パワレポ連動企画
CPUの性能を引き出すための設定ポイント!UEFI超入門【3/5】
DOS/V POWER REPORT 2022年春号の記事を丸ごと掲載!
2022年9月28日 08:30
CPUの性能向上を図る手段としてはUEFIセットアップから基本動作周波数(ベースクロック)や倍率を上げることで動作クロックを高めるオーバークロックが一般的。第12世代Coreからは、Turbo Boostの最大値を維持する消費電力の目安である「MTP(Maximum Turbo Power)」の数値を上げることで、オーバークロック非対応モデルの性能を引き上げることも可能となった。
ブースト倍率を上げて性能を向上させる
最近のCPUは熱や消費電力に余裕がある場合に自動的にクロックを引き上げて性能を向上させるブースト機能を搭載している。何らかの処理を動作中の(アクティブな)コアの数によってブースト時の最大クロックが決まっており、たとえばCore i9-12900KのPコアの場合は、1コアのみ動作時は最大5.2GHz(100MHz×52)、8コア動作時は最大4.9GHz(100MHz×49)などとなっている。
Intel CPUの場合は、型番末尾にKの付くモデルがこの倍率の変更に対応しており、Z690などのZ系マザーボードと組み合わせた場合、UEFIセットアップでブースト倍率を上げて性能向上を図ることができる。
CPUの動作周波数は二つある
基本動作周波 | CPUの熱設計電力であるTDP(Thermal Design Power)またはPBP(Processor Base Power)にもとづく標準動作周波数 |
ブースト動作周波 | 発熱量や消費電力に余裕がある場合に自動的に動作周波数を引き上げるブースト機能発動時の動作周波数 |
ブースト機能はアクティブなコア数により倍率が変動する
Core i9-12900KのPコアの例 | 1コア動作時 | 2コア動作時 | 3コア動作時 | 4コア動作時 | 5コア動作時 | 6コア動作時 | 7コア動作時 | 8コア動作時 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ベースクロック(MHz) | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
CPU倍率 | 52 | 51 | 50 | 50 | 49 | 49 | 49 | 49 |
最大動作周波数 | 5.2GHz | 5.1GHz | 5GHz | 5GHz | 4.9GHz | 4.9GHz | 4.9GHz | 4.9GHz |
ブースト機能発動時の最大CPU倍率はアクティブコア数によって規定されている。そのため、最大動作周波数はアクティブコア数によって変わる。IntelのCPUの場合、K型番製品であればこの倍率をユーザーが変更できる |
ベースクロックを上げてOCする
倍率変更に対応していないCPUの場合は、ベースクロックを上げてCPUの動作周波数を向上させるという手もある。ただし、マザーボードによってはベースクロックを上げると、メモリクロックなども連動して上がってしまい、動作が不安定になる場合がある。その辺りの調整がうまくできる人以外にはお勧めできない。
MTPの設定で第12世代Coreの性能を引き上げる ※LGA1700のみの対応
第12世代Core(開発コードネーム:Alder Lake)の場合は、非K型番CPUとZ690以外のチップセットを搭載したマザーボードの組み合わせでも、Turbo Boost時の電力リミットであるMTP(Maximum Turbo Power)の数値を上げることでTurbo Boostの上限クロックを維持する時間を延ばし、性能を上げることができる。左下のグラフはMSIのB660マザーボード「MAG B660 MORTAR WIFI」とCore i5-12600を使用して、MTP設定値の違いによる性能差を比較したものだが、この値を大きく取ることでマルチコア性能が大幅に伸びる。
このテストではCPUに付属するクーラーではなくサイズのKOTETSU MarkⅡ Rev.Bを使用している。MTPを上げるだけではダメで、ターボ動作の維持には高い冷却性能が必要となる。また、MTPの変更で性能アップを狙うなら、ある程度余裕を持って電力を供給できるVRM を搭載したマザーボードのほうが有利だ。
第12世代Coreには二つの電力仕様がある
PBP(Processor Base Power) | 従来の熱設計電力指標であるTDP(Thermal Design Power)の代わりに、第12世代Coreから導入された定格クロック時の消費電力指標。従来CPUのPL(Power Limit)1に相当するものと考えてよい |
MTP(Maximum Turbo Power) | MTPは最大ブースト状態を維持するための電力指標。従来のPL2に相当する。第11世代CPUまでは最大ブースト状態を短時間しか維持できなかったが、第12世代では冷却性能しだいで最大ブースト状態を長く維持できるようにマザーも含めて設計されているため、少し意味合いが異なる |
MTPの設定で性能向上を図る場合はCPUクーラーの選択が重要
MTPの設定により性能向上を図る場合は、CPUの熱対策も重要だ。目安が難しいが、MSIのマザーボードが参考になる。MSIのマザーボードは使用するCPUクーラーによりMTPの値が自動で設定されるものがあるからだ。MSIのB660マザーボードの多くは、使用するCPUクーラーをBoxed Cooler(CPU付属クーラー)に設定した場合はMTPが定格の117Wに、Tower Air Cooler(サイドフロー型など大きめの空冷クーラー)に設定した場合は288Wに、Water Cooler(水冷型クーラー)の場合は4,096Wになる。MTPをどれくらい上げられるかは使用するマザーボードのVRMの仕様などで違ってくるが、ミドルレンジ以上を使用している場合はこの数値を一つの目安するとよい。
実際に使用するCPUクーラーでどれくらいCPU性能に差が出るのかを検証したのが次のグラフだ。Boxed CoolerはCore i5-12600付属クーラー、Tower Air CoolerはサイズのKOTETSU MarkⅡ Rev.B、Water CoolerはASUSTeKのROG STRIX LCⅡ360 ARGBを使用している。結果を見るとMTPを上げる効果は非常に大きい。しかし、CPU付属クーラーではMTPを上げると逆に性能が落ちてしまう。MTPを上げるにはある程度高性能なCPUクーラーが必要なことが分かる。今回使用したCore i5-12600では、KOTETSU MarkⅡ Rev.BとROG STRIX LCⅡ 360 ARGBでスコアがほぼ変わらないので、大型の空冷CPUクーラーでも十分と言えそうだ。
CINEBENCH R23実行中のCPU温度を見ると、付属CPUクーラーは定格であってもギリギリの冷却性能しかないことが分かる。この結果から見ても、MTPを上げるのであれば付属CPUクーラーでは冷却性能不足と判断できる。
同じ簡易水冷クーラーを使用してMTPを4,096Wに設定した場合に、VRMの仕様の豪華なZ690マザーではより性能が上がるのかも検証してみた。結果は右の一番下のグラフのとおり。わずかながらも性能は向上する。非K型番CPUであっても、MTPの設定で性能を限界まで引き出したい場合は、VRMの豪華なZ690マザーを使用する価値はある。
CPU | Intel Core i5-12600(6コア12スレッド) |
マザーボード | MSI MEG B660M MORTAR WIFI(Intel B660)、MSI MEG Z690 UNIFY(Intel Z690) |
メモリ | Kingston FURY Beast KF552C40BBK2-32(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB×2 ※PC5-38400で使用) |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition |
SSD | Western Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS500G1X0E-00AFY0[M.2(PCI Express 4.0 x4)、500GB] |
CPUクーラー | ASUSTeK ROG STRIX LCⅡ 360 ARGB(簡易水冷)、サイズ KOTETSU MarkⅡ Rev.B |
OS | Windows 11 Pro 64bit版 |
CPU温度 | HWiNFO 64のCPUコア温度の値 |
室温 | 23℃ |
(その4に続く)
[TEXT:滝 伸次]
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