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VRAM 8GB以内に収めれば十分に強力。MSI「GeForce RTX 5060 8G GAMING OC」を新旧Ryzenで比較する

オトク感の強い構成を新ミドルレンジGPUで探る text by “KTU”加藤 勝明

 NVIDIA「GeForce RTX 5060(以降RTX 5060と略)」は、5万円台より入手できる“RTX Blackwell”世代のGeForceである。ゲーマーにとっては「DLSS MFG(Multi Frame Generation:マルチフレーム生成)」が利用できる現状最安のGeForceであるが、同時にニューラルレンダリング時代に備えるためのGPUでもある。

 RTX 5060の全容についてはすでにPC Watchにおけるレビューにあるとおり、VRAM 8GBであるという制約に合わせゲームの画質設定をどの程度折り合いを付けるかが評価のポイントになる。今時の大作系ゲーム(AAAタイトル)はフルHDでも多量のVRAMを使用する傾向にあるため、VRAM 8GBのRTX 5060で最高設定にするとVRAMが不足、パフォーマンスが落ちるケースが多いということが分かっている。だが中〜高設定(これはゲーム側の設定による)に抑えておけば、VRAM 8GBでも十分性能を発揮できる。

 もし貴方が「画質は最高で遊びたい」というスタンスであれば、VRAMの多いRTX 5060 Ti 16GBを、フルHDやWQHDではガマンできないというスタンスならばRTX 5070より上のGPUをお勧めしたい。つまりRTX 5060はフルHD〜WQHDで、画質にあまり重きを置かない人向けの、まさしく「ミドルレンジ」と言うべきGPUとなっている。

MSI「GeForce RTX 5060 8G GAMING OC」

扱いやすさもぐっとアップしたミドルレンジのスタンダード

 今回紹介するのは、原稿執筆時点で6万2,000円前後で流通しているMSI製のファクトリーOCモデル「GeForce RTX 5060 8G GAMING OC」である。同社製のRTX 5060は3製品あるが、実売5万9,000円前後の「GeForce RTX 5060 8G VENTUS 2X OC」よりもGPUのクロック設定が高く、かつ冷却性能の高い「TWIN FROZR 11」クーラーを採用している。

 ちなみに実売6万5000円前後となる上位モデル「GeForce RTX 5060 8G GAMING TRIO OC」は、トリプルファン仕様の「TRI FROZR 4」クーラーを採用し冷却力を高めたモデルだが、GPUのクロック設定はGeForce RTX 5060 8G GAMING OCと同じ設定である。

GeForce RTX 5060 8G GAMING OCの正面。カード寸法は全長248mm×高さ135mm。今時のPCケースならまったく問題ないサイズだが、旧世代PCのアップグレード用として購入する場合は、高さが足りるかに注意したいところ
カード裏面。基板は短く、カード後部はファンの通気口という定番のデザイン。補助電源コネクターの部分はカード上端から低い位置にあるため、補助電源コネクターがカード上部に飛び出しにくい
7枚のブレードを備えたSTORMFORCEファン。ファンの近くにある3本線の意匠は単なる溝であり、発光ギミックではない(トリプルファン仕様の上位モデルはこの部分も発光する)
映像出力端子の構成はDisplayPort×3+HDMIというおなじみの構成。カード上側にCPUクーラーが張り出している一方で、カードの厚みは2スロットジャストに抑えられている
補助電源コネクターは8ピン×1。RTX 2060やRTX 3060を動かせていたPCであれば、電源ユニットの載せ換えは不要と思われる
「GPU-Z」で情報を取得したが、原稿執筆時点のGPU-Zが対応していないため抜けている部分がある。ブーストクロックはリファレンス仕様の2,497MHzより約5%高い2,625MHzに設定されている
こちらもGPU-Zによる情報。RTX 5060のPower Limit(NVIDIAが言うところのTGPあるいはTotal Graphics Power)は145Wが定格だが、ファクトリーOCモデルであるためGeForce RTX 5060 8G GAMING OCでは155Wまで強化されている

PCI Express Gen 4世代のCPUでも比較する

 性能の検証にあたり、2種類のプラットフォームを準備した。まずはゲーム用としては現在最強格である「Ryzen 7 9800X3D」をベースにしたもの。さらに、2世代前だがいまだに人気が根強い「Ryzen 7 5700X」ベースの環境も準備した(実ゲーム検証でのみ使用)。CPUの物理コア数は8基と同じだが、アーキテクチャーがZen 5とZen 3で大きく異なるほか、PCI Expressの仕様もGen 5とGen 4という違いがある。

 AM4環境では、RTX 5060 Tiの性能検証において、PCI ExpressのリンクがGen 5でないと性能が落ちるという報告がある(ただし常に落ちるわけではない)が、PCI Express Gen 4世代のシステムで使ってもGeForce RTX 5060 8G GAMING OCはどの程度のパフォーマンスが出せるのだろうか?

 比較用のビデオカードは旧世代であるRTX 4060/ RTX 3060 (12GB)/ RTX 2060 (6GB)を準備した。RTX 5060 Ti 16GBとの性能差が知りたい場合は、別途RTX 5060関連のレビューをご覧いただきたい。

 今回GPUドライバーはGameReady 576.52で統一している。Resizable BARやSecure Boot、メモリ整合性およびカーネルモードのハードウェア適用スタック保護、HDRなどは一通り有効化。ディスプレイのリフレッシュレートは144Hzに設定した。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 7 9800X3D(8コア/16スレッド、最大5.2GHz)、
AMD Ryzen 7 5700X(8コア/16スレッド、最大4.6GHz)
マザーボードAMD X870E搭載マザーボード、
AMD X570搭載マザーボード
メモリDDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2)、
DDR4-3200 32GB(PC4-25600 DDR4 SDRAM16GB×2)
ビデオカードMSI GeForce RTX 5060 8G GAMING OC、
MSI GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8GB OC、
NVIDIA GeForce RTX 3060搭載カード、
NVIDIA GeForce RTX 2060 Founders Edition
ストレージM.2 NVMe SSD 2TB(PCI Express 5.0 x4)
+M.2 NVMe SSD 4TB(PCI Express 4.0 x4)
CPUクーラー簡易水冷クーラー(36cmクラス)
電源1,300W(80PLUS Titanium)
OSWindows 11 Pro(22H2)

RTX 3060より平均15W低い消費電力で動作

 最初に「3DMark」を使用して基本的な描画性能をチェックしよう。ここでの検証はすべてRyzen 7 9800X3D環境のみを使用、さらにGeForce RTX 5060 8G GAMING OCはすべて「RTX 5060」と記載している。

3DMarkのスコア(ラスタライズ系)
3DMarkのスコア(レイトレーシング系)

 GeForce RTX 5060 8G GAMING OCのスコアはRTX 4060に対し30〜44%向上。VRAM容量の多いRTX 3060 12GB相手でも56〜70%高いスコアを出せている。特にFire Strike UltraやSteel Nomadといった4Kにおけるテストで旧世代とのスコア差が大きくなる傾向があるが、これはRTX 50シリーズではメモリバス幅が狭くてもメモリ帯域の太いGDDR7を採用しているためである。

 続いてはHWBusters「Pownetics v2」を利用しSteel Nomad実行中の消費電力を計測した。グラフにある高負荷時がSteel Nomad実行中の実測値であるが、平均値/ 99パーセンタイル点/ 最大値の3種類の観点で集計した。また、アイドル時とは文字どおりアイドル状態で3分放置した際の平均値を示している。

システム全体の消費電力。ATXメインパワー+8ピン補助電源+PCI Express x16スロットを流れる電力の合算
ビデオカード単体の消費電力(Total Board Power)。8ピン補助電源とPCI Express x16スロットを流れる電力のみに注目したもの

 GeForce RTX 5060 8G GAMING OCのTGPが155W、最大170Wまで引き上げ可能な設定になっているため消費電力はやや高めだが、それでもRTX 3060 12GBより消費電力は低く、RTX 2060 6GBとほぼ同等(99パーセンタイル点で比較すれば20W以上低い)の消費電力である。補助電源コネクターが8ピン×1であることも考えれば、旧世代GPUを置き換えてパフォーマンスを強化したい人のためのビデオカードとしても有用と言える。

動画エンコードやLLMの処理においてもメリットを発揮

 ゲームの検証に入る前に、簡単だが動画エンコードやAI(LLM)のパフォーマンスも見ておきたい。

 まず動画エンコードはRTX 50シリーズの目玉機能である4:2:2 10bitカラーフォーマットをサポートした「DaVinci Resolve Studio」の最新β版を利用する。4K動画のプロジェクト(再生時間32秒)をCBR 80MbpsのH.265で出力する時間を計測した。旧世代のGeForceとの比較用に4:2:0 10bitの「Main10」プロファイルを使用したほか、RTX 5060は「Main 10 4:2:2 10bit」プロファイルを使用し4:2:2 10bitカラーフォーマットでのエンコードを試みる。

DaVinci Resolve Studio:エンコード時間。4:2:2 10bitカラーフォーマットは今回の検証ではRTX 5060しかサポートしていない

 RTX 50シリーズはDLSS MFGが最大の武器であるが、GDDR7を採用したことでNVEncのエンコード速度が格段に向上していることは見逃されがちだ。GeForce RTX 5060 8G GAMING OCでは4:2:2 10bitカラーフォーマットも従来の4:2:0のものと遜色ない処理時間で終了するだけでなく、RTX 3060 12GBなどの旧世代GeForceに対して処理時間が半分程度で済んでいる。DaVinci Resolve Studioのエンコード時間を短縮したいと考えているなら、GeForce RTX 5060 8G GAMING OCの導入を検討してみてもよいだろう(ただし、VRAM使用量には注意)。

 LLMパフォーマンスの比較には「MLPerf Client」を使用する。ここでは四つの指定された課題(Content Generation/ Creative Writing/ Summarization, Light/ Summarization, Moderate)に対し最初のトークンを出すまでの時間とトークン生成スピードを比較する。今回はもっとも軽い課題と重い課題に対する性能をチェックしよう。

MLPerf Client:四つのお題のうちもっとも軽いContent Generationにおける最初のトークンまでの時間
MLPerf Client:Content Generationにおけるトークン生成スピード
MLPerf:四つのお題のうちもっとも重いSummarization, Moderateにおける最初のトークンまでの時間
MLPerf:Summarization, Moderateにおけるトークン生成スピード

 VRAM 8GBで足りる学習モデルを使用しているので、どのGPUでも途中で止まることなく回答を完遂することができるがGPUの性能差が出力されるテキストのレスポンスに大きな影響があることは明らかだ。同じVRAM 8GBでもRTX 4060に対するGeForce RTX 5060 8G GAMING OCの優位性は明らかである。VRAM搭載量からして本格的なAI研究には向かないものの、手元の環境で「軽く」試してみたいという人にとっては、RTX 5060を搭載した本製品は魅力的な選択肢となるだろう。

AM4世代のプラットフォームでも十分強い

 ここより先は実ゲームによる検証となる。前述のとおりPCI Express Gen 5世代とPCI Express Gen 4世代のRyzenを利用し、同一の画質設定でフレームレートを計測する。すでにVRAM 8GBでは最新AAAタイトルを最高画質で攻めるにはムリがあると判明しているため、本稿ではVRAM消費量の多いゲームについてはフルHD(1,920×1,080ドット)設定で強烈な不足が出ない画質設定に落として検証している。

 そのほかのテスト条件は以下のとおりである。

  1. CapFrameXを利用し、「MsBetweenDisplayChange」基準でフレームレートを計算する
  2. アップスケーラーとしてDLSSやFSR 3を利用する場合はすべて「クオリティ」設定とする
  3. DLSS FG(Frame Generation:フレーム生成)が利用できないGPUの場合はFSR 3 FGを利用する
  4. DLSS MFGを利用する場合は「3x」、すなわち2フレームを生成して挟み込む設定とする

Apex Legends

 Apex LegendsではAPIはDirectX 12、個別の画質系設定をすべて最高に設定。射撃訓練場で一定の行動をとった際のフレームレートを計測した。

Apex Legends:1,920×1,080ドット時のフレームレート
Apex Legends:2,560×1,440ドット時のフレームレート
Apex Legends:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 このゲームでは、3D V-Cacheを備えるRyzen 7 9800X3D環境(グラフ上半分)がフレームレートをより高く出ることが示されているが、従来型のRyzen 7 5700Xでも平均フレームレートは20fpsも差がないことが分かる。旧世代GeForceからGeForce RTX 5060 8G GAMING OCを見ると、どちらの環境においても同じようにフレームレートが伸びており、PCI Express Gen 4環境であってもApex Legendsではあまり気にする必要がないと言える。ただGeForce RTX 5060 8G GAMING OCの最低フレームレートに注目すると、解像度が低い場合ほどRyzen 7 9800X3D環境のほうが有利という傾向も見て取れる。ただRyzen 7 5700X環境でも最低フレームレートが激しく落ち込むというわけではないようだ。

Apex Legends:各環境におけるシステム全体の消費電力と10Wあたりワットパフォーマンスをまとめたもの。左三つが消費電力、右三つがワットパフォーマンス

 上の表は前掲のベンチマークを計測中に、システム全体がどの程度の電力を消費したのかPownetics v2で実測した値と、それぞれの平均フレームレートとシステム全体の消費電力から10Wあたりのフレームレート(つまりワットパフォーマンス)を比較したものである。9800X3D環境でフレームレートが出る設定にしてもシステム全体では300Wも使用しておらず、むしろ同じ条件ではRTX 3060 12GBのほうが電力を消費している、などの情報が読み取れる。よほど電源の購入時期が古いものでなければGeForce RTX 5060 8G GAMING OCは電源ユニットそのままでも運用できると考えてよいだろう。

Clair Obscure: Expedition 33

 Clair Obscure: Expedition 33では画質「エピック」に設定。RTX 5060ではSmooth Motionが利用できるが、今回の検証環境ではエラーが出て有効化できなかったため、ここでは使用していない。最初のステージ後半、群衆の中を通るようなコースを移動した際のフレームレートを計測した。

Clair Obscure: Expedition 33:1,920×1,080ドット時のフレームレート
Clair Obscure: Expedition 33:2,560×1,440ドット時のフレームレート
Clair Obscure: Expedition 33:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 Apex Legendsとは対照的に旧世代のCPUでもフレームレートがほぼ横並びとなった。CPU⇔メインメモリとのやり取りよりも、GPU側の描画性能が圧倒的な律速になっている設計のようだ。GeForce RTX 5060 8G GAMING OCの平均フレームレートはRTX 4060基準だと最大15%と小さめだが、RTX 3060 12GBからなら30%以上、RTX 2060 6GBからなら70%以上伸びている。4Kになると各GPUの差が縮まるが、これは60番台GeForceでは絶対的な性能が不足しているためである。最高画質ならフルHD、画質をもう少し落として良いならWQHDまでが60番台GeForceの限界だろう。

Clair Obscur: Expedition 33:各環境におけるシステム全体の消費電力と10Wあたりのフレームレート(ワットパフォーマンス)をまとめたもの。左三つが消費電力、右三つがワットパフォーマンス

 こちらもシステム全体では平均300W以内。RTX 3060 12GBはL2キャッシュが大幅に増える前のアーキテクチャーであるため、電力効率的には非常によくないことが分かる。

モンスターハンターワイルズベンチマーク

 モンスターハンターワイルズベンチマークは画質を盛るとVRAMが16GBないと厳しく、RTX 5060であってもレンダリングに遅延が発生することが分かっている。そこでVRAM消費量を抑えるために設定は画質「中」+レイトレーシング(RT)はオフ設定としたが、本稿ではフレーム生成(DLSS FGやFSR 3 FG)はオンにして検証している。

モンスターハンターワイルズベンチマーク:1,920×1,080ドット時のフレームレート
モンスターハンターワイルズベンチマーク:2,560×1,440ドット時のフレームレート
モンスターハンターワイルズベンチマーク:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 画質を中まで落とせばGeForce RTX 5060 8G GAMING OCでも問題なく動作する。ベンチマークのシーン中では序盤のシーンチェンジの際に大きくフレームレートが落ち込むが、半ばのマップ移動シーンでは安定。DLSS FGの効果も手伝ってフルHDであれば快適なプレイ環境が構築できるだろう。今回の設定ではRTX 4060とRTX 3060 12GBのほうがほぼ並ぶどころか、条件しだいではRTX 3060 12GBのほうがフレームレートは高くなっている。

 これはRTX 3060 12GBのほうがメモリ帯域はRTX 4060より太く、さらにVRAM搭載量も多いためと思われる。モンスターハンターワイルズを画質高めの設定で攻めるならVRAMは多いことに越したことはないのだが、控えめで良いならRTX 5060搭載カードも十分威力を発揮するだろう。さらにこの設定ならムリに3D V-Cacheの載ったCPUでなくともよいのだ。

モンスターハンターワイルズベンチマーク:各環境におけるシステム全体の消費電力と10Wあたりのフレームレート(ワットパフォーマンス)をまとめたもの。左三つが消費電力、右三つがワットパフォーマンス

 5700X環境のほうが消費電力としては少ないが、検証に用いたX870EマザーとX570マザー自体が消費する電力も含まれている(X870Eはチップセットも2個使っているため消費電力もおのずと高くなる)点に留意いただきたい。

The Elder Scrolls IV: Oblivion Remastered

 The Elder Scrolls IV: Oblivion Remasteredでは、画質「中」、ハードウェアRTは「中」設定とした。 “ウェイノン修道院”より一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

The Elder Scrolls IV: Oblivion Remastered:1,920×1,080ドット時のフレームレート
The Elder Scrolls IV: Oblivion Remastered:2,560×1,440ドット時のフレームレート
The Elder Scrolls IV: Oblivion Remastered:3,840×2,160ドット時のフレームレート

 Ryzen 7 9800X3D環境がRyzen 7 5700X環境より若干有利だが、WQHDより上の解像度だとGPU性能やVRAMが足りずにCPUの差が詰まってくる。DLSS MFGの使えるRTX 5060のフレームレートは高いが、最低フレームレートの観点から実用になるのはフルHDまでだ。解像度が高くなるとVRAM搭載量の多いRTX 3060 12GBのフレームレートが不気味なまでに落ち込みにくいのもおもしろい。このゲームは今回の画質設定でもPCI Expressのトラフィックが常時発生(多くても3GB/s)しているが、この程度ならPCI Express Gen 4世代のCPUでも十分扱えると考えられる。

The Elder Scroll IV: Oblivion Remastered:各環境におけるシステム全体の消費電力と10Wあたりのフレームレート(ワットパフォーマンス)をまとめたもの。左三つが消費電力、右三つがワットパフォーマンス

 電力の傾向は大きく変化しないが、DLSS MFGのおかげでGeForce RTX 5060 8G GAMING OCはフレームレートが大きく伸びるため、ワットパフォーマンスの伸びが大きい。ただし4KになるとGPUパワー不足でフレームレートがまったく出なくなるため、ワットパフォーマンスはあまり伸びないようだ。

DOOM: The Dark Ages

 最後はDOOM: The Dark Agesだ。画質は「ウルトラナイトメア」を選択した。フレーム生成技術の選択に関してはこれまでの検証と同じだが、RTX 5060のDLSS MFGはフルHDのみとし、WQHDより上ではDLSS FGとした。また、今回はゲーム側のテクスチャープールサイズを最少の1536MBに設定している。キャンペーン最初のステージにおいて一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。

DOOM: The Dark Ages:1,920×1,080ドット時のフレームレート。画質高設定の場合。5700X+RTX 3060 12GBの組み合わせでは検証できなかったため値なしとなる
DOOM: The Dark Ages:2,560×1,440ドット時のフレームレート。画質高設定の場合
DOOM: The Dark Ages:3,840×2,160ドット時のフレームレート。画質高設定の場合

 ゲームのローンチからあまり時間が経過していないだけあって、まだまだ不具合の多いゲームである。以前からFSR 3 FGを使う環境において不安定だったが、今回5700X+RTX 3060 12GB環境においては画面すら出なくなったため、計測をスキップした。ちなみにDOOMのインストールフォルダー内の「amd-ffx」フォルダーを削除するとRTX 3060 12GBも問題なく動作するため、Vulkan用のFSR 3ライブラリに問題があることはほぼ間違いなさそうだ。

 今回の検証では3D V-Cacheはあれば有利といった感じだが、フルHDでもフレームレートの差は小さい。それよりもDLSS MFG 3xの効果がすさまじく、GeForce RTX 5060 8G GAMING OCは旧世代GeForceを大きく引き離している。ただWQHD以上の解像度では挙動に一貫性がなく、DOOM側の実装にかなりクセがあるように思えた(例:5700X+WQHD環境のRTX 5060)。パストレーシングも未実装という状況であるため、DOOM: The Dark Agesにおけるパフォーマンスは今後も若干変わってくると思われる。

DOOM: The Dark Ages:各環境におけるシステム全体の消費電力と10Wあたりのフレームレート(ワットパフォーマンス)をまとめたもの。左三つが消費電力、右三つがワットパフォーマンス

 GeForce RTX 5060 8G GAMING OCはDLSS MFGとFGのデータを一つにまとめている。DLSS MFGが効くフルHDではワットパフォーマンスが圧倒的に高くなるが、DLSS FGに切り換えたWQHDや4KではRTX 4060よりややよい程度になる。

画質を攻め過ぎないこと。これが鉄則

 最後にThe Elder Scroll IV: Oblivion Remasterをプレイ状態で放置した際のGPU/ メモリジャンクション温度やGPUクロックを検証しつつまとめに入ろう。解像度はフルHD、画質設定は前掲のテスト条件と同一とした。また検証リグはバラック組みとし、室温は28℃前後である。

CAP/ ゲーム中のGPUおよびメモリジャンクション温度
ゲーム中のGPUクロック

 まず温度に関しては(バラック組みとはいえ)ゲーム中でも65℃以内に抑え込めているなど、TWIN FROZR 11冷却システムの威力は非常に高い。これなら長時間ゲームに興じていても安心して使えるだろう。メモリのジャンクション温度も(センサーの読みを信じるなら)GPUと大差ない温度で運用できており、こちらも心配する要素はない。GPUクロックも2.8GHz辺りで非常に安定していた。

 おそらくこれからRTX 50シリーズを買うか検討している人は、RTX 5060のVRAM 8GBという仕様に最大の懸念を抱いていると思われる。フルHDより上の解像度で画質は最高やそれに準じる設定でなければダメだ、という人にはオススメしない。RTX 5060 Ti 16GBより上のGeForceを選ぶのが正解だ。

 しかし、ゲームの画質はゲームのAuto設定に任せる、というライトなスタイルであれば、VRAMの容量に関してはあまり気にする必要はない。解像度をWQHDまでに抑えておけば、大抵の場合よい塩梅になるからだ。今回のように描画の重いThe Elder Scroll IV: Oblivion Remasteredのようなゲームでも、中設定&フルHDにすればVRAM不足によるトラブルは回避できる。それどころかDLSS MFGが利用できるタイトルならフレームレートの劇的な向上が期待でき、DLSS MFGに対応していない場合でもRTX 4060より確実に高いフレームレートが期待できる。また、PCI Express Gen 5に対応していなくてもVRAMの制限を超えなければ心配する必要がなく、旧世代のRyzen 7 5700XのようなCPUでも十分なパフォーマンスが期待できる(ベストは9800X3Dであることに疑いの余地はないが)。

 GPUのスペックの読み方を知ってしまうとモヤッとするところのあるRTX 5060だが、RTX 5060のスイートスポットを外さないような運用を心掛ければ、旧世代PCのパワーアップ用としても十分活躍が期待できるだろう。GeForce RTX 5060 8G GAMING OCは冷却性能が高い分価格も高めだが、それに見合った安心感を提供してくれるはずだ。