トピック

ラピッドトリガーに0.1mm単位の感度調整、ゲーミングキーボード「K70 MAX」は一度触る価値アリ!

フルキーでデザイン性も高いCORSAIRの磁気メカニカルスイッチモデル text by 白倉甲一

「K70 MAX(CH-910961G-JP)」

 今回紹介するCORSAIRの「K70 MAX」は、最近話題のラピッドトリガー機能に対応するフルサイズのゲーミングキーボード。店頭での価格は3万3千円前後。

 「CORSAIR MGX」磁気メカニカルスイッチにより、可変アクチュエーションポイントやリセットポイントの位置調整を自由にカスタマイズできる他、ラピッドトリガー機能へ対応することで安定した高速打鍵を実現したモデルだ。

 「K70 MAX」を実際にゲームで使用して、ラピットトリガーの使用感や、最新キースイッチを搭載するゲーミングキーボードの性能を見て行こう。

CORSAIRの定番&人気なフレームレスアルミニウム筐体細部は既存モデルからブラッシュアップ!

 「K70 MAX」はフルサイズの日本語配列ゲーミングキーボード、アルミニウムフレーム筐体で剛性もありつつ、高級感のある表面加工やエッジ部分の面取り、フレーム上部にゲーミングデザインのパターンを施すなど野暮ったくなく飽きの来ないデザインが特徴的。

正面。日本語配列フルキーサイズ。フレームレスで高級感のあるアルミニウムフレーム筐体。
背面。滑り止めのゴムと上部2カ所にチルトスタンドを備える。
チルトスタンドを閉じた状態。キー自体にも傾斜がついているのでそのままでも十分打ちやすい。
チルトスタンド1段階。
チルトスタンド2段階。

 キースイッチに高速打鍵に最適な「CORSAIR MGX」磁気スイッチを採用。1億回打鍵の高耐久性を持ち、0.4mm~3.6mmまで0.1mm単位で調整可能な可変アクチュエーションポイント機能や、ラピッドトリガー機能にも対応。ゲーム用途に好適なモデルとなっている。

 フルNキーロールオーバーと100%のアンチゴーストに加え、CORSAIR独自の「CORSAIR AXON(アクシオン)」技術により8,000Hzもの超高速ポーリングレートで正確なキー入力を実現。8MBオンボードメモリを搭載し、最大で50のプロファイルを保存可能。

筐体左上には各機能の設定スイッチ。プロファイル切り替え、ライティング、Winキーロックなどが可能。
筐体右上にはメディアコントロール。スピーカーミュート、音量調節ダイヤルなど。

 バックライトはRGB LEDを搭載しており、ユーティリティのiCUEから細かい設定が可能なほか、キーボード上のスイッチから調光などが行える。

 本体サイズは442×166×39.2mm、本体重量は1.39kg。剛性の高いアルミニウムフレームはフレーム上部に音量調節ダイヤルや、Windowsロックキー、マクロ機能などのオン/オフを物理的に切り替えるトーナメントスイッチなどを備え、各機能を手早くスマートに操作可能。本体側のUSBポートはType-C形状で、USB Type-C - Type-Aケーブルが付属している。

RGB LEDのバックライトはiCUEユーティリティ上から設定可能なほか、フレーム上部のスイッチで調光することもできる。
ダブルショット(2色成形)キートップは1.5mm厚で、視認性も高くひび割れや摩耗にも耐性が高いとされている。
本体側のUSBコネクタはType-C形状、付属のケーブルはUSB Type-C - Type-A(1.8m)となっている。
スライドタイプのトーナメントスイッチを備える。
設定の状態が確認できるインジケーター類はロゴマーク周辺に点灯表示される。
汗でべたつきにくいエンボス加工の施された着脱式リストレストが付属。根元がマグネットでくっつくので本体を動かしてもズレずについてくる。
交換用のキートップや引き抜き用の工具も付属している。

これまでのキースイッチの常識を置き去りにするラピッドトリガー機能CORSAIRのモデルなら判定を細かく調整して自分好みの反応に

 ここからは「K70 MAX」最大の特長ともいえる「ラピッドトリガー機能」を紹介しよう。

 発売からしばらくの間はベータ版として機能が提供されていたが、現在は最新版のファームウェア + ドライバにアップデートすることで、ラピッドトリガー機能が正式に利用可能となっている。

本機が備える最大の特長と言っても過言ではない「ラピッドトリガー機能」に対応。
ラピッドトリガー機能は、押下時の長さを基準に設定できる磁気式や光学式のメカニカルキースイッチの機能を活用した物。
キーを押した後にほんの少し戻せば入力にリセットがかかるように設定した場合、キーを完全に戻さなくても再度キー入力を受け付けてくれるので、使いこなせればより高速な入力が可能になる。

 従来のメカニカルスイッチは一定の位置にある物理的なスイッチ接点でスイッチ動作を行っていたので、高速入力を行う為にはアクチュエーションポイントの距離が短いキーボードを選択した上で、なるべく浅く打ってスイッチのオンオフにかかる時間を極力短くするというような方法が主だった。

 一方、近年のゲーミングキーボードに搭載され始めているラピッドトリガー機能は、接点で反応するタイプのメカニカルキースイッチではなく、磁気式や光学式などの押下時の長さに反応するメカニカルキースイッチを採用することで実現している。反応するまでの長さや、キーをどれくらい戻したらリセットされるかなど、ユーティリティの作り込み次第で自由な設定が可能。この特性に合わせた操作を行うことで、従来のメカニカルキースイッチでは行えない操作が可能になり、相性の良いゲームでは有利に立ち回れるので、最近ゲーマーから注目されている。

 なお、「K70 MAX」に搭載されているのは、独自設計の磁気メカニカルキースイッチ「CORSAIR MGX」だ。

磁気メカニカルキースイッチの「CORSAIR MGX」。
荷重45gのリニアストロークスイッチで、1億回打鍵の高耐久をうたう。アクチュエーションポイントは0.4mm~3.6mmまでの範囲で調整可能。
ユーティリティのキー動作の項目からラピッドトリガーをONにすることで、0.1~1.0mmの間で0.1mm単位での指定が可能なる。もちろんキー毎に調整可能だ。
ダウンストロークとアップストロークは別々の距離に指定できるので「押しっぱなしにしたつもりでつい指が浮いてしまって入力が外れる」というような場合には、アップストロークだけ長めに指定するといったような細かい微調整も可能だ。

 「K70 MAX」はアクチュエーションポイント(キーが入力される押し下げ位置)の細かい調整はもちろん、普段頻繁に押さないキーを深く押さないと反応しないように設定して誤打を抑えたり、リセットポイント(キーの入力が外れる位置)を調整することで長押しが楽にできるようにしたり、というようなカスタマイズも可能だ。デフォルトのキースイッチの反応が好みに合わなかった場合、自分にあった設定に変更できる。

 ラピッドトリガー機能に対応していても調整機能があまりないモデルもあるが、「K70 MAX」はかなり細かく設定できるので、キーボードを自分好みにしっかり合わせたい人には重要なポイントになるだろう。

 また、1つのキーに2段階のアクチュエーションポイントを設定し、さらにそれぞれに機能を割り当てることもできる。これにより、キーの押し込み方の違いにより、1キーで2つの入力内容を使い分ける、といったトリッキーな事もできるようになっている。

キー毎に異なるアクチュエーションポイントを指定できるので、誤打を減らしたいけど無効にはしたくないキーなどは深い位置に動作ポイントを設定するといったことも可能。
普段は浅打ちで通常通りのキー入力を行い、続け様の動作などを底打ちした時だけに派生するような形にも設定できる。
●購入したらまずはファームウェアを更新しよう

 「K70 MAX」は出荷時期によって初期ファームウェアが搭載された製品も流通している。ラピッドトリガーを利用するのは最新版のファームウェアにアップデートする必要があるので、ユーティリティから最新のファームウェアに更新しよう。

 統合ユーティリティ「iCUE」をv5.8.130へアップデートすると、「K70 MAX」接続時にファームウェアv1.10.77へのアップデートを促される。ダイアログに従って進めるだけで作業自体は簡単なので、画面の指示に従ってアップデート行おう。

即座に行動するのに有利なラピッドトリガーキーの動作設定を自由にカスタマイズしてゲームをより直感的に操作

 ここからは、実際にゲームをプレイして「CORSAIR MGX」の恩恵を体感してみよう。

 シューター系のゲームの中でも特に「VALORANT」などのようなFPSゲームでは、射撃時に移動キーを入力したままでは集弾率が下がってしまい、狙った位置をぴったり撃ち抜けないようになっている。

 そのため、移動しつつ正確な射撃を行いたい場合には「ストッピング」と言って射撃時にWASDなどの移動キー入力を止めたり、即座に移動方向と逆へキー入力をしたりすることで、射撃の瞬間だけ静止状態に入るというようなテクニックが重要になってくる。

 ラピッドトリガー機能は、特にキー入力を瞬間的に止めるタイプのストッピング操作での恩恵が大きい。キーをほんの少し戻せば即座にキー入力がリセットされ、その状態からも入力を受け付ける。ラピッドトリガー非対応のキーボードでは難しい入力が可能になるので、敵の攻撃を避けつつ射撃をするような場合ではエイム通りに射撃が可能になり、使いこなせればかなり強力な武器になる。

極端な例になるものの、移動しながら銃を撃つと、いくらエイムやリコイル制御がうまくても狙い通りの位置に弾が当たらず大きくぶれるようになる仕様。
移動→静止→撃つと流れるように操作することで狙った通りに射撃することが可能。この操作が「ストッピング」といわれるものだ。

 ラピッドトリガーに合わせた入力法を習得する必要はあるものの、FPSに慣れている人であればこれまでのキーボードよりもダイレクトに入力が反映される快適な操作感を味わえるはずだ。

 まずはラピッドトリガーの恩恵が大きいと言われる「VALORANT」で試してみたが、操作に関しては違いが判るレベルの差があり、これまでのキーボードとは違うかたちでキビキビとキャラクターが動かせる感触は是非体験してもらいたい。カスタム次第で自分の思ったようにキーボードが反応してくれるのは気持ちが良く、勝率にも影響が出てくる部分だといえる。

ディフェンダー側で、相手のスキルで上段から退かされてしまったものの、即座に狙いを定めて撃退することができた。操作感はかなりキビキビしたものだ。
アタッカー側で、Aサイトへ向かう途中後方の味方がやられてしまったことに気づき反転、全力で移動している最中でも即座に静止して撃つことができた。全力の移動から即射撃といった操作を行う際、ラピッドトリガー機能対応キーボードであればスムーズに行いやすいので、恩恵を感じる。

 前述の「移動方向と逆へキー入力」をするタイプのストッピング操作では、既存のキーボードと明確な差があるといったところまではいかないが、アクチュエーションポイントを浅く設定することで超高速入力キーボード的に使うことができる。プレイスタイルに併せて好みの設定を探していくといいだろう。

 続いて前述の「VALORANT」のようなタイプではなく、大きく動き回って撃ち合うようなスポーツ系FPS「エーペックスレジェンズ」でもラピッドトリガー機能は効果があるのか試してみよう。

エリア外の移動を急ぐ中、2パーティに挟まれての戦闘になってしまったが、しっかりキャラコン(キャラクターコントロール)でき無事窮地を脱することができた。
じっくり撃ち合う場合ではややキー入力の反応が良すぎて、大きく遮蔽物から飛び出す場面などもあった。この辺りも加味して自分に合うような調整を行いたい。あとから自分に合わせた細かい調整が可能なのも「K70 MAX」の魅力だ。

 結論から言う、「エーペックスレジェンズ」は射撃の際に移動しながらでも集弾率が落ちるようなことはないので、ストッピング操作などは必要がなく、その点で見ればデバイスによる明確な有利不利がうまれることはない。ただし、キー操作の反応が良いということはキャラクターがその分思ったように操作できるので、ゲーム中はよりキビキビと動かせるように感じだ。この点においては恩恵が大きく、高性能ゲーミングキーボードのメリットが享受できる。

 半面、反応が良い分ピーキーな面もあり、キーを押しっぱなしにしているつもりでも一瞬移動が止まってしまったりと、無意識レベルの指の動きにキーが反応してしまったりということもあった。この辺りは反応の良さとトレードオフになる部分ではあるが、高速なキースイッチを扱えるユーザーなら慣れの範囲だろう。どうしても自分に合わないとなった場合は、ラピッドトリガーの機能をオフにしたり、入力の遊びの部分を大きくしたりと、調整すれば一般的な高速打鍵キーボードのように使うこともできる。

製品サイトでは活用例も紹介されており、MOBAでは2種類のスペルを割り当てることで、1キーの操作で連続詠唱を行うといった操作も可能になるとされている。こうした普通のキーボードでは行えないことができるのもラピッドトリガー対応キーボードの特長だ。

 FPS以外のゲームでも本機のキースイッチは活用しがいがあり、複数の入力判定を持てるキースイッチの特性を活かして、1キーに2つの設定を割り当てて運用するのも魅力的だ。MMOなどのキー数が必要なゲームなどでも使いこなせれば様々な場面で活躍するはずで、様々なジャンルのゲームを手広く遊びたいユーザーにも試してもらいたいキーボードだ。

高速打鍵を目的とする人はもちろん、調整して自分にジャストフィットするキーボードが欲しい人へ本格的なゲーミングキーボードをこれから触る人にも注目のモデル

 様々な手段で高速入力を実現してきたゲーミングキーボードだが、ラピッドトリガー機能は近年登場した技術の中ではブレイクスルーの1つとなっている。特にFPSプレイヤーは気になっている人も多いかと思うが、これまでにないキビキビとした操作感は体験する価値がある。

 ゲーミングキーボードは小型モデルがトレンドとなっており、ラピッドトリガー対応のモデルも小型の製品が多い。そうした中、「K70 MAX」はフルサイズキーボードのラピッドトリガー対応モデルなので、フルキーモデルが欲しいというユーザーには刺さるだろう。

 また、ロープロファイルキーボードなどのように物理的に高速打鍵を目指したキーボードと違い、アクチュエーションポイントやマージンを後から自分好みに細かく調整できるので、「買ってはみたものの自分には馴染まなかった」と言う事故要素を減らせるというところも「K70 MAX」の大きなメリットの一つ。

 ピーキーなゲーミングキーボードを使う場合、普段使い用に別のキーボードを用意することもあるかともうが、「K70 MAX」であれば、ゲーム用と普段使い用でプロファイルを分けて管理することで、1つのキーボードで全く異なる操作感を設定することもできる。ゲーム特化のプロファイルはもちろん、文字入力しやすいプロファイルを作り込んで使い分けられるのもこのモデルの面白さだ。