特集、その他

格安SIM対応+高解像度のWinタブレット「CLIDE 9」を使ってみた

欲しい機能全部入り、法人向けだけど個人でもイケる text by 石川ひさよし

テックウインドの法人向けタブレット「CLIDE 9」。同社は法人向けのサポートに熱心で、モニター募集(3/15まで)や貸出サービスも実施中だ。

 ASUSTeKマザーボードなどでお馴染みの代理店である「テックウインド」は、数々のPC関連製品とともに、タブレット製品も展開している。

 とくにSIMフリーモデルにも積極的で、秋葉原に集うガジェットに敏感なユーザー層にとって目の離せない存在だ。

 さて、今回紹介するのは、そのテックウインドが“法人向け”として発売しているWindowsタブレット「CLIDE 9」。

 格安SIM対応で話題になった製品だが、ネットで調べると個人向けに販売しているもあり、また、本来の「法人向け」としてもモニター募集(期間後はプレゼントあり/3月15日まで)や検討目的の貸出サービスがあるなど、導入しやすい印象が強い。

 そこで今回は、気になる通信機能やGPS、そしてベースとなる性能など一通りのポイントをチェックしてみた。

今時の「全部入りタブレット」WUXGA/IPSパネルに4コアAtom、SSD 64GBでGPS/3G SIM対応

左から10.1型(これはタブレットではなくモバイルディスプレイのGeChic On-Lap 1002で、CLIDE 9から映像出力した)、CLIDE 9の8.9型、ThinkPad 8の8.3型という並び。パネルサイズは確かにCLIDE 9の方がThinkPad 8よりも大きい。
パネル解像度は1,920×1,200ドット。激安タブレットの主流である1,280×720ドットよりもひと回り高解像度で、縦横比が16:10なのもタブレットとして使い勝手がよい。

 CLIDE 9は、ここ2年で急成長してきたWindowsアプリケーションがそのまま動く低価格タブレットだ。

 低価格ではあるが、CLIDE 9の販売価格は35,000円程度であり、激安Windowsタブレットとは一線を画している。その理由は、CLIDE 9のスペックが、“全部入り”であるところにある。

 それでは、ディスプレイから紹介しよう。

 まず、CLIDE 9のパネルサイズは8.9型であり、製品名の「9」はここから来ている。いわゆる低価格Windowsタブレットの主流である8型よりひとまわり大きく、それでいて10型よりもコンパクトだ。

 解像度は1,920×1,200ドット(16:10)。ここも低価格Windowsタブレットの最大クラスだ。1,920×1,080ドットパネル(16:9)ではないところがポイントで、1,280×720ドットなどの激安モデルと比べ、表示できる情報量も多い。

 高解像度パネルは文字も小さくなってしまうのがネックだが、そこは8型タブレットよりもパネルの表示面積が大きいぶん、文字サイズが気持ち大きくなるので、ある程度解消される。もちろんOS標準の「テキストとその他の項目の大きさの変更」から調整すれば、かなり大きな文字で表示することも可能だ。

 また、パネル駆動方式にIPSを採用しているので視野角も広く、当然10点タッチをサポートしている。Windowsタブレットにおいて、モビリティとともにとくにデスクトップモードでの快適さを求める方は、CLIDE 9のパネルサイズや解像度、視野角などのスペックに注目して欲しい。

IPSパネルなので視野角はかなり広い。光沢パネルであるため映り込みはあるが、ギラギラというほどではない。
SIMスロットは標準SIM用なので、microSIMなどではアダプタを用いる。

 次にSIM対応について紹介しよう。

 CLIDE 9の特に重要なポイントとなるのがSIM対応だ。残念ながらLTEには非対応で3Gのみだが、対応するSIMを挿し込めば、単体でデータ通信が可能になる。

 帯域は、HSPA/WCDMA 2100MHz+900MHz, EDGE/GPRS/GSM 1800Mz+900MHzとされる。ドコモおよびソフトバンク、そしてそのMVNO(要3G対応)のSIMであれば、利用できそうだ。

 SIMスロットは、本体上部中央にある。SIMのサイズは標準SIMサイズになる。昨今はmicroSIMで販売されていることが多いので、SIMアダプタを併用するのがよいだろう。SIMスロットはむき出してカバーなし。プッシュプッシュ式で、交換は簡単だ。SIMアダプタをトレー代わりに用いれば、スマートフォンやタブレットとの間でSIMを共有するのも難しくはない。

 そのほかに搭載されているインターフェースは、microUSB、microHDMI、電源ボタン、ボリューム最小ボタン、オーディオ用ジャック、イン/アウトカメラと行った具合で、Bay Trailタブレットとしては標準的だ。後ほど、MVNOデータSIMでの接続方法も紹介しよう。

上部のインターフェースは左からマイク、電源ボタン、ボリュームボタン+/-、microSD、SIM(標準SIM)。
左側面のインターフェースは左からmicroHDMI、ヘッドホン用ジャック、microUSB。さらに左には簡易なステレオスピーカーがある。
内側カメラは200万画素。上部中央にある。
背面カメラは500万画素。正面から見て左上、背面から見て右上となる。

 内部スペックも、なかなか充実している。

 まずCPUは4コアで定格1.33GHzのAtom Z3735F(バースト周波数1.83GHz)を採用している。4コアで比較的高いクロックのため、重い処理をさせた際のレスポンスが、2コアの低クロックCPU採用モデルよりもよい。

 メモリはDDR3-1600の2GBだ。4GBモデルがあればよいのだが、Bay Trailタブレットは2GBが主流なので、標準的と捉えるのが素直だろう。ストレージはeMMCの64GB。32GBのモデルも多いので、ここは余裕があると言え、さらに必要ならばmicroSDで拡張できる。

CPUはAtom Z3735Fを採用。
システムから見たCLIDE 9。メモリは2GBでOSは32bit版のWindows 8.1 with Bing。
ストレージはeMMCの64GB。初期状態での空き容量は48GBだった。
CrystalDiskMarkから見たストレージ性能。リードは十分に速く、しかしライトや4K性能はやや物足りない。
そのほかCLIDE 9の主なデバイス。

 無線機能は、IEEE802.11b/g/n無線LANと、Bluetooth 4.0をサポートする。このあたりも標準的だ。ただし、上記のとおり3Gもサポートしているので、さまざまなところで繋がるメリットは大きい。

 そして、センサー類として、GPSに対応している点もメリットだ。GPSは、よく3G用の通信モジュールとセットとなることが多いのだが、本製品も同様なのだろう。GPSと3Gを使えば、地図データをインターネットからダウンロードする地図アプリがWi-Fiホットスポットに縛られることなく利用できる。

 このように、スペック的に見れば、この価格は妥当どころかかなりアグレッシブ。外観はシンプルで飾り気がないが、そこも価格の一部と言えるだろう。

 最後にサイズと重量を紹介しておくと、232.8(W)×149.5(H)×8.5(D)mmに約480gとなる。サイズは8型と10型の中間かやや8型寄りで、とくに軽さについては8型モデル並みに抑えられている。

せっかくなので、On-Lap 1002と並べてみた。On-Lap 1002が10.1型で1,280×800ドットなのでチグハグだが、マルチモニタ(モバイルバッテリーが必要となるが……)環境がミニマムで構築できるのは面白い。なお、スタンドにはOn-Lap 1002用オプションのキャリングケースを組み合わせてみた。ちなみにこのキャリングケースはCLIDE 9も収納できるサイズ(ケースのほうがやや大きいが)

安価なMVNO SIMカードでネットに接続するまでの手順をチェック

今回用いるのはドコモ回線を利用するU-mobileのデータ通信使い放題プランのSIMカード。

 さて、SIMカードによるデータ通信を試してみよう。今回試したのは、筆者が契約しているU-mobileのデータ通信使い放題プランのSIMである。

 まず、SIMを挿した後、最初にする作業がAPNなどのネットワークセットアップだ。Windowsの場合、画面左からスワイプし、チャームを呼び出した後、「設定」をタッチし、その下に表示される3行2列のアイコンから、左上のインターネット接続のアイコンをタッチして「ネットワーク」を表示する。

 要は無線LAN接続をする際の設定画面に3G接続用の項目が表示されるわけだ。3G接続の場合、「モバイルブロードバンド」という項目がそれになる。U-Mobileの場合、ドコモのネットワークを利用するため、「JP DOCOMO(HSDPA)」という表示が現れるかと思う。

まずはチャームを呼び出して、下の6つのアイコンから「ネットワーク」(上段左)をタッチ。中段の「モバイルブロードバンド」をオンにしてしばらく待つと、ドコモ回線のMVNO業者であれば「JP DOCOMO(HSDPA)」という項目が現れる。
JP DOCOMO(HSDPA)をタッチすると「接続」ボタンが現れるのでタッチする。なお、設定が完了するまでは「自動的に接続する」のチェックをオフにしておいたほうがなにかとラクだ。

 JP DOCOMO(HSDPA)をタッチまたはクリックすると、プロパティの設定ができる。

 そこで、APN、認証ID、パスワード、認証方式といった各項目に、契約している通信事業者から受け取った情報を入力していく。入力後、接続をタッチして接続を確認できた。

接続方法を選択する項目では「カスタム」を指定。アクセスポイント(APN)など、MVNO業者指定の情報を入力して「次へ」を押すと、接続完了だ。

普通のWebサイトや地図、SNSなら「まずまず実用的」な通信速度

回線速度計測の結果は947.52Kbps。同じ場所でのLTEスマートフォンは10Mbps程度出ていた。
Bingの地図アプリを使ってみた。GPSも搭載しているのでその点、Wi-Fi電波などを使うものよりも正確。3G回線からの読み込みは、拡大・縮小時にラグとして感じられるものの、まずまず実用的なレベル。

 速度については、LTEではなくHSDPA接続、それもMVNO事業者の回線になるため、試用時の実測値では1Mbps弱という結果。LTEと比べるとさすがに遅く、ウェブサイトの閲覧もLTEを使ったスマートフォンのほうが正直、素早い。

 とはいうものの、一般的なWebサイトの閲覧や地図アプリの利用、TwitterやFacebookの利用においては「ラグや遅れを感じることもあるが、まずまず実用的」というレベル。ヘビーなWebサイトやダウンロード、スムースな動画視聴には向かないが、“取り出してすぐに通信できる機動性”を重視するなら「アリ」と言える。MVNO SIMもかなり安価になっており、このあたりは考え方だろう。

 ちなみに、筆者の住処はLTE電波の弱い地域なのだが、3Gは途切れず通信できる。3Gのほうがまだカバーエリアの面でも広く、かなりな僻地でも利用できるし、遮蔽物に強いところも場所を選ばずインターネットに繋がる点で有利かと思う。

 最後に軽くWindowsエクスペリエンスインデックスだけ紹介しよう。CPUは5.8、メモリは5.5、グラフィックは3.9、ゲームグラフィックは4、ディスクは6.55となった。Atom Z3735Fをベースとしたタブレットなので妥当な値である。

Windowsエクスペリエンスインデックスの値。

数少ない“全部入り”のWindowsタブレット常時ネットワーク接続やGPSも魅力

 今回はCLIDE 9を4日間ほど使ってみた。

 普段、同じBay TraiタブレットのThinkPad 8を用いているが、処理速度的にはさほど変わらない。

 一方で、サイズ感としてはひとつ大きな8.9型というのもアリだと感じた。とくにタッチ操作に関しては、1,920×1,200ドット表示は共通なので、少し大きいCLIDE 9の方が圧倒的にラクだ。

 また、SIMカードを用いて単体でインターネット接続できるところがとくに気に入った。なにせ、定額SIMを組み合わせて常にモバイルブロードバンドをオンにしておけば、ディスプレイオンから数秒で自動的にインターネットに繋がる。

 これらの機能、8型よりも画面が大きく、1,920×1,200ドットのパネルで、SIM対応、といった点は、それぞれ個別に見ていけば対応製品がある。ただ、これを全て詰め込んでいる製品はまだ少ない。そこにCLIDE 9の魅力がある。

[Amazonで購入]

石川 ひさよし