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仕事用のモニターこそケチってはいけない。WQHD/75Hz/Type-C対応のMSI「Modern MD272QPW」

高解像度で目に優しく、機能も充実。ベストバランスなデスクワーク用の新定番! text by 日沼 諭史

MSIのビジネスモニター「Modern MD272QPW」

 「ビジネス向け」というくくりで世に出ている低価格なモニターはいまだフルHD、リフレッシュレート60Hzのモデルが大多数を占める。しかし、それで本当に効率よく仕事をこなせるのだろうか。PC作業の際に常に目にするデバイスだけに、ここが良くなれば効率も上がるはず。

 ……と常日頃思っていた筆者のところに現われたのが、MSIのモニター「Modern MD272QPW」だ。ゲーミングデバイスでも知られるMSIから登場したビジネス向けモデルということで、ビジネスに求められる性能に止まらないたくさんの要素が盛り込まれた製品になっている。実売価格は3万円台前半。早速その中身をチェックしていこう。

狭額縁のスタイリッシュデザイン、ピボットにも対応する多機能スタンドも

 最初に注目したいのは、外観のスタイリッシュなデザイン。ほぼ全体がホワイトで統一されたボディは狭額縁、かつ正面から見たときに操作ボタンなどの突起や装飾がないシンプルなもので、「MSI」のロゴも控えめ。もちろんゲーミングモニターにあるようなイルミネーションもないから、オフィスや書斎にもなじみやすい。

ホワイトボディのシンプルな狭額縁デザイン
背面ももちろんホワイト

 使い始めるには組み立てが必要だが、工具が不要な「ツールレスデザイン」となっており、脚と台座からなる付属スタンドを軽くモニター背面に挿し込むだけでOK。オフィスに大量導入するような場合でも手間は最小限で、もしスタンドを取り外したくなったときも背面にあるレバーを引けばロックが解除され、簡単に分離できる。

脚を本体背面に軽く挿し込む
手回しネジで台座を取り付けて完成

 付属スタンドは多機能タイプで、高さ(110mm)の調節だけでなく、左右各30°のスイベル(首振り)、-5~20°の上下角度調節(チルト)、-90~90°の回転(ピボット)に対応。設置場所やユーザーの姿勢、用途に応じた自由度の高い使い方ができるようになっている。スペックシートや説明書には記載されていないが、脚部分に取り付けるケーブルホルダーも付属しているので、これを使って電源ケーブルや映像ケーブルをうまく逃がせば、デスク上をすっきりさせて気持ちよく仕事をこなせる。

高さ調節は110mmの範囲
チルトは-5~20°
ピボット対応で縦向きにもできる
ケーブルホルダーも付属している
電源ケーブルなどを通しておけばモニターまわりがすっきり

 また、VESAにも準拠しているので、市販のモニターアームなどへの取り付けにも対応する。ちなみに、このサイズのモニターとしては比較的めずらしく、ネジ穴間隔が75mmとなっている。世の中のモニターアームは一般的な100mmと75mmの両方に対応していることがほとんどなので、取り付けでつまずくようなことはまずないと思うが、一応頭に入れておきたい。

モニターアームに固定するときは付属のスペーサを取り付ける
ネジ穴の間隔は75mm

WQHDで75Hz、USB Type-Cでの接続もOK

 そして「Modern MD272QPW」のモニターとしての性能はさらに特徴的だ。ノングレアの27型IPS液晶パネルはフルHDよりも約1.8倍広いWQHD(2,560×1,440ドット)解像度で、リフレッシュレートは75Hz。視野角が広く、鮮やかな色合いで、キリっとした画質のIPS液晶はもちろんビジネス向けだし、解像度が高いおかげで1画面内に表示できる情報量も多い。細かな文字を扱うビジネスアプリケーションでは明らかに有利だ。sRGBカバー率は90%、DCI-P3カバー率は73%ということで、一般的な画像処理においても発色性能に不足はない。

 また、本製品は標準でハードウェアレベルでのブルーライトカットを実装。刺激の強い波長のブルーライトのみをカットし、影響の少ないブルーライトは維持することにより、より自然な発色を維持しながら眼に優しい設計になっている。

高解像度で色鮮やかなIPSパネル

 その上で、リフレッシュレートも標準的な60Hzより高いのは大きなメリットとなる。ゲームをするわけではないのに高いリフレッシュレートが必要なの? なんて思うかもしれないけれど、画面の書き換えが高速になることで、Webサイトや資料をスクロールしたときの残像感は確実に低減する。マウスカーソルの動きもなめらかになるので、それによって総合的な視認性、操作性が高まり、さらには目の疲労を抑えることにもつながるのだ。

最大リフレッシュレートは75Hz。画面スクロールなどがなめらかに

 インターフェースも今時らしい充実ぶりで、USB Type-C、HDMI、DisplayPortの3系統の映像入力を備え、USB 2.0 Type-A×2とUSB 2.0 Type-B(アップストリーム)ポートもある。USB Type-Cは、DisplayPort Alternate Mode対応のノートPCなどと接続することで、映像出力と同時にノートPCへのUSB PDによる給電(最大65W)が行なえるもの。なので、「Modern MD272QPW」がオフィスにあれば、出社したときにノートPCとケーブル1本を接続するだけでマルチモニター環境になり、ノートPCの充電器も持ち運ばずにすむ。

背面のインターフェースまわり
USB Type-Cケーブル1本でマルチモニター化。ノートPCには同時に給電もされる
USB Type-Cケーブルは付属していないので、DisplayPort Alternate Modeでの映像出力対応をうたうType-Cケーブルを別途用意しておこう

 しかもこのとき、「Modern MD272QPW」が持つ二つのUSB Type-AコネクタもPC側から利用できる。要するにモニター自体がUSBハブにもなるということ。たとえばキーボードやマウス、Webカメラといった周辺機器を接続しておけば、ノートPCでありながらデスクトップPCのような使い勝手を実現できてしまう。

 デスクトップPCなど、USB Type-Cがない(DisplayPort Alternate Mode非対応の)ユーザーもUSBハブ機能は利用可能だ。この場合はPCとモニターを付属のUSB Type-Bケーブルでアップストリームポートに接続すればOK。映像は別途HDMIかDisplayPortで接続する必要があるので配線は2本になってしまうが、少し離れたところに置いたPC本体まで周辺機器のケーブルを引き回したくないときなどに便利だろう。

USB Type-Cで接続した場合は、二つのUSB Type-Aコネクタも利用可能に
映像入力に加えて、アップストリーム(USB Type-B)ポートに接続すればUSBハブ機能が有効になる

複数PCで周辺機器を簡単に共用できる「KVMスイッチ」機能

 ところで、このUSB Type-CとUSB Type-B(アップストリーム)で接続したときのUSBハブ機能は、ノートPCとデスクトップPCなど2台を同時に一つのモニターに接続するときに本領を発揮してくれる。なぜなら「Modern MD272QPW」は「KVMスイッチ」機能を内蔵しているからだ。

「KVMスイッチ」機能も内蔵する

 たとえば以下の図のように、ノートPCとはUSB Type-Cで、デスクトップPCとはUSB Type-BとHDMIもしくはDisplayPortで接続し、USB Type-Aコネクタには外付けのキーボードとマウスをつなげておく。この状態で「Modern MD272QPW」の映像入力をType-Cに切り換えると、外付けのキーボードとマウスでノートPCを操作でき、HDMIまたはDisplayPortに切り換えるとデスクトップPCを操作できるようになる。映像入力の切り換えに合わせて、それぞれのPCにUSB機器がひもづけられる、というのがKVMスイッチ機能だ。

ノートPCとデスクトップPCの2台を接続するときの配線例

 これによって2台のPCの操作を1組のキーボード・マウスでまかなえるようになり、デスクをすっきり広々と使える。キーボード・マウスを複数PCで共用する方法としては、別途USB切り換え器を用意する手もあるが、「モニターの映像入力切り換え」と「USB切り換え器の操作」という二つのアクションが必要になってしまうのがネック。しかし「Modern MD272QPW」のKVMスイッチ機能を使えば映像入力の切り換えにUSB機器の接続も連動するので、はるかに手間が少ない。業務効率向上や生産性アップにも間違いなく貢献するだろう。

ノートPCとUSB Type-Cで接続。マルチモニター状態で、外付けのキーボードとマウスも使える
WindowsのデスクトップPCとはDisplayPortで接続。もちろん同じ外付けのキーボードとマウスが使用可

使い勝手を高める専用ユーティリティ「Productivity Intelligence」

 KVMスイッチ機能を含め、「Modern MD272QPW」の各種設定はほかのモニター製品と同様、本体のボタンから表示・操作できるOSD(On Screen Display)から行なうことになる。メニューボタン、2個の移動ボタン、決定ボタンの四つで操作するので難しいところはないけれど、モニターの下に手を伸ばして操作することになるので、煩わしさも少しはある。

本体右下底面にあるボタンでOSDを操作する
画質調整をはじめさまざまな設定が可能だが、手を伸ばして操作するのがめんどうに感じるときも

 そういうときは「Productivity Intelligence」を活用したい。これは、OSDで設定できる内容と、それ以上のカスタマイズ機能を利用できるようにするWindows用のユーティリティだ。

Windows用ユーティリティ「Productivity Intelligence」

 「Modern MD272QPW」は、輝度、コントラスト、色温度などいくつかの画質にかかわる設定を「プリセット」として最初から用意している。たとえば画像編集や動画再生に適したプリセット、ビジネスアプリケーションに適したプリセット、省電力な画質にするプリセットなどがあり、これらを切り換えることで画面の色合いなどが変化する。もちろんこれらはモニター本体のOSDから設定することもできるが、「Productivity Intelligence」ならマウス操作で分かりやすく、手早く切り換えられる。

OSDから選択できるプリセット
ユーティリティ側からも同じようにプリセットを切り換えられる

 プリセット以外に、自分でカスタマイズした画質設定をプロファイルとして追加することも可能で、モニターの輝度レベルの調整や映像入力の切り換えといった操作をキーボードのショートカットキーに割り当てられる機能もある。モニター本体のボタンには映像入力切り換えや内蔵スピーカーの音量調整など、各種機能を割り当てる機能もあるが、それらもこの「Productivity Intelligence」の中でより直感的に設定可能だ。

独自の画質設定をプロファイルとして追加可能
キーボードショートカットでモニターの各機能を操作できるようにする「ホットキー」設定
モニター本体のボタンの機能を割り当てることも
アプリケーションのウィンドウ配置を記憶する「分割ウィンドウ」機能も用意

 ところで、あらかじめ用意されているプリセットの「ユーザー」や「オフィス」、または独自プロファイルに設定した場合、低ブルーライト化の機能も利用できるようになる。本製品はハードウェアレベルのブルーライトカット機能を備えているが、これを利用することで画面の色味を変更してブルーライトをカットするソフトウェアブルーライトカット機能も合わせて使うことができる。

本製品は標準でハードウェアブルーライトカット機能を備えている。色味は変わらず、自然な見た目
従来のソフトウェアブルーライトカットをONにした画面。かなり黄色く見えるが、使い続けていると慣れて気にならなくなる

 工業製品の安全試験と認証を行なう機関であるTUV Rheinland(テュフ ラインランド)からは、低ブルーライトの仕組とあわせ、ちらつきのないフリッカーフリーモニターであることの認定も受けている。75Hzのリフレッシュレートで残像感が減っていることもあり、長時間のデスクワークにも安心して使えることは間違いないだろう。

デザインよし、コスパよし、性能も◎。ビジネスモニター新定番になるか

 狭額縁のおかげか27型のわりにはコンパクトで、筆者が仕事で使っている奥行き60cmのデスクにモニターアームで設置したところでは、圧迫感を覚えないちょうどよいサイズ感だった。「うちのパソコンデスクに27型の16:9モニターは大き過ぎるよ」という声はよく聞こえてくる。しかし、「Modern MD272QPW」ならまったく問題なし。デザインについても落ち着きのあるスタイリッシュな見た目で、オフィスにあってもまったく違和感がなさそうだ。

 USB Type-C対応でUSBハブ機能を備え、しかもWQHD解像度かつリフレッシュレート75Hzという性能を考えると、これで3万円台前半はなかなかのお買い得感。せっかく買い換えるならフルHDを越える解像度と作業性を手に入れたい、でもなるべく予算は抑えたい、スマホで知った滑らかな動きもちょっと気になる……などと考えてしまう昨今のモニター選び。一歩先をいく「Modern MD272QPW」の性能は、ビジネスモニターの新定番となる可能性を秘めているかもしれない。

[制作協力:MSI]