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最大速度だけじゃなくアプリベースの性能も大きく飛躍! NextorageからGen5 SSD「NE5Nシリーズ」が登場!!

冷却性能抜群の大型ヒートシンク搭載モデルの実力もチェック text by 北川 達也

 公称最大速度10,000MB/s を実現したNextorageのPCI Express 5.0(Gen5)対応M.2 SSD「NE5Nシリーズ」の販売が始まった。記憶容量のラインナップは1TBと2TBの2モデルで、その高速性を活かした4K/8Kコンテンツの映像クリエイターやデータサイエンティストなどのヘビーな処理を行なう層やプロゲーマーなどの利用を想定したハイエンド向けの製品だ。

Nextorageが発売した公称最大読み出し速度10,000MB/sを実現したPCI Express 5.0対応のNVMe SSD「NE5Nシリーズ」。PCI Express 5.0対応製品は発熱が大きいため、特許申請中の巨大なヒートシンクを装備済みのモデルを用意。また、PCI Express 5.0対応SSDではめずらしいヒートシンク非搭載モデルもラインナップしている

Phison製のGen5用コントローラと最新NANDの組み合わせで10,000MB/sを実現

 これまでに登場したPCI Express 5.0対応SSDは、PC市場でよく知られるストレージメーカーや、マザーボードや周辺機器のメーカー製が中心だったが、本製品はソニーを源流とするストレージメーカーとして国内ストレージ市場で存在感を高めつつあるNextorage製。同社のフラグシップモデルだ。

 PCI Express 5.0対応SSDにおいて現在一般的なヒートシンク搭載モデルだけでなく、自作PCでの利用を強く意識した“カスタマイズの自由度”が高いヒートシンク非搭載モデルもラインナップ。今回は、NE5Nシリーズの性能をさまざまな角度から検証したので、その結果をレポートしよう。

ヒートシンク非搭載モデルの表面および裏面。NE5Nシリーズに搭載されているPhison製のPCI Express 5.0対応コントローラ「PS5026-E26」。NAND型フラッシュメモリはMicron製の最新の232層3D TLC NANDを搭載。DRAMの容量は1TBモデルが2GB、2TBモデルが4GBだ(写真は2TBモデルでNANDは両面計4チップ実装)。なお、ヒートシンク非搭載モデルで製品保証を受けるには、PCI Express 5.0対応ヒートシンクの使用などの条件を満たす必要がある

 NE5Nシリーズの特長は、PCI Express 5.0対応となったことで従来のPCI Express 4.0対応製品の性能を凌駕する公称最大読み出し/書き込み速度「10,000MB/s」(2TBモデルの場合。1TBモデルは読み出し9,500MB/s/書き込み8,500MB/s)を実現しただけでなく、体感性能についても大きな飛躍を遂げていることである。

 NE5Nシリーズの搭載コントローラは、PCI Express 5.0対応SSDにおいて定番となっているPhison製コントローラ「PS5026-E26」で、このコントローラにMicron製の232層の最新の3D TLC NANDを組み合わせている。

 搭載するDRAMの記憶容量は、同社のPCI Express 4.0対応SSD「Gシリーズ」と比較して2倍の容量に増量されており、1TBモデルで「2GB」、2TBモデルで「4GB」と大容量のDDR4 DRAMを搭載している。耐久性の高さは、1TBモデルで700TB、2TBモデルで1,400TBである。

NE5Nシリーズの主なスペック
型番NE5N1TB/FHHE SYMNE5N1TB/FHNE SYMNE5N2TB/FHHE SYMNE5N2TB/FHNE SYM
ヒートシンクありなしありなし
記憶容量1TB2TB
インターフェースPCI Express 5.0x4
コントローラPhison PS5026-E26
NAND型フラッシュメモリ232層 3D TLC NAND
DRAMDDR4 2GBDDR4 4GB
シーケンシャルリード9,500MB/s10,000MB/s
シーケンシャルライト8,500MB/s10,000MB/s
ランダムリード1,300K IOPS1,400K IOPS
ランダムライト1,400K IOPS1,400K IOPS
耐久性(TBW)700TB1,400TB

 NE5Nシリーズにおいてとくに注目しておきたいポイントが、“特許申請中”という強力な冷却能力を備えたヒートシンク搭載モデルを用意していることと、運用するには準備と多少の試行錯誤が必要なものの自作ユーザーが自由度を楽しめるようあえてヒートシンクを非搭載としたモデルが用意されていることである。

凝った構造のヒートシンク搭載モデル。ヒートシンクは装着済みで出荷される

 NE5Nシリーズのヒートシンクは、一般的なSSD向けのヒートシンクをさらに進化させた、発熱の大きいコントローラ部とNAND部を別々に冷やす分離構造の2段重ね方式を採用。高温になるコントローラは、サーマルグリスによって銅製のヒートパイプを圧着され、NANDはサーマルパッドによって密着されている。コントローラとNANDそれぞれが分離されて冷却されるため、よけいな熱がそれぞれに伝搬することもない。

2階建てになっており、ヒートパイプで2階部分に熱を送る構造

 また、NE5Nシリーズは、1TB/2TBモデルともに両面実装の製品となっているが、底面は、NANDとDRAMなどの実装されているチップの高さなどによってサーマルパッドの厚みを変え、適切な密着度を得ることで、熱伝導効率を高めるという工夫も凝らしている。

ヒートシンクを分解してみた。温度が非常に高くなるコントローラ部分との接触面はNANDほかの接触面と分離されており、コントローラの熱はヒートパイプを通じてヒートシンクの2階部分に送られる。NANDほかは1階部分および裏面のヒートシンク/ヒートスプレッダで対応。高さが違うチップに合わせて使用する熱伝導シールの厚みを変えるこまやかな配慮も

 NE5Nシリーズのヒートシンク搭載モデルは、これらの工夫によってエアフローが少ない状態でも高い冷却性能を実現。その冷却性能は後ほど紹介するが、マザーボードに付属する一般的な板状のヒートシンクとは比較にならない冷却性能を誇る。

 また、NE5Nシリーズのヒートシンク非搭載モデルも冷却性能を高められるように、製品シールの貼付位置を工夫している。一般的なSSDは、NANDとコントローラを隠すように製品シールが貼られているが、NE5Nシリーズは、発熱が大きいコントローラ部は冷却しやすいようにあえてむき出しのままにしてある。製品シールは、NANDの上に貼り付けられているといった具合だ。

 なお、NE5Nシリーズのヒートシンク非搭載モデルは、ヒートシンク未使用の状態での利用を保証していないほか、きちんと保証を受けるには、マザーボード付属のM.2用ヒートシンクでなく、PCI Express 5.0対応のヒートシンクの利用などの条件が付けられている。ヒートシンク非搭載モデルを購入したい場合は、こういった注意事項に留意しておく必要がある。また「ヒートシンクなしモデル」は「ヒートシンクがなくてよい」ということではないことには十分注意していただきたい。どのような場合でも十分な発熱対策は必須だ。

最大速度はGen4 SSDの約1.4倍。体感性能は約1.5倍の性能向上を実現!

 ここからは、NE5Nシリーズの性能を見ていこう。テスト環境は以下にまとめておくが、とくに断りのない限り、ベンチマークの取得には、NE5Nシリーズのヒートシンク搭載版の2TBモデル「NE5N2TB/FHHE SYM」を用いている。また、比較用にNextorage製PCI Express 4.0対応SSD「Gシリーズ」の2TBモデル「NE1N2TB」、QLC NANDを搭載したDRAMレスのPCI Express 3.0接続のM.2 SSD、さらにNE5N2TB/FHHE SYMをPCI Express 4.0接続で利用した場合の結果も取得している。

【検証環境】
CPUIntel Core i5-13600K(14C20T)
マザーボードASRock Z790 Steel Legend WiFi(Intel Z790)
メモリDDR5-4800メモリ 32GB(PC5-38400 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムストレージM.2 NVMe SSD(PCI Express 4.0 x4、1TB)
グラフィックスIntel UHD Graphics 770(CPU内蔵)
電源ATX 750W 電源(80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(22H2)

 まずは、最大速度を確認できるCrytal Disk Markの結果だが、PCI Express 5.0接続で利用したNE5Nシリーズは、さすがに速い。最大シーケンシャル速度は、ほぼ公称値どおりの読み出し10,080.7MB/s、書き込み10,218.8MB/sを記録。この速度はPCI Express 4.0接続のGシリーズの約1.5倍、PCI Express 3.0のSSDと比較すると約3倍の速度だ。

 また、NE5NシリーズをあえてPCI Express 4.0接続で利用した場合の速度についてだが、シーケンシャルはGシリーズとほぼ同じ速度になったが、4KB QD1/T1のランダム読み出しは、NE5Nシリーズのほうが約5MB/sほど速かった。

CrystalDiskMarkの計測結果。PCI Express 5.0接続時はほぼ公称値どおりの速度を記録。NE5NシリーズをPCI Express 4.0接続で利用した場合は、4KB QD1/T1のランダムリードの性能を除き、PCI Express 4.0接続Gシリーズとほぼ同等だった。NE5Nシリーズのランダムリードが速いのは、最新のNANDを採用しているからと推測される

 次に、アプリケーション利用時のストレージ性能を計測するPCMark 10 Full System Drive Benchmarkと、ゲームにおけるストレージ性能を計測する3DMark Storage Testの結果だが、NE5Nシリーズは、これらのベンチマークにおいて飛躍的な性能アップを遂げている点は注目ポイントだ。

 NE5NシリーズのPCMark 10のスコアは5,046、3DMarkのスコアは4,825。このスコアは、PCI Express 4.0接続のSSD、Gシリーズの約1.5倍のスコアで、現在発売中のSSD中でもトップクラスに位置する高スコア。平均アクセスタイムもPCMark 10では約35%、3DMarkで約28%も短縮されており、一般的なアプリ、そしてNE5Nシリーズのメインターゲットであるゲームにおける性能は、確実にGen4世代のSSDから向上していると言える。

PCMark 10 Full System Drive Benchmarkの計測結果。PCI Express 4.0世代のSSDでは、トップクラスの製品でも最大4,000ぐらいのスコアだったが、これを軽く凌駕している
3DMark Storage Testの計測結果。こちらのスコアもPCI Express 4.0世代のSSDではトップクラスの製品で最大4,000ぐらいなので、NE5Nシリーズは従来モデルを一気に抜き去った

 またNE5Nシリーズは、PCI Express 4.0接続で利用した場合でもPCMark 10が4,648、3DMarkが4,274という高いスコアをマークしている点にも注目だ。このスコアは、PCI Express 4.0世代のSSDというくくりで見た場合のトップに位置する高スコアで、NE5Nシリーズは、PCI Express 4.0接続で利用しても現状のトップクラスの体感性能を実現している。

UL Procyon Office Productivity Benchmarkの計測結果

 ゲーミング/クリエイティブ向きのSSDのテストとしては軽めのものにはなるが、UL Procyon Office Productivity Benchmarkの結果も紹介しておく。このテストは、Microsoft Officeの実アプリケーションを使って、ファイルや素材データを読み書きしながらテストが進行するため、SSDへのアクセスもたびたび発生するため、わずかではあるが使用するSSDごとに差が生じていた。このわずかずつの積み重ねがゆくゆくはトータルで大きな差になることを示唆している。テスト自体はMicrosoft Officeをベースにしたものではあるが、PCを使ったあらゆる用途の時間を“チリも積もれば”で改善していくことになるだろう。

 なお、UL Procyon Video Editingでは、CPU/GPUの性能差の影響のほうがはるかに大きいためか、SSDの差は1%強にとどまった。

非圧縮の4K動画を余裕で10本同時再生可能。DirectStorageでも広い転送帯域を実現

 次にPCI Express 5.0の広帯域を活かす用途として注目されている動画制作環境での活用を想定し、非圧縮の4K動画を何本ぐらい同時再生できる性能があるのかを検証した。具体的には、複数のソースファイルを制作環境に読み込んで編集したりプレビューしたりする、といった用途を想定している。

128KB_QD4/16スレッド読み出しの合計読み出し速度の計測結果。このテストは複数動画ソースを同時操作することを想定し、16タスクでどのぐらい速度が得られるかを計測している。また、実際環境では、シーケンシャルアクセスだけでなく、ランダムアクセスが交じることからランダム100%、シーケンシャル100%だけでなく、両者が交じるテストも行なっている

 まずは、16タスクの128KB QD4の読み出しタスクを同時実行した場合の速度だが、NE5Nはシーケンシャル読み出し100%の場合で合計速度9,113MB/sで、タスクあたり569MB/の速度を記録した。一方、PCI Express 4.0接続のGシリーズで行なった場合の合計速度は7,055MB/s、タスクあたり440MB/sで、合計速度は約2,000MB/s、タスクあたりの速度は約120MB/sもNE5Nシリーズより遅かった。また、PCI Express 3.0のSSDはさらに遅く、NE5Nシリーズの4分の1以下の速度しかでなかった。

 また、NE5Nシリーズはランダム読み出し100%の場合においても合計速度8,121MB/s、タスクあたり513MB/sの速度をマークしたのに対し、PCI Express 4.0接続のGシリーズは、合計速度6,294MB/、タスクあたり393MB/sで大きな差が付いている。

128KB_QD4/16スレッド読み出しの平均読み出し速度の計測結果。タスクあたりの平均速度が速いほど、解像度の高い動画をコマ落ちすることなく再生できる。PCI Express 3.0 SSDの速度が極度に遅いのは、PCI Express 3.0という帯域の狭さもあるが、DRAMレスの製品を利用したことも影響している。このレベルのマルチタスクで高負荷な用途では、PCI Express 5.0かつDRAMキャッシュのある製品に優位性がある

 さらに特筆しておきたいのが、100%ランダム読み出しのタスクを8~16の数で同時実行した場合の速度である。このテストは、一般に768MB/sの転送速度が必要とされる非圧縮の4K動画の再生を何本まで問題なく再生できるかを検証する意味で行なったものだ。

128KB_QD4/8~16スレッドランダム読み出しの平均速度の計測結果。非圧縮の4K動画は一般的に768MB/sの転送速度が必要とされ、これ以上の速度が得られていれば安定した再生を行なえる可能性高くなる。NE5Nシリーズは、"非圧縮"の4K動画を10本までなら余裕で再生できる速度をマークしている

 NE5Nは、このテストで10タスク同時実行でタスクあたり816MB/sの速度を記録しており、10本までなら非圧縮の4K動画を余裕を持って再生できる速度が得られた。一方で、PCI Express 4.0接続のGシリーズは、8タスク同時実行で741MB/sの速度にとどまる。この速度では、非圧縮の4K動画を8本同時に再生すると、コマ落ちが発生する可能性が高い。

Premiere Proでのテスト中の画面。画面左がNE5Nシリーズ、画面右がGシリーズでのもの。NE5Nシリーズでは帯域に余裕があるためストレージのアクティブ率が上下できているが、Gシリーズでは余力がないため100%に貼り付き状態

 上記のマルチタスクテストの結果を踏まえて、Adobe Premiere Proをハードに使用する現場を想定してさらにテストしてみた。テスト内容は、Premiere Pro上で、6K解像度のApple ProRes 4444形式の動画ファイル(2分強)を複数同時に表示して1分間プレビューを行ない、何トラック同時に再生するとコマ落ちが発生するかチェックする、というもの。各動画は1画面内に縮小して同時に表示されるように配置して1/2画質でプレビュー再生し、Premiere Proのコマ落ちインジケータが点灯したかどうかでコマ落ちの発生を判断している。このコマ落ちインジケータは1フレームでもコマ落ちが発生すると点灯するが、発生する状況は不安定なので、テストは複数回試行し、コマ落ちがとくに発生しやすい時間を併記した。

【プレビュー時のコマ落ち発生状況】
Nextorage NE5NGen4 SSD
1~9トラック点灯せず点灯せず
10トラック点灯せず点灯 (25秒前後)
11トラック点灯せず点灯 (18秒前後)
12トラック点灯せず点灯 (15秒前後)
13トラック点灯せず点灯 (5秒前後)
14トラック点灯せず点灯 (2秒前後)
15トラック点灯せず点灯 (1秒前後)
16トラック点灯せず点灯 (開始直後)
17~30トラック点灯せず

 結果は、上の表にまとめたとおり。Gen4 SSDだと10トラックでのプレビューでは25秒程度でコマ落ちが始まる状態。13トラック(わずか5秒程度でコマ落ち発生)からはスムーズにプレビューできる時間が短かった。実際の動画制作の現場担当者に見てもらったところ、「これだと実用は厳しい」状態とのことだ。

 一方、NE5Nシリーズではテストした中では最大の30トラックでもコマ落ちインジケータは点灯せず、終始快適なプレビューが可能。前述のマルチタスク&シーケンシャル/ランダムアクセスのきわめて優秀な結果が実用環境でも有効であることが分かる結果と言ってよいだろう。

 ただし、ここまでSSDの性能を引き出すには、PC全体の性能も必要。実は、Core i9-13900Kを中心としたシステムの場合、CPUがボトルネックになり、Gen4 SSDの帯域でさえ使い切れず、Radeon 9 7950X環境でNE5Nシリーズの真価がようやく発揮されたほど。超ヘビーな作業には総合的に高いPCスペックが必要ということが改めて分かったと同時に、すでに十分なCPU/GPU環境がある場合は、Gen5 SSDの導入でさらなる作業環境の向上を図れるということにもなるだろう。

GitHubで配布されているDirectStorageベンチツール「Bulk Load Demo」。DirectStorageを利用したSSD→ビデオメモリのデータ転送時の速度や帯域幅を計測できる

 次にゲーム関連の技術として注目されているDirectStorageに関連するベンチマークを行なったので、この結果についても報告しておこう。利用したベンチマークは、Githubで公開されている「Bulk Load Demo」だ。このベンチマークは、SSDからビデオカードのビデオメモリに描画データを転送してその速度(帯域)を調べるというものだ。

 なお、このテストを実施するにはDirectStorage対応のビデオカードが必須となるので、テスト環境にNVIDIA GeForce RTX 3060 Ti Founders Editionを追加。さらに、ビデオカード用のPCI Express x16スロットをレーン分割せずに利用できるRyzen 7 7600Xを核としたAMD環境も新たに用意してテストを行なっている。

Bulk Load DemoによるDirectStorage使用時の転送帯域幅の計測結果。AMD環境はCPUからSSD用のPCI Express 5.0接続用のレーンが用意されているため、Intel環境よりも高い転送速度が出ている

 結果だが、NE5NシリーズをIntel環境で利用した場合の転送速度は15.31GB/s、AMD環境で利用した場合は19.24GB/sとなった。この差は少々興味深い。

 AMD環境では、PCI Express 5.0 x4の帯域がSSD専用で用意されているが、Intel環境には用意されていない(4.0 x4のみ)。このため、Intel環境でPCI Express 5.0対応SSDを利用するには、CPUからでているPCI Express 5.0 x16をx8/x8に分割して利用する必要がある。このためGen5 SSDであるNE5N使用時のみ、ビデオカードがボトルネックになってしまったようだ。なお、NE5Nの実帯域よりも速度が出ているのは、転送データの圧縮転送が行なわれているからと推測できる。

 現在ではまだ、DirectStorageをフル活用するようなゲームは登場していないが、今後そういったゲームが登場し、4Kや8K解像度のゲームが増えてくれば、PCI Express 5.0の高速性が活かされる局面も増えてくるのかもしれない。

 なお、ゲームや3DMarkなどにおける一般的なパフォーマンス計測においては、レーン分割の影響はほとんどないことが過去のテストで観測されていることを補足しておく。

エアフローが少なくても高い冷却性能を実現、ゲーマーまたはクリエイター向きの高速SSD

 最後にNE5Nシリーズのヒートシンク搭載版の冷却性能とSLCキャッシュの使い方について見てみよう。

 これまでのテスト結果からも分かるようにNextorageのNE5Nシリーズは、PCI Express 4.0世代のSSDと比較して最大性能がアップしているだけでなく、アプリケーションベースの性能も大きく飛躍している。これらの性能アップの代償として発熱が大きくなってしまっている。NE5Nのヒートシンク搭載版の巨大なヒートシンクをみれば、その発熱の大きさも推測できるだろう。

NE5Nのヒートシンク搭載版の温度推移。TxBENCHの10分間のsequentialライトを行ない、その間の温度推移をグラフ化した。PCI Express 5.0接続時は最大73℃、PCI Express 4.0接続時は最大69℃だった

 そこで、NE5Nのヒートシンク搭載版の冷却性能がどれほどなのかを10分間のシーケンシャルライトを実施してチェックしてみた。結果は、なんと最大73℃までしか温度が上がらなかった。しかもこの温度は、バラック状態のエアフローがほとんどない環境で行なった結果であり、エアフローをきちんと確保した環境であれば、さらに低い温度にとどまっていたことは間違いない。この結果からも分かるようにNE5Nのヒートシンク搭載版の冷却性能は非常に高く、サーマルスロットリングを気にすることなく安心して利用できるように設計されていると言えるだろう。

 なお、NE5Nのヒートシンク搭載版をあえてPCI Express 4.0接続で利用した場合の温度推移もチェックしたが、このときの最大温度は69℃とPCI Express 5.0接続時よりも最大温度は4℃低く、終始3~5℃ほど低い温度で推移していた。NE5NをPCI Express 4.0接続で利用すると、最大性能が制限される分、発熱も抑えられるようだ。

NE5Nシリーズの2TBモデルに対し、100GBデータを記録するごとに2秒停止を繰り返し10分間の連続書き込みを行なった場合の速度推移。合計600GB強ほどSLC領域にデータを記録できた

 また、NE5NのSLCキャッシュの使い方は、現在のPhison製コントローラ採用製品全般に採用されている、“制限付きの全容量割り当て”タイプのようだ。この方式では、基本的には記憶容量の全量をSLCキャッシュに割り当てるが、連続書き込み時には割り当てられるSLCキャッシュの最大容量には制限があるというものだ。

 NE5Nの場合は、SLCキャッシュとして割り当てられる最大容量は、2TBモデルで容量の3分の1、つまり、約600GB強ぐらいになる。ただし、これにはもう一つ条件があり、連続してデータを書き込む場合は、この容量がさらに約3分の1に制限されているようだ。つまり、2TBモデルの場合、連続書き込みを行なうと約200GB強ほど記録したところでSLCキャッシュへの記録は一旦終了し、以降も連続で書き込みが続く場合は、TLC領域へのダイレクトライトに切り換わり、書き込みが終了するまでTLC領域へのダイレクトライトが継続する。

 ちなみに、NE5Nシリーズの最大書き込み速度である10,000MB/sはSLCキャッシュへの書き込み速度で、TLC領域へのダイレクトライトの速度は2TBモデルの場合で約3,500MB/sとなった。

 NE5Nシリーズは、最大性能こそPCI Express 5.0の最大帯域(15.75GB/s)を考えると多少もの足りない面もある。しかし、読み出し/書き込みともにPCI Express 4.0の速度を超える10,000MB/sオーバーの速度を実現しており、PCI Express 5.0対応SSDの第1世代の製品と考えれば、十分な性能とみることもできる。

 一方でNE5Nシリーズは、レイテンシをPCI Express 4.0世代のSSDと比較して大幅に低減しており、最大速度以上にジャンプアップしている点は大きな魅力。また、NE5Nシリーズのヒートシンク非搭載モデルは、使用条件などに注意は必要なもののユーザーが自由にヒートシンクなどを選択できるという、自作ユーザーが大好きなカスタマイズ性やチャレンジ要素がある。これだけの速度を有効活用し発熱も含めて使いこなすのは簡単ではないかもしれないが、ゲーミング用途からクリエイティブ用途のさらなる強化、そして“最強PC”を追い求めるためのストレージとして、有力な選択肢となるだろう。