ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち
歴代のPC-8801シリーズを振り返る その6「PC-8801MA2/MC」
2025年5月7日 09:05
想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今夏に発売予定となっている「PasocomMini PC-8801mkIISR」を前に、特別企画として「PC-8801シリーズを振り返る」をお送りします。第6回目は、2HD搭載機種のPC-8801MA後継機種となったPC-8801MA2と、CD-ROMを搭載したPC-88シリーズのラストエンペラー、PC-8801MCを取り上げました。
1980年代には数多くのマイコンやパソコンが登場しましたが、その中でも一際目立っていたのがNECから登場した「PC-8801」シリーズではないでしょうか。1981年に誕生した初代のPC-8801から始まり、PC-8801mkII、PC-8801mkIISR、PC-8801mkIITR、PC-8801mkIIFR、PC-8801mkIIMR、PC-8801FH、PC-8801MH、PC-8801FA、PC-8801MA、PC-8801FE、PC-8801MA2、PC-8801FE2、そしてPC-8801MCと、最終的には全部で14機種が発売されています。
この連載では数々の機種を取り上げてきましたが、現時点で2025年7月に発売が予定されている「PasocomMini PC-8801mkIISR」を前に“PC-8801シリーズを振り返る”と題して、今回はPC-8801Mシリーズのラインアップ、PC-8801MA2とPC-8801MCを取り上げました。
NECは1985年に、PC-8801mkIIFRと同時にPC-8801mkIIMRを発売して、いわゆるPC-88系列の“M”シリーズをスタートさせます。その翌年となる1986年にはMHを、そして1987年にMAをリリースしていき、1988年に登場したのがMAの後継機種となるMA2でした。
基本的なスペックは、PC-8801MAからほぼ変わっていません。音源部分もMAと同じく、FM6音リズム6音のステレオ12音源とSSG3音を搭載しているので、よりリッチなBGMを楽しむことができます。異なるのは、辞書の語数がMAよりも5,000語増加して7万語となったことと、付属するキーボードが見えない部分で変更されたことでした。
従来のキーボードは、押し始めはやや重めで、少し押すと軽くなり、下に抜けるときにカチャッと音が鳴るタクティルフィードバックタイプとなっています。MA2に付属するモデルもタクティルフィードバックタイプですが、最後のカチャッという音が無くなりました。前者は、メカニカルキーボードのようで好きだという話も聞きますが、なかには音が気になるという人もいたようです。後者であれば、タイピング感はそのままに静かになったため、ヘビーに使うユーザーには好評だったのではないでしょうか。
同時に発売されたPC-8801FEは、デザインが異なるだけでなく拡張スロットも省かれましたが、代わりにビデオ出力が可能になっています。そのためか、広告では見た目や特徴を訴えやすいFEが目立ち、MA2はオマケのような感じでの掲載となりました。しかし、MA2の価格168,000円というのは初代PC-8801と同じ値段。コストダウンの結果とは言え、これだけの性能を持つハードウェアが初代機と同一価格で登場したということは、NECとしてはPC-8801MA2でPC-8801シリーズは完成の域に達した、と見ていたのかもしれません。
ところが、その1年後となる1989年にPC-8801シリーズの新製品がリリースされます。それこそがPC-8801シリーズのラストエンペラー、PC-8801MCでした。価格は、CD-ROMドライブレスのmodel 1が169,000円、CD-ROMドライブ搭載のmodel 2が199,000円です。
デザインは長年慣れ親しんできた横置きから縦置きへと変わり、その上部にはCD-ROMドライブが配置されていました。広告には“先進のCD-ROMドライブを搭載”と書かれていたのですが、1989年までに発売されていたパソコンの中でCD-ROMを搭載していたのは、同年2月にデビューした富士通のFM TOWNSのみ。当時流通していたパソコンとしては2番目となるCD-ROMハードということを考えると、そのように謳うのも分かるというものです。
スペックとしてはMA2をベースにしているのですが、それに加えて同時期に発売されたFE2と同じくメモリアクセスがノーウェイトになる8MHzHモードを備えていて、こちらを選択すると処理が従来よりも約10%ほど早くなりました。もちろん、従来機種と同じ速度になる8MHzSモードも備えています。
本機を特徴付けるCD-ROMドライブは、PCエンジン用として発売されていたCD-ROMドライブ・CDR-30を持っている人ならば、それを流用することが可能でした。当然ながら、PCエンジン用のソフトで遊ぶことはできませんが……。
なお、PC-8801MA2/MA/FA/MH/FH/mkIIMR/mkIIFR/mkIITR/mkIISRにはCD-ROMドライブとCD-ROMインタフェースセット・PC-8801-31を購入してセットアップすることで、PC-8801MCと同じようにCD-ROMを接続することができます。インタフェースセットは34,800円、CD-ROMドライブは30,300円でしたので、対象機種所有者は合わせて65,100円の追加出費を行えば、当時としては目新しかったCD-ROMドライブを使うことができました。
PC-8801MCの発売に合わせてNECは、「CDたから箱 1万人プレゼント!!!」と題したプレゼント企画を行っています。これは、ソフトや音楽、CGといったコンテンツが収録されたPC-8801MC用のCDソフト「CDたから箱」を、抽選で毎週1,000名、10週合計で1万名に無料でプレゼントするというものでした。しかも、デジタルサウンド部分であれば一般のCDプレーヤでも楽しめるためか応募資格の制限はなかったので、PC-8801MCを持っていなかったけどハガキを出したという人もいたのではないでしょうか。
こうして華々しいデビューを飾ったPC-8801MCですが、8ビットマシンにCD-ROMはさまざまな意味で荷が重かったことや、ユーザーが既にPC-98シリーズやX68000シリーズを始めとした他機種へと移行してしまったこと、ソフトハウス側も軸足をPC-8801シリーズから離してしまっていたことなどから、盛り上がることなく静かにその役目を終えるのでした。
「PasocomMini PC-8801mkIISR」では、PC-8801MCに搭載されていたCD-ROMをサポートするのか? という点は気になりますが、残念ながら現時点では分かっていません。このあたりは時間と共に明らかになっていくと思いますので、続報を待ちたいと思います。
これまで6回に分けてPC-8801シリーズを紹介してきましたが、皆さんの思い出に残る機種はどれだったでしょうか。当時所有していたものの捨ててしまった・売ってしまったという人や、実機を置くスペースを作るのは無理だけど青春時代を過ごした“ハチハチ”を手元で眺めたいという人は、ぜひ「PasocomMini PC-8801mkIISR」を手に入れて、当時を懐かしんだり、あの頃熱くなったゲームで再び盛り上がるなど、思い思いの方法で楽しんでください。