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「手軽な最強バックアップ」の手法を考えてみた、保険にさらなる“保険”をかける手軽な方法
高耐久HDD搭載でRAID 1もサポートする最大20TBの「My Book Duo」で実践 text by 浅倉吉行
2017年10月23日 07:01
それが仕事であれプライベートであれ、データを失うことのショックは大きい。運用中や搬送中の故障、事故、自然災害などのほか、昨今ではランサムウェアなども話題となっている。大切なデータを失わないため、データのバックアップとることは重要だ。
そして、それが大事なものだからこそ、「普通の安全」を超えた「その上の安全」も求めたいところだが、「その上の安全」は意外に手間がかる。たとえば「バックアップのバックアップをとる」みたいなことを考えると、「さすがに手間がかかりすぎるな……」と思う人も多いだろう
そこで今回、RAID 1対応のHDDを使い、「その上の安全」を手軽に実現する方法を考えてみた。「バックアップ入門」としても使えるよう、基本的な手順も紹介しているので、「バックアップに興味がある」という人にはぜひ参考にしてほしい。
【記事目次】
・データを2重化+高耐久HDD採用、「My Book Duo」が安全な理由(1ページ)
・いざという時のためのフルバックアップを取ろう(2ページ)
・差分バックアップの設定をしてみよう(3ページ)
・まとめ/コラム ランサムウェア対策を考える(4ページ)
データバックアップに最適な最大20TBの大容量ドライブ「My Book Duo」
さて、今回は、その「RAID 1対応のHDD」としてWestern Digitalの外付けHDD「My Book Duo」を用意した。
HDDメーカーとして知られる同社の純正外付けHDDが「My Book」シリーズなのだが、それの2ドライブモデルが「My Book Duo」となる。まずは簡単に製品の紹介をしておこう。
まずは今回使用するWestern Digitalの外付けHDD「My Book」シリーズの特徴を紹介しておこう。
同社の「My Book」シリーズはWestern Digitalの据え置き型の外付けHDDだ。用途に合わせ複数モデルがラインナップされており、今回は2ドライブ搭載で堅牢性の高い「My Book Duo」を用意した。
後述するが、バックアップデータの安全性を高めるには、壊れにくいストレージを使う、バックアップのバックアップを取りデータが失われる状況を防ぐといった方法がある。これらの条件をちょうど満たしているのが「My Book Duo」だ。
My Book Duoには、搭載するHDDを合算して6/8/12/16/20TBの容量が国内では販売されている。この記事では最大容量の20TBモデルを用いるが、ノートPCのバックアップなどがメインなのであれば6TBモデルでもゆとりがあるだろう。自分の環境に合わせ容量は選ぼう。
また、My Book Duoは一見ディスクの入れ替えなどができなさそうなデザインだが、実は簡単に中に入っているHDDを交換できる。この点、HDDの交換を考慮していない一般的な外付けHDDとは設計から異なり、HDDメーカー純正品らしい部分といえるだろう。
こうした構造の製品のため、一旦低容量モデルを購入し、容量が足りなくなったら8TBや10TBなどの大容量HDDを購入して入れ替えるといった使い方もできる。
PCとの接続インターフェースはUSB 3.1(Gen1) Type-C。Gen1なので帯域は5Gbps(500MB/s)だ。内蔵ストレージがHDDであれば5Gbpsの帯域を使い切ることはないので不足はない。また、従来のUSB Type-A端子に変換できるケーブルも付属しているので、一般的なPC/Macで利用できる。そのほかのインターフェースは、USB 3.1(Gen1) Type-A端子が2つ。これはUSBハブとして利用可能だ。
ポイント1搭載HDDの耐久性がそもそも高い
バックアップはまず取ることが重要で、バックアップがあるだけでデータの安全性はかなりあがる。
ただし、物理的なストレージを使う以上、やはりバックアップが壊れるリスクも存在する。バックアップ用に多くのストレージが使える状況であれば数の多さでリスクを減らせるが、少ない台数のストレージでバックアップを行う際は、ストレージ自体の質が高い方が安全性は高まる。
例えば、NAS用やサーバー用のHDDを使用すれば、一般的なHDDなどと比べて耐久性が高いので、HDD自体が壊れるリスクを低くできる。バックアップが壊れてしまっては保険にならないので、少ない台数でバックアップを行う際は気にして欲しい。
ポイント2「バックアップのバックアップ」を手軽にとるためのRAID 1
先にも書いたがバックアップデータもHDDなどのストレージに保管する以上、やはりストレージが壊れるリスクはある。より確実にデータを失わないようにするのであれば、バックアップのバックアップをとることが有効だ。
PC自体が不調に陥り、バックアップに使用していたHDDも故障したといったような不幸が重なっても、バックアップを2重にとっておけば保険になる。PC、バックアップ、バックアップの予備と3つが同時に不調になる可能性はかなり低いので、バックアップデータを2重に取っておくことはかなりの保険になるのだ。
作業としては単純にバックアップを取った後にもう一度バックアップを取れば良いわけだが、手間も時間も2倍かかって面倒だ。そうした際に便利なのがRAID 1の機能となる。RAID 1は同じデータを二つのドライブに書き込み2重化するシステム。片側のディスクが壊れたとしても、もう一台が保険となりデータを守ることができる。
書き込みも並列で行われるので時間もドライブ1台時と変わらないメリットもあるが、RAID 1をサポートしたHDD外付けケースやPCなどが必要になる。導入が手軽ではない点がネックだが、導入できればかなり安全性を高めることができる。
●My Book Duoの設定をRAID 1にしよう
My Book DuoはデフォルトではRAID 0に設定されているので、RAID 1に変更する方法を簡単に紹介しておく。
My Book Duoにアクセスすると以下画像のようにバンドルソフトが入っている。WD Discovery.exe(WDアイコンマークのファイル)をクリックするとインストールが始まり、ディスクの設定などが変更可能なWD Drive Utilitiesがインストールされる。
RAIDの設定はWD Drive UtilitiesのRAID管理の項目から変更可能で、変更したい項目を選び、左下の「構成」ボタンを押せばその後は自動で処理が進む。
なお、RAIDの構成を変更すると内部の全てのデータが一旦消去されるので、元々書き込まれているバンドルソフトのファイルは別の場所に一旦コピーして保存しておくのが良いだろう。
バックアップの方法をおさらい大まかに分けるとシステムバックアップとデータバックアップの2種類
ここからはバックアップの方法に関して紹介していこう。大きく分けると、システムバックアップとデータバックアップという2タイプに分類される。
先にデータバックアップを説明すると、これはOSを含まないデータのみのバックアップと捉えればよい。バックアップソフトウェアを用いて自動かつ定期的にバックアップをしてもよいし、あるいはエクスプローラを使って手動でコピーすればそれもバックアップと言える。
一方のシステムバックアップは、OSを含むバックアップだ。WindowsであればCドライブのデータをまるごとバックアップする方法になる。
OSがクラッシュしたり、ストレージが故障したり、あるいはランサムウェアに感染したりするような場合に対処するためのバックアップで、データ復元時にOSを含めた状態で戻せる。データバックアップはファイルのみで環境までは戻せないが、システムバックアップならば設定などもすべて元に戻すことができる。ただし、OSが入ったドライブのデータをまるごとコピーするのでその分容量は必要になる。
また、システムバックアップは単なるコピー作業では不可能なので、専用のソフトウェアから行う。専用のソフトウェアと言っても、バックアップ用途向けの外付けHDD製品などでは、機能限定版のソフトウェアをバンドルしていることもあるので、必ずしも追加コストが生じるわけではない。
なお、システムバックアップだけを取れば安全というわけではないので、データバックアップも併せて取ってもらいたい。
環境ごと守れる「フルバックアップ」を取った後は差分バックアップを取ろう
では、ここからはシステムバックアップを例に、もう少しバックアップの手法を説明しておこう。
システムバックアップには、フルバックアップと差分バックアップという2つの手法がある。フルバックアップは、毎回システム全体をバックアップする手法だ。およそPCのシステムと同じだけの容量が必要となり、ソフトウェアによっては常に上書きされるため、基本的には最後にバックアップを取った状態に戻すことになる。
差分バックアップは、まず1回フルバックアップを取った上で、以降はその状態との差分のみをバックアップしていく手法だ。そのため、フルバックアップを複数残しておくことと比べれば容量が節約でき、2回目以降のバックアップに要する時間も短時間で済む。また、バックアップさえ残しておけば「○月○日の状態に戻したい」といったこともできるのが特徴だ。
データを守る上でフルバックアップとデータバックアップを取っておくことがまず重要になるが、フルバックアップを取った後は差分バックアップをとることもリスクを減らす上で重要になる。
日々更新があるファイルが数GB程度であれば毎日差分バックアップを取っても時間はわずかで済み、容量もそれほど圧迫しない。バックアップソフトで差分バックアップをとるタイミングを自動化しておけば手間もかからないので、フルバックアップと併用して行うことをお勧めしたい。