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7,000MB/s超のハイエンドSSDに“DRAMレス”製品が登場!近日発売予定のNextorage「Gシリーズ LE」速報レビュー

これが円熟期を迎えたGen 4 SSDの一つの到達点!? text by 芹澤 正芳

 Nextorageは2023年、PC向けとしてはGen 5対応の「NE5Nシリーズ」とまもなく発売となる「Xシリーズ」、Gen 4対応の「Gシリーズ」とハイエンドクラスのNVMe SSDを精力的に展開してきた。そして2024年には、現在もっとも激戦区と言える“高性能DRAMレスSSD”のゾーンへと新製品を投入する予定だという。それがGen 4対応の「Gシリーズ LE」だ。今回はその試作モデルをいち早く入手できたので、その実力をチェックしてみたい。

カタログスペックはDRAMありモデルに肉薄ハイエンドDRAMレスが来年は流行る!?

 Nextorageの「Gシリーズ LE」はGen 4対応のNVMe SSDだ。現在発売中のハイエンドGen 4 SSDである「Gシリーズ」がDRAMを搭載しているのに対し、Gシリーズ LEはDRAMレスでコストの削減を図ったモデルである。NANDについてはGシリーズと同様に3D TLC NANDを採用する。

NextorageのPCI Express 4.0 x4(Gen 4)対応NVMe SSD「Gシリーズ LE」。価格は検討中とのことだが、ユーザーとしてはDRAMがない分の“期待”をしたいところ

 近年、シーケンシャル速度5,000MB/s前後から7,000MB/s未満のエントリー~ミドルレンジGen 4 SSDには、DRAMレスでも実用上のパフォーマンスに優れかつ低価格な製品が多数登場し、大きな注目を集めている。

 このGシリーズ LEはこの流れに沿いつつさらに一歩踏み込んだもの。コストメリットのあるDRAMレス設計としつつも、公称シーケンシャルリードは最大7,400MB/s、シーケンシャルライトは最大6,400MB/sとPCI Express 4.0 x4のインターフェース速度の限界に近いスペックを実現するという製品。最大シーケンシャルリードは、Gシリーズの7,300MB/sを上回るほどだ。

2TBモデルの基板。片面実装でDRAMもないため実にシンプル

 その秘訣と言えるのが、コントローラにCOMPUTEX TAIPEI 2023で発表されたPhisonの最新モデル「PS5027-E27T」を採用していることだ。Nextorageには、Phisonが資本参加しており、開発にも協力体制を取っているという。Phisonの最新コントローラをいち早く搭載してきた点は大きなアドバンテージだろう。

コントローラはPhison最新の「PS5027-E27T」を採用。DRAMレス向けだが、シーケンシャル、ランダムとも高い性能を持つ

 E27TはDRAMレスのGen 4 SSD向けで4チャンネル仕様、TSMCの12nmプロセスで製造されている。シーケンシャルだけではなく、ランダム性能にも優れており、DRAMレスの弱点であるランダム性能やライト性能をコントローラのパワーもフル活用して克服するという形だろうか。

 Gシリーズ LEの容量として現時点で予定されているのは1TBと2TBの2種類。開発中のスペックは下記の表にまとめた。なお、この仕様はあくまで開発段階のもので、最終的なものは変更される可能性がある。

【GシリーズLEの主なスペック】
型番NN4LE-1TBNN4LE-2TB
記憶容量1TB2TB
インターフェースPCI Express 4.0 x4
コントローラPhison PS5027-E27
NANDフラッシュメモリー3D TLC NAND
シーケンシャルリード7,400MB/s7,400MB/s
シーケンシャルライト6,100MB/s6,400MB/s
ランダムリード1,000K IOPS1,000K IOPS
ランダムライト850K IOPS950K IOPS
耐久性(TBW)600TB1,200TB
保証期間5年

 シーケンシャル性能は1TBモデルはリードとライトの両方、2TBモデルではリードがGシリーズを上回る。ランダム性能についてはライトはGシリーズにわずかに及ばないが、リードは2TBモデルは同値、1TBモデルはGシリーズ LEが上回る。公称値を見ると、DRAMレスでも性能は決してGシリーズにひけをとらないものだ。

DRAMキャッシュ搭載のNextorage「Gシリーズ」。2TBモデルのシーケンシャル速度はリード7,300MB/s、ライト6,900MB/s、ランダム速度はリード・ライトともに1,000K IOPS。実用上のパフォーマンスも含めて隙のない完成度で、大容量4TBモデルが用意されている点も要注目

廉価なDRAMキャッシュなしモデルとはひと味違う実力が見えるベンチマークテスト

 ここからは性能テストに移ろう。まずは、データ転送速度を測る定番ベンチマークの「CrystalDiskMark 8.0.4」から実行する。使用するのはGシリーズ LEの2TB版で、比較対象としては、SSDの“世代交代”を考えている人の参考になるように、Gen 3 SSDで一般的だったDRAM搭載タイプの1TBモデルの結果を掲載する。

【検証環境】
CPUIntel Core i9-13900K(24コア32スレッド)
マザーボードIntel Z790チップセット搭載マザーボード
メモリDDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
システムSSDM.2 NVMe SSD(PCI Express 4.0 x4、2TB)
OSWindows 11 Pro(22H2)
CrystalDiskMark 8.0.4の計測結果

 シーケンシャルリードは7,046.5MB/秒、シーケンシャルライトは6,093.7MB/秒と公称値に迫る高い性能を発揮。ランダムリード、ライトとも高い速度を出しているのもポイントだ。ランダムライト385.8MB/sはとくに優秀と言える。なお、今回のテストはIntel環境で実施しているが、AMD環境の場合はシーケンシャル速度がもう少し伸びて実測上も公称値並みになる可能性がある。

 次は、実際のビジネスアプリ系、クリエイティブ系、ゲーム系とさまざまなアプリの動作をシミュレートしてその処理速度を見るPCMark 10のFull System Drive Benchmarkを実行する。実アプリでのレスポンスのよさが分かるベンチマークだ。

PCMark 10―Full System Drive Benchmarkの計測結果

 3,285というスコアはDRAMレスのGen 4 SSDとしては高い部類だ。DRAM搭載のGen 3 SSDに比べて約1.26倍もスコアが高くなっており、世代の差、進化を感じさせる。

 続いて、ゲームの起動やロード、録画などさまざまな処理をシミュレートする3DMarkのStorage Benchmarkを試そう。ゲーム関連でのストレージ性能が分かるベンチマークとなっている。

3DMark―Storage Benchmarkの計測結果

 4,000近いスコアは、DRAMの有無を問わず、Gen 4 SSDとしてトップクラスだ。結果を細かく見ると、ゲームのロードに関するデータ転送速度は特別高くはないが、ゲームの録画、インストール、セーブといった処理で高い性能を見せている。

 では、実ゲームではどうだろうか。「Starfield」、「サイバーパンク2077」、「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」でそれぞれセーブデータをロードし、ゲームがプレイできる状態になるまでの時間を3回測定し、その平均をチェックしてみた。

ゲーム内のセーブデータロード時間の計測結果

 DRAMレスのSSDは、記録したデータの容量が大きくなるほど「どこにどのデータが記録されているのか」を呼び出すのに時間がかかるようになるのが弱点。これは、データの記録場所の情報の保管に、SSD上の高速に読み出せる専用のDRAMを使うか、汎用的に用いられるメインメモリやNANDを使うかの差である。小さな大量のファイルやランダムアクセスが多いほど影響は出やすい傾向にある。

 ゲーム中のセーブデータのロード程度の比較的軽めのリード中心の作業だと、SSDの世代差は出にくく、DRAMの有無が影響することも考えられたが、今回のテストでは、Gシリーズ LEとDRAM搭載のハイエンドクラスGen 3はほぼ同等のゲームロード時間だった。ゲーム用のSSDとしても快適に使えそうだ。

 続いて、連続書き込み時の速度をチェックしたい。TxBENCHを使って10分間連続でシーケンシャルライトを行ったときの速度と温度をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」で追ったときの値だ。テストはマザーボードのヒートシンクを装着し、バラック状態で行っている。

連続書き込み時の書き込み速度推移

 データ転送速度を高速化するSLCキャッシュは、連続書き込み時はGシリーズよりも少ないようで、約55GB書き込みした時点で低下が発生した。以降はTLC領域への直接書き込みに移行したと見られ、平均で約1,388MB/sで推移となった。

 全領域をSLCキャッシュにするSSDは多いが、この場合はSLCキャッシュが切れたときに大幅に速度低下してしまう。また、SLCキャッシュを使った負荷の高い連続書き込み時は、コントローラの温度も当然上がりやすい。Gシリーズ LEの挙動はこのあたりのメリット・デメリットを考慮したセッティングなのだろう。

 実際、マザーボードのヒートシンクを搭載した状態のSSDの温度は最大でも47℃と、ピーク性能のわりには非常に低かった。安定性重視の作りと言ってもよいだろう。

 またPS5の増設用ストレージとしても利用可能だ。筆者手持ちの新型PS5(CFI-2000A01)に増設してみたが、問題なく認識して使用できた。ただし、Gシリーズ LEはヒートシンクを備えていないので、PS5対応のヒートシンクを別途装着する必要がある点は注意したい。

PS5のストレージとしても使用可能。フォーマット時に測定される読み込み速度は、2TBモデルは6,302MB/秒、1TBモデルで6,679MB/秒だった。いずれも良好な結果だが、DRAMキャッシュなしモデルは1TBのほうが高パフォーマンスな傾向

円熟期のGen 4 SSDが2024年はさらに進化するのを期待させる新モデル

 “DRAMレス=エントリークラス”という図式が強いGen 4 SSDだが、シーケンシャルリード7,000MB/s超え、ランダム性能も良好、という“DRAMキャッシュなしのハイエンド”という領域に踏み込んだGシリーズ LE。Gen 4 SSDが普及してだいぶ経っているが、ここに来て“さらなる円熟期”を迎えたのではと感じさせる完成度だ。

 Gen 3やSerial ATAなど、旧世代のSSDからの乗り換えにもピッタリのSSDと言える。Nextorageによると、気になる発売時期は2024年の第1四半期とのこと。価格情報などの続報に期待しつつ、その日を待ちたい。