自作PCで楽しむ!仮想通貨マイニング
Radeon×6枚! 本格・マイニングPCを組む、仮想通貨向けPCパーツの選び方
ビデオカードが増えた際の設定や、安定性を確認するための方法も text by マイナー太郎
2017年10月4日 07:01
PCでの仮想通貨のマイニングはGPU性能が重要であり、GPUの数が増えればそれだけ並列処理によってマイニングの速度も向上します。
前回のレビューでは、PCでマイニングを手軽に行う方法と、エントリー向けのPCを紹介しましたが、今回は本格的にPCでマイニングをしてみたいという人向けに多数のビデオカードを使用したマイニング用システムの構築方法を紹介します。
多数のビデオカードを搭載したマイニング用のPCは、マイニングリグやリグと呼ばれており、金属フレームやメタルラックに機材を固定した機材むき出しの外観が特徴となっています。そうしたマイニングリグを作製する際にどういったパーツを選ぶべきなのか、必要となる性能や見るべきポイントと合わせ、運用法なども解説したいと思います。
今回は、6枚のビデオカードを使ったマイニングリグを構築し、24時間連続マイニングも行ったので、その結果も確認してもらえればと思います。
本格的なマイニングに使用できるPCパーツ、安定稼働させるためのポイントも
前回は初級編をお届けしましたが、今回はビデオカード6枚による本格的なマイニング向けのシステムをご紹介します。
本格的にマイニングを行う際にどのような部分を意識してパーツを選ぶべきなのか、マザーボード、電源、ビデオカードといった重要となるパーツを中心にポイントを解説します。
マイニングを本格的に行うなら専用設計のマザーボード
マザーボードやCPUの性能はマイニングのパフォーマンスに影響しないため、あえて最新世代の製品を選ぶ必要はありませんが、多数のビデオカードを使うリグを構築する場合は「使用できる拡張スロットの数」と、UEFIが4G Decodingに対応している点が重要となります。これらを欠くと、複数のビデオカードを搭載できなかったり、認識されないという事態に陥ります。また、当然ながら常時稼働に耐えられる耐久性も重要です。
今回のリグでは6枚のビデオカードを搭載するということもあり、間違いなくこの規模のリグ構築に対応できるマザーボードとして、マイニング向けに設計された製品であるASRock H110 Pro BTC+を選択しました。
ASRock H110 Pro BTC+は、ビデオカードの接続に用いる1本のPCI Express 3.0 x16スロットの他に、12本のPCI Express 2.0 x1スロットを備えています。
12本のPCI Express x1スロットのうち、5本はビデオカードを直接搭載可能なエッジフリーのスロットで、残りの7本は後述するライザーカードの使用を前提とした特殊な配置となっています。この数多くの拡張スロットに電力を供給するため、基板上には2系統のペリフェラルコネクタと1系統のSATA電源コネクタが実装されています。
1.5万円前後と比較的安価なマザーボードですが、この価格帯の製品としては珍しくマザーボード上に電源スイッチとリセットスイッチを備えています。これにより、マザーボードをケースに収めなくとも直接電源のオンオフやリセット操作を行うことが可能で便利です。
また、基板は2oz銅レイヤーを採用した発熱などを抑える構造になっており、湿度による電気短絡からマザーボードを保護する高密度ガラス繊維PCBを採用するなど、安定性が重視された設計という特徴もあります。
マイニングを行う際、このマザーボードを1枚持っておけば当分困ることが無いモデルです。
多数のビデオカードを接続する際に必須なライザーカード
マイニング向けマザーボードであるASRock H110 Pro BTC+は、複数のPCI Express x1スロットを備えていますが、6枚のビデオカードをそのまま搭載できるわけではありません。マイニング用にビデオカードを多数搭載する場合、ライザーカードを介して接続するのが一般的です。
、今回はPCI Express x1スロットをPCI Express x16スロットに変換するタイプのライザーカード「B073RDFSYR」を6枚用意しました。
「B073RDFSYR」は、マザーボードのPCI Express x1スロットに接続するカードと、PCI Express x16スロットを実装したカードの間を延長ケーブルで接続する仕様となっており、ビデオカードを自由な位置に配置できるようになります。
今回選択した「B073RDFSYR」は、電源給電用のコネクタがPCI-E電源コネクタとSATA電源コネクタが選択できる仕様となっているのがポイントで、PCI-E電源コネクタを用いれば安全かつ確実にスロットへの電力供給が可能となります。
なお、ライザーカードはいわゆる「相性」が起きやすい機材で、品質のバラツキなどによって、延長ケーブルとPCI Express x1接続カードの組み合わせでも安定性に差が生じることがあります。ライザーカード経由で動作や認識が安定しない時は、カードとケーブルの組み合わせを変えてみるなどして、より安定した接続が確立できる組み合わせを探ってみましょう。
常時安定した大出力が可能で、なおかつ高効率なものを選びたい電源ユニット
マイニング向けに効率の良いミドルレンジ以上のビデオカードは、1枚で100~200W程度の電力を消費します。これを複数搭載するリグを構築する場合、電源ユニットはその電力に十分耐えられる製品を選択しなければなりません。
総出力容量だけでなく、ビデオカードやライザーカードへの電力を供給する12Vラインの出力容量が重要で、できれば1系統の12Vラインで大電流を供給できるシングルレール仕様の電源ユニットを選びたいところです。
また、電源ユニットのコネクタとケーブルの構成も重要です。1本のケーブルに複数のライザーカードを接続すると、過電流により焼損の可能性があります。こうしたリスクの高い接続を避け、ビデオカードとライザーカードに安全な接続が可能なコネクタ数とケーブルの数が求められます。
電源の安定性に加え、効率も非常に重要です。24時間稼働になるので最低でも80PLUS Gold認証以上のモデルを選ぶ必要があります。短時間であれば効率はあまり気にする必要はありませんが、1ヶ月、1年と使用した場合は数万円~十数万円電力料金が変わってくることもあります。
今回は、これらの条件を満たしながら、80PLUS Platinum認証を取得した高効率電源であり、常時稼働を前提に設計されているSilverStone SST-ST1200-PTを選択しました。出力コネクタ数が多い点も魅力です。
SilverStone SST-ST1200-PTは、1系統で100A(=1200W)の供給が可能な12Vラインを持ち、8系統のPCI-E 6+2ピンと、4系統のSATA電源ケーブルを備えています。これにより、今回使用する6枚のビデオカードとライザーカードに無理のない接続で電力供給が行えます。
ビデオカードはRadeon RX 470の6枚構成、汎用性の高いRadeonを選択
マイニングで最も重要なパーツであるビデオカードには、Radeon RX 470搭載の「Sapphire NITRO+ Radeon RX 470 4G GDDR5 OC」を6枚用意しました。
仮想通貨はそれぞれ独自のアルゴリズムを用いて運用されており、GPUアーキテクチャによって得手不得手がありますが、PolarisアーキテクチャベースのRadeon RX 470/480/570/580は、比較的多くの仮想通貨のアルゴリズムと相性が良く、マイニング時にワットパフォーマンスが優れています。
また、今回は製品保証などが無くなるため行っていませんが、これらのGPUには有志によってマイニング用途に最適化されたVBIOSが公開されるなど、マイニングをより効率的に実行できるチューニングが進んでいるという面もあります。
なお、ビデオカードを選ぶ際、最低でも3GB以上のVRAMを搭載した製品を選択するというポイントがあります。これは、一部のマイニングソフトが2GBを超えるVRAMを使用するためで、できることなら余裕をみて4GB以上のVRAMを搭載した製品を選択したいところです。
その他のパーツ構成
6枚のビデオカードを搭載するマイニングリグであっても、ビデオカード以外の要素で高性能なパーツを選択する意味はほとんどないので、CPUやメモリなどはコストを重視して選択しています。
ビデオカードを6枚も搭載する場合、一般的なPCケースを利用することはできないため、メタルラックなどを使ってDIYするのが一般的ですが、今回はアユートのマイニング用フレーム「PM-MINING-F」を使用しました。専用設計のフレームだけあって、ライザーカードを取り付けたビデオカードの保持や、電源ユニットもしっかり固定できます。電源ボタンも備えており、この辺りも専用設計だけあって扱いやすい部分です。
組みあがったマイニングリグがこちら。多数のビデオカードとライザーカードに配線する関係でケーブルがゴチャゴチャしがちですが、CPUクーラーやGPUクーラーなどのファンとケーブルが干渉しない程度にまとめておきましょう。
今回は最大8枚構成が可能なフレームに6枚のビデオカードを搭載した状態なので、各ビデオカードには十分な吸気スペースが設けられていますが、冷却を万全にするのであればフレームに冷却ファンを追加したり、外部のサーキュレーターによる送風で、リグの周辺に熱だまりが出来ないように対策しましょう。
安定稼働を目指す、多数のビデオカードを搭載したマイニングリグで気をつけるべきポイント
今回構築したシステムを使ってマイニングを実行する前に、いくつか設定をしておくべき部分や、チェックすべきポイントなどを紹介します。
マイニングソフトは枯れたバージョンを使用
マイニングには、前回のレビュー同様「NiceHash Miner」を使用していますが、現在、新しいタイプのVersion 2系のものと、旧世代扱いのVersion 1系の2種類が公式サイトで公開されています。
今のところのお勧めはVersion 1系です。Version 2系もVersion 1系もアップデートが繰り返されているので、バージョンアップ時に状況が変わる可能性がありますが、Version 1系は安定動作させるノウハウが蓄積されており、情報も集めやすいといったメリットがあります。今回レビューで使用しているバージョンも1系の1.8.1.3です。
多数のビデオカードを搭載する場合は仮想メモリの設定も必要に
ビデオカードの枚数が多いマイニングリグでは、仮想メモリの設定も必要になります。
いくつかのマイニングソフトでは、多数のビデオカードを用いてマイニングを実行する場合、一定以上の仮想メモリを必要とする場合があります。
例えば、今回マイニングを行う際に用いるNiceHash Minerでは、実行するマイニングソフトの一部が16GB以上の仮想メモリを要求するため、仮想メモリが16GB未満の場合は起動時に警告メッセージが表示されます。
これを無視して、最大仮想メモリが16GB未満の状態で6枚のRadeon RX 470を使ってマイニングを実行すると、6基中1基のGPUが正常に動作せずにマイニングを実行できずに終了してしまいます。
この問題は、仮想メモリを16GB以上確保していれば発生しないので、「システムのプロパティ」から「詳細設定」→「仮想メモリ(変更)」を実行し、Cドライブの仮想メモリを「初期サイズ」「最大サイズ」とも16GB(16,384MB)以上に設定しましょう。これにより、NiceHash Miner起動時の警告メッセージも表示されなくなり、各マイニングソフトも正常に動作するようになります。
ビデオカード周りの安定性もチェック、発火を防止するため電源ケーブルにも注意
ビデオカードの枚数が多いこともあり、動作が不安定になった際などは何が原因か問題をきりわけるのもなかなか大変だったりします。PCが微妙に不安定な際などに確認してもらいたいのが、マイニング時のGPUの動作クロックで、マイニングを始めた際に微妙にクロックが波打つ場合は安定動作していない可能性が高いです。
今回は動作中のGPUクロックを見るのに「GPU-Z」を使いましたが、クロックが見られればソフトは何を使っても問題ありません。
GPUのクロックが波打ってしまっている場合、ライザーカードが原因となっていることが経験上多いです。ライザーカードは個体間の問題で相性が出やすいので、組み合わせる基盤やケーブルを入れ替えてみたり、接続するビデオカードを変えてみたりすると問題が解消されることもあります。ライザーカードに原因がなければ、ビデオカード本体、電源、マザーボードと、何が問題になっているのか切り分け作業が進めやすくなります。
電源の部分でも触れましたが、ライザーカードと電源ケーブルはかならず1対1で接続する必要があります。1本の電源ケーブルから複数のライザーカードに電力を供給すると、供給電力が足らずに不安定になったり、ケーブル側が耐えられず発火する可能性があります。この部分は十分に注意してください。
ビデオカードの最大消費電力をチューニングして効率をアップ
今回使用しているビデオカードは、Radeon RX 470をオーバークロックして搭載したビデオカードです。ゲームではパフォーマンスが重要なため、電力効率よりもGPUクロックを重視してチューニングされているのですが、マイニングでは電力効率も大変重要です。
そこで、Radeon WattManやGPUユーティリティを使って電力制御の設定を変更してビデオカードの電力効率改善を図ります。
今回構築したリグをそのまま動作させるとマイニング中のピーク消費電力は1,100W程度に達しますが、全てのGPUの電力制御を-25%に設定するとピーク消費電力は850W程度にまで低下します。
GPUの電力制御を引き下げればGPUクロックも低下するため性能も下がってしまうのですが、今回はNiceHash Minorの報酬レートは約1.95mBTC/Dayから1.70mBTC/Dayに低下した程度でした。消費電力を約77%に削減しながら、報酬レートは約87%を維持できているので、結果としてはチューニング前よりも効率的にマイニングが出来るようになります。
5~6枚以上のビデオカードを使うなら必須、ソフトやPCが落ちた際のリカバリー設定
マイニングリグは、ビデオカードが多くなると、ソフトやOSが落ちるのを完全に避けることが難しくなります。このため、PCが落ちた際などの対策を取る必要があります。
当然、今回のマイニングリグは安定性も考慮してパーツを選択していますが、使用するビデオカードが5~6枚を超えたあたりからピーキーな部分が出ててきます。このため、ソフトやOSが完全に落ちない環境を構築するのは不可能に近いので、まれに落ちることを想定して運用した方が良いです。
なお、マイニングソフトが落ちた場合、NiceHash Minerは自動的にマイニングソフトを再起動してくれるので特に設定は不要です。問題はWindows自体がリブートするような場合で、Windowsがリブートしても、自動的にNiceHash Minerを起動してマイニングが再開されるようにする必要があります。
これはNiceHash Minerの「Setting」の項目から設定可能で、「Autostart Mining」と「Run With Windows」にチェックを入れておきましょう。これにより、予期せずWindowsがリブートした場合でも、OSが正常に立ち上がれば自動的にマイニングが再開されます。
ビデオカード6枚で24時間連続マイニングにチャレンジ
それでは、6枚のGPUでマイニングにチャレンジした結果をご紹介します。マイニングを開始したのは9月25日11:50で、終了したのは9月26日11:50です。
開始した直後のNiceHash Minerの表示では、1日あたりの報酬は約1.70195mBTC(=約702.38円)となる見込みとなっていました。前回ビデオカード2枚でテストしした際は、(8/4日時点)1日当たり0.86313mBTC=約309.71円という値だったので、マシンパワーの向上を実感できる数字になっています。
実際に24時間が経過した後のNiceHash Minerの表示を見てみると、獲得したビットコインですが、スタート前の4.88925mBTCから6.46655mBTCに増加したので、24時間で1.5773mBTCを得たことになります。
一方、日本円換算の金額はスタート前の2017.74円から2857.86円に増加しており、24時間で840.12円増加しています。ただ、この増加分にはビットコインの価値が変化した分も含まれているので、報酬として得た1.5773mBTC分は697.08円相当となります。
今回の24時間マイニングで使用した電力は20.44kWhで、東京電力の一般的な電気料金(1kWhあたり19円52銭~30円02銭)で換算すると約399~614円となり、報酬から電気代を差し引くと83~298円の利益を得たことになります。
モンスターPCの性能を使いこなして楽しむ仮想通貨マイニング
GPU6枚のパフォーマンスは強力で、報酬のビットコインがどんどん増えていくのが目に見えてわかるのが面白いところです。仮想通貨は値動きが大きくリスクもありますが、今回は無事黒字化を達成することもできました。
マイニングは儲かる儲からないといった話が注目されてしまいますが、こうした大がかりなモンスターPCを構築し、それを使いこなすといった面白さも今回少しは伝わったのではないかと思います。実際に6枚のビデオカードの性能がフルに発揮される用途などはあまりありませんし、動作が不安定なところから自分でチューニングを行い、ガッチリ安定動作させられるようになった時などは気持ち良さも感じられるはずです。
記事内でも解説しましたが、マイニング向けPCを組む際は、マザーボードがマイニング向けに耐久性があり、多数のビデオカードが運用できる設計になっている点、ビデオカードはマイニング向けに適した特性を持つものである点、電源は複数のビデオカードに安定して電力を供給できる点など、ポイントを抑えて選んでもらえればと思います。
なお、Windows 10では最大で8GPUまでの制約がありますが、今回使用しているASRock H110 Pro BTC+であれば、最大13GPUまで接続できるので、GPU数に制約がないOSを使用すればさらなるモンスターPCも構築可能です。
これだけの性能のPCを使うので、運用して赤字にならないようにすることも大事ではありますが、PCを使いこなすという部分も楽しんでもらえればと思います。
[制作協力:ASRock]