【 2008年6月28日号 】
どこまでできる?
格安Atomマザー「D945GCLF」の実力レポート(実用編)
Text by 橋本 新義
 前回のレポートに続き、今回ではWindows Vistaの操作感や、ゲームや地デジ視聴など、実際のソフトウェアを動かしてみて、その使用感を確かめてみた。

 結論から言うとD945GCLFは、「Atom搭載マシン」と聞いて多くの読者が想像する「手頃だけど、遅いのでは?」 という印象を半分覆してくれた(半分というのは、当たり前だけどCore 2シリーズやPhenom/Athlonシリーズに比べると遅いから)。

 ゲームなどは945GCということもあり正直キツイが、予想通りの結果はこれだけ、逆にほかの用途では、意外と粘ったり、光るポイントを見せてくれるため、かなり面白い。あるアプリケーションなどでは、意外なことにほぼ同クロックのPentium 4(Northowood版)に迫る性能をも見せるのだ。

 なお、レポートは分量が多いため、項目別に別タブとした。
ページ順、あるいは興味のあるものから順に読んで欲しい。

  
   
エンコードでは
意外な結果が
   
 

 
エンコードとRAW現像では意外な結果が
Core 2との差は意外に少ない……のか?

●TMPGEnc 4 Xpressの「CPU設定」で認識されている拡張命令を確認する。CPU-Z(右)と同じく、Hyper-Therading(「論理CPU数」欄の「2」で判明)とSSSE3がしっかりと認識されているようだ

 次に、ゲームに続いて“重い”処理はどうか? ということで、ビデオのエンコードにチャレンジしてみた。

 今回はペガシス製TMPGEnc 4 Xpressの体験版(TPMG4)を使い、1920×1080ドット/約3分33秒のWindows Media Video 9動画(ビットレート6Mbps)を、720×480ドット/780kbps(ホームシアタープロファイル)のDiVX+MP3 320kbpsへと変換するというパターンである。

 さて、TMPG4とDiVXはいずれもCPU側のマルチメディア拡張命令を積極的に使うため、ソフトウェア側がCPUの拡張命令をきちんと認識しているか否かが重要になる。そこでTMPGEnc側で認識されるマルチメディア命令を確認してみたが、SSSE3まで対応していることが確認できた。


●本機での結果は15分59秒。ここだけ見ると結構遅そうな感じだが……

●Northwood機での結果は16分14秒。こうして見ると、単純に「遅い」とも言いにくくなってくる(?)

●Core 2 Duo E4500定格では5分6秒と圧倒的な差を付けられているが……

●1コア・同クロック相当では9分41秒にまで落ちる。この差をどう見るかが問題だ(笑)
 問題の速度なのだが、15分59秒。これが正直意外で、ここまでの重さに比べるとかなり速い印象だ。使ってみる前までは正直使い物になるか怪しい……という印象だったのだが、Vistaに続いていい意味で裏切られたのである。

 さらにここで筆者の経験から、これは同クロックのPentium 4に近いのでは? という予想が出てきた。ということで、筆者の手持ちマシンにあるPentium 4 2.4C GHz(Northwoodコア)をアンダークロック。ベースクロック133MHz×13=1.73GHzの環境を用意(マザーボードはIntel 875Pを搭載したASUSTeK P4C800 Deluxe、メモリは1.5GBのDDR400 CL=2.5を266MHz駆動・デュアルチャンネル、ビデオカードはRADEON 9600という構成だ)し、比較してみた。
 こちらの結果は、16分14秒となった。つまり、TMPG4+DiVXに関して言えば、1.6GHzのAtomの方が、クロックを上回るPentium 4より高速だ、ということになる。

 Northwood機は業務に使用中のPCを使用したため、OSは(使い込まれた)XP SP3で、メモリの構成や動作ソフトも多いため、Northwoodが不利になる点は差し引いて考える必要はある(ただし、Atom側もVista SP1+ビデオ内蔵チップセット+シングルチャンネルメモリという不利があるので、総合的には大きな差は付かないような気がするのだが)。

 ともあれ、苦手という先入観があった動画エンコードで「ほぼ100MHzほど速いNorthwood+XP SP3よりDiamondville(Atom)の方が速い」というのはちょっと衝撃的だった。

 ただし、現在の主力であるCore 2 Duoなどと比べると、さすがに非力さは否めない。同じ処理をCore 2 Duo E4500搭載機(マザーボードはNVIDIA nForce 650i Ultra搭載ボード、メモリは2GBのDDR2-800 CL=4・デュアルチャンネル、ビデオカードはGeForce 9600 GSO)で図ると、なんと5分6秒。つまり、3倍以上の時間がかかることになる。

 ということで、さすがにCore 2 Duoとは分が悪いか……と思ったのだが、しかし、この状態で3倍以上ということは、実はデュアルコアやクロックの分を差し引くと、いい勝負になるのか……? と思ったため、こちらも200×8=1.6GHzにダウンクロックし、さらにシングルコア状態で測定してみた。

 そしてこの結果は、9分41秒。……つまり、同クロック+物理コア1基の状態で比較すると、1.6倍までに差が縮まってしまったことになる。

 この「1.6倍」という数字、筆者は消費電力の低さ(本機+Seasonic SS-700HM使用時で47W前後)などを絡めて比べると、かなり面白い値ではないかと思ったが、どうだろうか。

TMPGEnc 4 Xpressテスト結果
本機15分59秒
Northwood 1.73GHz機16分14秒
Core 2 Duo E4500 定格5分6秒
C2D E4500 1コア/1.6GHz9分41秒



 続いて、同じくマルチメディア拡張命令を多用するRAW画像の現像ではどうか? と考え、市川ソフトラボラトリーズ製のSilkypix Developer Studio 3.0 体験版を使い、キヤノン EOS 40Dで撮影したRAW画像(3,888×2,592ピクセル、1枚あたり約12~13MB)10枚を、全パラメータデフォルトで現像を実行してみた。

 Silkypixは時間表示が出ないため手計測だが、結果は約9分3秒という結果だ。

 これはやはり意外と速いのか? と思い、エンコードテストで使ったPentium 4(Northwood)環境で実行したところ、こちらは約8分54秒だった。Pentium 4の方が高速だったものの、クロック差を考えると、AtomとNorthwoodは意外なまでに拮抗する……という印象だ。

 さらに、同じくエンコードテストで使ったCore 2 Duo E4500の定格とシングルコア/1.6GHz動作状態でもテストを実行してみたが、こちらはそれぞれ3分37秒/6分28秒といった結果が出た。

 やはり定格同士では圧倒的な差だが、同クロック・(物理)シングルコア同士の比較では、1.4倍程度までに差が縮まる。

 こう考えると、Atomは一般的な印象とは少しだけ異なり、一概に「遅い」とも言えないのではないか? という考えも出てくる。いずれにせよ、こちらもなかなか面白い結果と言えるのではないだろうか。

SilkyPixテスト結果
本機9分3秒
Northwood 1.73GHz機8分54秒
Core 2 Duo E4500 定格3分37秒
C2D E4500 1コア/1.6GHz6分28秒

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□D945GCLF(Intel)
http://support.intel.com/products/motherboard/d945gclf/

□関連記事
【2008年6月7日】Atomマザーが発売に、Intel製/Mini-ITXで8千円
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20080607/etc_atomcpu.html
【2008年6月7日】Atomマザーで地デジデモ、SD解像度で視聴可能
http://akiba-pc.watch.impress.co.jp/hotline/20080607/etc_atomcpu2.html
【2008年5月19日】MSIのAtom搭載ミニPC「WIND PC」速報レビュー(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0519/msi2.htm

 (Intel D945GCLF)

※特記無き価格データは税込み価格(税率=5%)です。
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