パワレポ連動企画

メモリの性能を100%引き出すためのUEFI超入門【4/5】

DOS/V POWER REPORT 2022年春号の記事を丸ごと掲載!

 PC用メモリの大半は「JEDEC準拠」と呼ばれるもので、現在であればDDR4-3200(PC4-25600)などに対応したものが一般的。これらはメモリクロックや動作タイミングなどが自動で読み込まれるので使用にあたってとくに気を使う必要はない。

 ただし、オーバークロック(OC)メモリと呼ばれる、メモリメーカーが独自に仕様を拡張したものの場合は、メモリに書き込まれたOC設定をユーザーがUEFIセットアップで適用してやる必要がある。ここではその方法などを解説しよう。

OCメモリはXMPの設定が必要

JEDEC準拠プロファイルやXMPプロファイルなどのSPDデータはメモリモジュール上のEEPROMに保存されている

 OCメモリは、メモリモジュールメーカーが独自にメモリチップの選別を行ない、定格を超えた動作クロックを設定したものだ。OCメモリには、JEDEC準拠のプロファイルだけでなく、XMPという拡張されたプロファイルが、メモリモジュールの情報をUEFIに伝えるSPDとして記録されている。多くのマザーボードでは優先的にJEDEC標準規格に準拠したプロファイルが適用されるため、OCメモリをメーカーが設定した仕様で動作させるためには、XMPプロファイルを読み出し、適用する必要がある。標準設定のままではメモリ本来の性能を十分発揮できないので要注意だ。

 XMPの設定方法は右下のとおり。とくに難しいことはない。メモリクロックは下のテスト結果のとおりゲーミング性能などに影響するので、OCメモリを使用している場合は忘れずに設定しよう。なお、AMDのチップセットはすべてメモリのOCに対応しているが、Intelのチップセットは下位のH510やH610では非対応であることに注意が必要だ。

OCメモリにはOC動作プロファイルが書き込まれている

OCメモリにはJEDEC準拠の標準プロファイルに加え、モジュールメーカーが設定したオーバークロック動作のためのXMPプロファイルが、動作設定をUEFIに伝えるSPDデータとして書き込まれている。かなり高いクロックをうたったOCメモリは動作が安定しないことがあり、少し下げた設定など、複数のXMPプロファイルを持つ製品もめずらしくない

XMPプロファイルを適用する

ASUSTeK H670-PLUS D4の例
EZ Modeでは、左端のメモリ情報が表示されている下にあるXMPの設定項目を「Enabled」に設定、設定を保存して再起動する
Advanced Modeでは、Ai TweakerメニューにあるAi OverclockTunerの設定を「XMPⅠ」または「XMPⅡ」に設定、設定を保存して再起動する

XMPプロファイルを適用しないとゲーミング性能などに影響する

メモリクロックはゲームのパフォーマンスなどに影響をおよぼす。上のグラフはDDR4-4400対応をうたったOCメモリのXMP適用時と非適用時(DDR4-2666)で3DMarkのCPUスコアを比較したものだが、4K解像度のTime Spy Extremeで4.4%の差が、WQHD解像度のTime Spyでは15.9%の差が出ている

DDR5メモリにユーザープロファイルを書き込む※LGA1700のみの対応

 2021年末に登場したDDR5メモリは、XMPの最新版、3.0をサポートしたものがある。XMP 3.0ではユーザーが動作プロファイルをメモリモジュール上に保存することができる。

 2022年3月中旬時点、この機能が正常に使えるのはMSIの一部のマザーボードだけだが、Intelによれば将来的にはZ690、H670、B660チップセットを搭載した多くのマザーボードで利用できるようになると言う。ここではMSIのZ690マザーボード「MEG Z690 UNIFY」を使用して、ユーザープロファイルを書き込む手順を解説する。

XMP 3.0でユーザープロファイルの書き込みが可能に

DDR5メモリから新しくXMP 3.0規格が導入され、ユーザーが独自にプロファイルをSPDに2種類記録しておけるようになった。書き込んだユーザープロファイルは、XMP 3.0のユーザープロファイル書き込みに対応した別のマザーボードでも読み込むことが可能だ

ユーザープロファイルの書き込み手順

MSI MEG Z690 UNIFYの例
「OC」→「Advanced DRAM Configuration」→「XMP User Profile」とたどり、「XMP User Profilr DIMMA2」をクリックする
「Load Setting To Item」の選択メニューで、「Current To User P1」を選択する。ユーザープロファイルは二つ書き込める。二つ同時に書き込む場合は[Current To P1/P2」を選択する
DRAM FrequencyやtCLなど、ユーザープロファイルに書き込む値の設定を行なう
ユーザープロファイルの設定が終了したら「Write User Profile To Memory」を選択。メモリスロットに装着しているメモリ全部にユーザープロファイルを書き込む場合は「Write User P1/ P2 To All DIMM」を選択する
書き込みの確認画面が出るので「Yes」をクリックして作業を進める。「Write XMP User Profile Success!」と表示されたら、作業は終了だ
メモリに書き込んだユーザープロファイルは消去できるので、安心していろいろな設定を試してみよう

各社マザーボードの対応状況

ASRock現状、対応予定なし
ASUSTeK現状、対応予定なし
GIGA-BYTE一部マザーボードで対応予定
MSI一部マザーボードで対応

 現状、XMP 3.0のユーザープロファイルの書き込みを正常に行なえるのはMSIの一部のマザーボードのみ。GIGA-BYTEも対応予定だが、ASRockとASUSTeKは当面対応の予定はないと言う。

【検証環境】
CPUIntel Core i9-12900K(16コア24スレッド)
マザーボードASUSTeK PRIME H670-PLUS D4(Intel H670)、MSI MEG Z690 UNIFY(Intel Z690)
メモリMicron Crucial Ballistix BLM2K16G44C19U4BL(PC4-35200 DDR4 SDRAM 16GB×2)、Kingston FURY Beast KF552C40BBK2-32(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB×2 ※PC5-38400で使用)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition
SSDWestern Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS500G1X0E-00AFY0[M.2(PCI Express 4.0 x4)、500GB]
CPUクーラーASUSTeK ROG STRIX LCⅡ 360 ARGB(簡易水冷)
OSWindows 11 Pro 64bit版

(その5に続く)

[TEXT:滝 伸次]

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