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「WINDFORCE 2X」搭載、
“よく冷える”OC版のRadeon R9 285カードをテストしてみた

text by 清水貴裕

GV-R9285WF2OC-2GD
GV-R9285WF2OC-2GD

 最近、GIGABYTEがアピールに力を入れているもの、といえば同社独自のビデオカードクーラー「WINDFORCE」がその一つ。

 同社の主力製品の多くは「WINDFORCE」シリーズのバリエーションを搭載、そして、そのほとんどが標準仕様でオーバークロック済みで出荷、その冷却能力の高さをアピールしている。9月に登場した「Radeon R9 285」でも、同社はオーバークロック仕様のWINDFORCEモデルを早速投入、冷却能力の高さとそこから引き出される性能をウリとしている。

 そこで今回、そのオーバークロックモデル「GV-R9285WF2OC-2GD」を借用、パフォーマンスをテストしてみた。

 この製品は、実売33,000円前後のいわゆるミドルハイクラス品。WINDFORCEの基本クラスとも言える「WINDFORCE 2X」を搭載し、オリジナル基板も採用したこの製品だが、基板やクーラーの作り、そして肝心の性能はどうなのか?

 ベンチマークテストやオーバークロックを通じて検証してみた。

基板もクーラーも完全オリジナルのOCモデル

デュアルファン仕様の「WINDFORCE 2X」を搭載。

 GV-R9285WF2OC-2GDはRadeon R9 285を搭載、GPUクロックをリファレンスモデルの918MHzから973MHzにオーバークロックした製品だ。

 OCモデルだけあり、基板はGIGABYTEの独自設計で、「Ultra Durable VGA」という品質規格に準拠。高品質な日本製コンデンサや、放熱性に優れる2oz銅箔層を採用した基板などが特徴だ。これらの実装により、基板の発熱が低く抑えられており、OC耐性に優れているという。

ヒートシンクを外すと基板の表面はこのような作りになっている。VRMはGPU 5フェーズ+メモリ 2フェーズの合計7フェーズ構成。左側のヒートシンクが付いた部分がGPU用のフェーズで、右側の2フェーズがメモリ用のフェーズになっている。
基板の裏面。シンプルな実装だが、AMDカードらしく、GPUコアの裏側部分には極小のチップコンデンサが所狭しと実装されている。
ディスプレイ出力は、DVI-I/DVI-D/HDMI/DisplayPortの4系統が搭載されている。
補助電源は6ピン×2の構成。PCI Expressスロット側から供給される75Wを合わせると、合計で225Wの電力を供給可能な仕様だ。
メモリチップはELPIDA製の物が搭載されている。「W2032BBBG-6A-F」の刻印が見て取れる。
GPU用フェーズのヒートシンクを外してみた。全てのコンデンサは日本製のニチコン LFシリーズで統一されている。

高冷却クーラー「WINDFORCE」のスタンダード版「WINDFORCE 2X」を搭載

ヒートパイプが直接GPUコアに触れるようにデザインされている。同じヒートシンクがメモリチップにも触れるようになっており、メモリチップの冷却も万全だ。
土台部分にヒートパイプをロウ付けした構造となっている。

 搭載しているクーラーは、GIGABYTEのオリジナルクーラーである「WINDFORCE」シリーズのスタンダード版、「WINDFORCE 2X」を搭載している。

 シリーズ共通の「気流のコントロール」を意識したデザインは健在で、エアフロー効率化のため、2基のファンはいずれも傾斜させた状態で取り付けられている。

 なお「2X」という名が示す通り、デュアルファン仕様のクーラーだが、ヒートパイプも1本ではなく2本で、従来の物よりもゴージャスな仕様。基板上の実装パーツもそれを考慮した設計で、たとえば、ヒートパイプを避けるようにヒートシンクが配置されていたりする。

 また、メモリチップにクーラーが密着する構造なのも特徴で、GPUコアだけでなくメモリチップも効率的に冷却可能なのは嬉しい。これはビデオメモリのOC耐性に影響してくる部分なので、本製品の強みの一つと言える。

ファン部分のみを取り外してみた。WINDFORCEと書かれているフレームは、樹脂製で軽量な作りになっている。
ファンを外したヒートシンク側
WINDFORCEシリーズではおなじみの傾斜ファン。画像では分かりにくいかもしれないが、ケース背面側に風邪か抜けるように角度が付けられている。
ヒートシンクの間の土台部分にも小型のヒートシンクが配置されているのが特徴的だ。
ヒートシンクを外したGPU側
ヒートパイプは2本搭載されている

ベンチマーク&ゲームでの挙動をテスト高性能クーラーの成果は?

 では、パフォーマンスをテストしていきたい。

 まず、3DMark Fire Strikeを実行して、スコアを求めてみた。検証環境は以下の通り。

 比較対象は、R9 285の定格相当(918MHz)と、GV-R9285WF2OC-2GDの定格(973MHz)の2通り。R9 285定格相当の計測は、ユーティリティを用い、動作クロックを918MHzまで落としてから行っている。

【検証環境】

CPU:Intel Core i7-4790K(4GHz)
マザーボード:GIGABYTE Z97MX GAMING 5(Intel Z97)
メモリ:G.SKILL F3-2400CL9Q-16GBHD(PC3-19200、2枚で使用)
電源:Antec HCP-1000 Platinum(1000W、80PLUS Platinum)
OS:Windows 8.1 Update 64bit
電力計:サンワサプライ TAP-TST5
ソフトウェア;GPU-Z 8.0(GPU温度の計測に使用)
グラフィックドライバ:Catalyst 14.9

室温26℃

3DMark FireStrike
Battlefield 4

 その結果だが、まず、定格相当の918MHz時の総合スコアが6,999ポイントだったのに対し、GV-R9285WF2OC-2GDは7,294ポイントという結果。OCモデルなだけあり、その分、数値が伸びた結果が出ている。この時のGPU温度は56℃で、消費電力値は262Wを記録。温度が低く抑えられているため、ファンの回転数も上昇せず、静音性も良好だった。

 実ゲームでの挙動はBattlefield 4を用いてチェック。シングルキャンペーンの「SHANGHAI」冒頭のデモシークエンス開始からの60秒間を3回計測し、その平均値を求めた。解像度は1,920×1,080のフルHD画質。同ゲームはDirect X 11とMantleの双方に対応しているが、今回は「一般的なゲームパフォーマンス」を見るのを目的とするため、Direct X 11のみで検証した。

 グラフを見ると一目瞭然だが、120FPSプレイを目指すのならば平均値が133.933FPSの中画質、60FPSプレイを目指すのならば平均値が90.15FPS高画質がオススメだ。最高画質はプレイできないことはないのだが、平均値が60FPSを下回っているため、マルチプレイ中やキャンペーンの描画が重いシーンではこれよりもFPSが下がる可能性があるのでオススメできない。

さらにOCを敢行リファレンス比で+1割以上の場合も

独自ユーティリティのOC GURU IIはOC機能だけでなく、ファン設定やモニタリング機能も備える。
電圧は定格のまま、動作クロックのみを変更した

 さて、通常のベンチマークは上記のような結果となったが、GPU温度に余裕が見られたので、OC検証も行ってみた。OC設定には、付属の独自ユーティリティ「OC GURU II」を使用した。

 OC GURU IIは製品によって設定可能項目が変わるが、この製品の場合、GPU電圧とビデオメモリ電圧はブラックアウトしていて設定できなかったので、各種電圧は定格のままとし、その状態でどこまでOCできるかをテストした。

3DMark FireStrike

 まずは、3DMark Fire Strikeの結果から。GPUコアを1,103MHz、ビデオメモリを1,500MHzにOCした状態での総合スコアは、8,045ポイントを記録。

 ビデオメモリのOCは、1,600MHzまでベンチの完走を確認しているが、スコアの伸びはなかった。画面にノイズなどの異変は現れなかったが、電圧不足で動作が不安定になっていると思われる。OC常用を考えると、安定している1,500MHzが狙い目なのかもしれない。

 さて、気になるGPU温度だが、OC前が56℃だったのに対し、OC後は60℃までしか上昇していない。これはクーラーの冷却力が高いからだと思われる。

 消費電力は262Wから285Wまで上昇しているが、電圧を変えていないせいか、それほど上昇していない。性能の向上を考えると、悪くないトレードオフと言えそうだ。

GPU温度
システムの消費電力
Battlefield 4

 また、実際のゲームでも、ということで、Battlefield 4もOC検証をしてみた。

 上記と同じ設定ではゲーム画面でフリーズしてしまったため、GPUコアを30MHz落とし、GPUコア 1,073MHz/ビデオメモリ 1,500MHzという設定とした。これでもGPU定格クロックからは+155MHz、製品仕様からでも+100MHzという上昇幅だ。

 さて、結果の方は、最高画質で最小FPS値が51から55へ向上、最大FPS値は60から63へと向上している。平均FPS値が60FPSに近い58.817まで上昇しているので、かなりイイ線まできているのだが、マルチプレイや描画の重いシーンを考えるとまだちょっと足りない。

 もっとも、Battlefield 4の場合「Mantleを使う」という手があるわけで、これを使えば平均60FPSを超えるのはほぼ確実。最小FPSが60FPSを超える可能性もあるわけで、OC+Mantleで「後ちょっと」をクリアできる、ということになるだろう。

さすがの「冷却力」で、常用OCでも利用可能?

 さて、通常の使い方からオーバークロックまで見てきたが、この魅力は何と言っても「冷却力」の高さだろう。

 クーラーの「WINDFORCE 2X」は冷却力が高いだけでなく、高負荷時の静音性も優れている、というのがテストした感想。

 カード全体としても、定格電圧での各種クロックの伸びが良く、OC時のスコアやFPS値の伸びも素直。そもそもオーバークロックモデルのため、他のFadeon R9 285カードよりもパフォーマンスが高いが、手動設定でさらにオーバークロック、メーカー保証値以上のオーバークロックで常用する、という楽しみ方をしてみるのもいいかもしれない。

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清水 貴裕

GIGABYTE GV-R9285WF2OC-2GD