ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・マイコンたち

横置き筐体で登場したシャープ「X68000 PRO」

シリーズ伝統の縦置きから、他メーカーのパソコンでもよく見かける横置きの筐体でデビューした機種です。本体の上にモニタやMOなどが置けるので、結果的には省スペースになった、という人もいたかもしれません。キーボードは、パームレスト部分が一目で分かる、他のX68000用キーボードとは異なるデザインです。

 想い出に残る、懐かしのマイコン・パソコンを写真とともに振り返る本コーナー。今回は、それまでの縦置き筐体から一転して、他メーカーのパソコンでも見かける横置き型として発売されたX68000シリーズのうちの1機種、X68000 PROを取り上げます。

広告では、同時発売のX68000 EXPERTと一緒に掲載されています。EXPERTとPROそれぞれが1ページずつを占めているパターンと、左ページに2機種まとめて掲載されて右ページの文章量が異なるパターンがありました。第3世代のX68000としてのキャッチコピーは「夢のつづきを語ろう。」で、PROとしてのキャッチコピーは「異次元への昇華」です。

 1986年に登場した初代X68000は、当時としては価格以上に突出したスペックを持っていたことから、各方面にさまざまなジャイアントインパクトを与えます。反対に、基本性能が最初から高かったこともあり、ACE、ACE-HDと新機種が出ても変わるのは内蔵メモリ容量やHDD搭載など、わずかにとどまっていました。

 その後、X68000 EXPERTと共にデビューしたX68000 PROが、今回取り上げた機種となります。PROは、これまでにない横置き型を採用することで、ユーザーにがらりと違った印象を与えることになりました。なお発売日ですが、1989年3月3日に発売された『ログイン』1989年3月17日No.6号には既に紹介記事が載っていたことを考えると、2月下旬から3月上旬あたりかと思われます。

背面は左から、サービスコンセント、オーディオ入力・出力端子、RS-232Cコネクタ、拡張FDDコネクタ、ハードディスク接続コネクタ、アナログRGB端子、TVコントロール接続端子、シースルーカラー端子、イメージ入力用コネクタ、リモート端子、プリンタポートと並んでいます。その上部には、拡張スロットが4つ用意されていました。

 X68000 PROはFDDモデルとHDD内蔵モデルの2種類が用意されていて、FDDモデルが30万円を切る298,000円で、40MBのHDDを内蔵したモデルが408,000円でした。FDDモデルには、後から増設用40MBの3.5インチハードディスクドライブ「CZ-64H」を120,000円で取り付けることができますが、それならばHDD内蔵モデルを購入する方が1万円お得となっています。とはいえ、サードパーティのHDDを内蔵したりするのであれば、同等価格かもう少しお安く買うことができたかもしれません。

 X68000 PROですが、X68000シリーズの備える基本スペックを踏襲していたほか、メインメモリは1Mバイトを搭載しています。拡張スロットは、マンハッタンシェイプ型が2スロットだったのに対して、横置き型の容積を活かし、4スロット用意されていました。筐体は頑丈な金属製で構成されていて、上部にブラウン管モニタを載せて使用しても問題ありません。広告で、本体と合わせて紹介されているモニター「CZ-603D」を端に寄せて載せれば、それなりのスペースが左右どちらかに空くので、そこにモデムやMOドライブを置くといったこともでき、省スペース化や見栄えの良さなどに寄与しました。

 なお、筐体サイズは幅が430mm×高さ128mm×奥行き340mmで、重量は約12kgとなっています。ちなみに、横置きで似たような感じの筐体を採用したパソコンといえばPC-98シリーズが思い浮かぶかもしれません。もしかすると、PC-98シリーズに大きさも重さも似たような感じの機種があるのでは……と思い調べてみたところ、PC-9801VX2PC-9801VX21が幅420mm×高さ150mm×奥行き345mm、重さが約11.6kgと比較的近いことが分かりました。そう考えると、PROは意外とヘビー級の大きさだと思うのですが、個人的にはあまりそのような印象を受けていないのが不思議なところです。そんなX68000 PROは、ハードディスク内蔵のCZ-662CとCZ-603Dの組み合わせで、1989年のグッドデザイン賞を受賞していました。

正面は左から、キーボード接続コネクタ、リセットボタン、インタラプトボタン、ボリュームつまみ、ヘッドフォン端子、ジョイスティックポート×2、マウスコネクタ、電源スイッチと並んでいます。電源スイッチの上には、TIMERとHD BUSYのインジケータも見えます。

 X68000 PROに搭載されているFDDは、他のX68000と同じくオートイジェクトに対応したもので、それに合わせたデザインのフロントパネルが採用されています。また、マンハッタンシェイプ型では前後に1つずつ備わっていたジョイスティック端子が、PROでは前面に2つ設けられているのは便利になったところといえるでしょう。ACEから省かれたものとしては立体視端子がありますが、これに関してはほとんどのX68000ユーザーが活用していなかったことを考えれば、なくしてしまっても何の問題もなかったかと思われます。

 付属のキーボードは大きく変わり、本格的なシリンドリカル・ステップスカルプチャタイプになっています。いわゆるパームレスト部分が大きくなったために、腕が疲れにくくなったのが利点といえるでしょう。キータッチも従来モデルよりカッチリした感じになったことで、長時間のタイピングも苦になりにくくなっています。

 同梱されるマウスは、従来のひっくり返してトラックボールにもなるモデルではなく、オーソドックスな2ボタンマウスへと様変わりしました。“X68000らしくない”という話も当時の雑誌を見ると一部では書かれていたようですが、丸形のマウスよりも使いやすいという意見もよく聞いたので、これはこれで良い変更だったのかもしれません。

 背面で大きく変わったのは、前述したように拡張スロットがマンハッタンシェイプ型の2つから4つに増えたことでしょう。例えば、これまではMIDIカードとスキャナ用パラレルボードだけでいっぱいになってしまっていた拡張スロットも、PROであればさらにGP-IBボードと増設メモリを挿すといったことも可能なので、活用の幅が広がるというものです。なお、PROは本体内に増設メモリ専用スロットが用意されていて、ここに1Mバイトの増設RAM「CZ-6BE1A」(38,000円)を挿すことでメモリ合計を2Mバイトにすることができました。

キーボードは、手前部分に広いスペースが取られているモデルです。キーのタッチ感は他と比べて大きく違うわけではありませんが、個人的には若干ながら軽快な感じで入力することができました。

 チョットしたオマケ話として、X68000 PRO発売のタイミングで小学館から発売されていた月刊誌『ポプコム』に、「鳥居部長大いに語る!!」と題したインタビュー記事が掲載されていましたので紹介しましょう。ここには「ウチのユーザーさんはおかしいですな。変わってますね。『OS-9』が4,000本も売れたんですよ。OSだけですよ。OSでどないするのですか。アプリケーションがまだ1つもないんですよ。「『OS-9』があれば1年間遊べるんですよ」ということは聞きますけど。ホント、熱心なユーザーさんばかりです」と書かれていて、この時点で制作側からもX68000ユーザーがちょっと変わっているとの認識だったのがわかります。

 そんな「変わっている」ユーザーが多いとされたX68000シリーズですが、この後にも1993年まで新機種が出続けることになります。