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PC初心者でも作れる!?初めての自作PC講座。失敗せずに確実に、安全&キレイに作る手順、教えます

【全手順解説!初めての自作PC組み立て編 】 text by 石川 ひさよし

組み立て前半戦:マザーボードへの組み付け

 いよいよ組み立てに入ります。ただしこの前半戦ではまだPCケースに入れることはありません。マザーボードに搭載できるパーツから作業を進めます。

 また、もう一つの目的に動作検証があります。まだ仮組みと言える段階で問題を見付けておけばバラし作業も少なくてすみます。

この状態を目指します。初めての人はびっくりするかもしれませんが、PCケースに組み込んでいないこの状態でも、ちゃんとPCとして起動します。作業全体の流れ上も動作チェックはこの状態で行うのが好都合です

CPUの取り付け

 CPUをマザーボード上のCPUソケットに装着します。CPUソケット内またはCPU裏には細かなピンがあります。このピンの損傷に気を付けながら作業をしましょう。

CPU
マザーボード

CPU装着で想定される失敗は

・CPUソケットカバーを外そうとした
・CPUを落とした

……といったものです

これを踏まえて、できるだけリスクを抑えた方法を紹介します。

CPUソケットカバーは装着作業の途中で勝手に外れる仕組です。そのままにしておきましょう
CPUの固定金具を外します。まずレバーを押してフックから外します。硬いので注意してください
レバーを引き起こしたら、つぎにロードプレートをCPUソケットカバーごと引き起こします
ピンが露出した状態になったので、以降この上空での作業は控えましょう
CPUをつまんでソケットに載せるまでがもっとも高リスクです。短時間、短距離にするためCPUを取り出したら一旦マザーボード横に並べましょう
切り欠きを目印にCPUソケットとCPUの向きを揃えておきましょう
CPUソケットにCPUを載せます。ここまでの説明どおりに置けているなら、水平移動と上げ下げだけでできるはずです。仮に問題があってもCPUソケット外で行いましょう
CPUが水平に、正しく載っていることを確認できたらロードプレートを倒します。このとき軽く押さえることでCPUソケットカバーが外れます

※上記の方法で外れない場合は手で外すしかありませんが、すでにピンはCPUによってカバーされているので安全に行えます

レバーを倒してフックにかけて固定します。このレバーはなかなか強いので、しっかり下して固定しないと、反発で戻ってしまい、その反動でCPUが外れてしまうおそれも。慎重に作業しましょう

CPUクーラーの取り付け

 CPUクーラーを装着します。CPUクーラーの装着方法は製品によって異なるので、基本は製品マニュアルに従って作業してください。

 まずどのCPUクーラーにも共通する点を説明しておきます。Intel Core(LGA1xxx)はCPUソケット周囲の四つの穴を使ってマザーボードと裏、表から挟んで固定、AMD AM4/5はCPUソケット裏にあるバックプレートを利用して固定したり、リテンション(黒い樹脂パーツ)のツメを利用して固定したりします。

 CPUクーラーの装着作業では、

・ファンのブレードや軸に触れない
・ネジやナットを締め過ぎない
・グリスを塗る際に盛り過ぎない

……といった点に注意しましょう。

 グリスが足らないと熱がうまく伝わりません。少ないよりは多いほうがマシですが、はみ出し過ぎるとショートを生じかねません。塗り方はいろいろとありますが、初心者には塗布量を調節しやすい「ヘラ塗り」をお勧めします。

少量のグリスを盛ります
グリスにヘラが付属すればそれを、なければプラスチック定規や不要なカードで塗り伸ばします
ヒートスプレッダーの表面を薄く覆う程度まで繰り返し塗り伸ばしてください

 CPUクーラーが付属するCPUもあります(リテールクーラーと呼びます)。今回は、基本中の基本であるIntel Coreシリーズに付属するリテールクーラーの装着手順を紹介します。Intel Core用リテールクーラーは、プッシュピン式と呼ばれる固定方法を採用しています。

中央にヒートシンクがありその上部にファンが搭載されています。プッシュピンと呼ぶ構造は四隅に付いています
裏返したところ。中央の銅部分がCPUとの接触面。グレーのものが貼られていますが、これは先ほど塗ったものと同様のグリス。新品のクーラーにはグリスが塗布されているものがほとんどです
平たい頭の部分は時計回りに回すとロック、反時計回りに回すとリリースです。装着時はロック側にセットします
※固定の仕組
プッシュピンを反対側から見たところ。先端部分は先割れ&返しの付いた形状です
頭の部分をプッシュするとピンが押し込まれ、返し部分が開くことで固定されます
CPUクーラーをCPUの上に載せてプッシュピンが付いた4本の“脚”がCPUソケット周辺の四つの穴に入るように位置を合わせます。次に、プッシュピン付近のフレームを軽く押し、返しの先端をあらかじめ貫通させておきます(写真右を参照。正しい位置に置いて軽く押し込めばピンの先端がマザーの裏側に頭を出します)。続いて、プッシュピンの頭部分を押し込めば、しっかりとクーラーが固定されます。もし失敗したとき(きちんと固定できない、ピンが押し込めない、など)は、頭部分をリリース位置へ回す→ピンを引き抜く→再びロック位置へ戻す→クーラーを一旦外して位置決めから再調整します

 今回はツールレスで固定できる簡単なものを使用しましたが、自作PCで広く用いられる大型のCPUクーラーはネジで固定するものが一般的。PCに限らず「4本のネジで固定するもの」全般に言えることですが、ネジを締める際は「対角線の順番で締める」(左上→右下→右上→左下、など)、「仮止め→本締めの2ステップで締める」のが基本です。いきなり本締めしようとすると、CPUクーラーが傾いて対角線反対側のネジが締めづらくなってしまいます。

プッシュピンもネジも、CPUクーラーだけでなくほかのPCパーツも同様ですが、四隅のネジを止めるときは、左上(もっとも大変な箇所)、右下、右上、左下の順と、×印になるイメージで止めましょう。ネジの場合は仮止め→本締めの2ステップが基本です
CPUソケットのすぐそばにある「CPU_FAN」と書かれたコネクターにCPUクーラー上のファン用の電源ケーブルを接続します。水冷CPUクーラーのポンプ用電源ケーブルは「AIO_PUMP」と書かれたコネクターに挿します

メモリの取り付け

 メモリの装着自体は簡単ですが、間違いやトラブルが生じやすいところでもあります。主な原因は、

・挿す向きが逆できちんと挿せない(“逆挿し”は原則できない構造)
・しっかり根本まで挿せていない(片側しかラッチがない製品で起こりがちです)
・複数本あるスロットに対し挿すべき位置を間違えている

あたりで、まずは「きちんと挿す」ことが重要です。

 メモリとメモリスロットの構造をチェックしましょう。

メモリには両側面に固定用の切り欠き、端子部の中央からややズレたところに向きを決める(規格によっても異なる)切り欠きがあります
メモリスロットにも向きを指定する切り欠きがあります
スロット側面にはガイド溝、固定用のラッチがあります。ラッチを倒した状態がリリースで、この状態からメモリを挿します。メモリを根本まで挿し込むとラッチは自動で起き上がってロックされます
片側にしかラッチがないマザーボードもあります。ガイド内にバネ式のロック機構を備えています

 メモリスロットが4本あるマザーボードで2枚のメモリを使用する場合、規定のスロットに挿さないと性能が引き出せない場合があります(まれに起動しないことも)。CPUソケット側から数えて2番目、4番目に挿すのがセオリーですが、まずはマザーボードのマニュアルを参照しましょう。

メモリ2枚で運用する場合はどのスロットに挿せばよいかマニュアルを確認しましょう

 それでは実際にメモリを挿していきます。

メモリとメモリスロットの向きが正しいことを確認した後、ガイドに沿ってメモリを挿し込みます。片方しかラッチがない場合でも側面の切り欠き一つ目まではすんなり入ります
抵抗を感じたところからは力を加えて押し込みます。できるだけ左右均等に力を加えましょう
ラッチがロック位置まで戻っているか、横から見てメモリが水平に挿せているかを確認しましょう

M.2 SSDの取り付け

 続いて、M.2 SSDを固定していきましょう。

 最近のマザーボードには複数のM.2スロットが備わっています。システム(OSをインストールする)用SSDはCPUに接続されたM.2 SSDに挿します。基本的にはCPUソケットにもっとも近いM.2スロットがこれに該当しますが、詳しくはマザーボードのマニュアルを参照してください。CPUではなくチップセット側に接続しているM.2スロットもあります。データ用(2台目以降)SSDに利用するものについてはこちらで問題ありません。

写真の左が固定用の切り欠き、右がスロット(挿入向き)の切り欠きです
スロット側にも切り欠きがあります。向きを揃えるとともに、端子の形状(KEY)の区別にも利用されています
このマザーボードの場合、M.2スロット(SSD 4台分)にはすべてヒートシンクが取り付けられています
ヒートシンクを取り外したところ。4本のスロットのうち、最初の1台目は1番上のスロットに取り付けるのがセオリーです(説明用にすべてのヒートシンクを外しましたが、SSDを取り付けるスロットのものだけ外せばOKです)
M.2ヒートシンク付きのマザーボードならヒートシンクを取り外し、裏に貼られた熱伝導シート(SSDの熱をヒートシンクに効率よく伝えるための粘着シート)の保護フィルムをはがしておきます
M.2スロットの取り付け位置にも熱伝導シートが貼ってある場合はここの保護フィルムをはがしておきます
スロットに対して斜めにM.2 SSDを挿し込みます。ノートPCで用いられるメモリ「SO-DIMM」と同じ装着方法です
M.2 SSDを倒し込んで固定(この製品はマークの部分の固定具を指でロック位置まで回して固定)します。このあと、取り外したヒートシンクを元の位置に戻してねじ止めすれば完了です

 近年は数が減っているのでそこそこのレアケースですが、使用するM.2 SSDがSerial ATA 3.0接続だった場合は注意。見た目は同じでも、挿せるスロットに制限があります。また、昨今はSerial ATA対応のM.2スロットはあっても1、2基で、Serial ATAポートと排他利用になるケースもあります。

SATA SSD/HDDの接続

 2.5インチのSSDや3.5インチのHDDの接続方法を説明します。どちらもSerial ATA 3.0(SATA)で接続するストレージで、SSD本体はシャドーベイに固定し、Serial ATAケーブルと電源ケーブルで接続します。

2.5インチ、Serial ATA 3.0接続のSSDです
マザーボードのSerial ATA 3.0ポートに接続して使います
接続に用いるSerial ATAケーブルです
マザーボード側、SSD側のSerial ATAポートをSerial ATAケーブルで接続します

 Serial ATA SSD/HDDの装着は特に難しいことはありませんが、コネクターの破損は耳にします。ラッチによるロック機構があるため、取り外すときはコネクターのラッチを押しながらケーブルを引き抜きます

Serial ATAケーブルのコネクター部分。ドライブからケーブルを取り外すときは、ラッチを押しながらケーブルを外します

ビデオカードの取り付け

 ビデオカードを装着します。ビデオカードはPCI Express x16スロットに挿して利用します。マザーボード上でもっとも大きな拡張スロットです。そして末端には必ずラッチまたはメーカー独自の固定具が備わっています。

PCI Express x16スロットに挿します
ビデオカードのPCI Express x16端子の横には、カードをロックする際のための切り欠きがあります
マザーボード上のPCI Express x16スロットの末端には、ロック/リリース用のラッチがあります。リリース状態で挿し込み、奥まで挿し込まれたらロックされます。カードを外す際はラッチをリリース位置にしてから行ってください
メーカー独自の固定具を備えているものもあります。この製品では挿す時はそのまま、取り外す際にボタンを押してリリースする仕組です
ビデオカードをマザーボードに取り付けたところ

電源の接続

 電源ユニットから延びる電源ケーブルと各パーツを接続していきます。

 コネクターの種類を見ていきましょう。

ATX24ピンソケットとコネクター
EPS12Vソケットとコネクター
ビデオカード用のPCI Express 8ピン(6+2ピン)補助電源のコネクター。EPS12Vのコネクターと似ていますが、ピン形状が異なるので互換性はありません

 いくつかポイントを挙げます。まず、ATX(24ピン)は20+4ピン、EPS12V(8ピン)は4+4ピン、PCI Express(8ピン)は6+2ピンと、端子が分割できるものがあります。ATX24ピンは20ピンだった時代の名残なので分割不要です。EPS12Vが4+4ピンの分割式なのは、もともと4ピンのATX12Vがあり現在もこれを使うマザーボードがあるためです。必要に応じて分割しましょう。

 PCI Express 6+2ピンについてはエントリークラスのビデオカードで6ピンソケットを採用している製品があるためです。これも必要に応じて分割しましょう。

最新ビデオカード用のPCI Express 16ピン補助電源のソケット
PCI Express 8ピン(6+2ピン)補助電源×2本をPCI Express 16ピン補助電源に変換するケーブル

 NVIDIA GeForceで使用されているPCI Express 16ピン(12VHPWRや12V-2x6とも)については、対応している電源ならそれを使うのがスマートです。ただし、PCI Express 16ピンを使用するビデオカードにはPCI Express 8ピンからの変換アダプターが付属するので、PCI Express 16ピンのケーブルがない電源ユニットでも大丈夫です。

Serial ATAの電源コネクター
ペリフェラル用電源コネクター

 すべてに共通する点ですが、コネクターを接続する際は根本までしっかりと挿しましょう。電気が流れないのはそもそもアウトですが、接触が悪いと異常に熱を持ったり、ホコリが原因でショートしてしまったりすることもあります。最悪の場合、損傷や発火といった事故にもつながりかねません。「しっかり挿す」、「マニュアルの指示通りに挿す」、「ケーブルの根元をムリに曲げない」ことを心掛けましょう。