VENTUS 2X 12G OCの特徴は、デュアルファンモデルという点だ。カード長が23.5cmなので、ややコンパクトなPCケースにも搭載しやすい。ビデオカードで重要な冷却や静音性についても大口径ファンを採用しブレードにも数々の工夫を盛り込むことで両立している。加えて準ファンレス機能も備えており、ゲームプレイ時は快適なパフォーマンスを、普段使いでは快適な静かさを実現してくれる。

MSIと言えばまず浮かぶのがビデオカード。それも静音性に定評がある。ファンは2基でも大口径で、ファンブレードにも動作音を抑える工夫、風圧を向上させる工夫が盛り込まれている
ブーストクロック1,807MHzのライトOC仕様だ
PCパーツの中でもとくに消費電力が多いビデオカードは、ミドルレンジ以上の製品だとマザーボードから供給される電力だけでは動作しない製品がほとんどだ。今回選んだ製品も、カード上部の補助電源端子に電源ケーブルを接続する必要がある

“ゲームの巨大化”が進行中、SSDは容量を重視で

 PCのアプリやデータを保存しておく“ストレージ”は、Windowsやゲームのロード時間が圧倒的に速い“SSD”が現在の主流。PC上で保存したいデータの容量に応じて、追加のSSDや、容量あたりの価格が圧倒的に安いHDDを足す、という構成にするのが近年の基本スタイルだ。今回は、SSD×1台の最小構成でのプランを検討する。この場合、小型のカード形状でマザーボードに直接接続できるM.2形状・NVMe/PCI Express方式の製品から選ぶのが定石だ。

SSDはMicron「Crucial P5 CT1000P5SSD8JP」。小さい1枚の基板ながら1TBの容量を持ち、実売価格は16,000円前後。実績のCrucialブランドの安心感、スペックと容量単価のバランスが魅力
性能テストツールで読み出し/書き込み性能を計測してみた。現在の普及価格帯のSSDでも、連続読み出し/書き込みの性能(テスト結果最上段“SEQ1M”)は、HDDの約15倍に達する

 今回の作例の目的は、長く使えるゲーミングPC。このことから導かれたSSDは、NVMe/PCI Express 3.0 x4の接続で容量1TBのMicron「Crucial P5 CT1000P5SSD8JP」とした。

 近年、ゲーム自体容量が肥大化傾向にあり(100GB前後になるものもあるほど!)、価格の安い250GB前後のSSDではまったく足りなくなるし、500GBでも1台だけで運用するのは少々心もとない。今回は1台構成とするので、容量は1TBを最低ラインと考えるべきだろう。

 SSDの最新の接続方式は、最新CPUと最新マザーボードの組み合わせで利用できるPCI Express 4.0。広く普及している従来規格のPCI Express 3.0のSSDよりもワンランク上の性能が発揮できるのだが、その分価格もちょっと高めになる。予算の上限を決めている今回は、速度よりも容量を重視したほうが、使い勝手の面でのプラスが大きいと判断した。

 PCを長く使っているとストレージの容量は不足しがちになる。そんな場合は、2枚目のSSDを追加すればよい。もしそのときに予算的な余裕があったり、上位のSSDの価格が手頃になったりした場合には、そのときのPCI Express 4.0のSSDを選んで増設してあげるのがよいだろう。マザーボードにMAG H670 TOMAHAWK WIFI DDR4を選んでいるので、高速なSSDを増設するゆとりも確保できている。

CPUの冷却は必須、ただしこの構成なら定番の空冷クーラーでOK

 CPUのような高性能な半導体は、動作するときにたくさんの電力を消費し、高速に動作する際には発熱を伴う。そのため、CPUを冷やすための“CPUクーラー”が必要だ。CPUクーラーには、CPUに直接取り付けたヒートシンクとファンの組み合わせで冷やす空冷方式と、CPUに取り付けたクーラー内を循環する液体を利用してCPUの熱を吸収し大型のラジエータとファンで冷やす水冷方式の2種類がある。

静かでコスパのよいCPUクーラーの代名詞的存在であるサイズの“虎徹”シリーズ最新モデル「KOTETSU Mark II Rev.B」(実売価格4,500円前後)。シングルタワーなので、ハイエンドCPUよりはミドルレンジ以下のCPUとの組み合わせに向いている

 非常に選択肢の多く、価格も製品やグレードにより差が激しいCPUクーラーだが、今回はPC自作ファンの間で高い知名度と評価を誇るサイズ製品の最新型「KOTETSU Mark II Rev.B」(虎徹 Mark II Rev.B)をチョイスした。

 通常のCore i5であればまったく心配のない性能だが、今回は性能も発熱も一歩上をいく「K」付きを選んでいる。現在のCPUは冷却性能を見て過剰な発熱にならないよう制御が入るので、安全性の面では過度な不安を持つ必要はないが、冷却が不足するとピーク性能が伸びないことも。詳細は後述するが、適切な設定で運用することにより、十分にCore i5-12600Kの実力が発揮できていた。

CPUクーラーをCPUおよびマザーボードに取り付けるとこんな感じになる。スロットに挿し込むだけというものが多い自作PC関連のパーツの中では、ちょっと取り付け手順が複雑な部類。それでも基本的にはドライバー1本あれば誰にでも取り付けできるレベルだ

ケースや電源は“統一感”も意識してみる

 最後にケースと電源だ。ケースは文字どおりさまざまなパーツを収納するための箱。電源は各パーツに電力を供給するために欠かせない。ケースはMAG VAMPIRIC 100R、電源はMAG A650BNを選んでみた。構成パーツのメーカーを揃えると、カンタンに見た目の統一感を出すことができ、LEDやファン制御などユーティリティも統一できるといったメリットもあるので、いずれもMSIに統一した。

ライトニング(稲光)のようなLEDが特徴のMSI「MAG VAMPIRIC 100R」(実売価格は8,000円前後)。ATX対応ながらコンパクトなところがオススメだ
すべてのパーツを組み込んだ状態を側面から見たところ。マザーボードの組み込みについては窮屈感がなく簡単に取り付けられた。ただし、ビデオカードは最大長30cmまでなので、超大型製品は組み込めない場合もある

 ケースの外寸は製品によってさまざまだが、収納できるマザーボードのサイズなどを定めた規格(広く用いられるのは大きいほうからATX、microATX、Mini-ITXなど)があり、チョイスしたマザーボードに合わせたケースを利用するのが一般的。

 今回使用するMSI「MAG VAMPIRIC 100R」は、自作PCでもっとも広く利用されているATX規格のマザーボードを搭載できるタイプの製品。ミドルタワーケースに分類されるものだが、その中では比較的コンパクトで、机の上に設置して使いたいという方にもちょうどよいサイズ感だ。

 最近のケースで流行のLEDによる発光演出は、フロントパネルとリアファン部分に搭載。とくにフロントパネルのLEDは印象的なデザインだが、どハデというほどではない。フロントパネル裏には12cm角ファン3基、天板部には12cm角ファン2基を搭載でき、簡易水冷のラジエータは最大24cmクラスが搭載できる。

 なお、HDDを取り付けらる3.5インチのシャドーベイを1基、従来型のSSDを取り付けられる2.5インチシャドーベイを2基備えているので、M.2 SSD以外のストレージを増設することも可能。M.2スロットの多いマザーボードを選んでいるので、メインのSSDの補助的にHDDを取り付ける場合にはこちらが利用できる。

電源はMSI「MAG A650BN」を使用。奥行きが14cmで非常にコンパクトで扱いやすい。実売価格は8,000円前後
ちょっと無骨なデザインだが、今回のパーツ構成にもなじんでいる。ケースに組み込むと電源側面のロゴが見える

 電源選びはちょっと難しく、使用するパーツの消費電力を満たす出力(“〇〇W”と表記される)の製品を選ぶ必要がある。と言われても、実際に何Wの電源を用意すればよいかは判断が難しいところ。自作PCのパーツの中でもとくに消費電力が大きいビデオカードを目安にすると比較的手っ取り早く、ビデオカードのスペックには推奨する電源の容量が記載されている場合がほとんどなので、これを参考にしてみるのがよいだろう。

 今回選んだ電源はMSI「MAG A650BN」で、最大出力650W。GeForce RTX 3060の推奨が550W、さらに今回選んだCPUが「K」付き、ビデオカードが通常よりクロックの高い高性能なOCモデル、という点を加味して、少し余裕を持たせて出力650Wの製品を選んだ。なお、電源の性能指標の一つである“効率/省エネ性能”は、業界団体が定める80PLUS Bronzeというグレードの認証を取得している。

 コスパ重視モデルのためケーブルが電源ユニットに直付けされているタイプの製品を選んだが、ケーブルをきれいに整理したい場合は必要に応じてケーブルを着脱できるプラグイン式の製品が楽。ただ、今回組み合わせるケースには電源の設置部分にカバーが付いているので、余ったケーブルもうまく隠すことができる。なおケースの電源カバーは、ちょうど電源の側面だけ見えるようにくり抜かれており、「MAG」の文字部分が見えるようなデザインになっている。


CPUクーラーの種類を選べばあとはマザーボードにお任せ

 組み立てについては本稿後半で詳しく紹介するとして、ここでは初回電源投入時の注意点だけ紹介しておこう。

 第12世代Core、それも今回のように空冷CPUクーラーを選んだ際やCPUに付属するリテールクーラーを使う場合に正しく設定しておきたいのが“Power Limit”という項目だ。CPUには、負荷の状況や現在のCPU温度などを基準に、一時的に動作速度を上げる“ブースト”という機能が装備されている。

 IntelのCoreシリーズを使う際のPower Limitは、簡単に言うとこのブースト時に利用する電力の最大値の目安を決めるもの。それをこれからPC自作にチャレンジしてみようという人が自力で調整するのはちょっと難しいが、今回使用したマザーボードには、誰にでも分かるレベルの初期設定方法が用意されているので心配はご無用。以下を参考にぜひ設定してみてほしい。

こちらがUEFIセットアップを初めて開いた際に表示されるCPUクーラー選択画面

 自作PCを組み上げて初めて電源を投入し、画面にMSIのロゴが表示されたら、素早く[F2]キーか[DEL]キーを押して、UEFI設定画面に入る。MSIの最新マザーボードでは、UEFI設定画面に初めて入ったときに、CPUおよびマザーボードに装着したCPUクーラーを“Boxed Cooler(ボックス/CPU付属クーラー)”、“Tower Air Cooler(空冷タワー型)”、“Water Cooler(水冷型)”の三つから選択するようになっている。

 今回のKOTETSU II Rev.Bなら真ん中の空冷タワー型を選ぶ。そしてここで選択したCPUクーラーのタイプに合わせて、前述したPower Limitが自動的に反映される。発熱量は消費電力の大小で決まってくるので、搭載しているCPUクーラーに合わせて基本設定を自動的にしてくれる、というのがこのメニューの趣旨だ。

 なお、現在のCPUには限界以上に発熱した際にクロックや電圧を抑える“サーマルスロットリング”という保護機能が備わっている。そのため、もしここでの選択を間違ったとしても、発熱が原因でいきなり壊れるということはめったに起きないだろう。ただし、異常発熱する可能性をかかえたまま運用を続けるのはもちろんよくないし、CPU本来の性能も発揮できない。あらかじめ正しくCPUクーラーのタイプを選び、安全なPower Limit設定で運用することをお勧めする。

異なるCPUクーラータイプを選んだり、CPUクーラーを交換した際には、UEFI設定画面内で選びなおすことも可能

 もしCPUクーラータイプを間違って選択してしまった場合は、UEFI設定画面で[F7]キーを押して操作モードを“Advanced”に切り換え、“OC”の項目にある“CPU Cooler Tuning”で選び直すことができる。手動で設定を詰めていくこともできるが――それはいろいろなスキルを身に着けてから、としておこう。

 なお、Power Limit設定は、“ボックス”選択時はCPUが定めた標準値、今回の“空冷タワー型”だと標準値よりややアップ、“水冷型”だと実質無制限となる。冷却能力の高いクーラーほどブーストによってより性能を引き上げることができる、と覚えておこう。