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速いだけじゃ無い! Synologyの「RT2600ac」で分かる、ハイエンドルーターを買う理由

~レンタルのホームゲートウェイとどう違う? 初心者がやっておきたい設定を徹底解説~ text by 清水理史

APモードで使うか二重ルーターで使うか?

初期設定、もしくは「ネットワークセンター」の「操作モード」でルーターとして使うかアクセスポイントとして使うかを選択できる

 ハイエンドルーターの中でも、RT2600acを初心者におすすめできるもう1つの理由は、AP(アクセス)モードや二重ルーター構成でも扱いやすく、その特徴でもある多機能さがあまり損なわれない点だ。

 市販のルーターを利用する場合、問題になるのはレンタルで提供されるホームゲートウェイをどうするかだ。理想は、RT2600acから直接PPPoEで接続するなど、RT2600acのルーター機能を有効にしつつ、WANポートにグローバルIPアドレスを割り当てることだが、環境によっては、これがなかなか難しい。回線によっては、ONUが一体化されていたり、電話やテレビサービスなどを利用するためにホームゲートウェイを外せない場合がある。また、最近、回線速度の向上が期待できることから契約が増えているv6プラスのサービスもやっかいだ。IPv6上でカプセル化したIPv4で通信する方式となるため、MAP-Eに対応したホームゲートウェイまたはルーター(一部機種が対応)が必要となる。

 このため、利用している回線によっては、RT2600acをAPモードや二重ルーター構成で使うしかない場合がある。多機能さをウリにしているハイエンドルーターでも、APモードや二重ルーター構成では、機能のほとんどが無効になってしまう製品が多い中、RT2600acは一部機能の制限はあるものの、こうした環境でも特徴的な機能を利用することが可能となっている。

APモードで使うときの注意点

 初期設定のウィザード(または設定画面)でAPモードを選択した場合、RT2600acでは、以下のような機能が制限される。

・ルーター機能の停止
ネトットワークセンターから、「ポートフォワーディング」「ローカルネットワーク」「トラフィックコントロール」「ペアレンタルコントロール」の機能が利用不能になる

・Intrusion Preventionが利用不可
パッケージとして追加可能なIDS/IPS機能がAPモードでは利用不可となる

 ルーター機能が停止するのは当然だが、それに依存するセキュリティ機能が使えなくなるというわけだ。ペアレンタルコントロールが使えないため、こどもの利用時間制限やWebのフィルタリングが使えなくなり、IPS/IDSによるパケットチェックができなくなる。RT2600acならではの機能なので残念ではあるが、Intrusion Preventionはルーターへの負荷も大きいため、あえて使わないという選択肢もありだろう。

 一方、一般的なルーターではAPモードへの変更で使えなくなってしまうことが多い以下のような機能は、RT2600acではあきらめずに済む。中でもVPN機能が使えるのは非常に珍しい。筆者が把握する限り、国内で入手可能なルーター製品でAPモードでもVPNサーバー機能が使える機種は数えるほどしか存在しない。VPN利用目的で導入するなら、本製品は、かなりいい選択肢と言えそうだ。

・QuickConnectによる外部からの簡単なアクセス
・DynamicDNSによるドメイン名設定
・NAS機能とDS fileアプリによる外出先でのデータ参照
・Cloud Stationによるファイル同期
・VPN接続

二重ルーターで使うときの注意点

 一方、二重ルーター構成で使う場合でも、RT2600acは非常に優秀だ。ルーターモードで動作させるためAPモードのような機能制限はもともとないが、二重ルーター構成でありがちなよくあるトラブルをうまく回避できるようになっている。

 代表的なのがDynamicDNSだ。一般的なルーターの場合、二重ルーター構成でDynamicDNSを設定しようとすると、WAN側のプライベートIPアドレスを登録しようとしてしまうことがあるが、本製品ではきちんと大元のホームゲートウェイのWAN側のグローバルIPアドレスを取得できるようになっている。

 もともと、NATの内側に存在するNAS向けの機能として各機能が開発されてきた経緯もあり、Quick Connectによる外出先からのアクセス機能も、二重ルーター構成でも問題なく利用可能となっている。

 もちろん、一部の機能、たとえばVPNなどは、上位ルーターのポートフォワードやDMZ機能を使って設定(443をフォワード)する必要があるが、スマートフォンのDS fileアプリを使ってルーターに接続したHDDのデータを外出先から参照するといったことなどは、二重ルーターを意識することなく利用できる。もちろん、APモードでは利用できなかったIntrusion Preventionなどのアプリも利用可能だ。

 注意すべき点があるとすればIPv6の設定だろうか。RT2600acにはIPv6のパススルー機能は搭載されていないので、WAN側、LAN側ともにIPv6を有効化しなければならない。筆者がフレッツ光ネクスト(ぷららのPPPoE方式)で試した際は、WAN側設定をDCHPv6-PD、LAN側をステートレスDHCPv6に設定することで正常に利用できたが、環境によって設定の工夫は必要になりそうだ。

 いずれにせよ、普通であれば、機能制限に泣いたり、設定に苦労するあたりを意識せずに使えるのは大きなメリットと言える。