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プレイに差が付く!?最新ゲーミング液晶の最新トレンド&使い方

DOS/V POWER REPORT 2022年夏号の記事を丸ごと掲載!

映像美や没入感を重視する製品が増加中!

 「ゲーミング液晶」と言えば、なめらかな描画を実現する“高リフレッシュレート”が一番の特徴で、敵の位置や動きの把握が勝敗を分けるFPSやTPS向けという印象が強い。しかし最近では、色域の広い“量子ドット”を採用する製品が増え、より明るくより暗い表現が可能なHDRへの対応も当たり前になりつつあり、シングルプレイ中心の映像美に優れるオープンワールド系のゲームや映像コンテンツを楽しむのにも最適な製品が充実しつつある。4K/144Hz対応モデルも登場当初よりも価格は下がり、購入しやすくなった。

 そこで、今回は4K/WQHDを中心としたワンランク上のゲーミング液晶にスポットライトを当てる。“ゲーム”に対する各社の考え方や姿勢が見え、思いのほかおもしろい検証結果となった。これを機会にゲームプレイ環境のアップグレードを検討してみては?

注目トピックをチェック!!

 進化を続けるゲーミング液晶だが、ここでは押さえておきたいトレンド情報と知っておきたい設定項目を紹介する。

量子ドットって何?

 まずは、注目のトピックから見ていこう。最近増えてきているのが「量子ドット」を採用する製品だ。これは光波長の変換効率が非常に高い半導体素子のことで、採用製品はハイエンドモデルが中心だ。青色LEDのバックライトを量子ドットシートに通過させることで、青色をそのほかの色に効率よく変換して従来の液晶よりも鮮やかで広い色域を実現できる。とにかくそれぞれの色がクッキリするのが一番の特徴と言えるだろう。

量子ドットは光波長の変換効率に優れたナノサイズの半導体だ。青色LEDのバックライトに量子ドットシートを挟むことで色の変換を行ない、従来よりも広い色域を作り出せるのが魅力だ
一般的な液晶は青色に強いが量子ドットは緑色と赤色も同様に表現力が高く、メリハリのある色を実現できるのが最大の特徴。フォートナイトなど原色系の色が多いゲームでは差を体感しやすい

PS5でも活きるゲーミング液晶

 もう一つはPS5への対応強化だ。PS5が4Kや120Hz駆動に加えて、2022年4月26日のアップデートにてVRR(可変リフレッシュレート)にも対応。これらを活用できるゲーミング液晶に注目が集まっている。

PS5は最新のファームウェアでは、4Kかつ120H zの高リフレッシュレート駆動に加えて、VRRもサポート。両方に対応するディスプレイなら、よりなめらかな描画が可能になった
120Hz駆動させるには映像出力の設定で「120Hz出力を有効にする」を自動にし、ゲームプリセットを「パフォーマンス優先」に変更することが必要だ
120Hz駆動が可能な状態になると対応ゲームで120fps動作設定が登場する。ちなみに120fps動作にすると画質が落ちるゲームが多い

ゲーミング液晶・実践の基礎

高リフレッシュレート設定方法

 高リフレッシュレートの液晶でも、ただPCと接続しただけでは通常の60Hz動作のままだ。Windowsのディスプレイ設定でリフレッシュレートの変更を忘れずに行なおう。せっかくの性能をムダにしてしまう。

Windows 11では「設定」→「システム」→「ディスプレイ」→「ディスプレイの詳細設定」にある「リフレッシュレートの選択」でリフレッシュレートの設定を行なう
GeForceならば、「NVIDIAコントロールパネル」の「デスクトップのサイズと位置の調整」にある「スケーリングを実行するデバイス」を「GPU」に。フルスクリーン時のパフォーマンスが若干向上する設定だ

4Kでも画質とDLSSでfpsは大きく変わる

 そして重要なのが、4Kでリフレッシュレート144Hzの液晶の性能を活かし切ろうと思ったら、PC側はゲームで4K/144fps以上出せる性能が必要なこと。ここではCore i9-12900KとGeForce RTX 3080というハイエンドの組み合わせでフォートナイトを4Kでプレイしたときのフレームレートを例として取り上げる。さすがに最高画質だと60fpsを超えるのが精一杯だ。アップスケーラのDLSSを使えば、画質を維持しつつフレームレートを伸ばせるのが分かる。

最高画質とDLSSの組み合わせなら、画質を維持しつつ高リフレッシュレート液晶も活かせるfpsを出せる
fpsを一番出せるのは中画質だが、影などの表現が簡易的になって雰囲気はやや損なわれる
フォートナイトは画質プリセットが用意されているが、最高以下は3D解像度が下がって画質が粗くなる。見た目とfpsのバランスを考えると、プリセットを下げつつ3D解像度は100%に設定するのがベターだ

利用しやすくなった「HDR」を使ってみよう

 明るさの幅を拡張する技術「HDR(High Dynamic Range)」も注目ポイントの一つだ。より明るく、より暗く表現できるため、映像のメリハリが増す。ゲームだけではなく、動画配信サービスでもHDR対応コンテンツは増えており、ディスプレイのHDRへの対応も注目度が上がっている。

Windows 11でHDRが実用的に

 Windows 10ではHDRを有効にすると全体的に白っぽくなり、HDRコンテンツを見るとき以外には使えない機能だったため、印象が悪い人もいるだろう。しかし、Windows11ではHDRを有効にしても若干明るさの変化はあるものの、色の変化はなく、そのままでも問題なく使えるようになった。

Windows 11では「設定」→「システム」→「ディスプレイ」→「HDRを使用する」をオンにすることでHDRが有効になる。有効にするにはディスプレイ側のHDR対応が必要だ

 ただ、HDRを有効にすると暗部補正やアンチモーションブラーといったゲーミング液晶ならではの機能が使えなくなる製品が多い。プレイするゲームや視聴するコンテンツに合わせて切り換えるのがよいだろう。

Windows 11でHDRを有効にすると自動HDRも有効化される。これはHDR非対応ゲームをHDR化するもの。筆者が試したところ、Apex Legendsは自動HDRが利用できた
HDR非対応ゲームで自動HDRが有効化されると画面の右下のポップアップが表示される。おもしろい機能だけに、Microsoftには自動HDRが有効になるゲームの一覧を公表していただきたい

DisplayHDRのグレードは何が違う?

 また、最近認証取得製品が増えているのが「DisplayHDR」だ。これはPCディスプレイ用のHDR性能を示す規格。現在は8種類のグレードが存在しており、数字が大きくなるほど、より明るく、より暗い表現が可能だ。

DisplayHDR 1000対応の上位グレードのディスプレイは43型など大画面が中心。27〜32型もあるがクリエイター向けなので価格はかなり高くなる
ディスプレイではDisplayHDR True Black 400がわずかにある程度。DisplayHDR True B l a c k 500と600はノートPCで対応するものが数モデル程度とまだ数は少ない
規格最小ピーク輝度(cd/m2)色域調光機構黒の最大輝度(cd/m2)バックライト調整遅延
DisplayHDR 400400sRGBスクリーンレベル0.48フレーム
DisplayHDR 500500WCG 広色域ゾーンレベル0.18フレーム
DisplayHDR 600600WCG 広色域ゾーンレベル0.18フレーム
DisplayHDR 10001,000WCG 広色域ゾーンレベル0.058フレーム
DisplayHDR 14001,400WCG 広色域ゾーンレベル0.028フレーム
DisplayHDR True Black 400400WCG 広色域ピクセルレベル0.00052フレーム
DisplayHDR True Black 500500WCG 広色域ピクセルレベル0.00052フレーム
DisplayHDR True Black 600600WCG 広色域ピクセルレベル0.00052フレーム

 数字が大きくなるほど輝度も高くなるが、ポイントは黒の最大輝度だ。液晶はバックライトがあるため完全な黒の表現が苦手だが、上位のグレードやTrue Blackでは黒の輝度が非常に低く、より暗い表現が可能とメリハリのある映像が楽しめる。

レビュー前に“色”の計測結果を理解する

 次回からは、「量子ドット」、「4K/144Hz以上」、「ウルトラワイド」の3ジャンルに分けた合計9製品のレビューをお届けする。今回は、キャリブレータを使用してそれぞれ色域とガンマカーブを測定した。

使用キャリブレータ x-rite i1Display Studio
すでに販売終了しているカラーフィルタ式のキャリブレータ。現在はCalibriteのcolorcheckerシリーズとして引き継がれている。ディスプレイにケーブルをかけ、レンズを画面に密着させて測定を行なう

色域測定結果の見方

 色域は表現できる色の広さだ。色度図の黒線で色域を示している。PC用ディスプレイの標準的な色域のsRGBに対する広さに注目してほしい。とくに量子ドットの製品は従来型よりも緑や赤の色域が広い。

色域は測定結果のプロファイルを色度図作成アプリ「ColorAC」に読み込ませて作成した。黒の線が測定結果。比較の基準として灰色の線でsRGBの色域を入れている

ガンマ補正カーブの見方

 もう一つは色や明るさの強弱が分かるガンマ補正カーブだ。これはキャリブレータが色をどう補正したのか表わしたもの。レビューしたディスプレイはすべて初期設定の状態で測定している。そのため、正確な色を出せているかと言うよりは、ゲーミング液晶としてデフォルトの色をどう作っているのかの傾向を見るものととらえてほしい。製品によって暗部を持ち上げて見やすさを重視したり、逆に長時間プレイでも目が疲れにくいおとなしめの色にしたりとメーカーのゲームに対する姿勢が見えるのがおもしろいところだ。

色域とガンマ補正カーブの測定は専用の「ccStudio」アプリを使用した。測定手順を画面に分かりやすく示してくれるので簡単に使える
ccStudioアプリのガンマ補正カーブの画面を使用。これはキャリブレータがどう補正したかを示すもので、ラインが上方向に反っていれば明るく補正。つまりディスプレイの状態は暗めだったということだ。カーブにはRGB3色の計測結果の線が、それぞれどの色をどの程度補正したかを読み取ることができる。45゚の角度で線が伸びるのが色のバランスがよい証拠ではあるが、それがゲームで快適かどうかは別問題。ゲーミング液晶としての味付けが出る部分だ

カラーモード設定でこれだけ変わる!

ゲーミング液晶の多くは、ゲームジャンル別のカラーモードを用意している。レースゲームやRPG、FPSといった具合だ。FPSだけでも製品ごとに色作りは大きく異なり、赤を強めて暗部を見やすくしたり、コントラストを高めて立体感を出したり、長時間のプレイを意識してか逆にメリハリを弱くして目を疲れにくくしたりと、メーカーの考え方がよく見える部分だ。

これはASUSTeKのレースゲーム(左)とFPS(右)のガンマ補正カーブ。FPSは暗い色を思いっきり明るくしているのが分かる。FPSなので暗部を見やすくことを重視しているのだろう
【検証環境】
CPUIntel Core i9-12900K(16コア24スレッド)
マザーボードMSI MPG Z690 CARBON WIFI(Intel Z690)
メモリCorsair DOMINATOR PLATINUM RGB DDR5 CMT32GX5M2B5200C38(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB×2※DDR5-4800で動作)
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 AMP Holo(NVIDIA GeForce RTX 3080)
SSDWestern Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS200T1X0E[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB]
CPUクーラーCorsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、32cmクラス)
電源Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro
フォートナイトソロプレイのリプレイデータを再生した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測

[TEXT:芹澤正芳]

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