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PC版バイオハザード RE:2はSSDがかなり快適、HDDから3倍以上高速になるケースも

NVMe SSDとSATA SSDの速度差もチェック text by 坂本はじめ

 より快適にゲームを遊ぶことを目的とするゲーミングPCにおいて、ロード時間を短縮する効果のあるSSDの導入はもはや必須と言っても過言ではない。

 今回のレビューでは、世界的な大ヒットを記録中の「バイオハザード RE:2」にSSDを使う価値はあるのか、導入しやすいバリュークラスのSSDを使用し、ロード時間の短縮にどれだけ効果を発揮するのか検証する。

 SSDによるロード時間短縮効果はゲームタイトルによってまちまちであり、実際に試してみないとわからない。HDDと比較してSSDが倍以上高速になることもあれば、HDDとSSDで差が付かないケースも存在する。「バイオハザード RE:2」に対してSSDの効果がどれだけ発揮されるのかを見てみよう。

 また、今回はNVMe SSDとSATA SSDの2種類でテストを行った。NVMe SSDとSATA SSDでゲームに対してどれだけの性能差が出るのか、SSDの性能に興味のあるユーザーにもぜひチェックしてもらいたい。

カプコン往年の名作を最新技術でフルリメイク生まれ変わった「バイオハザード RE:2」

 カプコンのバイオハザード RE:2は、21年前に発売されたバイオハザード2をフルリメイクしたサバイバルホラーゲーム。

 カプコンの最新ゲームエンジン「RE ENGINE」によってリアルに描かれるラクーンシティを舞台に、プレイヤーは恐怖の惨劇からの生還を目指すことになる。

 かつて累計販売本数496万本を達成したシリーズ屈指の人気作であるバイオハザード2。

 そのリメイク作として大きな期待を背負うことになったバイオハザード RE:2は、期待を裏切らないクオリティで完成されており、発売から約1か月で全世界出荷本数400万本を達成。ゲーマーからの大きな支持を獲得している。

 バイオハザード RE:2はシームレスマップを採用しており、21年前のようにエリア移動の度にドア開閉演出などのロード待ちが発生することはない。

 だが、セーブデータのロードやシナリオ開始時など、マップを再生成する必要がある場面でのロード待ちは避けられないものであり、今回はそれらのロード時間にSSDの性能がどの程度影響するのかをチェックする。

コスパに優れるバリュークラスのNVMe SSDとSATA SSDを用意

 今回のテストには、Crucial製SSDの中からバリュークラスに位置する製品を2製品用意した。

 NVMe SSDであるCrucial P1の1TBモデル「CT1000P1SSD8JP」と、6Gbps SATA対応SSDであるCrucial BX500の480GBモデル「CT480BX500SSD1JP」を用意した。

Crucial P1シリーズの1TBモデル「CT1000P1SSD8JP」。3D QLC NANDを採用したコストパフォーマンスの高いNVMe SSD。
Crucial P1のCrystalDiskMark実行結果。シーケンシャルリードは最大2GB/sに達しており、ランダムリード性能も優れている。
Crucial BX500シリーズの480GBモデル「CT480BX500SSD1JP」。税込8,200円前後で購入可能なバリュークラスの6Gbps SATA対応SSD。
Crucial BX500のCrystalDiskMark実行結果。リード最大540MB/s、ライト最大500MB/sというスペックを上回るパフォーマンスを発揮している。

 NVMe SSDのCrucial P1は、メモリセルへの4bit記録が可能な3D QLC NANDを採用したM.2タイプのSSD。QLCの採用によって容量単価はNVMe SSDの中でも最安クラスであり、今回用意した1TBモデルのCT1000P1SSD8JPは税込18,500円前後で購入できる。

 SATA SSDのCrucial BX500は、2.5インチ/7mm厚タイプの6Gbps SATA対応SSD。バリュークラスのSSDでありながらも、リード最大540MB/s、ライト最大500MB/sという、6Gbps SATA対応SSDとしては十分に高速な転送速度を実現している。480GBモデルは税込8,200円前後で購入できる。

 2つのSSDをテストするためのベース機材には、Core i9-9900KとGeForce RTX 2080を搭載したゲーミングPCを用意。また、参考までに5,400rpmクラスの3TB HDDでの測定結果も比較する。

「4K解像度 × 画面品質重視」の重めの設定でテスト

 テスト実行時のグラフィックス設定については、画面解像度を4K解像度(3,840×2,160ドット)、グラフィックス設定を自動設定の「画面品質重視」にそれぞれ設定。グラフィックスAPIはDirectX 11を利用した。

 ロード時間を測定したのは「ゲームの起動」「セーブデータのロード」「Extraシナリオの開始」の3つ。また、テクスチャ品質の変更がロード時間に及ぼす影響の測定も行った。測定は各シーン毎に3回ずつ行い、その平均値で比較している。

ゲームの起動は1~2割程度高速に

 まずはゲームの起動時間の比較だ。起動開始からオートセーブについての注意事項が表示されるまでの時間を測定した。

 最速タイムはCrucial P1の22秒で、0.73秒差でCrucial BX500が続いている。HDDはCrucial BX500から3.89秒遅い26.62秒であり、Crucial P1はHDDより約21%速く、Crucial BX500はHDDより約17%高速だった。

セーブデータのロードからゲーム開始まではSSDが2倍以上高速

 セーブデータのロードでは、Load Gameから「警察署/メインホール」でセーブしたデータを選択し、ゲーム画面が描画されて操作可能となるまでの時間を比較した。

 最速タイムはCrucial P1の3.07秒で、2番手は0.15秒差の3.22秒を記録したCrucial BX500。HDDはCrucial BX500から4.18秒遅い7.40秒で、SSDの2倍以上のロード時間を要している。Crucial P1はHDDより約141%速く、Crucial BX500はHDDより約130%高速だった。

Extraシナリオの開始はSSDが2.5倍も高速

 2月15日から配信されている無料DLC「The GHOST SURVIVORS」によって追加されるExtraシナリオのひとつ「Runaway」で、シナリオを選択してからロードが完了するまでの時間を比較した。

 最速はCrucial P1の2.29秒、2番手は0.16秒差の2.45秒を記録したCrucial BX500。HDDはCrucial BX500から4.07秒遅い6.52秒。Crucial P1はHDDより約184%速く、Crucial BX500はHDDより約166%高速だった。

VRAMの使用量が増えれば増えるほどHDDよりSSDが高速に、差は最大3.5倍に

 グラフィックス設定を「画面品質重視」に設定すると、テクスチャ品質は「高 (1GB)」が適用されているが、この項目にはより高負荷な「高 (8GB)」が用意されている。

 そこで、「高 (1GB)」と「高 (8GB)」で各ストレージのロード時間がどのように変化するのかを確かめてみた。測定条件は、先に紹介した「セーブデータのロード」と同じ。

自動設定の「画面品質重視」において、テクスチャ品質は「高 (1GB)」に設定されている。
テクスチャ品質は最大で「高 (8GB)」を設定できる。

 テクスチャ品質を「高 (1GB)」から「高 (8GB)」にしたことで増加したロード時間は、Crucial P1が0.51秒、Crucial BX500が0.52秒であり、SSDに関してはほぼ同じだけロード時間が増加している。

 一方、HDDはテクスチャ品質を「高 (8GB)」にすることでロード時間が5.21秒も増加しており、「高 (1GB)」ではSSD比で2.3~2.4倍だったロード時間が3.4~3.5倍にまで悪化している。

 HDDの結果から、テクスチャ品質の変更がストレージ要因のロード時間増加を招くものであることが分かる一方、今回テストしたSSDにとっては大して時間を掛けずに読み出せる程度のデータ量であるようだ。

ゲームはNVMe SSDを使いこなせていない?ゲーム以外の用途でNVMe SSDの性能をチェック

約24GBのゲームフォルダをその場にコピーして複製を作成するまでの時間を計測してみた

 バイオハザード RE:2でテストする限り、HDDとSSDに大きな性能差があることは今回の検証結果からわかってもらえたと思うが、NVMe SSDとSATA SSDの間の性能差は思いのほか小さい。

 この現象がゲームに限定される物なのか、別の用途でもNVMe SSDとSATA SSDの性能差はあまり開かないものなのか、大容量のファイルをコピー&ペーストとして速度を比較してみた。

 具体的には、バイオハザード RE:2のインストールフォルダ(約24GB)をコピーし、同じ階層にペーストしてフォルダの複製を作成してみた。リード/ライトが同時に発生するので、SSDには負荷が高い状態が発生する。NVMe SSDはスペック上はSATA SSDよりも高速なので、性能が発揮されれば大きな差が出るはずだ。

NVMe SSDで同じ場所にゲームインストールフォルダをコピー&ペーストした際の速度
SATA SSDで同じ場所にゲームインストールフォルダをコピー&ペーストした際の速度

 上のグラフが約24GBのゲームフォルダのコピー/ペーストを行った際の時間の比較だが、NVMe SSDがSATA SSDの倍以上高速な結果となった。

 ファイルの転送速度は、NVMe SSDが600MB/s前後で安定し、SATA SSDは300MB/s前後で安定していた。ベンチマークだけで無く、こうした普段使いのシーンでもNVMe SSDが高い性能を発揮することがわかる。

 検証結果から推測すると、バイオハザード RE:2はおそらくNVMe SSDなどへの最適化は行われていないと思われる。また、ゲームのロード時間は、データをストレージから読み出すだけで無く、圧縮されているデータをVRAMやメインメモリに展開したり、CPUやGPUが描画の準備などを行う時間も含まれる。このため、ストレージが一定以上に高速になった場合、効果が頭打ちになる可能性もある。

 バイオハザード RE:2で試す限り、NVMe SSDはSATA SSDと比較して明確なアドバンテージは発揮していないが、今回のような普段使いのシーンでは大きな性能差が出ており、導入が無駄になるわけでは無い。また、高速ストレージを意識して作られたゲームであれば、NVMe SSDとSATA SSDで大きな差が出る可能性もあるだろう。

バイオハザード RE:2はバリュークラスSSDでも大きく快適にSSDを導入する価値は大きい

 バリュークラスのSSDを使ってテストを行ったバイオハザード RE:2では、NVMe SSDとSATA SSDのどちらもHDDからロード時間を大きく短縮できた。

 それほどロード時間の長い印象はないバイオハザード RE:2ではあるが、最大で3倍以上SSDが高速となる場合もあり、この差は小さくない。セーブデータからのロード時間はゲームを遊ぶ際に毎回発生するので、SSD導入で必ず恩恵が受けられる部分といえる。

 今回紹介したグラフでは、SATA SSDであるCrucial BX500のコストパフォーマンスの良さが光っているため目立ちにくいが、NVMe SSDのCrucial P1はCrucial BX500よりも5%ほど高速であり、ゲームタイトルによってはこの差が効いてくることもあるだろう。

[制作協力:Crucial]