前回のレポートに続き、今回ではWindows Vistaの操作感や、ゲームや地デジ視聴など、実際のソフトウェアを動かしてみて、その使用感を確かめてみた。
結論から言うとD945GCLFは、「Atom搭載マシン」と聞いて多くの読者が想像する「手頃だけど、遅いのでは?」 という印象を半分覆してくれた(半分というのは、当たり前だけどCore 2シリーズやPhenom/Athlonシリーズに比べると遅いから)。
ゲームなどは945GCということもあり正直キツイが、予想通りの結果はこれだけ、逆にほかの用途では、意外と粘ったり、光るポイントを見せてくれるため、かなり面白い。あるアプリケーションなどでは、意外なことにほぼ同クロックのPentium 4(Northowood版)に迫る性能をも見せるのだ。
なお、レポートは分量が多いため、項目別に別タブとした。
ページ順、あるいは興味のあるものから順に読んで欲しい。
| エンコードとRAW現像では意外な結果が Core 2との差は意外に少ない……のか? |
●TMPGEnc 4 Xpressの「CPU設定」で認識されている拡張命令を確認する。CPU-Z(右)と同じく、Hyper-Therading(「論理CPU数」欄の「2」で判明)とSSSE3がしっかりと認識されているようだ |
次に、ゲームに続いて“重い”処理はどうか? ということで、ビデオのエンコードにチャレンジしてみた。
今回はペガシス製TMPGEnc 4 Xpressの体験版(TPMG4)を使い、1920×1080ドット/約3分33秒のWindows Media Video 9動画(ビットレート6Mbps)を、720×480ドット/780kbps(ホームシアタープロファイル)のDiVX+MP3 320kbpsへと変換するというパターンである。
さて、TMPG4とDiVXはいずれもCPU側のマルチメディア拡張命令を積極的に使うため、ソフトウェア側がCPUの拡張命令をきちんと認識しているか否かが重要になる。そこでTMPGEnc側で認識されるマルチメディア命令を確認してみたが、SSSE3まで対応していることが確認できた。
●本機での結果は15分59秒。ここだけ見ると結構遅そうな感じだが…… |
●Northwood機での結果は16分14秒。こうして見ると、単純に「遅い」とも言いにくくなってくる(?) |
●Core 2 Duo E4500定格では5分6秒と圧倒的な差を付けられているが…… |
●1コア・同クロック相当では9分41秒にまで落ちる。この差をどう見るかが問題だ(笑) |
問題の速度なのだが、15分59秒。これが正直意外で、ここまでの重さに比べるとかなり速い印象だ。使ってみる前までは正直使い物になるか怪しい……という印象だったのだが、Vistaに続いていい意味で裏切られたのである。
さらにここで筆者の経験から、これは同クロックのPentium 4に近いのでは? という予想が出てきた。ということで、筆者の手持ちマシンにあるPentium 4 2.4C GHz(Northwoodコア)をアンダークロック。ベースクロック133MHz×13=1.73GHzの環境を用意(マザーボードはIntel 875Pを搭載したASUSTeK P4C800 Deluxe、メモリは1.5GBのDDR400 CL=2.5を266MHz駆動・デュアルチャンネル、ビデオカードはRADEON 9600という構成だ)し、比較してみた。
こちらの結果は、16分14秒となった。つまり、TMPG4+DiVXに関して言えば、1.6GHzのAtomの方が、クロックを上回るPentium 4より高速だ、ということになる。
Northwood機は業務に使用中のPCを使用したため、OSは(使い込まれた)XP SP3で、メモリの構成や動作ソフトも多いため、Northwoodが不利になる点は差し引いて考える必要はある(ただし、Atom側もVista SP1+ビデオ内蔵チップセット+シングルチャンネルメモリという不利があるので、総合的には大きな差は付かないような気がするのだが)。
ともあれ、苦手という先入観があった動画エンコードで「ほぼ100MHzほど速いNorthwood+XP SP3よりDiamondville(Atom)の方が速い」というのはちょっと衝撃的だった。
ただし、現在の主力であるCore 2 Duoなどと比べると、さすがに非力さは否めない。同じ処理をCore 2 Duo E4500搭載機(マザーボードはNVIDIA nForce 650i Ultra搭載ボード、メモリは2GBのDDR2-800 CL=4・デュアルチャンネル、ビデオカードはGeForce 9600 GSO)で図ると、なんと5分6秒。つまり、3倍以上の時間がかかることになる。
ということで、さすがにCore 2 Duoとは分が悪いか……と思ったのだが、しかし、この状態で3倍以上ということは、実はデュアルコアやクロックの分を差し引くと、いい勝負になるのか……? と思ったため、こちらも200×8=1.6GHzにダウンクロックし、さらにシングルコア状態で測定してみた。
そしてこの結果は、9分41秒。……つまり、同クロック+物理コア1基の状態で比較すると、1.6倍までに差が縮まってしまったことになる。
この「1.6倍」という数字、筆者は消費電力の低さ(本機+Seasonic SS-700HM使用時で47W前後)などを絡めて比べると、かなり面白い値ではないかと思ったが、どうだろうか。
TMPGEnc 4 Xpressテスト結果
本機 | 15分59秒 |
Northwood 1.73GHz機 | 16分14秒 |
Core 2 Duo E4500 定格 | 5分6秒 |
C2D E4500 1コア/1.6GHz | 9分41秒 |
続いて、同じくマルチメディア拡張命令を多用するRAW画像の現像ではどうか? と考え、市川ソフトラボラトリーズ製のSilkypix Developer Studio 3.0 体験版を使い、キヤノン EOS 40Dで撮影したRAW画像(3,888×2,592ピクセル、1枚あたり約12~13MB)10枚を、全パラメータデフォルトで現像を実行してみた。
Silkypixは時間表示が出ないため手計測だが、結果は約9分3秒という結果だ。
これはやはり意外と速いのか? と思い、エンコードテストで使ったPentium 4(Northwood)環境で実行したところ、こちらは約8分54秒だった。Pentium 4の方が高速だったものの、クロック差を考えると、AtomとNorthwoodは意外なまでに拮抗する……という印象だ。
さらに、同じくエンコードテストで使ったCore 2 Duo E4500の定格とシングルコア/1.6GHz動作状態でもテストを実行してみたが、こちらはそれぞれ3分37秒/6分28秒といった結果が出た。
やはり定格同士では圧倒的な差だが、同クロック・(物理)シングルコア同士の比較では、1.4倍程度までに差が縮まる。
こう考えると、Atomは一般的な印象とは少しだけ異なり、一概に「遅い」とも言えないのではないか? という考えも出てくる。いずれにせよ、こちらもなかなか面白い結果と言えるのではないだろうか。
SilkyPixテスト結果
本機 | 9分3秒 |
Northwood 1.73GHz機 | 8分54秒 |
Core 2 Duo E4500 定格 | 3分37秒 |
C2D E4500 1コア/1.6GHz | 6分28秒 |
□D945GCLF(Intel)
http://support.intel.com/products/motherboard/d945gclf/
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| (Intel D945GCLF) |