ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

PC-9801RX2を10万円下回る価格で登場したエプソン互換機「PC-286VE」

正面からの見た目は、PC-286Vから大きくは変わっていません。本体左側には、この時期のエプソンマシンお馴染みの鍵をさす場所が用意されていました。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回はPC-9801RX2のライバルと目された、エプソンが1988年9月に発表した国民機・PC-286VEを取り上げました。

広告では「パソコンにもそろそろ国民機が欲しい。」との文章とともに宣伝されていました。その宣伝文句には「一歩先をいく、私たちの自信作です」と意味ありげに書かれていました。

 1988年9月にNECから登場したPC-9801RX2は、その2ヶ月前にリリースされていたPC-9801RA2の498,000円(FDD2基搭載モデル)より10万円も安く、PC-9801RA2に手が届かなかった人へ強力にアプローチしていました。RA2はCPUに80386を採用していたものの、RX2では80286にすることなどで価格を抑えたのですが、そこへまたも火の玉ストレートを投げつけてきたのがエプソンです。PC-286Vの発表から1年と2日後になる1988年9月13日、PC-9801RX2の対抗馬となるPC-9801互換機、PC-286VEを発表しました。

 最大の特徴は、やはり価格といえるでしょう。PC-9801RX2がFDD2基搭載モデルで398,000円とインパクトのある値段を打ち出しましたが、PC-286VEは更に10万円も安い、298,000円という値付けで市場に登場しています。しかも、RX2に20MBハードディスクを搭載したモデルのRX5は566,000円でしたが、同容量のハードディスクを内蔵したPC-286VE -H20であれば423,000円で買えてしまうだけでなく、さらにはRX5よりも大容量の40MBハードディスクを搭載したPC-286VE -H40が513,000円と、RX5よりも安くてHDD容量が大きく“選ばない理由がない”選択肢としてPC-98市場へと殴り込みをかけてきました。

正面は左上はキーボードロック用の鍵穴とFDDが2基並び、下段は左からリセットボタン、クロック切換スイッチ、ボリュームつまみ、マウス割り込み設定、3連ディップスイッチ、キーボード接続コネクタ、電源スイッチとなっています。

 それでいて、最高クロックは12MHzのノーウェイトとRX2と同等で、前機種にあたるPC-286Vからは約20%の高速化が図られています。搭載できる最大メモリ容量は、RX2が最大で11.6MBだったところをPC-286VEは14.6MBまで可能となっていました。どうしても純正PC-98じゃなければダメという人はともかく、PC-98向けに発売されている数多くのソフトを少しでも安価に使える機種が欲しいと考えていた人にとっては、まさに願ったり叶ったりのマシンだったと言えるのではないでしょうか。

 詳細なスペックですが、CPUには80286を採用。STDモデルはFDD2基を、-H20モデルは20MBの、-H40モデルは40MBの内蔵ハードディスクを、それぞれ搭載していました。メインメモリは標準で640KBを装備していて、最大で14.6MBまで拡張が可能となっています。本体内部にはメモリ専用の内部拡張スロットを2つ用意していたため、限界まで積むのでなければ外部拡張スロットを潰さずにメモリの増設が行えました。CPUのクロックは、マシンが動作中でもスイッチを変更するだけで6MHz/10MHz/12MHz(ノーウェイト)と変えることができたほか、数値演算プロセッサの80287用ソケットもあらかじめ用意されています。

本体背面は左から内蔵HDD増設スペース、電源コネクタ、サービスコンセント、拡張スロット×4、下段が左からマウスコネクタ、モノクロモニタ接続端子、デジタルRGB接続端子、アナログRGB接続端子、RS-232Cコネクタ、1MBフロッピーディスクドライブインタフェース、プリンタポートと並んでいました。

 拡張スロットはPC-286Vと同じく4つ用意されていて、拡張性の高さもウリとしていました。さまざまな拡張ボードを挿して運用しようとすると電源容量が不安になるところですが、PC-286VEには拡張性を考慮して160Wもの容量の電源が搭載されています。消費電力はHDDを搭載していないSTDモデルであれば35W(搭載モデルは50W)と、RX2(60W)の約58%に抑えられていました。

 本体サイズは、前機種のPC-286Vが幅380mm×奥行き341mm×高さ150mmでしたが、PC-286VEでもその大きさは変わっていません。この時期に主流だった14インチブラウン管ディスプレイを上に載せると目線の高さと合うため、ちょうど良い感じになりました。なお、この時期のブラウン管ディスプレイは14インチで約10万円前後。マルチスキャンといった機能もなく、一部を除けばほとんどがシンプルなモデルとなっています。

 付属するキーボードはPC-286Vと同じモデルで、CAPSキーやカナキーが機械的にロックされる構造のものとなっていました。キータッチは、やや“ふかっと”した感じになっているため、人によって好みが分かれるかもしれません。テンキーの上部分はスペースが空いていて、“PC-9801R”キーボードのようにvfキーが配置されていないのも特徴です。

読者の中には、これらのハードディスクを使っていた人もいたのではないでしょうか? 当時は、ハードディスクをリリースしている会社も数多かったので、各ユーザーごとに贔屓のメーカーがあったかと思います。

 ちなみに、上記で話題に出したハードディスク搭載モデルと非搭載モデルの価格差から、当時のハードディスク相場が分かるかと思います。参考価格として、エプソンの他に当時メジャーだったと思われるキャラベル、ロジテック、緑電子の4社のハードディスク広告を掲載してみました。どのメーカーもほぼ似たり寄ったりな価格になっていますが、それでも40MBのハードディスクが10~14万円程度と考えると、現在のハードディスク価格がいかに安くなったのかを知ることができます。

 ちなみに、2026年5月時点で、秋葉原で筆者が調べた内蔵ハードディスクの価格は、40MBのおよそ10万倍となる4TBでも約25,000円。40年前とは容量も価格も比べようがないほどですが、それでも8TBのハードディスクを1万円以下で購入できていた時代を考えると、現在の価格が高いと思ってしまうことも……。